就活で目にする機会が増える「裁量」という言葉。「その人の考えによって判断し、処理すること」を意味し、企業選びの軸の一つにしている就活生も多いでしょう。
とはいえ、安易に仕事に裁量を求めると落とし穴もあります。プレッシャーを感じてしまうなど、自分自身を追い込んでしまう可能性もあるのです。
「裁量が意味するところは企業によりさまざま。だからこそ、自分が求める裁量の中身を具体化することが大切です」
こう話すのは、電通国際情報サービス(以下、ISID)の人事担当者の斉藤さんと飯島さん。今回のインタビューでは、社会人を経験したお二人から見た「裁量」との向き合い方、そして若手社員に裁量を持たせるために必要な企業のサポートについて聞いてみました。
裁量は「与えられる仕事の規模」ではない。判断の影響と責任の大きさである
──今日は就活生が注目している「裁量」をテーマにお話を伺えればと思います。まず、お二人は裁量について、学生のときはどう考えていましたか?
斉藤:直接的に「裁量」という言葉を使っていたわけではありませんが、企業選びにおいて「若手の意見が通る」「主体性を持って仕事ができる」といった点は大事にしていたので、結果的に裁量の大きさを意識していたのではないかと思います。ISIDを志望してくれている学生にも、裁量がほしいという人は多くいますね。
飯島:僕は仕事のやり方をガチガチに固められるのが好きじゃないので、そういう意味での裁量は求めていた気がします。
──なるほど。実際に社会人として働くようになって、裁量への考え方に変化はありましたか?
飯島:さまざまな仕事を通じて、「裁量の大きさというのは、すなわち責任の大きさである」ということを実感することが多かったですね。その大きさが、経験や年次によってどんどん変わっていくものなのだと思います。
斉藤:就活生に話を聞くと、裁量について「一つの大きな仕事を任せてもらえて、自分でどんどん進めていく」というようなイメージを持っている方が多い印象ですが、それは極端な例なのかなと。
最初は小さなタスクをどう進めるか判断するくらいで、その積み重ねで任せられる案件や規模が大きくなっていくものだと思います。それを「裁量の大きさ」「裁量の幅の広さ」と言うのであって、突然大きくなるものではないですよね。裁量自体はどの会社でもある程度はあって、その大きさと任せ方が重要です。
斉藤 ゆい(さいとう ゆい)2015年にISIDへ新卒入社。技術職として研究開発や他部門への技術サポートを行う組織に配属後、セキュリティ支援や技術調査などを担当。2019年より人事部へ異動し、新卒採用をメインに、新人育成や組織開発にも取り組む。
──任せ方、ですか?
斉藤:人がいないから任せるなど、いきなり全てをやらせようとするのではなく、上司側がどう考えて、どのように裁量を与えるか。任される側は、自分で判断して仕事を進めていく余地があることが大事です。
飯島:会社の規模によっても裁量の渡され方は異なりますから、学生本人がどの規模の裁量を持つことにやりがいを感じるのか、そこに目を向ける必要があるように思いますね。
裁量を持たせてもらえるがゆえに、新人時代は苦しんだことも
──大きな裁量にはプレッシャーも伴いますよね。特に新人で何も分からない状態で裁量が大きすぎると、どうしていいか分からなくもなりそうです。
飯島:そうですね。僕自身、新人のころにそれで困ったことがありました。
──どういうことでしょう?
飯島:ISIDは自由な社風であり、それゆえに若手のときから裁量を持たせてもらえます。自分で判断することを大切にしているので、上司や先輩も新人に考えさせ、判断をさせようとする。当時の僕は丁寧なフォローが欲しいと考えていたこともあり、どうしても放置されているように感じてしまって。
飯島 仁(いいじま じん)2015年にISIDへ新卒入社。技術職としてコミュニケーションIT事業部に配属後、システム開発・保守運用などを担当。2019年7月より人事部へ異動し、新人育成をメインに、階層別(若手向け)研修や自己啓発支援・組織開発にも取り組む。
──確かに、自主性とフォローのバランスは難しいところではありますね。
飯島:特に僕が配属された部署はほとんどが中途入社の方で、若い人がいなかったんです。新卒で「これから頑張るぞ!」という僕にとっては落ち着きすぎていたというか。もちろん聞けば教えてくれるんですけど、ビジネスライクな会話で終わってしまうし、なじむまでに苦労しました。
斉藤:一方で、私が配属された部署はほぼ毎年新人が配属されていて、先輩たちから手厚く面倒を見てもらっていたので、当時は部署ごとに差があったのだと思いますね。
自由な社風で裁量を持って仕事ができるのは、ISIDの良いところ。でも、飯島さんのような方向に作用してしまうこともある。それを「社風だから」で終わらせたくないという思いがあり、人事では新人一人ひとりと向き合うことを重要視しています。
採用と配属は「人生を決める」と思って向き合う──リモート下の新人教育にも新たな工夫
──具体的にはどのようなアプローチをしているんですか?
飯島:いろいろとありますが、最近の一番大きな変化は新人の配属ですね。ミスマッチを減らすため、今年から配属希望の聞き方を変えました。やりたいことができたり、働く環境が合っていたりすれば、モチベーションは下がりにくいと思うので。
──それは確かに大切ですね。どのように聞き方を変えたのでしょう。
飯島:これまでは「どうやってISIDに貢献したいか」という内容が主だったのですが、それを「そもそも何をやってきたのか」という過去の経験の話と、「これから身につけたいことと、望む環境」を中心に聞くように変更しています。
──なるほど。新人本人にフォーカスした内容になったと。
飯島:「どう貢献したいか」だと、相手の意図が分からないときがあるんですよ。それこそ「裁量を持って働きたい」と答えられたときに、相手が望む裁量が分からず、どこに配属させればいいのか悩んでしまうことがあって。そういった背景から「そもそもどういう人なのか」という情報を引き出すことに重点を置くようにしました。
ここまでをテキストで書いてもらって配属先を検討し、判断に迷うときは個別に面談を設定しています。勝手に判断せず、迷ったら彼らに聞くことを意識しています。
──新卒入社者は何人いるんですか?
飯島:年によって変わりますが、50〜60名です。今年もだいたいそのくらいですね。
──それだけの人数のレポートを読み込んで、場合によっては面談もする。相当時間がかかりますよね?
飯島:正直ものすごくかかりました。でもここは非常に重要なことですし、大変なのは時間だけ。私自身モチベーション高くやっていますし、それほど大変とは思っていないですね。新人の人生を決めるといっても過言ではないので、丁寧にやって悪いことはないと思っています。
──配属後のフォローについてはどうでしょう? 飯島さんが課題に感じていた部分だったと思いますが。
飯島:そうですね。もちろん、配属後の定着フェーズについてもさまざまな施策を行っています。特に今はコロナ禍もあって、リモートワーク環境で新人の受け入れをしなくてはいけません。気軽に話しかけづらいなど、対面中心のコミュニケーションだったころと比べて難しくなったと思います。
──コロナ禍において同じような悩みを抱える企業は多くあります。コミュニケーション不足が新人の「成長」を阻害してしまうケースも少なくありません。そのための工夫はありますか?
飯島:今は、新人のケアをするメンターと新人の間で最初に面談をしてもらって、仕事の進め方や質問など、コミュニケーションを取る際の「ルール」を決めてもらうことにしています。人事が間に入ってアドバイスをすることもできるのですが、当人の間で決めてもらった方が、納得感が高まりますし、お互いの自己開示にもつながりますから。
──なるほど。確かにこれは効果がありそうですね。しかし、教育チームの飯島さんはなぜそこまで力を注げるんでしょう? 採用チームの斉藤さんはすでに新人と接点があって愛着も持ちやすいように思いますが、飯島さんは入社前の新人とはそれほど接点がない状態ですよね。
飯島:新人のときに苦しんだぶん、同じ思いをさせたくない、というのはありますが、もともと世話好きで後輩も好きなタイプですし、後輩から尊敬されたいという思いもあるんでしょう、たぶん(笑)。
あとは今年から配属に関して、採用チームと一緒に動くようになったことが影響していると思います。コミュニケーションを密に取っているぶん、どういう思いで採用を進めてきたのかを知っている。採用チームと一緒に、新人が「入社してよかった」と思えるように支援したい気持ちも大きいですね。
「やりたい」が自由に言えて、その先の判断は上司が見守る。それがISIDの裁量
──採用チームと教育チームの連携は、最近始まったことなのでしょうか?
斉藤:以前から連携はあったのですが、最近さらに強化されましたね。採用チームは「全ての人が幸せになる採用活動」をミッションに掲げていますが、言語化されたのは3年ほど前。そのときに自分たちがやりたいことがより鮮明になりました。
採用チームが関わった全ての人が、本当に描きたかったキャリアを歩めているか。そんな意味を込めているので、採用した人たちの配属後についても、より一層考えるようになったんです。
最近は「新人が幸せになる」という目的のもと、両チーム間でコミュニケーションの時間を作るようになりました。ちょっとした雑談の時間も増え、それぞれの視点を理解し、新たな施策が生まれ、連携の機会も増えていった感じです。最終的には、メンバーを丸ごと入れ替えても仕事が成立するくらい、互いのことが分かっている状態を目指したいですね。
──ミッションを起点に、チーム横断で仕事を進めていると。
斉藤:部署に縛られていないのが、ISIDの特徴だと思います。「人事部だからこうじゃなきゃいけない」「採用グループだからこれしかやっちゃいけない」みたいことがなくて。「こうやった方がいい」と自由に声を上げられる。
上司との面談でも、私のキャリアだけでなく「人事部はどうなったらいいと思う?」ということまで意見を聞いてくれるんですよ。それは私が7年目だからではなく、他のみんなもそう。委ねてくれるし、意見を吸い上げようとしてくれるからみんなの意見が出るし、そこから変化も生まれる。それはISIDの好きなところですね。
飯島:やりたいことを言うことに関して、ものすごくウェルカムなのは間違いないです。その上で上司がやれそうだと思えば「やってみなさい」と背中を押してくれるし、時期尚早だと思えば「まだ早いんじゃない?」とフォローを入れてくれる。自分で考えて判断させることを重視していて、チャンスをつぶさないというか。
──「やりたい」が言えて、やれるかどうかの判断が適切かは上司が見てくれる。それがISIDの裁量なんですね。
斉藤:「これがやりたい」に対して、何でもオッケーを出すのはリスクですけど、そこの判断は上司がちゃんと見守ってくれる。だから安心してやりたいことや意見を言えるなと思います。
そうやって「やりたいことの一つはできたけど、こっちはまだ早かったな」と、自分で選択しつつ、できることとできないことの判断もできるようになる。それは現場や年次を問わず、色濃くあるISIDの良いカルチャーだと思っています。
7年目で研修責任者、異動から2週間で面接官──適性と意志があれば、年次や経験は関係ない
──なるほど。ちなみにお二人は裁量を与えられている実感はありますか?
飯島:僕はグループ会社も含め、約100人の新人研修の責任者として動いています。去年は初めて新人研修を担当したのでサブ担当者でしたけど、今年は主担当。もちろん不安なときは上司や先輩に相談しますけど、7年目という立場もあって、「好きにやっていいよ」と基本的には全て任されています。
見るべき範囲は変わりましたし、連絡を取り合う先も増えて大変ですが、まさに裁量を持って動けている実感はありますね。
斉藤:上司が「いける」と思ったら、年次や経験に関係なく、やらせてもらえるのは振り返って感じます。それこそ人事に配属された2週間後には、面接官をやっていましたから。人手不足だったわけではなく、現場にいたときの私と学生のやりとりを見て、「いけるだろう」と任せてくれたのだと思います。
その後も「主担当として全部好きにやっていいよ」と学生向けのイベントを任せてもらうなど、毎年「いろんなことをやり尽くしたな」と思えるぐらい、たくさんのことを経験させてもらっています。
──任せられる範囲が大きいと、プレッシャーを感じることはないですか?
飯島:それはめちゃくちゃありますね。新人は研修の担当者にものすごく期待しているので、研修内容はもちろん、僕の一つひとつの行動についても、期待に応えなければ、と考えています。4〜6月の新人からの質問は基本的に全て僕に来るので、それにきちんと対応しなければというプレッシャーもありますね。
斉藤:私の場合、プレッシャーはあまり感じていませんが、インターンシップや選考を通じて「自分の一つひとつの言動が学生の未来につながる」というのは、常に心に留めています。
私の一言が入社のきっかけになることもあれば、IT業界から離れるきっかけになってしまうこともあるかもしれません。自分の立ち振る舞いや話の内容が、学生の何かにつながるかもしれない。責任の重さは感じますし、大切な仕事だと思ってやっています。
あなたは「裁量」に何を求める? 言葉の意味を具体化し、社員の生の声を聞こう
──とはいえ、求める裁量と入社後に与えられる裁量のギャップが生まれてしまうケースはまだまだ多いと思います。ギャップをなくすために、学生に対して何かアドバイスはありますか?
斉藤:とにかく社員の生の声を聞くしかないと思います。どういう裁量を持って仕事をしているのか、上司との普段の関係性はどうなのか。人事だけでなく、現場社員の話をたくさん聞くことが大切です。
私たちは今こうやってISIDの話をしていますけど、どうしても自分たちが知っている範囲内でしか話せないんですよ。「ISIDの裁量はこう」という話はできても、人によって捉え方が変わることもあります。だからこそ、複数の人と会話を重ねて、自分が望む裁量のあり方のイメージと違和感がないか、考えることが重要です。
飯島:そのためにも、やっぱり自分がほしい裁量について、具体化する必要があると思います。「裁量が大きい」「裁量がある」という言葉からイメージするものは人によって異なるでしょう。システムをゼロから作り上げたいのか、決定権がほしいのか、大きい案件に携わりたいのか……それを具体的にできるといいですよね。
斉藤:例えばサークルやアルバイトで、自分は何を任せてもらえたときに「いいな」と思えたのか。各社の話を聞きながら、自分の過去の「いいな」とつながるポイントを探していく。そんな意識で自己分析や企業分析ができるといいんじゃないかなと思います。
──裁量という言葉を具体的にしていくと。分かりやすいです。
斉藤:採用チームとしても、なるべく現場社員に出てもらうようにし、彼らの言葉を隠さずに学生に届けることは意識しています。定期的に行っているオンラインイベントではチャットで来た質問の一つひとつ全てに答えていますし、内定後に要望があれば社員との面談も設定します。「ISIDとして直していきたいところはありますか?」といった学生からの質問に、役員も本音で答えてくれる。「そこまで言っちゃうか」とハラハラすることもたまにありますが……(笑)。
そうやって出せる情報は全部出して、その上で学生自身に選んでもらう。それが裁量に限らず、ミスマッチを防ぐことにつながると思っているので、最終的に学生本人が他社を選んだとしても、その意志を尊重し、応援します。
──採用の時点から、本人の判断を重視しているわけですね。お二人はどんな学生にISIDへ来てほしいですか?
斉藤:ISIDには「Agile(まずやってみる)」「Humor(人間魅力で超える)」「Explore(切り拓く)」「Ambitious(夢を持つ)」「Dialogue(互いに語り尽くす)」という5つの行動指針があって、そこに共感してくれる方は皆さん来てほしいですね。きっと合うと思います。
飯島:僕は自分で考えられる人が来てくれたらいいなと思います。考えられる人は相手の意見もくめるし、自分で判断して動くこともできる。考えられる人はものすごく成長できるなと、いろんな人と接していて感じていますね。
──ありがとうございました。最後に、就活生へメッセージをお願いします。
斉藤:オンラインでの就職活動は、情報共有や就活仲間を作ることが難しいと思います。不安もあると思いますが、やっぱり行動することが大切です。ぜひいろいろな企業のたくさんの社員と会ってほしいですね。「どういうところで働いたらより幸せになれるだろう」と考えながら進めてほしいなと思います。
飯島:コロナ禍の就活は大変だと思いますが、自分で情報を集めて、自分で判断して、自分で決めることを何より大事にしてほしいです。後悔のない就活ができるよう、応援しています。
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