就活生の皆さんにとっても身近な存在であるコンビニエンスストア。何気なく利用していると分かりにくいかもしれませんが、消費者の変化に対応するため、さまざまなビジネスに挑戦しています。
2021年9月で創立40周年を迎えるファミリーマートも、私たちの生活様式が大きく変わったことで、変革のときを迎えています。人財育成戦略も変革のために重要な要素の1つで、ファミリーマート執行役員CAO(兼)管理本部長の垣見俊之さんは「多様性と専門性を重視した人財育成が、激動のニューノーマル時代を人々と歩むためのカギになる」と言います。
ファミリーマートは、人財育成戦略を起点に変革をどのように進めていくのでしょうか。新卒採用の最前線で活躍する2017年入社の金ボムンさんも招き、ファミリーマートが描くニューノーマル時代の人財育成戦略について語ってもらいました。
「近くて便利」から「目的買い」の時代へ
──新型コロナウイルスの感染拡大により、消費のあり方が変化しています。この変化を受けてファミリーマートを取り巻く環境はどのように変わりましたか。
垣見:私が伊藤忠商事からファミリーマートに出向して約2年が経ちますが、その間、生活者の意識や行動様式が大きく変わり、ファミリーマートを取り巻く環境も劇的に変化しました。
具体的には、これまでは人々がコンビニエンスストアに来店する理由は「近くにあるから」「便利だから」といったものが多かったですが、近年はコンビニエンスストアに行く際に明確な理由や目的があるようになっています。
私たちは、これを「目的買いへのシフト」と呼んでいて、新型コロナウイルスの影響により、その傾向がより鮮明になりました。従来型のコンビニエンスストアの店舗数は既に飽和状態にあるので、コンビニエンスストア業界全体として、これからは量から質の時代へ、そして新たな形態への変革期に移行したと強く感じています。
垣見 俊之(かきみ としゆき)
1990年慶應義塾大学経済学部卒業後、伊藤忠商事に入社。人事部にて、人事考査・労務問題・職務給制度導入・組合対応など人事制度全般を担当。2003年より4年間、ニューヨークに駐在し人事デューデリジェンスや北米地域の人事戦略全般を担当するとともに経営企画も兼任する。帰国後、企画統轄室長、人事・総務部長を務め、2019年にファミリーマートに出向。執行役員CAO(兼)管理本部長を務める。
──そのような環境の変化は、ファミリーマートの戦略にどのような影響を与えたのでしょうか。
垣見:消費者の来店理由が「目的買い」に移ったということは、「近くにあって便利」だけでは、お客さまを満足させられないということを意味します。
そのため、ファミリーマートは今まで以上に商品開発の質を向上させるとともに、お客さまに価値や新たなサービス・機能を届けるための戦略を、さまざまな角度から検討し、動いてきました。
ファミリーマートの主軸はコンビニビジネスですが、それを基盤としながらも、伊藤忠商事のネットワークを生かした広告ビジネスや、決済アプリ「ファミペイ」を利用した小口金融などの新規ビジネスを展開しています。
販売方法に関しても、従来の来店型小売に加えて、サブスクリプションモデルやECの領域も包括した販売方法の開拓を進めており、店舗とデジタルを組み合わせた施策にも力を入れています。
金:これまでは、人口の増加によるブランディングの強化を図るため、数の力による多店舗展開の出店戦略をとってきましたが、今は多様化する消費者のニーズに対応するため、量から質へ変わっている時期になりました。垣見が申し上げたとおり、コンビニエンスストアは「目的買い」の時代が到来していると考えております。
金 ボムン(きむ ぼむん)
2017年に新卒でファミリーマートに入社。1年間の店舗研修の後、マーケティング部門にてブランディングや市場調査に従事。現在は、管理本部 人財開発部 人財採用グループにて、2023年度卒の新卒採用チームのリーダーを務める。
バックグラウンドの違うメンバーが一丸となり事業を推進
──量から質への転換はコンビニ業界全体の課題にも感じます。その中でのファミリーマートならではの独自の強みは何だと思いますか。
垣見:私の場合、商社時代から社員のモチベーションを上げるための施策や人財育成に長年取り組んできました。常々思っているのは「あらゆる業界における競争優位の源泉は人財」だということ。そして、ファミリーマートにおける人財の多様性は競争優位につながると確信しているということです。
──具体的にどのような点に多様性を感じますか。
垣見:ファミリーマートは、am/pm、ココストア、サークルKサンクスをはじめ、合併と再編を幾度となく繰り返して成長してきました。そのため、中途入社者を含め、いろいろな出自の人が在籍しています。さまざまなバックグラウンドを持つ社員が一丸となり、「あなたと、コンビに」の下、私たちが大切にする3つのことを意識して事業を推進していく企業文化こそがファミリーマートのDNAともいえる多様性であり、他チェーンにはない独自の強みだと思っています。
特に近年は、社会の変化するスピードが特に速まっているので、私たちも素早く対応していかなければならないと危機感を持っています。そのためにも当社の強みを生かしながら、まずはやってみて、それが機能しなかったら変えていけばよいと考えています。
キャリアに王道はない。多様な分野で専門性の高い人財を
──ファミリーマートの組織・人財育成戦略についてもう少し詳しくお聞きできますか。
垣見:ファミリーマートは、人財戦略を成長の要と捉えており、各分野に高い専門性を持った人財を増やしていきたいと考えています。
これまで、入社後のキャリアパスには画一的な面もありましたが、この2年間で、より多様な分野で専門性の高い人財を育てる環境を整備することができました。
例えば、ファミリーマートでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)にも力を入れており、商品発注システムの精度を高めるためのAI(人工知能)の活用も進んでいます。店舗運営やサプライチェーンに関わる業務に限らず、先端技術領域も含めた幅広い分野のプロフェッショナルの育成に力を入れているのです。
──キャリアを実現するための制度はどのようなものがありますか。
金:ファミリーマートでは、「自己申告、キャリアポイント、公募」という制度があります。自己申告制度は年に一度、自分自身の中長期的なキャリアビジョンを会社に意思表示する制度です。上司と1対1で面談し、どのようなキャリアを描いていくべきかを考えられます。
キャリアポイント制度は、過去2年間で高い評価を得ており、一定以上のポイントを獲得している社員の異動希望を優先的にかなえていく制度です。異動を希望している部門の責任者に、自分の思いをアピールする場として面談が設けられます。異動希望が採用されると、人事異動が実現します。
公募制度は、必要に応じ、特定部署が全社に募集案内を周知します。条件を満たす社員は応募可能な制度です。
垣見から説明がありましたが、当社で描けるキャリアの幅は、学生の皆さんが想像するより広いです。1つの商品やサービスがお客さまへ届くまでには、企画・製造・物流・販売などさまざまな価値連鎖が発生しており、当社はその全てに社員が関わっています。
そのため、ファミリーマートでは、キャリアの王道といえるものはなく、社員一人ひとりが、自分ならではのキャリアを描くことができます。
1年目から経営を学べる「店舗研修」の価値
──さまざまな分野の中から専門性を選んで極められるチャンスがある、と。その他にもファミリーマートでキャリアを積む上での面白さを挙げるなら、何だと思いますか。
垣見:フランチャイズ加盟店の存在ですね。現在、全国にあるファミリーマートの約16,600店舗のうち、一部を除く大半の店舗はフランチャイズ加盟店により運営されています。世の中の変化に対応するには当社だけでは不可能で、加盟店の方々と一枚岩となって、ともに改革を進めていかなければなりません。非常に挑戦的なことですが、これもファミリーマートで働くうえでの醍醐味(だいごみ)だと思います。
──店舗経営についても理解を深める機会があるのですか。
垣見:原則として全社員が入社後、各専門分野へ進む前に店舗での研修を受けます。店舗研修と聞くと、アルバイトの延長のように思う方もいるかもしれませんが、入社後の店舗研修の意味は全く異なります。
配属店舗の売上・利益への貢献が期待されているわけですから、研修期間とはいえ社員に求められる期待貢献度は高く、高度な経営能力が必要です。そのため、研修を通して加盟店をサポートする経営コンサルタントとしてのスキルを身に付けなければなりません。
具体的には、店舗研修の期間では、BS(賃借対照表)、PL(損益計算書)といった財務諸表の分析や商圏分析、消費者行動の分析など、店舗運営に必要なオペレーションから計画策定までを網羅的に学びます。
金:店舗研修での経験は、将来どの専門分野に進むかに関わらず、役に立ちます。私も実際に経験して感じましたが、店舗経営の基礎が分からなければ、どんな業務でも進めることは難しいと分かると思います。
──具体的に、どんな場面でそう感じますか。
金:例えば、取引先の企業と商談の中でよく聞かれるのが「実際の現場(店舗)ではどうですか」という質問です。店舗の売り場にはさまざまな商品が置かれていますが、それには全て理由があり、それは基礎研修期間で勉強していきます。単にオペレーションや業務知識を身に付けるだけではなく、現場で多くのことを学べる期間なのです。
また、チームワークの大切さについても気付く時期でした。研修期間中は、同期や先輩、スタッフなど、さまざまな人を巻き込んで、課題を解決していかなければなりません。チーム一丸となって目標を達成したときのうれしさは、今でも忘れられないくらい大切な経験でした。
多様な業界と関わりながら、新しい価値を届けられるから面白い
──ファミリーマートは学生にとって身近な存在であるが故に「働く場」というより、「買い物に行く場」というイメージが強いと思います。そうした学生たちに、改めてファミリーマートで働く面白さを伝えるなら、何を話しますか。
垣見:ファミリーマートでのファーストキャリアに関しては、まだまだ就活生の皆さんに伝えきれていないところがあると感じています。しかし、ファミリーマートの事業はより多様になっており、働く社員も多様かつ専門的なキャリアを歩んでいます。
例えばファミリーマートは1店舗につき約3,000品目の商品を扱うため、社員が携わることができるビジネスの領域は非常に広範です。生鮮食品の商品を1つとっても、食材調達からサプライチェーンの管理まで、お客さまの手に届くまでには、さまざまな業界の人たちが関わっています。
また、先ほど話したように、店舗にある商品だけでなく、広告事業や小口金融など、新しい新規事業も数多く展開しているため、社員がチャレンジできる領域もますます広く深くなってきています。
先日も、とあるメーカーからDXの専門家を中途採用したところ、彼は「ここまで幅広い領域でDXに取り組んでいるとは知らなかった」と私たちが展開しているビジネス領域の幅広さに驚いていました。
このように、数多くの分野の人たちと関わりながら、新しい価値をつくる働き方ができる点がファミリーマートの魅力なのではないでしょうか。
金:私の場合、就職活動を始めた頃は、業界を絞らず複数の業界を見ていました。業界を分析していく中で、影響力の大きさや成長できる環境があることに魅力を感じ、最終的にファミリーマートを選びました。
バリューチェーンの仕組みを持っているからこそ、自分の仕事が社会や消費者などに対して与えられる影響が大きい会社です。働く目的は人それぞれだと思いますが、「誰かのためになっている」という意識を持って働ける人にとっては、やりがいを感じることができる会社だと思います。
──ありがとうございます。最後に、就活生にアドバイスをするとしたら、どのようなことを伝えますか。
垣見:私が学生の頃は、やりたいことを見つけるために、志望業界である総合商社に限らず、金融やメーカーなど、とにかくさまざまな業界の人たちの話を聞きました。
「やりたいこと」や「やるべきこと」は、簡単に見つかるものではありませんが、先輩たちの話を聞いていく中で、自分なりに整理できます。就職活動は自分の人生を見直す良い機会なので、悔いの残らない、有意義なものにしてもらいたいです。その中で、ファミリーマートが選択肢の1つに入ったら、うれしいですね。
金:私は就職活動のとき、たくさんの会社のエントリーシート(ES)を書きました。それこそ、1冊の本ができるくらい(笑)。ESを書くことを通じて自分について知ることができたと思います。
就職活動は、自分の人生を振り返り、自分と向き合うための貴重な時期です。「何のために働くのか」「何を成し遂げたいのか」といったことに対して向き合っていけば、就活の軸が見えてくるはずです。学生の皆さんには、とことん悩み抜いて就職活動の軸を見つけてもらいたいですね。
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【取材:飯倉光彦/撮影:百瀬浩三郎】