この記事は、日系戦略コンサルティングファームである株式会社コーポレイト ディレクション(以下、CDI)社員からのご寄稿です。同社が新卒採用において17年間にわたり「パートナー別採用制」にこだわってきた理由、その方針やメリットなどを語っていただきます。
【目次】
1. 同じファームに「参画」してもらう仲間を探す採用
2.「入社後のイメージができる」など、学生側のメリットも
3. 採用されたメンバーの声:互いの深い理解につながったジョブ採用
4.「人の集団」として魅力的な会社に出会ってほしい
【寄稿者プロフィール】
占部 伸一郎(うらべ しんいちろう):CDI パートナー
東京大学経済学部卒。モバイル・インターネット・通信などのテレコムネット関係、アパレル・宝飾・小売などの流通小売分野、デベロッパー・プロパティマネジメントなどの不動産分野、電力などのエネルギー分野など幅広い分野において、中期計画の策定・新規事業の立上げ・中国などのアジア展開・事業再生・組織改革などに取り組んでいる。また、ハンズオン型での新規事業立上げや、投資会社との連携による事業のバリューアップ、インターネット領域を中心とする成長産業におけるベンチャー企業の成長支援の経験を数多く持つ。Fringe81株式会社社外取締役を兼任。経済ニュースメディア「NewsPicks」プロピッカー。
同じファームに「参画」してもらう仲間を探す採用
コンサルティング会社は人材が唯一最大の資源。そうであれば、採用の仕方に会社の個性が表れます。CDIでは、これまで新卒採用で「パートナー別採用制」という方式にこだわってきました。パートナー別採用制とは、「パートナー」「プリンシパル」といった会社の幹部がそれぞれの責任で学生を採用する、いわば「弟子を採る」という採用方式です。
筆記試験とグループディスカッションまでは、会社として共通のプロセスになっていますが、その後は「どのような人を採りたいのか」という採用基準に加え、どのようなプロセスで選考を進めるのかも、各幹部が独自に定めています。学生側も「誰に採られたいか」を選んでエントリーしてもらうことになります(※所属はもちろんCDI)。
パートナー採用の最大のメリットは、採用側が真剣になることです。CDIには「人事部」が存在しません。会社として「採用」するというよりは、同じファームに「参画」してもらう仲間を探すという意味合いが強いのです。採用活動は基本的にコンサルタント自身が担当するので、「一緒に働いて楽しい人を採りたい」という思いが強く出ます。
また、人材の多様化が進むというメリットもあります。「人事部長」のような人が全て判断すると、どうしてもその人の好みが入ってしまいがちです。一方で、全員の合議で決めようとすると、「誰もが認める無難な人」しか入社できなくなってしまいます。多様な人材がチームを組むことがコンサルティング会社の強みにつながるとすれば、各パートナーがそれぞれの視点で採用する人を選ぶのは非常に合理的です。
近年では、戦略コンサルティング会社も規模が拡大しており、新卒でも「大量採用」型になってきています。一方で、CDIはそのような流れとは一線を画し、「少数精鋭の職人集団」でいたいと思っています。クライアントが本当に困ったときに呼ばれる「知る人ぞ知る名医」のような存在。それは誰でもなれるものでもないため、パートナー採用という人材を厳選する方式と、中期的な育成を基本方針としているからこそ可能とも言えます。
「入社後のイメージができる」など、学生側のメリットも
パートナー別採用制は、学生側にとってもメリットが多いと感じています。一番大きいのは、「入社後に誰と働くかが見える」ことです。一般企業だと、どの部署に配属されるかも分からないですし、コンサルティングファームでもどのパートナーと働くのかは入るまで分からないことの方が多いです。この採用方式では、採用したパートナーや採用チームの人と一緒に働くことが多くなり、入社前から誰と働くかをイメージできます。パートナーごとに得意な領域やプロジェクトタイプがあるので、どのような仕事をするかイメージを持てるのも特徴です。
もちろん、担当パートナーとしか仕事ができないわけではありません。CDIでは、2つのプロジェクトを同時に担当することが多く、一つは担当パートナー、もう一つは別のパートナーという形にすることが多いです。これにより、多様な経験を積んでもらいます。
コンサルタントの成長は、「どのようなプロジェクトをやるか」と「誰と働くか」がほぼ全てです。基本的な座学トレーニングはありますが、ほとんどはOJT(On the Job Training)によって学ぶことになります。
クライアントに対して、どのくらいのレベルの提言をするのか、厳しい質問にどう切り返すのか、多様な関係者がいるときにどうバランスをとるのか、といったことは、実際のプロジェクトでの立ち振る舞いを見て学ぶものです。つまり、誰とどのような仕事をするかが事前に分かっていることは、非常に重要な要素だと言えるでしょう。
一方で、採用する側としては正直非常に手間がかかります。パートナーごとに3、4人の「採用チーム」を組むので、4人のパートナーが採用する場合は計16人が選考プロセスに関わることになります。プロセスもつど設計し、実際の面接やインターンの対応なども自分たちで行います。それでも、一緒に働く人を自ら選ぶという意味で前向きに取り組んでいます。
私が重視しているのは、「一緒に働くイメージを持てるか」ということ。そのため、必ず学生チームで仮想の戦略立案テーマに3日間取り組む「ジョブ」をやるようにしています。そのプロセスでは、なるべく自分も議論の中に入って皆さんと直接ディスカッションすることを心がけています。逆に学生の方もこういう機会を通じて、CDIのプロジェクトのイメージを持ってもらえると良いですし、CDIのコンサルタントにたくさん触れてほしいと思っています。
採用方針については、昨年までは「◯◯な人」という形で言語化していたのですが、今年からは改め、自分自身が就職活動の際にコンサルタントの道を選んだ理由を提示し、それに共感できる人という基準にしました。ぜひ、同じ思いを持った人の応募をお待ちしています。
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採用されたメンバーの声:互いの深い理解につながったジョブ採用
これまで、占部のパートナー採用(占部採用)では6年間で7人が入社しました。今のところ全員、辞めていませんし、定期的に集まって飲んだり騒いだりするのも楽しいです。後半では、実際に採用されたメンバーにCDIの採用について語ってもらいます。
<スピーカー>
伊藤慎之介:東京大学工学部卒。システム創成学専攻。占部採用でCDI入社(2015年)。在学時は金融工学と人工知能を掛け合わせた株式市場予測モデルおよび自動取引アルゴリズムを研究。AI・ビッグデータを中心としたデジタルテクノロジー分野に強みを持つ。CDI Technology & Design Lab 代表。
新谷慈:東京大学大学院工学系研究科卒。物理工学専攻。占部採用でCDI入社(2017年)。特にWebサービス事業の戦略立案、新規事業立ち上げプロジェクトに数多く従事。
豊嶋克哉:慶應義塾大学法学部政治学科卒。占部採用でCDI入社(2018年)。通販会社の構造改革支援、バイオベンチャーの事業DDなど幅広い産業、テーマに従事。
<モデレーター>
佐藤沙弥:京都大学経済学部卒業後、CDI入社(2011年)。占部のパートナー採用に採用チームとして参加。ネットベンチャーの新規事業開発支援、消費財・食品を中心とするマーケティング戦略立案~実行支援など、生活者に近いサービスの支援が主要テーマ。ライフワークとして、ヨガインストラクターとしても活動中。
──占部採用の皆さん、よろしくお願いします。師匠の占部さんはこの場にいないので自由にしゃべってください(笑)。まず、占部採用を選んだ理由から教えてもらえますか?
伊藤:僕は占部さんが得意とする分野への興味が理由です。ネットベンチャーやアパレルといった仕事が多いと聞いて、占部採用を選びました。
新谷:成長戦略や新規事業といった明るいプロジェクトテーマが多いですよね。加えて、僕の場合はジョブ採用も決め手となりました。
豊嶋:自分はプロジェクトテーマに特段こだわりはなかったです。月並みですが、サマージョブで占部さんや採用メンバーに人として引かれたのが大きかったですね。就活時に抱いていたコンサルの「インテリで頭でっかち」なイメージを良い意味で壊してくれました。
占部パートナー採用について語る社員。写真左から佐藤、伊藤、豊嶋、新谷
──他のパートナー採用と異なりジョブを行うのが、占部採用の特徴ですよね。「ジョブをやりたくない」という理由で他のパートナーを選ぶ人もいますが、新谷さんはどうしてジョブに引かれたのでしょう?
新谷:面接だけで採用される自信がなかったので(笑)、ジョブで実力を見てもらえる方がいいと思いました。もし落ちても、実力が足りなかったのだと納得感を得やすいですし。
豊嶋:採用チームとしてパートナー以外の人がジョブに関わってくれるのも良かったです。若手からマネジャークラスが3人程度入ってガッツリ議論するので、実際のプロジェクトの雰囲気が伝わりました。当時の採用メンバーは、近い先輩として入社後も頼りやすいです。
──採用する側としても、ジョブを実施するとチームの中での振る舞いや議論を進める力がわかるので、一緒に働くイメージが持てます。後半の厳しい局面に入ると、面接では分からない一面も出ますよね。最後までポジティブにやり抜けるかといった点は、かなり見ています。一緒に食事へ行く機会や、打ち上げの飲み会もあるので、議論の場だけではない、お互いの人となりが丸ごとわかるのも良いですね。
伊藤:コンサルティング会社はどこも「最後は人で決めました」と言う人が多いですが、CDIのパートナー採用はその実態に最も合った制度だと思います。入社してから一緒に働く人が明確で、その人の人となりをお互いに理解して入社できるのは大きいです。入社してから誰と働くか分からない、いわゆる「配属リスク」を心配する必要がありません。
──CDIのジョブならではの特徴はありますか?
伊藤:他社のジョブでは、定期的に社員が来て、足りない視点に突っ込みが入る形だったので、意図された答えに向かって進んでいる感じがありました。
一方、CDIのジョブでは採用チーム関係なく、さまざまな人が覗(のぞ)きに来て好き勝手言われたので「何をやらせたいんだ?」と思いましたよ(笑)。当時の自分は「さまざまな視点がある中で自分たちで考えなさい」というメッセージだと解釈しましたが、実際の仕事の進め方と同じく、答えのない問題を純粋に一緒に議論しようとしてくれたのだと今振り返って思いますね。
新谷:僕はジョブで、組み立てたストーリーを途中で佐藤さんにぶっ壊されたことをよく覚えています。実際の仕事でもそうなんだろうな、と働くイメージがわきました(笑)。
──その節はごめんなさい……。この反省を生かして、今はぶっ壊しても、その後作り直すところまで手助けするようにしています(笑)。
「人の集団」として魅力的な会社に出会ってほしい
──先ほど、占部採用を選んだ理由として「占部さんに引かれた」という話がありましたが、皆さんからは占部さんはどう見えているのでしょう?
伊藤:占部さんが特徴的なのは、やはり左脳の回転の速さでしょうか。これは、過去の経験からくる引き出しの数と、それらをいかにうまく引き出すかで決まると思います。その意味で、占部さんは知識や経験を引き出しに入れるときの整理と、しかるべきタイミングでふさわしいものを出すのが非常にうまいと思います。
──なるほど。「論理的に正しいことを言う」というスタンスを貫いている点もユニークですよね。もちろん、論理的な正しさが全てではありませんが、そのスタンスを自然体で徹底する姿勢は、論理を武器とするコンサルタントの中で見ても、飛び抜けているかもしれません。
コンサルタントは「芸者に似ている」と言われることもあるくらい、クライアントの懐に入ることが重要な仕事です。占部さんの場合は、相手にとって耳の痛いことを論理的かつ無邪気に言ってしまうことで、懐に入り込むタイプに見えます。社会的に立場が偉い人って、意外とタメ口で怒られるのがうれしいことがあるんですよね。正しいことを無邪気に言われて、喜ぶ経営者も多いのではないでしょうか。
新谷:その無邪気さを支えているのは、人間的なかわいらしさだと思います。パートナーでありながら、今でも若いメンタルを持ち続けていて、飲み会などのイベントも大好きですよね。
伊藤:休日に社員同士で釣りやホームパーティーなどのイベントをやることもありますが、子どもになつかれている「パパ」としての姿にはほっこりします。
──それは分かります(笑)。あらためて、パートナーとしての占部さんはどうでしょうか。ともに仕事を進めていく中で、学ぶことや感じることはありますか?
新谷:一緒に仕事をすることは多いですが、何か特別な「指導」を受けたことはありません。立ち振る舞いを見て無意識に学んでいるという感覚が近いです。「見て学ぶ」「教えを請いに行く」存在がいること自体が、パートナー採用の本質的な価値だと思います。
昔ながらの職人と弟子の関係性に近いかもしれません。僕は高校のときに初心者ばかりの弦楽部に所属していたのですが、大学で本格的なオーケストラに参加したときに「職人」的な世界を初めて体感しました。その楽団はトレーナーの方々、メンバー含め、全体にある種の「職人」的な深さまで音楽を追求していく空気が流れていました。そのため、コミュニティの中で常に自分の想像したこともなかったような深い世界を垣間見ることができました。
会社も同じで、仕事を職人レベルまで極めている人が周囲にいるかどうかで仕事の深まり方は全く変わると思います。僕にとってCDIはまさに職人に囲まれている環境です。パートナー陣を始め、自分たちの仕事のあり方を日々深く考えて続けている人々に触れられる環境は恵まれていると感じます。
伊藤:僕の父親は大工の職人で、父親のもとで修業をしていた若者が毎日カンナ削りだけを繰り返していたことがありました。僕は父親に「目的くらい教えてあげたら?」と言ったら、「それを自分で気付くのが本当の価値だ」と言い返されたんです。
最初から「こういうものだ」と教えるのではなく、単純な修行の中で「何やってんだろう」と思ったときにふっと道が見える。これが職人になるための第一歩ですし、コンサルティングファーム業界においても同じことが言えるのかなと思います。
僕も占部さんと仕事をする機会が多く、日々の議論やクライアントの前での立ち振る舞いなどを間近で見て学んだことが多いです。職人と弟子というと固い感じに聞こえるかもしれませんが、CDIのメンバーは互いの仲も良く、その距離の近さは他ファームの同期からも驚かれますね。
──外山滋比古氏の『思考の整理学』には、最近は教える側が教えすぎるという指摘があります。本来は師匠が教えるなんてことはなくて、弟子が単純な稽古に打ち込みながら横目で師匠を見て模索し、教えを請いに行くのが本来の姿であると語られています。
伊藤:さまざまなタイプの師匠がそろっていて、日々見て学べるのが、パートナー採用の最も重要なところかもしれません。僕は今、自分でプロジェクトを作ることにも挑戦しているので、占部さんだけではなく各パートナーのスタイルをより意識的に観察するようになりました。
豊嶋:パートナーによって採用基準もかなり違うので、自分の同期を見ても、お互いの持っている能力は全然違うと思います。だからこそ互いへの尊敬も生まれる。能力をレーダーチャートで表現したら尖(とが)っている部分が全然違いますが、会社全体として見たときに全体の調和が取れているイメージです。
──ちなみに占部さんが採用している人の共通点は何かありますか?
伊藤:占部採用だけを見ても、本当にいろいろな人がいて一概には言えないですが、強いて共通点を挙げるとすれば、良い意味で無邪気な人が多いことでしょうか。占部さんが相手と距離を縮めて、本音をズバズバ言えてしまう人なので。悪く言えば「失礼」ということですが(笑)。それでも、嫌われない人懐っこさやかわいげを備えていることが共通点だと思います。
──実際、占部さんが若手のときにクライアントへの言葉遣いや態度が失礼であるということで、若手社員全員にマナー教本が配られたのは社内でも有名な話です(笑)。
豊嶋:占部採用は唯一ジョブ選考を行う採用コースなので、占部採用を選んでいる時点でジョブで実力勝負したいという志向を持った「腕に覚えがある人」が集まりやすいかもしれません。「俺より強いヤツがいるって聞いたんだけど」みたいな。
──さまざまな話をしていただき、ありがとうございました。最後に、ここまで読んでくれた学生さんにメッセージをお願いします。
伊藤:さまざまな価値観の中で、自分たちの意志に従って活動するコンサルタントが集まる場として、CDIはこれ以上なく面白い環境だと感じています。主体性を持って、自分が面白いと思えるような職業人生を歩みたいと考えている方は、ぜひCDIの門をたたいてみてください。そういう方と一緒に働けることを、僕個人としても楽しみにしています。
新谷:僕自身はCDIという会社を、会社としての事業領域や規模うんぬんというよりは、そこにいる人々の魅力に引かれて選んだのですが、結果的にその選び方は間違っていなかったと感じています。学生の皆さんにも、CDIのみならず、いろんな会社の人々とじかに話をして、「人の集団」として魅力的な会社に出会って欲しいです。今回の記事に何かピンとくるものがあった方と、実際にお会いできるのを楽しみにしています。
豊嶋:もし「コンサルって何?」「CDIってどこ?」といった方が、ここまで読んでくれたらうれしい限りです。世の中にはいろいろなコンサルティングファームがありますが、ここまで「人」に焦点をあてるファームもなかなかないと思います。そんなCDIを「ユニークだな」「面白いな」と思ってくださる人と、ぜひお話ししてみたいです。
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