「同業の他社さんじゃなくて、なんでうちなの?」
毎年多くの就活生が、問いかけられ、頭を悩ませている質問です。
この問いに直面するのは面接のときだけではありません。同一業界から複数社内定が出て、1社を決めるとき。「何を決め手にして、どこへ入社するか」。自分の中で最も腑(ふ)に落ちる答えを出す必要があります。
今回お話を聞いた総合コンサルティングファーム「BIG4(※1)」の内定者のみなさんもまた、この問いについて考え抜いた4名。
「ぶっちゃけ、業務内容で見たらBIG4各社の差異なんてないと思います」内定者の1人はこう語ります。
同業界かつ企業規模や業務内容も近しい。そんな差異が分かりにくい企業間での比較検討、そして決定を下すにあたり、彼らはどのように自身の答えを出したのでしょうか。
その答えの中に、4名それぞれの価値観が垣間見えました。
(※1)……世界4大監査法人である、デロイト トウシュ トーマツ 、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)、KPMG、アーンスト・アンド・ヤング(EY)の総称。コンサル業界においても各法人のグループファームである、デロイト トーマツ コンサルティング、PwCコンサルティング・PwCアドバイザリー、KPMGコンサルティング、EYストラテジー・アンド・コンサルティングの4社を総称し「BIG4」と呼ばれている。
※仮名が社名を想起させるものとなっておりますが、内定先企業による公式見解ではありません。ですが、座談会中の発言はすべて、各内定者が就活や選考を通じて感じた本音です。
戦略コンサルや投資銀行ではなく、総合コンサルを選んだ理由は「プロジェクト完遂可能性の高さ」を感じたから
──本日はよろしくお願いします。まずは総合コンサルに入社を決めたみなさんの就活の軸、併願していた業界についてお聞かせください。
デロ彦:就活当初の軸は「社会に大きな影響を与えられる」「前代未聞に挑戦できる」でした。金融、総合商社、デベロッパー、メーカー、コンサルと幅広く選考を受けていましたね。
KPMG郎:私は「幅広い業界に携われる」「幅広い職能に触れられる」「専門性が身につく」の3軸で就活をしていました。コンサル以外で見ていた業界はメガベンチャーです。
EY夫:自分の軸は「短期間で濃い経験ができる」「アドバイザリー業務ができる」「実力主義」ですね。コンサルが第一志望でしたが、最初から絞りすぎるのはリスクが高いと思ったので、デベロッパーや投資銀行も見ていました。
PwC介:私は「多様な業界に関われる」「汎用性があるスキルを、高い次元で習得できる」「他業界の情報を得られやすい」の3つの条件がそろった環境であることを就活の軸にしていました。他に検討していたのは戦略コンサルですね。
──みなさんがその中で総合コンサルに絞った決め手はどんなところにあったのでしょうか?
デロ彦:軸とのマッチ度と、自身の「相手に踏み込んでサポートをしたい」性格を考えたときにコンサルがベストだと思いました。例えば、友人から相談を受けたとき、絶対に解決につながるアドバイスがしたくてしょうがないんです(笑)。
総合コンサルの業務は顧客の課題解決なので、自分にぴったりじゃん! と思いコンサルを第一志望にしました。
EY夫:まず「業務スパン」と「プロジェクトの完遂可能性」の観点で投資銀行とコンサルに絞りました。デベロッパーってまちづくりなどをしますけど、それこそ一つのプロジェクトに10年、20年かかるじゃないですか。しかもプロジェクトメンバーはバトンリレーのような形で入れ替わります。始まりは関わったけど、終わりは知らない。その逆もありえますよね。
その後の二者択一の決め手はジョブに参加したうえでの感覚です。投資銀行の社員さんからのフィードバックはロジックの細かい穴を突いてくる印象が強かった。一方でコンサルは、筋が良い論点や仮説を深掘りしながら、筋の良いロジックを基に組み立てられているかをチェックするスタイルでした。
両者のスタイルの違いを感じたときに、自分に合っているのはコンサルだなと判断しました。
PwC介:決め手は戦略コンサルと総合コンサル、両者の選考を受けたときの「社風の差異」ですね。顕著に出たのがケース面接のシーンです。戦略コンサルは面接中に5秒返答までに間が空いてしまうと「もういいよ、じゃあ次ね」といった感じで見放される感じでした(笑)。対して総合コンサルは「こんな視点もあると思うけどどう思う?」と伴走してくれるスタイルだったんです。自分には総合コンサルの雰囲気が合うと感じましたね。
KPMG郎:私はメガベンチャーとコンサルで最後まで悩んだのですが、決め手になったのは「社内異動制度があまり機能していない」とメガベンチャーの社員から聞いたことですね。さまざまな業界や職種を経験したかったので、事業やサービスがたくさんあり、社内異動制度があるメガベンチャーを並行検討していました。しかしOB・OG訪問をしていた際に、社内異動制度を活用している社員は少ないと複数人から聞いたんです。一方で、コンサルは最初のプール期間(※2)でさまざまなプロジェクトを経験でき、その後自分の専門を決められます。自分の軸と照らし合わせたときにコンサルのほうが合っていると感じたのでコンサルを選びました。
(※2)……専門性を特定していない若手が、プロジェクトベースで幅広く経験を積みながら、コンサルタントとしての基本スキル・経営感覚を身につけるための期間
──総合コンサルに絞った理由は4者4様ですね。では、そこから現在の内定先を決めた理由を教えてください。
ぶっちゃけ、BIG4の差異はほとんどない。決め手になったのは「同年代でトップを狙える若手層の薄さ」と「優秀な上長の割合」
PwC介:先程の話とつながるのですが、選考中に関わったすべての社員の方が温かくて魅力的だったことに強く引かれました。PwCの社員は毎回選考前に待合室でフランクにお話ししてくれたんです。入社後も和やかな雰囲気の中で働けそうで、自分と合っていそうだなと感じて入社を決めました。
デロ彦:私も社員の雰囲気ですね。インターン参加時に「この会社の人たち、私と似てる! こんな社会人になりたい!」と思いました。発言や提案を一切否定することなく、より良い提案にするためにはどうすべきか、一緒に考えてくれました。スタンスも相手のために自分は何ができるかを突き詰めて考えている、尊敬できる人がたくさんいたのでDTCを選びましたね。
EY夫:私はスタッフ層を見て決めました。
個人的にですが、ぶっちゃけ「EYならではの特徴」なんてほとんどないと思っています。コンサルBIG4に関しては業務内容も大差ないと思いますし。
ただ、EYはコンサルとして整い始めてからまだ歴史が浅い。パートナーレベルはヘッドハンティングで優秀な方を揃(そろ)えていますけど、他社と比較して若手社員を外から引き抜いている様子は現段階では感じませんでした。ここにチャンスがあるなと。
──社員のレベルの高さを決め手にする就活生の話はよく聞きますが、その逆はあまり聞いたことがないですね。詳しくお聞かせください。
EY夫:若手のヘッドハンティングが少ないということは、新卒をきちんと育てる必要があるじゃないですか。加えて、他社よりは優秀な若手層が薄いともとれますよね。こう仮定すると、実力次第で、ファーム内で同年代のトップを目指しやすい環境だと考えました。コンサルは縦割り組織なので、同世代はあまり関係ないと思います。それよりも上長に優秀な方がそろっているほうが大事だと考えていました。
──これは面白い視点ですね。勝機がたくさんあって、成長できる環境を選んだと。KPMG入社の決め手もお聞かせください。
KPMG郎:業界を絞った理由と重複しますが「幅広い業界に携われる制度があり、ちゃんと機能している」点ですね。
KPMGでは1年のプール期間を経て専門性が決まるのですが、このプール期間に3回は異なるプロジェクトに携わらなければならない制度があります。
他社コンサルでも大体1年ほどのプール期間は存在しますが、「教育した若手を離したくない」と考えるマネジャーが多いと聞きました。結局同じプロジェクトに継続して残ることも少なくないようなので。もちろん自分の努力次第では変えられるかもしれませんけどね。
またKPMGは、採用人数が他社と比べ圧倒的に少ないため、希望するプロジェクトにも行きやすいと聞いています。
さまざまなプロジェクトに関わりたい自分にとっては、プール期間が機能していることが一番魅力的でした。
内定者が選考を通して感じた各社の社風「グローバル」「挑戦的」「芯が強い」「誠実」
──みなさんコンサルを志望されていたとのことなので、他の「BIG4」も入社先として検討したと思います。「BIG4」の他社と比較したときに、みなさんの内定先にはどんな特徴があると感じましたか?
KPMG郎:EYは「グローバル色が強い」印象がありますね。
EY夫:たしかにそうかもしれませんね。最終面接も英語面接が必ずありますし。ただ、グローバル案件に強い印象は私自身あまりないです。それよりかは日本オフィスに外国人が多いことがそのイメージにつながっている気がします。また、海外オフィス所属の外国人の社員と協業する機会が多い印象もありますね。
KPMG郎:KPMGのならではの特徴としては、「新しいことに挑戦することが好きな人が多い」イメージはあります。
個人的にですが、設立年数が浅いのでBIG4の中だと存在感がやや薄い気がしていて(笑)。だからこそ、マーケットの中でのプレゼンスを高めるために、どんどん挑戦することを求められる。そんな感覚はありますね。
デロ彦:DTCは選考を通して「芯の強さ」を見られている気がしました。本気でコンサルタントになる覚悟があるのか、しっかり見られている感じですね。
一つ一つのエピソードや意見を深く、鋭く、詰めていくようなスタイルの面接でした。
総合コンサル志望でDTCを受けた人と話す際に「最終面接は若干圧迫っぽい雰囲気だったよね……」と話題になることはあります(笑)。
一同:(笑)。
デロ彦:でもこれってDTCが個性を大事にしながら、本気で後輩の成長にコミットする人が多い社風からきている面接スタイルだと個人的には思っていて。
ファーストキャリアがコンサルで、この人は本当に幸せなキャリアを歩めるのか。そして、DTCのコンサルタントの基準まで成長を求められる過程で、ときに厳しいフィードバックを受けても「なにくそ」と踏ん張って頑張れる人なのか。
この2点を見るために、最終面接では忖度(そんたく)なしでハッキリとものを言われたと私は解釈しています。
ただ、この面接スタイルを圧迫と捉えてしまう方の気持ちも、分からなくはないです……(笑)。
PwC介:やっぱりファームによって雰囲気全然違いますよね。PwCは選考を通して、人当たりがマイルドで親しみやすい人が多い印象を受けました。
PwCの最終面接はパートナー面接なのですが、最終面接の内容も日常会話の延長線で一切詰められることなく和やかに終わりました。
また、内定承諾後に社員と話すときも「プロジェクトによって忙しさは変わるからね」「マネジャーと性格が合わない可能性もあるから頭に入れておいたほうが良いよ」と、期待値調整を誠実にしてくれたのが印象的でしたね。
──ありがとうございます。ここまで「BIG4」の差異についてお話を聞かせていただきました。ここからは少し趣旨を変えて、みなさんの選考対策についてお話を聞かせてください。(後半に続く)
▼後編はこちら
・【コンサルBIG4内定者座談会】ケース対策はやりすぎ注意って本当?コンサル志望者が「やるべきこと」「やめるべきこと」
▼Big4各社のリアルな内情を知りたいあなたへ
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▼参考
・ONE CAREER PLUS『デロイトトーマツコンサルティング/転職体験談』(別サイトに遷移します)
・ONE CAREER PLUS『デロイトトーマツコンサルティング/クチコミ』(別サイトに遷移します)
・ONE CAREER PLUS『PwCコンサルティング・PwCアドバイザリー/転職体験談』(別サイトに遷移します)
・ONE CAREER PLUS『PwCコンサルティング・PwCアドバイザリー/クチコミ』(別サイトに遷移します)
▼企業ページはこちら
デロイト トーマツ コンサルティング
PwCコンサルティング合同会社
KPMGコンサルティング
EYストラテジー・アンド・コンサルティング
(Photo:A__N , melazerg , GaudiLab/Shutterstock.com)
※こちらは2021年6月に公開された記事の再掲です。