「本当は地元で働きたいけど、とりあえず東京かな……」と思っていませんか?
「就活も脱・東京だ!」とか、「働き方は多様化している!」とか耳にはしても、就活で実際に飛び交う情報は東京の企業が多くで、どうしても目が向きがちです。
一方で、どの地域にも圧倒的な個性を放つ企業はあります。
地元愛にあふれ、地域の課題を解決しようとするひたむきさ。地域密着だからこその信頼と、愛され度と、強さ。若手でも安心して挑戦できる、ユニークな仕組み──。目を凝らせば、そんな知られざる顔が浮かぶかもしれません。
ワンキャリア編集部は、会員の学生が「お気に入り」に登録している企業の数を、地方ごとに集計。大学のある地域に本社を構える企業を対象に、30位までのランキングにまとめました。
今回は東北・北関東編。地域を支える金融機関やメディアが多くランクインした一方、町の小さな工場や商店から全国区へ成長させた企業も名を連ねます。独自の経営哲学やビジネスモデルに触れると、よく耳にする企業のイメージも変わるかもしれません。
就活とて、やはり足元から。コロナ禍で世の中の物差しが変わる今、「灯台下暗し」で後悔しないためにも、身近な選択肢を探してみませんか?
アイリスオーヤマ
概要
1971年設立。宮城県仙台市に本社を置き、生活用品の企画・製造・販売を行います。
事業・特色
コロナ禍ではマスクの生産や、非接触型デバイスの開発が注目されました。時代の変化に応じて利益を生み、危機に強い会社といわれます。原点はプラスチック製品の下請け加工でした。やがてガーデニング用品でブームを引っ張り、その後はペット市場を開拓。生活者の不満をすくい上げ、家電事業でさらに成長しました(※1)。「クリア収納ケース」など、アイデアから生まれたヒット商品が多くあります。
商品開発のコンセプトは「快適生活」で、「ユーザーイン」発想を徹底。生活者の求めるものをスピーディーに商品化するため、設計やデザイン、販促計画など関係部署が情報共有する「伴走方式」を採っています(※2)。
メーカーと卸の機能を一体化させた「メーカーベンダー」のビジネスモデルに特色があります。物流センターを兼ねた9カ所の工場を抱え、国内全ての取引先へ「1日配送圏」を実現。工場は生産ラインをロボットで自動化し、無人の自動倉庫は国内最大級です(※3)。
家電事業を柱に、伸びしろのあるネット通販事業で成長を図ります。グループの2020年度の売り上げは6,900億円で、2022年度は1兆円規模を射程に入れます(※4)。
また、グループの東日本大震災復興支援事業として、「アイリスプロダクト」を2019年に設立。福島県南相馬市で、人工芝などの集合型工場を新設します(※5)。
(※1)参考:アイリスオーヤマ「アイリス物語」
(※2)参考:アイリスオーヤマ「新商品1,000点を生む月曜日」
(※3)参考:アイリスオーヤマ「地方も都市もすぐ届く、全国配送網」
(※4)参考:PR TIMES「アイリスグループ 2020年度決算速報」
(※5)参考:アイリスオーヤマ「株式会社アイリスプロダクト 福島県南相馬市と立地協定を締結」
日本住宅
概要
1984年創業、本社は岩手県盛岡市。賃貸住宅やアパート、中高層賃貸マンション、一般住宅の企画・立案・設計・施工、公共工事の施工などを手がけます。
事業・特色
日本住宅は「住」にまつわる6事業を展開しています(※6)。「経営を売る」と表現している「ビズハウジング」、「暮らしの経営」まで考える「コンパスホーム」などがあります。
「ビズハウジング」は、賃貸住宅ビジネスをオーナーに提案し、経営をサポートして自社で建設します。全国賃貸住宅新聞の年間ランキングでは、17年連続で東北・北海道エリアの完工数トップに輝いています(全国展開のハウスメーカーを除く)(※7)。
戸建ての「コンパスホーム」では、「いつもの家賃で、家が建つ」がキャッチフレーズ。無理な負担を感じず購入できるローコスト住宅を提供し、今後の成長が期待されています。
他に、都市型賃貸マンション事業、大型施設事業、災害公営住宅やインフラといった公共事業、賃貸管理事業の4事業があります。賃貸管理では約14,000戸を手がけ、入居率は98%(2021年7月末現在)を誇ります(※8)。
東日本大震災の復興関連では、岩手県大槌町の大規模災害公営住宅の整備に参画。震災の災害公営住宅施工は累計1,052世帯で、岩手県内では首位となっています(※9)。
東北を皮切りに、拠点を東日本全域に拡大。全国展開と「1兆円企業」を目指しています。
(※6)参考:日本住宅「社長メッセージ」
(※7)参考:日本住宅「北海道・東北エリアにて17年連続 完工戸数No.1を獲得しました」
(※8)参考:日本住宅「賃貸管理 不動産事業」
(※9)参考:日本住宅「東日本大震災 復興への取組みと貢献」
ヤマダホールディングス
概要
1983年設立。本社は群馬県前橋市。2020年に持株会社となり、「ヤマダ電機」から商号を変更しました。
事業・特色
現会長が前橋市で1973年に始めた8坪の「町の電気屋」が原点で、当時から経営理念に「創造と挑戦」を掲げ、業績を拡大させました。
1983年に「ヤマダ電機」が誕生し、フランチャイズチェーン展開や大型総合家電店舗「テックランド」開店、低価格路線で成長し、1997年度に売上高1,000億円に。2005年には国内家電量販店初のナショナルチェーン化を果たし、国内家電量販店として初の売上高1兆円を達成。 2010年度には2兆円となり、海外店舗の拡大を推進しました(※10)。
「第三の創業期」と位置づける2010年代前半からは、市場環境が大きく変化する中、「家電オンリー」からの脱却を図りました。住宅分野など新領域への挑戦を進めました。他社の子会社化や新会社設立をへて、2017年からは新業態の「家電住まいる館」を展開。暮らしをトータルで提案するビジネスモデルへ転換しています。
(※10)参考:ヤマダホールディングス「企業情報 あゆみ」
【番外編】アパレル業界に新風を起こした北関東の企業
ここでは、ランキング外ではあったものの、個性が光る企業を紹介します。
ワークマン
概要
1982年設立、本社は群馬県伊勢崎市に置きます。作業服やアウトドア・スポーツウエアなどの企画・開発や、フランチャイズ加盟店への経営指導を手がけます。
事業・特色
人口10万人に対して1店舗を出店するというスタイルで、全都道府県に、ユニクロを上回る計900店舗以上を展開しています(2021年3月末時点)(※11)。
チェーン全店の売上高は約1,467億円(2021年3月期)です。社員1人あたりの株式時価総額では、上場している小売業で1、2位を争う水準です。社員1人あたりの利益も小売業で首位といわれています(※12)。
1980年、「職人の店 ワークマン」として作業服・作業用品に特化した店舗をフランチャイズシステムでスタート。機能性と品質にこだわりながら、低価格な商品を販売。作業服・作業用品小売店舗ではトップシェアを誇ります。ミッションは「働く人たちに便利さを」(※13)。
またプロ向けのワーキングウエアだけでなく、カジュアルシーンにも使えるプライベートブランド商品が人気で、一般ユーザーが増えています。
2018年には「高機能かつ低価格」という強みを生かし、アウトドア、スポーツ、レインウエアの専門店として新業態「WORKMAN Plus+(ワークマンプラス)」を出店。一般ユーザーの人気に火が付き、企業イメージを一新。アパレル業界に大きなインパクトを与えました(※14)。
(※11)参考:ワークマン「出店データ」
(※12)参考:ワークマン「2021年3月期決算説明会資料 P.4」
(※13)参考:ワークマン「トップメッセージ」
(※14)参考:日経クロストレンド「アパレル界で旋風を起こすワークマンプラス 生みの親が語る岐路」
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【ライター:松本浩司】
(Illustration:matsukiyo8379/Shutterstock.com)