外資系戦略コンサルティングファーム。
先日ワンキャリアで発表された「東大京大・21卒就活ランキング」に軒並み名を連ねる戦略コンサルティング企業(通称:戦コン)は、東大京大出身の「選ばれし人材」だけがその門をくぐることができるように思えます。
「周りの戦コン内定者には『研究が一筋、効率もめちゃくちゃいい人』も多いですけど、私はがむしゃらに何でも経験したいタイプです」
そう楽しそうに話してくれたのは、戦略コンサルティングファームに内定したAさん。
21卒の早期内定者にインタビューをする「早期内定レポート」。
第1回は、戦略コンサルティングファーム内定者の就職活動やキャリア観に迫りました。
<目次>
●2年の3月から始めた就活対策。戦コン志望ではなかった
●戦略コンサルは、「広告業界の練習」のつもりだった
●早期内定は、就活の「名刺」になる
●「精鋭達と頭を突き合わせて考え抜く時間を楽しむこと」22卒の就活生に贈るメッセージ
2年の3月から始めた就活対策。戦コン志望ではなかった。
──Aさんは、就活を大学1年生の時から意識していたそうですね。就活は、具体的には何から始めたんですか?
Aさん:高校生の時からメディアやコンテンツに興味があり、将来も広告をはじめとするメディア系の業界に行きたいなと思っていました。
実際に就活のための行動を始めたのは大学2年の2月です。就活の情報収集のために、先輩からオススメされた「就活アカウント」をTwitterで作りました。タイムラインで「選抜コミュニティがいいらしい」という潮流があったので、3月に選抜コミュニティに入りました。
──選抜コミュニティは入るのが非常に難しいと印象があります。
Aさん:「選抜」ってフレーズにひるんでしまいがちですが、比較的入りやすいコミュニティもあります。私が入ったコミュニティは複数のクラスに分かれており、一番上のクラスではないながらも、所属することができました。
戦略コンサルを志望していなくても、早期に内定を獲得したいなら4月〜5月のうちに選抜コミュニティに入るのもいいと思います。選抜コミュニティは通年で学生を募集をしていますが、入るのが早ければ早いほど得られる情報も多いので。
ただ、デメリットではないですが、選抜コミュニティの中には、戦コンや外銀を志望するずば抜けて優秀な人がいます。その人たちのグループディスカッション(GD)での振る舞いをみて「ああ、こんなレベルの高い人たちには届かない。私は戦略コンサルにはいけないかもな」と気持ちが落ちることもありました。
──良くも悪くも、自分の「就活立ち位置」が分かるということですね。選抜コミュニティに入らないという選択もあると思いますが、その場合はどのように就活を進めていけばいいのでしょうか?
Aさん:実際にエントリーシート(ES)を書いてどこでもいいから出してみたり、GDセミナーに足を運んでみたり、とにかく「機会に身を投じる」といいと思います。ESや面接、GDは慣れるほど、コツが分かってきます。インプットだけじゃ分からないことも多い。私も選抜コミュニティで各フローの対策講座を受けてはいましたが、実践の方を重視していました。
Aさんの選考対策
※Aさんの選考対策時期
──とはいえ、正しい方向に努力するためにもインプットも重要かと考えています。具体的にどんなインプットをしていたか教えていただけますか?
ES
Aさん:ESは2年の3月から、就活サイトや本などを見て知った「型」に基づいてやっていました。例えば、頻出の質問である「学生時代に力を入れたこと」についてESで書くときは、以下のような「型」を使っていました。
(1)活動の基本情報
(2)活動の目標、自分の役割について
(3)目標を達成する上での課題
(4)課題が発生していた根本的な原因
(5)課題を解決した方法
(6)その結果どうなったか
(7)活動から何を学んだか
※Aさんが使用していたESの「型」
GD/面接
Aさん:コンサルのGD/面接ではケース問題が出るので、かなり有名ですがこの本を読んでインプットしていました。この本や選抜コミュニティの講座で習得した情報を、実際に本番で試してみて、反省、改善して、というPDCAを常に回していました。
※東大ケーススタディ研究会「東大生が書いた 問題を解く力を鍛えるケース問題ノート 50の厳選フレームワークで、どんな難問もスッキリ「地図化」」(東洋経済新報社 2010年)
──ありがとうございます。「戦略コンサル特有」の対策ではなく、基本的な実践を繰り返しているように見えます。Aさんは、広告などのメディア系の業界を志望していたとのことですが、いつから戦略コンサルに行きたいと思ったんですか?
戦略コンサルは、「広告業界の練習」のつもりだった
Aさん:きっかけは偶然でしたね。新たな経験を求めて長期インターンに参加して以来、「あ、ビジネスって意外と面白いかも、ビジネスと密接に関わる『コンサル』もいいな」と思うようになりました。
就活の軸として、「手段を制限せずに戦略・アイディアを提案できる業界がいい」と思っていたので、もともと志望していた広告業界との親和性も高かったです。また、ある広告代理店のGDでコンサルのケースに近いお題が出たり、他の広告代理店が自分たちのことを「課題解決企業」と紹介したりと、広告とコンサルは、選考においても案外近いポジションにいます。
なので、本命である広告業界の選考が始まる前に、試しにコンサルも受けてみようと思ったというわけです。
──広告業界にも、コンサル業界で必要とされるような「ロジック」が必要になってくるんですね。
Aさん:まさにその通りで、広告の選考を突破していくにもロジックは必須です。
自分のことを誰かに分かってもらうためには、「熱意」だけではなく、「筋の通ったロジカルな説明」をする必要があります。
コンサルの選考で鍛えられるスキルは、絶対にどの業界の選考でも通じるスキルになるので、とりあえずコンサルを受けてロジックを鍛えるのも、アリだと思います。
──早期内定をしようとしていたわけではなく、志望企業の内定に近づくために、戦略コンサルを受けて内定をもらったということですか。
早期内定は、就活の「名刺」になる。
Aさん:そうですね。ただ、日系大手は、内定を持っていることで選考が有利になると聞いていたので、就活を始めた頃から絶対に早期内定をもらっておきたいなとは思っていました。
※Aさんが受けた企業一覧。早期に内定が出る&広告業界の実践練習をするために戦略コンサルを中心に受けている。
日系選考が始まる上で、コンサル業界の内定は企業への「名刺」代わりになると思っています。日系企業のOB訪問で、「就活どんな感じ?」と質問をされた時に、すでに戦略コンサルの内定を持っていたら実力の証左になります。
あと、コンサルは内定を持っていることを言いやすい業界だと思います。というのも、コンサルの選考は一番早く始まるので「とりあえず受けてみた」層も多い。
「とりあえず受けて、運良くコンサルに受かったけど、よく考えた末に本当に行きたいのは貴社です」と言うこともできますし。
──Aさんは今も就活を続けていらっしゃいますが、もし広告会社から内定をもらったら広告と戦コン、どちらに入社するのでしょうか?
そこは、今とても悩んでいます。しかし、最近では広告からコンサル、あるいはコンサルから広告への転職が双方ともに増えていると聞きます。ファーストキャリアは最終的には直感で決めて、その後どちらも経験できるキャリアを目指していくのもいいかなと思います。
残りの就活も全力でやり切りますが、早期内定をして就活を終えている友達のように、勉強をしたり、研究をしたりして、残りの大学生活を謳歌(おうか)するのもいいなと思っています。
「精鋭達と頭を突き合わせて考え抜く時間を楽しむこと」22卒の就活生に贈るメッセージ
──ありがとうございます。これからの就活はオリンピック/パラリンピックに影響を受けて、21卒就活よりも変動的になると言われています。Aさんが就活生だったら、どのように行動しますか?
Aさん:もし自分の就活年に開催されるのであればオリンピックについてめちゃくちゃ研究しますね。面接の話のネタっていう意味では、ラッキーだなと思います。就活スケジュールの変化などには、自分のみならず周りの就活生も同様に影響を受けていると考えて、どんなイベントでも「機会」として捉えた方がベターだと思います。
──変動的なイベントがあることは「不運」ではなく「幸運」とも言える、と。ありがとうございます。最後に、これから就活に臨む22卒に向けてメッセージをお願いします。
Aさん:戦略コンサルを志望する人には、2パターンいます。1つは、もともと戦略コンサルを志望していて高い思考力も備わっている「戦略コンサルに入るべくして入る」タイプ。もう1つは、戦略コンサル志望というわけではなかったが、「練習の一貫で、あるいは周りに流されて受けているうちに楽しくなってきた」タイプ。
私も含め、後者のタイプに確実にいえるアドバイスは、「内定にとらわれ過ぎず、精鋭達と頭を突き合わせて考え抜く時間を楽しむこと」です。
戦コンの選考は必ず他の分野にも生きてきます。実際に私も、コンサルの選考で身につけた構造化力やフレームワークを長期インターンなどの活動に生かすことができました。
戦略コンサルに内定することをゴールにするのではなく、3年生になったタイミングから選考に申し込んでGDを受けたり、面接を受けたりして、「この選考でロジックを鍛えるぞ!」という気概で臨むのがいいと思います。「戦略コンサルの選考に身を乗り出し、社員や周囲の学生に揉(も)まれている時点で少しは成長しているだろう」と思えば、ハードな選考でメンタルもやられずに就活を進められるでしょう。
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