ワンキャリアでは2020年1月から特集「転職時代に、なぜ商社」をお届けしています。
特集の前提にあるのは、「転職が当たり前」というキャリア観です。1つの会社に定年まで勤める「就社」ではなく、やりたい仕事や職種を実現する「就職」を目指す就活は、今後ますます主流となるでしょう。
そして、変化の波は採用の現場にも来ています。丸紅は2021年卒採用から、入社後の部署や業務を明示して募集する「Career Vision採用」を始めると発表しました。新卒で配属される部門によりキャリアパスが左右される「配属リスク」が不安だった学生には、朗報でしょう。
しかし、やりたい仕事は、そんなに簡単に見つかるのでしょうか?
誰もが学生時代にやりたい仕事を見つけられるわけではありません。見つかっていない中、商社が持つスケール感に魅力を覚える学生も多いでしょう。
転職時代に「やりたいことはまだ見つかっていないけど、商社で働きたい」という就社的な志望動機は、どこまで受け入れられるのか──。丸紅の採用・人材開発課の松尾さんに疑問をぶつけてみました。
「就社か、就職か」の二元論が見落としがちな盲点
──転職が当たり前の時代になり、「就社より就職」という考えが広がりつつあります。松尾さんは「就社か、就職か」という視点を、どう見ていらっしゃいますか。
松尾:入り口を気にするか、しないのかの違いだと思います。「入社したら、これがしたい」という確固たる思いがなくても、商社というフィールドで活躍したいという人は一定数いると思います。
松尾 麻記子(まつお まきこ):丸紅株式会社 人事部 採用・人材開発課 課長。1998年入社、10年で電子機器部、航空機・防衛システム部、投資金融部と3つの部署を経験する。その後、PEファンドへ出向し、2009年には専門分野研修生(MBA)に。2011年に人事部キャリア開発課に配属され、育児休職を取得後、同課に復職。2017年より現職。
──確かに、入社してからやりたいことが明確になる人も多いですよね。
松尾:やりたいことがあって入社した人でも、途中でそれが変わる場合もあります。また、「就職」の意識で入った人でも、会社に所属する以上は「就社」の意識を併せ持つ部分はあるでしょう。必ずどちらかが良いというわけではないですし、「丸紅パーソンとして活躍していけるか」という観点では大きな違いはないように感じます。
──「就社か、就職か」の二元論はあまり本質的ではない、と。一方で、丸紅が2021年卒採用から始める「Career Vision採用」は、職種別採用に近いですよね。やりたいことが明確な学生を求めているようにも思うのですが、やりたいことがない商社志望者は自分をどうアピールすればいいでしょうか。
やりたいことは、ボヤッとしていてもいい。私もそうだった
松尾:まずは、Career Vision採用について説明しますね。
Career Vision採用とは、新卒~就業経験5年程度までの若手を対象に、入社後の部署・業務を明示して募集するジョブ型採用です。
当社の採用手法として、新卒を対象とし、入社後の職種を問わない「新卒オープン採用」、“われこそはこの分野の第一人者だ”と自負していることをアピールしてもらう「新卒No.1採用」、特定の専門性・経験を有した即戦力人財を採用する「キャリア採用」に加え、第四の採用手法として導入するものです。
新卒でやりたいことが明確な人や、数年の就業経験はあるけど社会に出てみたら当社でやりたいことがあった、という方に、キャリアのビジョンを持って入ってきていただくことが当社の力になると考え、新たに門戸を開くことにしました。
一方、新卒の方々は、オープン採用やNo.1採用との併願もできるので、自分に合った採用方法を選んでもらいたいです。
──やりたいことが明確ではない人も、これまで通り応募していいのですね。
松尾:もちろんです。入り口が1つしかなかった状況から、いくつもの入り口から好きなものを選べるようになった、とイメージしていただけるといいと思います。
──ちなみに、松尾さんが就活生だったら、どの入り口からエントリーしますか。
松尾:私だったら、新卒オープン採用ですね。学生時代、やりたいことはボヤッとしていましたから(笑)。
──そうだったのですね。では、丸紅を志望した理由は何だったのでしょうか。
松尾:具体的な地域や物のイメージがあったわけではないですが、人やサービスをつなぎ、新たな価値を生み出したいと思っていました。丸紅を選んだ決め手は、OB・OG訪問や選考の過程で、出身大学や語学力といった属性ではなく、私という人間自体に興味を持って見てくれたと感じられたことが大きかったです。
──最初の配属はどちらを希望されたのですか。
松尾:それが、すごくミーハーでして(笑)。当時映画の配給をやっていたマルチメディア関連の部署を希望しました。内定者だったときに読んだ新聞記事で、新卒入社1年目の女性社員がカンヌ映画祭に出張したことを知って「カンヌに行きたい!」と思ったんです。実際は、その隣の電子機器部に配属になりました。
──最初は希望した部署ではなかったのですね。松尾さんはその後のご自身のキャリアをどのように受け止めていらっしゃいますか。
やってみれば何でも楽しめる。大事なのは、学ぶ姿勢
松尾:これまで、3つの営業の部署を経験し、人やモノ、サービスをつないだり、これまでの枠組みとは異なるビジネスに変革させたりするような仕事をしてきました。そして今は、採用や人財育成といった領域で、社員と組織をつなぐ仕事に関わっています。
──すると、やりたいことは明確になってきたのでしょうか。
松尾:いいえ。異動するたびに業界も、登場するステークホルダーの種類や質も、動いている物量も、自社/自身の役割も全く異なる仕事ばかりでした。「やりたいことが分かってきた!」という実感はあまりないのですが、「どこに行っても面白い仕事はあるな」と感じています。
やりたいことが絞られ、自分の中で研ぎ澄まされるわけではなかった一方で、「ピンポイントにやりたいことがなくても大丈夫」という安心感が生まれました。
──とはいえ、やりたいことが見つからず、不安な人もいますよね。今はやりたいことがなくても成長するために必要なことは何でしょうか。
松尾:考える力、そしてそれを実行に移す積極性ではないでしょうか。「スキルを身に付けさせてほしい」という受け身の姿勢はいまひとつ。自ら目標を設定し、それをクリアするために必要な経験を定義し、そこにチャレンジしていってほしいです。
──なるほど。人事部の矢野さんも「丸紅の使い方」について話していらっしゃいましたが、通ずる部分がありますね。
松尾:ですから、若手・中堅・シニア問わず、学び続ける姿勢が大事です。好奇心のアンテナを張り、社外のネットワークも大切にし、興味があることを見つけて実行していく。異業種との関わりも多い会社なので、「これはやってみたいけどできないかな」と思わないで、挑戦してほしいです。
キャリア観が変わろうとする時代。丸紅の採用も変わる
──これまでのお話を聞いていると、やりたいことの有無は採用にはあまり関係ないような気もします。それでも、丸紅がCareer Vision採用を始める理由を改めてお聞きできますか。
松尾:応募者の夢や志を実現できる採用をしたいと思ったからです。丸紅グループが在り姿として掲げる「Global crossvalue platform」にもその思いを込めていますが、当社グループは一人一人の夢と夢、志と志、さまざまなものを縦横無尽にクロスさせて新たな価値を創造することを目指しています。採用においてもそれを実現するため、Career Vision採用を開始します。
また、世の中の潮流として、若手20代を中心としてキャリア観が変わってきたことも背景の一部です。まず、終身雇用で同じ会社に40年勤める意識はもう薄れています。これは止められない流れでしょう。若者に目を向けると、短い期間で会社を変えてキャリアアップを目指す人が社会全体で増えてきていると感じます。働く中で「自分はこれがやりたい」と気が付く人が多いのでしょうね。
一方で、丸紅の採用手法は「丸紅パーソンとしてのポテンシャル」を見極め、職種を問わずに採用する新卒オープン採用と、各部署のニーズにマッチした専門性やスキルを有する即戦力を求めるキャリア採用の2種類でした。若手の変化によって、新卒採用とキャリア採用の間に「就業経験はない、もしくは少ないが、やりたいことは明確」という層がギャップとして生まれてきているように感じます。Career Vision採用でそのギャップを埋めたいと考えています。
──いわゆる「第二新卒」の役割に近いですね。
松尾:はい。Career Vision採用は新卒・既卒、就業経験の有無を問わずに募集を行います。募集要項も業務内容に応じて決めますし、実際に配属される部署の人間が、応募された方とじっくりとコミュニケーションをとって選考していくことを目指しています。
私たちにとっても初めての挑戦なので、どれくらい応募が来るかは分かりません。それでも、世の中の流れに合わせ、いろいろな選択肢を提供できる会社でありたいですし、今回対象としている層には、当社で活躍できる人がたくさんいると考えています。丸紅で自分のやりたいことを実現したいと思っている人には、ぜひチャレンジしていただきたいです。
──最後に、この記事を読んだ学生に向けてメッセージをお願いします。
松尾:丸紅を使って新たな価値を生み出したいという思いさえあれば、やりたいことはボヤッとしていても、はっきりしていても、どちらでもいいです。
入り口はたくさんあるので、自分の納得いく形でエントリーし、チャレンジしてほしいです。
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【執筆・編集:吉川翔大/カメラマン:百瀬浩三郎】