5大商社の一角として知られる三井物産。歴史のある総合商社のため、「会社都合で配属先が決まり、その後のキャリアも自由に選択できないのでは」「年功序列で窮屈そう」といったイメージを持っている方もいるかもしれません。これを読む方の中にも、裁量が大きい実力主義の環境を求めて、外資系コンサルティングファームやスタートアップ企業などを第一志望にしている、という学生がいるのではないでしょうか。
しかし実際の三井物産は、いわゆる「大手総合商社」のイメージとはかけ離れた特徴を持っています。多くの社員が「ここまでボトムアップなのか」と入社後に驚くほど、年次に関わらず各方面から意見が飛び交う風土なのだそう。また、同社では四半期に一度掲示される社内公募に対し、自ら手を挙げて異動の申し出ができる「人事ブリテンボード制度」という独自制度もあり、これまでに累計約500名の社員が異動を実現したのだとか。想像以上に、自らの手で希望のキャリアをつかめる体制が整っています。
今回は、同社の新卒採用に込める想(おも)いや、幅広い時期に実施するインターンシップのプログラムなどについて、新卒採用チームリーダーを務める村田さんにお話を伺いました。
村田 祥太郎(むらた しょうたろう):三井物産 人事総務部 新卒採用チームリーダー
2009年新卒入社。大学時代、舞台演劇のプロデューサー・演出家として作品作りに熱中した経験から「自らの手でビジネスを作る仕事がしたい」と考え、三井物産に入社。入社後は金属資源本部にてトレーディング・投資管理・M&A業務に従事。2017年から3年間はアフリカ・モザンビークに駐在し、現地の鉱山会社に出向。現在は日本に戻り、新卒採用チームを率いている。
豊富なリソースを使ってさまざまな挑戦ができる。だから、総合商社は面白い
──まずは、三井物産の事業内容について改めて教えてください。
村田:当社には3つの柱となるビジネスモデルがあります。まず1つは、皆さんがよくイメージされるトレーディングのビジネスモデル。仲介者として需要と供給を結びつける仕事です。そして2つ目は、事業開発・投資。既存ビジネスに出資して事業の成長を後押しする、あるいは新規ビジネスを立ち上げて世の中に新しい価値を創造していくビジネスモデルです。そこからさらに踏み込んで、投資した事業を自らで経営し、バリューアップしていくのが3つ目のビジネスモデル。
総合商社というと「モノを右から左に流すだけ」と思われがちですが、当社はより幅広いソリューションを提供している企業です。さらに言うと、扱っているのはモノだけではなく、ITの力を使ったサービスなど、コトの部分でも価値を提供しています。
──就職活動中の学生からすると、事業開発や投資事業などはコンサルティングファームやPEファンドでも手がけられると考えられますが、それらを「総合商社で行う意味」は何でしょうか。
村田:総合商社ならではの魅力として、まず挙げたいのは「主体者になれる」という点。経営のアドバイスやコンサルティングを行うだけでなく、自らの手で経営を進めていきます。最終的に自分たちで判断し、交渉し、仕事を作っていくことができる点が、事業の主体者である総合商社の醍醐味(だいごみ)なのだと思います。
また、事業を育てたり、新たに起業したり……といったことはスタートアップ企業でも行えますが、それらを「豊富なリソースを駆使しながら行える」のは、総合商社だからこその強み。できることの幅がかなり広がるので、スタートアップ志向の方にとっても魅力的な環境ではないかと考えています。
さらにPEファンドとの比較で言うと、より長い目で見た投資ができるのは総合商社ならでは。PEファンドだと短期でのリターンが求められることが多いですが、当社は長いものだと10年、20年、場合によっては50年スパンで考えることが可能です。事実、現在当社の利益の柱となっている鉄鉱石の事業は、1960年代に投資を始めた案件。序盤10年ほどはほとんど利益が出ていなかったのですが、信念を持って投資し続けた結果、現在は大きなリターンを得られる事業になっています。
長い歴史の中で経験と実績を積み、商社としてあらゆる分野と手を結んできたからこそ、新しいことに挑戦する際にさまざまなオプションを活用できる。これは、三井物産ならではの魅力だと思っています。
当社の社員に共通しているのは「熱意」。性格も経歴も個性的な社員が集まっています
──総合商社というと、体育会系の人が多いイメージや年功序列のイメージがあります。社内ではどんな方が活躍していますか?
村田:実際のところ、本年の新卒社員のうち、体育会系出身者の比率は3〜4割ほど。全体で見るとマジョリティではないんです。僕自身も舞台演劇をやっていた文化系ですしね(笑)。共通していることがあるとすれば、みんな何かしらのパッションを持って好きなことやプロジェクトを進めてきた、ということくらい。積み上げてきた経験やバックグラウンドはバラバラで、個性豊かなメンバーがそろっています。
また、若手が活躍できる風土と仕組みづくりにも積極的に取り組んでいます。たとえば、入社5年目にして自身が立ち上げた事業の社長になった人材もいます。
──入社5年目で社長とは、かなり思い切った挑戦もできるんですね。
村田:驚かれるかもしれませんが、当社には若手であっても一般的な人事制度を飛び越えて管理職や事業会社の経営ポジションにつける「キャリアチャレンジ制度」という仕組みがあるんです。先述の若手についてもこの制度を利用して事業を構想し、ジョイントベンチャーを立ち上げました。論理を立てて社内を説得するプロセスはありますが、それさえできれば多くのことにチャレンジさせてくれる企業文化が根付いています。
予測不能な現代こそ、総合商社の役割は大きい
──パンデミックや戦争など、社会情勢が目まぐるしく変わる現代。三井物産はこの変化をどう捉えていますか?
村田:世間でもよくいわれるように、現代はVUCAの時代(不確実で、先が読めない時代)に入ってきています。さらに地政学的なリスクも高まっている中で、10年後はもちろん、来年何をすべきかすらなかなかクリアに見えてこない。そこに対して、総合商社が担える役割はどんどん増していると感じます。
というのも、総合商社の最大の特徴は「あらゆる分野・業界のプレイヤーと協業できる」という点にあるから。たとえば、今は化石燃料由来のエネルギーを多く消費している産業も、今後は脱炭素化していかねばなりませんよね。この課題を各産業内のリソースだけで解決していくことは難しく、全く違う業界の知見を生かしていく必要があります。総合商社は、そんな業界と業界にまたがる課題を拾い上げて、協業しながら解決していくことができる存在。エネルギー問題だけでなく「ICT×医薬品」「食×健康」など、さまざまな力をかけあわせることで、イノベーションを起こしていきたいと考えています。
──なるほど。総合商社のニーズが高まる中で、求める人材にも変化があったのではないでしょうか?
村田:より一層多様性が重要になってきていると感じます。VUCAの時代に課題解決の本質を見抜くには、あらゆる角度からの視点が必要。そういった意味では、さまざまな専門性や考えを持った人々が集まることで、本質を捉えやすくなるのではと考えています。当社としても、いろいろなタイプの人を採用していきたいですね。
その中で何か共通で求める点があるとすれば、しっかり自分の頭で考えること、考えるだけでなく着実に実行に移すことかなと思います。当社の社長も「Independent thinker」、直訳で「自立的に物事を考える力を有した人(個)」が大切だと話しています。組織の中にいたとしても、組織方針を踏まえながらも自分で考えて行動ができる人、そんな人がこの業界には特に必要だと感じます。
また、変革を起こしていく力も必要不可欠。「何か変化を起こしたい」という思いのある人が活躍できると考えます。といっても、入社する前からやりたい仕事が明確に決まっていなくても大丈夫。好奇心や探求心を持ち続けて目の前の仕事に取り組み、何か関心のあるテーマが見つかった時に、そこに情熱を傾けて行動ができるかどうかが重要だと思います。
入社後ミスマッチをゼロにするために、選考フローをリニューアル
──三井物産の選考といえば「自分史」が特徴的ですよね。これはどんな意図で選考に組み込んでいるのでしょうか。
村田:「自分史」とは、自身の人生を振り返り、自分がどんなことに関心やモチベーションを感じるのかを自己分析して2,000~2,500字にまとめる独自のESのこと。2020年から始めて、今年で3年目です。
選考に組み込んだ意図としては、「自己分析ツールとして活用してほしい」というのが大きな理由です。就活の時点で「自分はこういう仕事がしたい」とピンポイントに決まっている人は少ないですよね。仕事は実際に始めてみないと分からないこともたくさんある。そのため、前段階として「何が好きなのか」「何にやりがいを感じるか」を整理することで、仕事探しのヒントになるのではないかと思ったのです。
また、これまでの経験や頑張ったエピソードを華々しく装飾する、いわゆる「学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)」の文章作りにあまり力を費やしてほしくないというのも理由です。就活を頑張るのではなく、自分の人生を生きることを頑張ってほしいですし、そうした方々を採用できる仕組みを作れればと思っています。
自分史のイメージ
──「自分史」に加えて、インターンシップに注力している背景を教えてください。
村田:端的に言うと、「三井物産での仕事が本当に自分に合っているのか」を確かめてもらう場を作りたかったんです。まずは「自分史」で思考・モチベーションを整理したら、その整理したことを頭に入れながらインターンシップで三井物産の仕事の一端を体験していただきます。
実際に当社流のビジネス作りに触れてみて、マッチするなと思ったなら当社に入ることがいい選択になると思いますし、逆にマッチしないと感じたとしても、それはそれで良い経験になるはず。仕事を体験する機会なしに自己理解だけ深めて「何となくここかな」と選んでしまうと、入社後のミスマッチにつながりかねません。インターンシップは、その意味で学生さんと会社、お互いに良い機会になるのではと考えたのです。
──このインターンシップでは、具体的にどんな仕事を体験するのでしょうか?
村田:まず、参加者を本部別のグループに配属します。金属資源本部、ウェルネス事業本部……など。その後、各本部で実際に抱えている事業課題を提示し、それを解決するソリューションをグループワークを通じて提案としてまとめていくという流れです。各グループには当社社員がアドバイザーとして付き、「三井物産がどのような考え方でビジネスを作っていくのか」というプロセスに一緒に取り組みます。期間は3日〜1週間程度が中心ですね。
アドバイザーは、各現場で活躍している中堅社員から選出しています。中堅社員にした理由は、一定の社会人経験を積んでおり、ビジネスのイロハが分かっているからこそのアドバイスができるから。彼ら・彼女らが疑似的な先輩社員や上司として壁打ち役になってくれることで、新しい発見も多くあるはず。リッチな経験になることは間違いないと思います。
──このインターンシップに参加することで、学生はどのようなメリットを得られるでしょうか。
村田:1つ目は、実際のオフィスで行うインターンが多いため、職場環境を体感できること。事業部同士の交流を図りやすい工夫が随所に隠れているんです。気軽にオフィス内の階を行き来できるよう内階段になっていたり、各フロアにさまざまな部署の社員が打ち合わせや交流できるスペースを用意していたり……。入社後のイメージを膨らませつつ、各所にあるこだわりを見つけていただけるとうれしいです。
2つ目は、インターンがかなりインテンシブであること。脳みそにかなり汗をかく、とても濃い内容になっていると思います。先ほど話した通り、実際の事業課題に対するソリューションを3日〜1週間で立案していただきます。これは、私たち社員でも相当難しいこと。短期集中で考え抜く、考え続ける経験ができます。何かを詰め込んだり押し付けたりするのではなく、それぞれの発想を自分たちで形にしていくプロセスを大切にするインターンとなっています。
3つ目は、アドバイザー社員から個別のフィードバックがもらえること。1on1の機会を設けているので、ビジネスへの理解や、自己理解をさらに深められると思います。ちなみに、アドバイザー社員はとても親身に接しますので、その点はご安心ください(笑)。
また、現在海外にいる学生さんに向けて、オンラインのインターンシップを用意しています。地方から来る学生さんに対しては、交通費・宿泊費を当社で負担しますので、気兼ねなくご応募いただけるとうれしいです。
「やりたいことが決まっていない」と悩む必要なんて、ありません。当たり前のことですから
──最後に、学生に向けてメッセージをお願いします。
村田:まず言いたいのは「『就活』を頑張りすぎないでほしい」ということです。学生時代のような、自由に時間を使える機会は社会人になるとなかなかありません。だから、今を精一杯楽しんでほしいですし、今やりたいことを突き詰めてほしいなと思います。当社としても、やりたいことに夢中になっている方を採用したいと思います。
そして、繰り返しになりますが、今の段階で「ビジネスパーソンとしてやりたいことがない」というのは、就業経験がない分当然のことだと思いますので、気にしないでください。
やっておいてほしいことはただ1つです。自分の人生を振り返って、興味のあることやモチベーションを感じる要因を整理すること。当社の選考では、その自己理解をベースに行うことでマッチングを図っていきますので。
また、「成長するにつれて、やりたいことは変わっていって当たり前」というのも事実です。なぜなら、思考やライフステージが進んでいくごとに世界はどんどん広がっていくから。そのため、今やりたいことに固執しすぎず、新しくやりたいことに出会える機会を探していくのも大切です。三井物産は、まさに「新しいこと」に出会える絶好の環境。もし入社後に違う仕事や分野に興味を持ったとしても、それを実現できる手段が社内にあります。安心して飛び込んできてくれるとうれしいですね。
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