コンサルにはロジカルに考える力が必要。だから自分には向いていない──。
就活に人気企業ランキングで、毎年上位に食い込むコンサルティング企業。人気だからこそ、選考のレベルの高さや周りの優秀な学生に圧倒され、自らチャンスを手放す人も多いのではないでしょうか。
「ロジカルシンキングは一つの要素として見られているだけ。大切なのは、自分らしい強みをどう示すか」
そう伝えるのは、戦略や総合など、複数のコンサル企業に内定した2023年卒のBさん。選考では、よくある強みの「協調性」を示したといいます。
コンサルの中でも、特に選考が厳しいとされる「戦略系」に内定できた秘訣(ひけつ)とは? 「GDでの立ち回り方・思考法」「ケース対策」「強みのアピール方法」など、コンサルの選考に生かせる対策を伺います。
<目次>
●やりたいことが明確でなくていい。コンサルの「スケールの大きさ」に惹(ひ)かれた
●あえて周りと別の道へ。大手ファームより、少数精鋭の戦略コンサルを選ぶ理由
●「箇条書き」を身につけるだけ。GDでも面接でも、ロジカルさを示せる
●「コンサルだから」とロジックにこだわりすぎない。自分らしさで差をつける
やりたいことが明確でなくていい。コンサルの「スケールの大きさ」に惹(ひ)かれた
──まずは、いつから就活を始めたのか教えてください。
Bさん:大学2年生の2月です。友人から「一緒に選抜コミュニティの選考対策をしよう」と誘われたことがきっかけです。毎年2〜3月頃にコミュニティに入るための選考が行われているので、早めに対策を始めました。
──選抜コミュニティに入るのは、外資系金融やコンサルなど早期内定を目指す層が多いイメージがあります。Bさんは、どの業界を志望していましたか?
Bさん:私は、元からコンサルに興味を持っていたので、コンサル業界が第一志望でした。漠然と大きなことをしたい、日本全体に影響を与えたいという思いがあり、さまざまな業界や経営者と一緒に仕事をできる点に魅力を感じました。企業での取り組みだけにとどまらず、業界や社会全体としてどうあるべきかという視点で考えるスケールの大きさは、私の思いとも合致しています。
──はじめからコンサルを視野に入れていたんですね。どんな軸で就活をしていましたか?
Bさん:モチベーションを持って仕事をするために、「自分のやりたいことかどうか」を軸にしていました。大学時代に塾講師のバイトをしていたのですが、楽しいけれど本気で頑張れる仕事ではない、と気づいたんです。そのとき、自分が真剣に取り組みたいと思う分野や業務内容の方が、誇りとやりがいを持って取り組める、と思いました。
あえて周りと別の道へ。大手ファームより、少数精鋭の戦略コンサルを選ぶ理由
──コンサルと一口に言っても、さまざまな種類のコンサルティングファームがありますよね。どこの企業にするか、迷いませんでしたか?
Bさん:そうですね。私も総合コンサルか戦略コンサル、どちらにするか悩みました。その際に重視していたのは、企業規模(社員の多さ)・裁量の大きさ・関わる業務の幅広さ・成長できるかの4つです。
昨今、大手の総合ファームは、採用人数が多く業務内容も細分化しています。そういう意味では、自分が得られるスキルも限られてしまうのでは、と思いました。そこで、あえて違った環境に行った方が、早く一人前になって周りと差をつけられると思い、最終的に戦略コンサルに決めました。
──内定先は、何が決め手になりましたか?
Bさん:私の内定した戦略コンサルは採用人数が10人と、かなり少ないです。決め手となったのは、少数精鋭なこと、活躍する機会の多さ、提案の実現可能性がより重視されること。もちろん、総合コンサルでも実現可能性は欠かせませんが、経営層と対峙(たいじ)する機会が多いからこそ、より一層重視されると感じています。また人数の少なさゆえに、チームで取り組む案件において若手が活躍する機会も多く、幅広い業務に携わることができる、と聞いています。
──なるほど。しかし、戦略コンサルに内定するのはハードルが高そうですね。そもそも、インターンに参加しないと、内定獲得は難しいのでしょうか?
Bさん:そんなことはありません。最終的に選んだ企業は、インターンに参加せずに本選考から内定を獲得しています。ちなみに、ジョブ選考と本選考の2つの選考ルートがありました。
──本選考からでも内定できる可能性は高いんですね。実際にインターンに参加したのは、何社ですか?
Bさん:サマーインターンのエントリー自体は約30社で、参加したのは6社です。そこで早期選考の案内をされた企業も含めて、11月〜12月に早期選考6社と本選考5社を受けました。
インターンで一度落ちた企業でも、本選考まで進むことが多かったので、インターン参加の有無は内定獲得にあまり関係ないと思います。サマーだけでなくウインターにも参加できますし、一度選考に落ちてしまっても、諦めずにチャレンジするのが大切です。
──本選考から内定を獲得できる企業も多いと。それでも多くのインターンにエントリーしたのはなぜですか?
Bさん:理由は2つあります。一つ目は、業界への興味や向き不向きを確かめることができるからです。そのため、業界を絞りやすくなります。サマーの時点では、業界を絞りきれない人がほとんどだと思うので、まずはインターンに参加するのがおすすめです。当初、私は5業界(コンサル・証券・銀行・外資メーカー・デベロッパー)を受けようとしましたが、サマー後には2業界(コンサル・証券)になり、本選考では1業界(コンサル)にまで絞り込みました。
──もう一つは、なんでしょうか?
Bさん:優遇される可能性が高いからです。優遇といっても、「本選考の一環で内定直結」「早期選考案内(リクルーターなし)」「早期選考案内(リクルーターあり)」などがあります。もし、やりたいことがなく応募企業に迷ったら、優遇があるかどうかで判断するのもありだと思いますよ。
「箇条書き」を身につけるだけ。GDでも面接でも、ロジカルさを示せる
──コンサルの選考では、何が求められているのでしょうか?
Bさん:「論理的思考力」と「コミュニケーション能力」は、全てのコンサル企業で見られています。なかでも戦略コンサルは、頭の回転の速さを求められます。ジョブでは、GDやグループワークなど他の人と協力する機会があるので、協調性も大切ですね。
──Bさんは「論理的思考力」「コミュニケーション能力」をどのようにアピールしていたのでしょうか?
Bさん:面接において論理的思考力の示し方は、2つあります。結論ファーストで話すこと、話した後に「結局自分が言いたかったのは〜」とまとめることです。GDでは、箇条書きにして話す、ということをしました。
──箇条書きに? どんな場面で使えるのでしょうか?
Bさん:箇条書きにする方法は、GDのように自分の話す時間が限られていて、他の意見をまとめる必要のあるときに使いやすいです。まず議論をしている最中に出た意見を、紙に箇条書きでまとめます。自分なりに議論の方向性を整理した後に「今の話はこういうことですよね」と提示するだけです。残り時間が少なく、早く結論を出したいときにも使えますね。
また、面接でも、同じように頭の中で整理して発言するといいですよ。これだけで面接官に「筋道を立てて考えているな」と感じてもらえるはずです。
難しそうに思えるかもしれませんが、私も最初からできたわけではありません。他の人の発言をメモする習慣をつけるとだんだん慣れてきます。「最初からできるようにならないと」とは、考えなくていいと思いますよ。
──GDで他に意識していたことはありますか?
Bさん:2つあります。一つ目は、議論に食らいつくこと。周りに優秀な学生が多い場合、議論の中心で話すことは難しいかもしれません。しかし、そんなときでも私は諦めずに議論に加わっていました。「意見を言う」「できることがないか周囲に問い続ける(資料作成やファクト集め)」など、できることをしてみてください。
主導権を握っている人に比べて、目立つことはできませんでしたが、「変に知識をひけらかしたり、無理に主導権を握ろうとしたりせず、最終目標達成のために自分ができることを探してチームに貢献している点が良かった」と社員さんから評価されました。
──サポートとして活躍できる人は、無理に目立つ必要はないんですね。もう一つはなんでしょうか?
Bさん:もう一つは、協調性です。例えば、ワークでは議論をサポートしてくれる社員さんがいるのですが、話すときに「◯◯さんがこう言っていたんですが」と他のメンバーの名前も入れたり、話を振って説明をお願いしたりしていました。これだけで、周りを巻き込んで話し合ったと示すことができます。
GDは、一人で進めるのではなく周りの意見を尊重し、協力する姿勢が大切です。そのようなチームでの立ち回り方も見られていたと思います。
──コンサルならではのケースはどのように対策しましたか?
Bさん:私は問題集を使って練習しました。
・東大生が書いた 問題を解く力を鍛えるケース問題ノート 50の厳選フレームワークで、どんな難問もスッキリ「地図化」
Bさん:ケース面接の形式には、大きく2通りあるので、前もって形式を把握しておくと安心です。お題を出されてから考える時間をもらい回答する形式と、お題を出された上で面接官と相談しながら回答の質を深める形式です。
後者は、自分の回答に面接官の意見をどれほど取り入れるか、なども評価されています。かたくなに自分のロジックだけを貫くのではなく、周囲の意見を取り入れる柔軟さや協調性をアピールできるといいですね。
──選考で落ちてしまった企業もあると思いますが、「もっと対策すれば良かった」と思うものはありますか?
Bさん:Webテストです。志望度の高い企業のWebテストで落ちてしまったので……。その企業には、とりあえず興味があるからと1回目は軽い気持ちで受けてみたんです。2回目に改めて選考を受けようとしたとき、前回のWebテストが使い回されていて、点数が低かったため通過できませんでした。テスト結果が引き継がれている選考もあるので、就活を始めたばかりの時期でもしっかり対策はしておくべきです。
「コンサルだから」とロジックにこだわりすぎない。自分らしさで差をつける
──対策の仕方や情報は、どうやって集めたのでしょうか?
Bさん:先輩に頼っていました。コンサルの選考に限らず他の業界を受けるときも、前年度はどんな選考だったのか、この業界を受けるときに知っておくべき知識は何か、などを前もって聞いていました。Webテスト対策や面接対策、就活の情報交換もできるので、とても大切な存在でした。具体的には初期、中期でこんなことを聞いていました。
<初期>
・ES添削
・自己分析のサポート
・Webテスト対策
<中盤>
・過去のサマーインターンの内容
└テーマやワークの内容
└立ち振る舞いのポイント
└事前にやるべきこと
・志望動機の添削
──先輩からの情報は貴重ですね。とはいえ、コロナの影響もあって先輩とのつながりがあまりない、と悩んでいる人もいると思います。
Bさん:もちろん先輩に限らず、友達でもいいですよ。ほかにも、ゼミの先生にも頼れると思います。身近な人に聞くのがいいんじゃないでしょうか。私は、キャリア支援団体のen-courage経由でつながった人や、インターン先の人に聞くことが多かったです。また、ネットで企業情報を調べたり、ワンキャリアの体験談を読んだりして情報収集をしました。
──とにかく周りの人に頼るのが大切なんですね。近年人気のあるコンサル企業の内定を得るには、周りの人よりも優れたスキルやエピソードが必要なのでしょうか?
Bさん:能力で優れている必要はないと思います。ただ、周りと差をつける見せ方はできます。私が意識したのは、自分のバックグラウンドをうまく活用することです。海外に住んでいた経験や、少し変わった趣味の話をすることで、面接官の印象に残る工夫をしていました。特に、自己紹介で興味を持ってもらえたエピソードは「初めてフルマラソンで完走した話」です。
そして、自分の性格を生かすことも大切です。人と話すのが好きなので、GDでは自分の良さをアピールするため、「みんなで考えよう!」と周りと協力しながら取り組んでいました。
──エピソードの内容次第では、印象に残りやすそうですね。ただ、コンサルではBさんの性格である「協調性」よりも、「ロジック」が重視されそうです。
Bさん:確かにコンサルでは「ロジック」が重視されています。しかし、その人が持つ要素の一つとして見ているだけです。実務では、チームで案件に取り組むことが多いですし、周りとの協調性も大事にする業界だと思いますよ。
私の場合は、自分の強みが「協調性」だっただけです。ロジックを組むのが得意な人は、ロジカルに考える力をアピールする。人をまとめる能力があれば、ワークで話し合った内容を整理したり、話を脱線させることなく正しく結論に導いたりできると思うんです。
コンサル志望だからといって、論理的思考力にこだわりすぎる必要はありません。どの業界を受けるにしても、自分らしい強みをアピールできるといいんじゃないでしょうか。
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