世界有数のコンサルティングファームである「マッキンゼー・アンド・カンパニー」。日本に支社を構えて約50年と長きにわたって活躍し続けていますが、若手社員の働き方やファーストキャリアとしてマッキンゼーを選んだ背景はなかなか表に出ることがないのが実情です。
今回はマッキンゼーで活躍する若手社員にお話を聞き、コンサルタントを目指した理由やキャリアに対する考え方に迫ります。学生時代は「やりたいこと」に悩んだという3人。彼らが語るマッキンゼーの姿はよく耳にするイメージとは、全く異なるものでした。
やりたいことに迷った私たちが、マッキンゼーを選ぶまで
──最近はワンキャリアの就職人気ランキングなどからも、コンサルタントを志望する学生が増えていることが伺えます。皆さんはなぜ戦略コンサルタント、そしてマッキンゼーを目指そうと思ったのでしょうか。
野本:正直にお話しすると、就活を始めた当初はあまりコンサル業界を見ていなかったんですよね。興味を持ったのは、マッキンゼーに出会ってからですし、そのマッキンゼーを受けたのも偶然でした。
──偶然なんですか?
野本:そうなんです。3年生の夏に志望企業のインターンに参加したのですが、社風がしっくりこなくて「ここで働きたい」と思えなくて。もう少し幅広く企業を見ようと思っていたら、友人が「明日マッキンゼーのエントリーシート(ES)が締め切りだから出してみたら?」と声をかけてくれたのがきっかけです。
当時はコンサル業界のことも知らず、選考を受けながら業界のことを調べ始めました。幅広いプロジェクトに携われることに魅力を感じて、どんどん興味を持つようになりましたね。
野本 有香 (のもと ゆか):エンゲージメントマネージャー
大阪大学 人間科学部教育学科卒、2016年入社。エンゲージメントマネージャーとしてチームマネージメントに従事。消費財やヘルスケア領域の戦略策定や組織課題の解決にあたっている。
土井:私は理系出身ですが、ほとんどの同級生が大学院に進学しようと考える中で「このままでいいんだろうか? これが本当にやりたいことなんだろうか?」と疑問に感じ、社会を知ってみようと思って3年生の夏に就活を始めました。明確な志望業界がなかったので、単純に時期を理由に外資系企業やメガベンチャーなど、夏にインターンシップや選考を受け付けている会社を探しました。
柿崎:私は法曹に進もうと思っていたのですが、大学3年生の終わりに「この先の人生で何を実現したいのか一度しっかり自分と向き合って考えたい」と思い就活を始めました。就活の時間軸では、特定の業界・業種まで興味を絞り込めなかったため、将来的にやりたいことを見つけたときのために、選択肢を広く持てるコンサル業界に興味を持つようになりました。
「やりたいことが決まってません」 素直にぶつけたら「向いている」と返された
──皆さん、自分の「やりたいこと」に悩んでいたのですね。そこから、なぜマッキンゼーを志望したのですか?
柿崎:目指したいキャリアが明確に決まっていない人にとって、それを見つけられる環境がマッキンゼーにあると感じたからです。採用面接で「やりたいことが決まっていない」と正直に打ち明けた際に、「そういう人も多いし、働きながら興味を探せる場だから向いている」と言ってもらえて、自分が思い描いていることを実現できそうな会社だと思いました。
柿崎 奏子 (かきざき かなこ):ビジネスアナリスト
慶應義塾大学 法学部法律学科卒、2018年入社。小売分野での新規ビジネス支援・オペレーション改革、政府系プロジェクトを中心に幅広いプロジェクトにチームメンバーとして参画している。
──面白いですね! 就活の面接だと「やりたいこと」を聞かれるのが一般的ですが、素直に「ない」と言い切ってしまうあたり、思い切りましたね。
野本:「自分が思ったことを素直にぶつけていい」というのは社風だと思います。フランクな方がとても多いですよね。
柿崎:分かります。選考インターンでも最終プレゼンの後にまでフィードバックをいただいたのは記憶に残っていますね。入社後も、自分のやりたいことを話すと周囲が全力でサポートしてくれる文化には非常に感謝しています。
野本:あと、皆が楽しそうに働いているというのも特徴ですね。私はそれが決め手になりました。当時、中年の社会人というと疲れた目をしているイメージがあったのですが(笑)、選考で出会ったマッキンゼーの社員たちは目をキラキラさせて自分の夢を語るような人たちでした。「ここでなら仕事を楽しめる!」と思えたんです。
プロジェクトとの出会い、志と人との出会いが生む「人生の羅針盤」
──皆さんはマッキンゼーに入社して、やりたいことは見つかったのでしょうか。
野本:そうですね。マッキンゼーでは組織としてのPurpose(=マッキンゼーが世界に存在する意義)を掲げていて、個々人でもPurpose(=その人がマッキンゼーで働く理由)を大事にしています。私も含め、プロジェクトを通じてやりたいこと、つまりPurposeを意識するようにしています。
──なるほど。実際、皆さんはどんなPurposeを持っているのでしょう。
野本:私のPurposeは「社会課題を本気で解決しようとしている企業が、夢を叶(かな)えるための手助けをすること」です。さまざまなクライアントさんと接する中で、自社の業績よりも社会課題の解決が重要だと考え、それに本気で取り組む企業や経営トップと出会えたことがきっかけですね。
──志の高い人々と出会えたことで、やりたいことが見えたということですね。
野本:本当にそう思います。もともと「社会を良くしたい」という漠然とした思いはありましたが、今はプロジェクトを通じて、健康やヘルスケアに関わる領域に関心が深まっています。
土井:私は「クライアント企業と人々の持てる最大限のポテンシャルを発揮する手助けをする」ことです。きっかけになったのは製造業のオペレーション改善のプロジェクトでした。現場の方々が工夫を凝らして頑張りつつも全体としては成果が上がっていない姿を目の当たりにして、会社がうまくいかない理由が、向かっていくべき方向性や仕組み、組織にあるのではないかと思うようになりました。
父がエンジニアということもあり、現場の前線で活躍されている方々が報われるような方向性決めや仕組みづくりをしたいと強く感じましたね。マッキンゼーでは中長期的な計画策定など、会社の方向性を決めるようなプロジェクトも多いです。現場の社員の頑張りが実を結ぶためには、正しい経営判断が必要だと思っています。
土井 崇和 (どい たかかず):アソシエイト
東京大学 理学部生物情報科学科卒、2017年入社。小売・消費財や先端産業のプロジェクトを中心に、プロジェクトに携わる。2019年8月から約1年間ロンドンオフィスへの移籍を経験した。
──柿崎さんはどうですか?
柿崎:「情熱を持つ人が、達成したい目標に最短距離で到達するための手助けをすること」です。業界や領域に関係なく、情熱を持った方とご一緒しているときにやりがいを感じます。
今まさに取り組んでいる政府系のプロジェクトでは、全国の社長の方とお話しする機会があるのですが、社会を良くするために日々奮闘される方々の情熱や目標に私も共感を覚え、夢が広がっていくように感じます。
Purposeとともに歩むキャリア。マッキンゼー「以外」の道もフラットに考える
──「どんな人を助けたいか」というイメージが明確になってくるということですか。やりたいことや目標が見つかることで、キャリア設計も明確になる印象があります。
野本:マッキンゼーには、一人ひとりのキャリアを支援する「Make your own McKinsey」という考え方が根付いています。皆おせっかいなほど(笑)、同僚のキャリアや成長をサポートしたいという気持ちであふれていると思います。1年目でも「キャリア全般に関して相談したい」と、初対面のパートナーに1対1の面談時間を取ってもらうようなことも日常茶飯事です。
そういう場では基本的に「あなたはどんなパッションを持っていて、これからどんなことをしたいの?」という話から始まります。興味のある領域で働く国内外の同僚やアルムナイ(卒業生)、関連プロジェクトや出向先を紹介してくれるなど、望むキャリアを実現する手助けをしてもらえた人も多いと聞いていますよ。
──Purposeとキャリアは表裏一体なんですね。
野本:そうですね。キャリアを作るという観点では、日々のプロジェクトも基本的に自分でやりたいものを選んでいます。もちろん、自分の希望だけでなく、プロジェクト側からのニーズや、その人の成長を考えた上でどのような経験を積むべきかという複数の人のアドバイスも考慮して最終的に決まるので、思いがけないPurposeとの出会いにつながることもあります。
研修でも自分のキャリアを徹底的に意識させられます。「将来は何をしたいのか」「自身のバリューは何か」を、専門のコーチや国内外の同僚と議論する機会があります。コーチからは「あなたはマッキンゼーにいるよりも、こういうところに行ったほうが幸せかもしれない」と率直に言われることもあるんです。それくらい、個人としてのキャリアを考える文化がありますね。
「お互いの働き方を尊重する」ということ。ワークライフバランスは働く上での「前提条件」
──社内研修も充実しているんですね。コンサルというと、研修というよりも激務のプロジェクトの中で成長していくイメージを持っていたので、意外な部分もありました。
野本:そうですね。あと実際に入ってみると分かりますが、激務ではないですよ。
──本当ですか? 最近はどの会社もそう言うので……。
野本:確かに私も就活生のころは、社員の「思ったほど激務じゃないよ」という言葉を「本当かなあ」と疑っていたので、気持ちはよく分かります(笑)。もちろん、忙しいタイミングもあるものの、それ以上に、個人のライフスタイルを尊重する文化が強いです。いい意味で激務のイメージを裏切られました。
土井:確かにそうですね。私のチームには2歳のお子さんを育てるパパがいます。育児でメールを返せない時間帯があることはチーム全員が知っているので、当たり前のこととしてカバーしています。お互いのライフスタイルが「働く上での前提条件」になっていますね。
柿崎:マッキンゼーには「チームラーニング」という文化があり、プロジェクトを通じて達成したいことやライフスタイルについてプロジェクトの冒頭に共有する機会が必ずあります。1年目から「夜型か/朝型か」「ジムに行きたい日」などを主張できることに衝撃を受けました。お互いの働き方を最大限尊重しながら、チームの効率を維持できるよう、時間をかけて話し合っています。
野本:私はマネージャーとして新卒のメンバーが発言しやすいよう促す立場なので、日々の晩御飯はチーム皆で食べたいか、一人・家族で食べたいか、など細かいことまで積極的に聞くようにしています。私自身も毎日自炊をしたいので、「料理中はメールの返事はしません」と宣言しています。同じプロジェクト内ではシニアパートナーも全員ライフスタイルを理解してくれているので、ごはん時にメールを返していると「野本さん、料理はいいの?」と気遣ってくれることもあります。
──なるほど。マッキンゼーでは、年次や男女を問わず、お互いのライフスタイルを尊重するのが当たり前なのですね。
野本:育児や趣味のためにパートタイム稼働をする人も珍しくありません。チームラーニングではライフスタイルの話だけでなく、自分の性格や強み、伸ばしたい能力などもオープンに話すのが当たり前になっているので、プロジェクトごとに働く人が変わるマッキンゼーにおいて、お互いが働きやすい環境を作る上では欠かせない仕組みですね。
また、休暇という観点で就活生から「土日も休みが取れないのでは」と聞かれることもあるのですが、土日に稼働しないといけないことはまずないです。ただ「金曜夕方にもう疲れてしまったから、続きは明日朝にやったほうが生産性が高い」と判断して土日にやる分には構わないと思います。各自が自分の生産性を最大化させるよう、休みたいときに休めばいいのではないでしょうか。私個人としては、休日はリフレッシュに専念したいので、入社以来、土日に働いたことはありませんし、長期休暇もよく取っています。
「長時間労働で成長」は昔の話。楽しんで働き、休むのがマッキンゼー流
──とはいえ「成長したい」とコンサルティングファームを志す学生は少なくありません。就活生の中には「ホワイトな働き方をしても、若手のうちに成長できるのか?」と不安に思う方もいるようです。
柿崎:「長時間働いたら成長できる」という考え方に囚われていることには疑問を感じます。同じことを学ぶにしても、一人で時間をかけて試行錯誤するだけがやり方ではないと思います。正しくコーチングを受けたり、研修を活用したりすれば、同じゴールにより早くたどり着けますよね。
野本:仕事に追われてしまうと、学ぶよりも「目の前のことをこなすモード」に陥り、視野が狭くなってしまいがちです。むしろ、変な焦りがない状態で仕事を楽しみ、先輩からもらったフィードバックをしっかり振り返る時間を取ることで、成長スピードが速くなると思います。
「楽しさが根底にあるのが一番」という考え方は、私が初めてお世話になったマネージャーから言われたことでもありますし、自分がチームメンバーと接する上でも心がけています。
土井:量をこなしたい時期もあると思いますが、やりたければ各自で取り組む、という形でいいのではないでしょうか。マッキンゼーには、アサインされるプロジェクトのほかに、興味のあるサイドプロジェクトに手を挙げることもできますし、仕事を離れて自分の好きなことに取り組む「テイクタイム制度」もあります。実際、休暇を利用してNPOやNGOのサポートをしている方もいますよ。
野本:私はテイクタイム制度を活用してプロジェクトの合間に2カ月間、世界中を旅行してきました。土井さんも去年2カ月くらいアフリカを旅行していましたよね。メリハリをつけることは、それぞれが仕事で持続的にインパクトを出し続けるために必要なことだと思っています。
多様なバックグラウンドやスキルを持った専門家が集うマッキンゼー。チームで価値を最大化できるかがカギ
──お話を聞く限り、皆さんのびのびと働かれている印象です。皆さんから見て仕事を楽しみ、若いうちからマッキンゼーで活躍する人はどういった人だと思いますか?
野本:まずは成長意欲が高いことでしょうか。新しいことを学んでフィードバックを受け入れる姿勢や、好奇心を持って新しいトピックにポジティブに取り組めることが大切だと思います。
土井:ありきたりかもしれませんが、議論を楽しめる人だと思います。日々の仕事がそれなので。自分が受けた選考を振り返っても、いわゆる「知的好奇心」や「知的体力」が見られていたのかもしれないなと、今になって思いますね。
柿崎:素直さと、人が好きかどうかだと思います。周囲からのフィードバックに素直に向き合い、改善につなげられるかは、成長速度のカギですし、数カ月ごとに新しいことを経験する環境では、素直に人の意見を聞き、好奇心を持って取り組んでいくことは絶対に必要な能力だと思います。クライアントもチームメンバーも結局は人間なので、一緒に働きたいと思ってもらえるかは大切ですね。
野本:コンサルタントは社内外のスペシャリストとのコラボレーションが求められる仕事です。自分だけが「尖(とが)ろう」とするマインドでは、かえって仕事が進めにくいのではないかと思ってしまいますね。マッキンゼーで活躍できる人は「自分の功績を認められたい、評価されたい」という人よりも、クライアントに対する価値をチームとしていかに最大化できるかを考えられる人だと思うんです。
今のマッキンゼーには多様なバックグラウンドやスキルを持った専門家が集まっています。例えば、データサイエンティストやデザイナー、各種業界の専門家など、さまざまな人がお互いを生かし、尊重しながらチーム全体で何かを達成するイメージですね。結果として健康的で効率的な働き方ができるようになったし、クライアントにお届けできるバリューも大きくなったと思います。
「自分に合いそう」「楽しそう」の直感を大切に。ぜひ会いに来てください
──皆さんが今後目指したいキャリアについてお聞かせください。
野本:事業会社で働く道や起業する選択肢もありますが、今の時点ではマッキンゼーのコンサルタントという立場で社会課題に関わることが、最も社会へインパクトを与えられると思っています。経験を重ねながら、その時々で柔軟にキャリアを選びたいですね。
土井:ロンドンオフィスでの勤務経験も生かして、世界中のメンバーと協働を続けていきたいです。これまでジェネラリストとして幅広い業界に携わりましたが、私はそろそろ専門を決める年次になりつつあります。専門性を高めるために事業会社に出向するなど、マッキンゼーの外で学ぶことも考えていますよ。
柿崎:私はやりたいことを見つけるためにマッキンゼーに入社したので、そのうち「ここに転職したい!」と思える企業に出会えると勝手に想像していたのですが(笑)、今の仕事が日々楽しいので、このままマッキンゼーのコンサルタントとして働き続けたいと思っています。私をコーチングしてくれた上司や先輩方のような存在になりたいですね。
──ありがとうございます。皆さん、マッキンゼーの外で働く可能性を自然と口にしているのが印象的でした。最後に、この記事を読んだ就活生に向けてメッセージをお願いします。
野本:私は一緒に働く人で会社を選びましたが、働いていてもその大切さを実感します。真面目に業界研究をするのも学びになりますが、直感的に「自分に合いそう」「楽しそう」だと思える感覚も大事にしてほしいですね。就活で人生がすべて決まるわけではないので、思い詰め過ぎずに楽しく頑張ってください。
土井:私たちコンサルタントの仕事って、何をやっているかよく分からないと思うんです。まずは社員と会ってみて、人となりや仕事を知ってほしいです。その上で、直感で判断するのが一番の決め手になると思います……コンサルタントなのにロジカルじゃなくて申し訳ないのですが(笑)。少しでも気になったら、ぜひ選考を受けてみていただきたいです。お待ちしています。
柿崎:就活では「友達が人気の会社を受けているから、自分も受けないと」という気持ちになりがちだと思いますが、まずはファーストキャリアに何を求めるのかを突き詰めてみてほしいです。自分でしっかり考えてから動けば、心が揺さぶられることなく就活ができるのではないかと思います。この記事でマッキンゼーに興味を持っていただけたら、説明会やインターンにぜひいらしてくださいね。
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