今、就活生のデベロッパー人気が大きく上がっているのをご存じですか?
2021年の3月にワンキャリアが公開した「東大・京大22卒就活人気ランキング」では、各社が順位を大きく上げています。最近は、東京を中心に再開発が進み、デベロッパーの仕事が見えやすくなっているのも、人気の一因でしょう。
今回インタビューしたのは三井不動産です。2020年7月に開業した渋谷の商業施設「MIYASHITA PARK(ミヤシタパーク)」や最大1兆円をかけて開発すると発表した「日本橋再生計画」に加え、ライフサイエンス事業、MaaS(※1)や宇宙事業など、ビジネスの領域を広げ続ける同社。
「不動産×◯◯の可能性は無限大」──そう語るのは、新卒採用を担当する成相さんと坪浦さん。コロナ禍を経て変わっていくまちづくりの姿、そして、変化を続ける三井不動産の最前線に迫ります。
(※1)……Mobility as a Serviceの頭文字を取ったもの
渋谷には憩いの場がなかった? 公園一体型の商業施設「MIYASHITA PARK」が生まれた理由とは
──お二人の現在のお仕事とこれまでのキャリアについて教えてください。
成相:2013年に新卒入社し、今年9年目です。最初の4年半はオフィスリーシング(移転営業)をしていました。その後、三菱地所と共同開発で行われたJR田町駅東口エリアの複合施設「msb Tamachi(ムスブ田町)」など2棟の大規模開発に3年間携わり、人事の新卒採用担当となりました。
坪浦:私は今年で新卒4年目です。初期配属から丸3年、人事に携わっています。大学時代は生命化学を専攻していましたが、就活をきっかけに人と人との思いをつなげられる仕事に就きたいと思い、三井不動産を選びました。入社してみると、建築系だけでなく化学や物理学などを専攻していた理系出身者も多かったことには驚きましたね。
──三井不動産というと「日本橋」のイメージが強いですが、今回はそれ以外の場所についても教えてください。まずは2020年に誕生したばかりの「MIYASHITA PARK」。コロナ禍ではありましたが、完成した際はメディアも含めて大きな話題となりました。
成相:日本橋で得られた経験だけにとらわれず、地域の特性を生かした開発ができた事例ですね。三井不動産は日本橋のイメージが強いですが、私が田町(港区)の案件を担当しているときに、横のチームは大手町(千代田区)、春日(文京区)、豊洲(江東区)などのエリアで大規模開発案件を進めていました。日本橋以外の都心エリアでも、各地域の特性を生かした開発を行うのが三井不動産の強みであり、MIYASHITA PARK(渋谷区)もその一つです。
2020年7月に開業した「MIYASHITA PARK」
成相:msb Tamachiのときも思いましたが、まちづくりでは答えのない開発をしなくてはなりません。例えば日本橋の場合、「百尺ライン(※2)」に代表されるように、日本橋ならではの街の歴史を「残しながら、蘇らせながら、創っていく」というコンセプトのもと、まちづくりをしています。
しかし、その考え方がどこのエリアでも通用するわけではありません。エリアが変われば、担当者はその街へ足しげく通い、街の歴史・資源・集う人々を知り、どういうコンセプトで何を作るかをゼロから考えます。それが三井不動産のまちづくりであり、担当者の腕の見せどころです。設計士やデザイナー、ゼネコンの皆さんと一緒に時間や労力をかけながら、コンセプトが形(建物)になり、そこに訪れた人の笑顔を見られるということが、この仕事の醍醐味(だいごみ)ですね。
(※2)……日本橋の街の特徴の一つ。百尺(約31m)というのは、建築基準法の前身である市街地建築物法において「建築物の高さは百尺(約31m)」以内に収めなければいけないという制限に基づく。現在は法律が変わっているが、地域の景観を維持する意味合いで、新しい建物を建築する際は基壇部(低層部)の高さが百尺に統一されている。
──現場を知るために、その街に住む人もいるとお聞きしましたが?
成相:若い担当者で開発を担当するエリアに住んだ人がいた、というのは聞いたことがありますね。もちろん、仕事で強制的にといったことは全くないのでご安心ください。MIYASHITA PARKの担当者も曜日や時間帯を変えて幾度となく渋谷を訪れ、人々が行き来する流れやどんな人がいるかを見ていたそうです。その結果、渋谷駅周辺には「気軽に一息つく憩いの場がない」ことに気付き、「公園」という場所が渋谷にもたらせる価値が大きいと確信し、「刺激と快適が交わる4階建ての公園」というコンセプトにたどり着きました。
ただ、三井不動産は都心にオープンエアー(※3)施設を作ったことがなかったため、最初は社内から反対する声もあったとか。案件を担当した若手社員は「渋谷にはこの施設が必要」という思いを、自分の足で稼いで作った資料を並べ、説得して回ったと聞きました。若い人のフレッシュな目線で、かつ周囲をガンガン巻き込みながら進めたからこそ、MIYASHITA PARKが完成したのだと思います。
──施設の屋上が公園、という作りが面白いなと思っていましたが、そういう狙いがあったんですね。担当者の強い思いが伝わってきました。他にも、施設を訪れる学生にぜひ見てほしいこだわりポイントがあれば教えてください。
坪浦:MIYASHITA PARKにはフードコートをはじめ、さまざまな飲食店があります。テイクアウトした料理を屋上でくつろぎながら食べられるのは、公園型の商業施設ならではですね。
実はここにも担当者のこだわりがあり、「公園と連続性を感じられる場にしたい」という思いから、飲食テナントにテイクアウト業態の導入を提案したそうです。「建物のしつらえ(ハード)のみではなく、過ごし方(ソフト)まで提案して初めて、『公園との一体型』を実現できる」と担当者は言っていました。
成相:ららぽーとなどのエンクローズドモールは、室内と外が明確に分かれているのに対し、オープンエアーのMIYASHITA PARKは店舗と通路が外気と接しています。そのため、休憩用の椅子も通路に設けているのですが、その椅子を、雨天時に使用しても利用者が濡(ぬ)れない絶妙な位置に配置したのが、隠れたこだわりです。
──それは面白い! 本当に細かい点まで考えて作られているんですね。
(※3)……店舗と通路が外気と接している施設のこと。郊外や海外に多い。
成相 海太(なりあい かいた):三井不動産株式会社 人事部 人材開発グループ 主事
2013年新卒入社し、ビル本部にて、営業・開発を7年経験。msb Tamachi(ムスブ田町)などの大型複合開発に携わる。その後人事に着任し、現職に至る。
人の暮らし、その全てがビジネスにつながる──「不動産×◯◯」は無限の可能性
──「本丸」である日本橋についても教えてください。先日、2040年に向け、日本橋を最大1兆円かけて再開発するという報道を拝見しました。これだけ開発をしていても、まだやることがそんなにあるのかと……。
坪浦:日本橋は開発し終えたと思う学生さんも多いとは思いますが、まだまだそんなことはありません。川沿いや日本橋の東側エリア「日本橋EASTエリア」を含め、ハード面もソフト面も、大小さまざまな開発プロジェクトが今後控えています。現在計画段階のプロジェクト、既に実行されて推進中のプロジェクト、両者ともに多数あります。
実際に、私が就活をしていた4年前と比べても、日本橋はよりにぎわいのある街になったと実感しています。今後の開発は2040年を一つのターゲットに進めているので、さらなる街の未来を作っていけることに私自身ワクワクしていますし、学生の皆さんにも期待してほしいです。
坪浦 諒子(つぼうら りょうこ):三井不動産株式会社 人事部 人材開発グループ
2018年に新卒入社し、初期配属にて人事を務める。
成相:日本橋プロジェクトのポイントは、高速道路の地下化です。川沿いエリアの開発と合わせて実現すると、川幅を含めて幅約100m、長さ約1,200mに及ぶ親水空間が誕生します。日本橋川沿い周辺では今後、5つの大規模開発が控えています。水上交通の発展も絡めて、2040年には水都・日本橋がどんな街になっているか、私自身も楽しみです。
また、日本橋ではライフサイエンス、宇宙など領域ごとに企業が集まりやすい環境を作っています。最近は、大規模開発を行ってきたコレドなどが集まる場所から少し離れた「日本橋EASTエリア」に小中規模の物件を購入・リニューアルし、「startup workspace THE E.A.S.T」など「大人起業家」というキーワードで新たなイノベーションの集積地を生み出そうとしています。
「日本橋×◯◯(ライフサイエンス、宇宙など)」という掛け算を複数用意して、多様な人々が街に集まり、その人々が出会い「新たな価値が生まれる場所」になることを期待しています。
※上記の絵は将来イメージで、実際の開発計画等とは異なります(2019年8月時点)
──最近は新型コロナウイルスの影響もあり、オフィスに対する考え方、街へ求める価値が変わってきているように思います。東京五輪後やコロナ後を見据え、「まちづくり」はどのように変化していくのでしょうか。
坪浦:新型コロナをきっかけに、「リアルに勝るデジタルはない」ということを多くの人が再認識したと思います。テレワークが導入された結果、一方通行のコミュニケーションや作業はテレワークでも十分行えると多くの人が理解したと思います。一方、双方向のディスカッションや、雑談を通して偶然生じる新しい発想・仕事のモチベーションアップなどは、リアルな場だからこそ生じるものであり、デジタルでは代替ができないということも明らかになりました。
いわゆる「三密対策」が新たなオフィスづくりのニューノーマルとも言われますが、それは一時的なものに過ぎません。リアルな場がもたらす価値とは何なのかとことん考え、人の気持ち、多様な価値観に寄り添ったまちづくりを行うのがこれからの使命です。
成相:新しい働き方や遊び方などの不動産サービスを生み出せるのは、この記事を読んでいる若い感性を持った皆さんだと思います。これまでの生活スタイルが大きく変わる転換期にあり、どのような新しいライフスタイル(働く場所・住む場所・遊ぶ場所)が求められるのか、皆さんのフレッシュな目線が今後のまちづくりに貢献すると考えています。
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・前例踏襲では評価されない。人材の多様化が進む三井不動産で「個性あるキャリア」を作るには
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【三井不動産】Summer College ~デベロッパービジネスの進化~
申込締め切り:7月27日(火)まで
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【説明会動画】100社以上が見放題!企業研究から選考対策まで役立つ『ワンキャリアライブ』過去配信動画
(Photo:Svjatoslav Andreichyn/Shutterstock.com)