長時間残業やリモートワークなど、人の「働き方」に関する話題や課題は尽きません。出社すべきか否か……コロナ禍で注目を浴びたのは、皆さんの記憶にも新しいでしょう。
今回インタビューしたのは、「IT業界」と「人材業界」の内定を獲得したCさん。
Cさんは、最終的に「人材業界」を選びました。決め手は「人材業界ならでは」のやりがい、そして人材業界でしかできない社会課題の解決だと話します。
インタビューをする中で分かったのは、Cさんが人材業界を志したきっかけが、皆さんも抱えているような身近な課題かもしれないということ。
「志望理由を書くのが難しい」「社会課題に興味があるが、突出したエピソードがない」──こうした悩みがある方は、ぜひ参考にしてみてください。
<目次> ●ミスマッチが起こると、仕事は「楽しくないもの」になってしまう ●人材業界ならでは? 「社会課題への関心」と「幼少期の経験の深掘り」が欠かせない ●ITやデジタルだけじゃない。今注目されている社会問題を解決できる ●おわりに
ミスマッチが起こると、仕事は「楽しくないもの」になってしまう
──Cさんは、どういった軸で就活されていましたか?
Cさん:はい。主に3つの軸で就活をしていました。
(1)働く上での人の可能性を広げ、才能を生かすための支援ができる (2)成長できる環境 (3)異なる考えを持つ人と協業し、多様な価値観を取り入れ、幅広い視野で物事を見ることができる
──(2)と(3)の軸を考える人は多いですよね。(1)の「働く上で人の可能性を広げ、才能を生かすための支援ができる」とは具体的にどういうことでしょうか? その思いに至ったきっかけがあれば教えてください。
Cさん:幼少期、自分の周りには、働くことに嫌気が差している人が多かったんです。人生の多くの時間を占めるのは働くことだけど、みんな、働くこと以外で人生の楽しみすべてを見いだそうとしていて。
父も同じで、毎日かなり疲れた顔をして仕事から帰ってきていました。そんな周りの大人たちを見て、子どもの頃から仕事に対して「疲れる」「面白くない」「大変」というイメージを抱いていました。そのイメージが定着していたので、自分はずっと学生のままがいいなと考えていたほどです。
──身近な大人の働き方を見て、マイナスなイメージを持っていたんですね。
Cさん:しかし、大学1年生のときに働くことに熱中し、心から楽しんでいる方に出会いました。
その方は、私が所属していた学生団体でプロジェクトを運営していた際の社会人メンターでした。「大学生よりも、社会人として働く方が楽しいよ」と話していて、衝撃を受けました。
──Cさんの仕事のイメージと反して、そのメンターの方は仕事を楽しんでいたと。なぜそのような働き方をできていたんでしょうか?
Cさん:仕事内容と、自分のやりたいことが一致していたからだと思います。
学生時代から、企画立案を行うプランナーをされていた方なんですが、社会人になってからもその仕事をされています。
後は結果を出されていたからこそ、「楽しい」「熱中できる」と感じていたのだと思います。そこで、自分もやりたいことを仕事にしたいと感じましたし、以前の自分のように働くことにマイナスなイメージを持つ人の価値観を変えられないか、と考えるようになりました。
──その経験を踏まえて、熱中し、楽しんで働くには何が必要だと思いますか?
Cさん:自分のやりたいこと・自分の強みが、自分の職種と一致していることです。
自分がやりたいことは、この2つの条件に合う人を増やすべく、転職の際のミスマッチを減らすことです。そして仕事にやりがいを持ち、楽しいと思う人を1人でも増やすことです。
──なるほど。そんな背景があって、最終的にやりたいことができる人材業界にしたんですね。
Cさん:そうですね。やはり、人の可能性を広げ、才能を生かすための支援ができるという軸を一番重視しているので、人材業界が合っていると思いました。
IT業界の中でも、労働環境を改善するサービスを作る会社や、業務効率化に貢献するシステムを開発するSIerなどを中心に受けていました。しかし、間接的に環境づくりのサポートはできても、個人の働き方や生き方に直接アプローチすることは難しいと思ったんです。
──Cさんは人材業界の中でも「人材紹介」の領域に携わるそうですね。人材紹介では個人をサポートすることができるということでしょうか?
<人材業界の3業態>
・人材紹介:企業が求める人材を紹介し、その人が採用された際に、紹介の成功報酬を得る。
・求人広告:紙媒体やウェブサイトを通じて求人情報を宣伝し、掲載日や制作料金を得る。
・人材派遣:クライアントと交わした業務契約の遂行のために人材を派遣し、派遣料を得る(※1)。
Cさん:人材紹介の「人と企業をつなげる」点は、その人にとっての「天職」を見つけるサポートができます。
簡単なことではありませんが、自分に合った職を見つけることができれば、仕事にやりがいを持ち、楽しむ人も増えていくのではないでしょうか。 (※1)参考:ワンキャリア「人材業界を3つに分類!仕事の内容からお金の流れまで徹底解説!- 業界研究 / 人材業界 -」人材業界ならでは? 「社会課題への関心」と「幼少期の経験の深掘り」が欠かせない
──人材業界ならではの選考ポイントを教えてください。
Cさん:面接においてよく聞かれることが2つあります。
1つ目は、人材に関する社会課題への関心、2つ目は、幼少期の経験の深掘りです。
──1つ目の社会課題への関心は、面接でどのように示していたのでしょうか?
Cさん:私の場合は「働くこと=楽しい・熱中できるもの」というイメージに変わった原体験を志望動機に絡めて、課題意識をアピールしました。
「◯◯というきっかけがあって、自分も課題意識を持ちました」という話の流れです。やはり人と関わり、課題を解決する仕事ということもあり、課題意識や、ビジョンについて聞かれることもありました。
──Cさんのように、「働くことに対するイメージを変えたい」と考えるようになった原体験がある人は少ないと思います。周囲の内定者は、どういった理由で志望している方が多いですか?
Cさん:まず、自分のような原体験がある人も一定数います。
共通していることは、人材に関する社会課題に対する意識が高く、課題を解決し、社会を変えたいと考えているということですね。
例えば、就活をしている中で、新卒一括採用制度に疑問を持ち、「本当にこれでいいのか?」と課題を持っている人も少なくないはずです。私のように幼少期からのエピソードはなくても、身の回りで疑問に思うことを突き詰めてみるといいかもしれません。
──2つ目の幼少期の深掘りについても教えてください。答えるには、自己分析が必須かと思いますが、どのように準備されましたか?
Cさん:正直、自己分析にはあまり力を入れていませんでした。
ただ、自分のやりたいことの方向性は、大学1年生のときから見えていたので、それを大事にしていました。
幼少期の深掘りは、具体的な質問内容がワンキャリアの選考対策ページに掲載されていました。質問に合わせて当時の自分を振り返り、「なぜそれを頑張ったのか」を自分なりに深掘り、PowerPointに回答をまとめて本番に臨みました。
──スライドで回答を準備されていたんですか。どうしてでしょうか?
Cさん:話すのが苦手だからです。事前に考えた相手に伝えたいことと、実際に話している内容に、ズレが生じないようにしようと思っていました。
──オンライン面接ならではですね。実際に面接をしてみて効果はいかがでしたか?
Cさん:自分の思いを正確に伝えやすかったです。
ただ、原稿を作るための手間がかかる点と、スライドに書いてあることをそのまま読んで棒読みになってしまう点がデメリットだと思います。
実際、棒読みが理由で落ちたかなと思うこともありました。もしやるとしても、要点を書き出した付箋をパソコンの横に貼るくらいがいいかもしれません。
ITやデジタルだけじゃない。今注目されている社会問題を解決できる
──Cさんが考える、人材業界の魅力を教えてください。
Cさん:今後、日本で注目される大きな社会問題の解決に携われる点です。
例えば、経済産業省が掲げている「未来人材ビジョン」というものがあります。AI(人工知能)の台頭やテクノロジーが発展する上での、長期的な人材育成や人材投資、転職、日本型雇用システムなどの課題が挙げられています。
人材業界でのアクションを通じて、今後待ち受ける日本の課題解決に貢献できると信じています。
──Cさんは、どのような社会課題を解決したいと考えていますか?
Cさん:入社後3年以内で約3割が転職する昨今(※2)、多くの人が「自分がやりたいことと実は一致していなかった・やりがいを十分に感じられない」といった理由で働く上でのもやもやを抱えています。
また、日本では熱意をもって働いたり、仕事に没頭できたりするワークエンゲージメントの高い人が海外と比べて少ないことも指摘されています(※3)。
天職のような職種に就くことができ、自分の強みを生かし、働くことにポジティブになれた結果、人生を有意義なものにできた。このような人を1人でも増やしたいと思っています。
(※2)参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況を公表します」(※3)参考:厚生労働省「働きがいをもって働くことのできる環境の実現に向けて P.179」
おわりに
日本社会でITやデジタルの話題が上がる中、同時に重要になってくるのが「人材」というテーマです。
注目されている社会課題はITだけではありません。「やりがい」を求めて就活をしている方は、「人材業界」を視野に入れてみてはいかがでしょうか。
Cさんは、楽しく働ける社会をつくる前に、まず自分が仕事を楽しめるようになりたいと話しています。
人生の大半を占める「仕事」の時間を楽しむためにはどうすればいいかを考えてみるのも面白いかもしれません。
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