「緊張してしまって思うように声が出なかった」「滑舌が悪くて何度も、面接官に聞き返されてしまった」
皆さんの中には、面接でこのような経験をしたことがある方もいるのではないでしょうか?
これは、「声のコントロール」がうまくできていないことが原因かもしれません。
ワンキャリアをご愛読の皆さん、こんにちは! 声優として活動しております、藤東知夏(ふじとう ちか)と申します。
この度、ご縁がありまして、ワンキャリアで記事を書くことになりました。テーマはずばり「就活でも使える『いい声』のつくり方」です!
就職活動では、OB・OG訪問やリクルーター面談などで人とコミュニケーションを取ったり、GDや面接で自分をアピールしたりと、声を発する機会がたくさんあります。しかし、話す内容は考えていても、その「声」に注目している人はあまりいないように感じます。
今回はそんな学生さんに向け、声のコントロールの仕方と、簡単にできるボイストレーニング方法をお届けできればと思います。
ちなみに、ワンキャリアには就活を突破するための対策記事など、ためになる記事や専門的な記事がたくさんありますが、こちらの記事は息抜きのようなものです(笑)。勉強や自己分析などの合間に、ストレッチでもしながら、まったり読んでいただければ幸いです。
それではさっそく、「『いい声』のつくり方」スタート!!
<目次>
●あがり症・人見知りのあなたにこそ読んでほしい!「声のコントロール」はできる
●「いい声」が出せれば、面接も通るしモテる?
●今すぐできる!「いい声」を作るためのトレーニング
・1. ストレッチ
・2. 姿勢
・3. 腹式呼吸
・4. 滑舌
●あなただけの「声」が、就活の武器になりますように
あがり症・人見知りのあなたにこそ読んでほしい!「声のコントロール」はできる
冒頭の話とも関連しますが、緊張するような場面で、以下のような状態になったことはありませんか? こうなる方は「声のコントロール」ができていない可能性が高いです。
・呼吸が浅くなり、心臓がドキドキする
・急に言葉がどもってしまう(きつ音)
・しゃべるスピードが早くなる
・声が上ずって高くなる
「精神的な問題なのでは?」と思った方もいるかもしれません。「あがり症だから」「人見知りで、知らない人と話すと緊張するから」など。
実は、私もめちゃくちゃあがり症で、ものすごく人見知りです。
はじめてお会いする方と親睦会でお話しするとき。尊敬している大先輩とお仕事をするとき。ピンでナレーション収録をするとき。朗読劇やライブの本番を迎える瞬間……。
緊張すると謎の寒気を感じて、歯がカチカチと音を立てて全身が震え出します。
でも、そんな「緊張しい」の私でも、長年プロとして声のなりわいを続けてこられました。なぜかというと、緊張する場面でも声のコントロールができるからです。
繰り返しますが、緊張すると声がうまく出せないのは、あがり症だからでも人見知りだからでもなく、声のコントロールがうまくできていないから。トレーニングを重ねることで姿勢・呼吸・滑舌(かつぜつ)が鍛えられ、声のコントロールができるようになるのです。
「いい声」が出せれば、面接も通るしモテる?
とはいえ、一口に「いい声」と言っても、人によって思い浮かべる声は違うはず。目指すゴールをそろえるために、私なりの定義を以下に示します。
<いい声の定義>
・おなかから声が出ている
・自然でまっすぐな姿勢で立っている
・全身に力が入っておらずリラックスしている
・一定の息の量で話している
・滑舌が良く、聞き取りやすい
上記をまとめると、「いい声=正しい姿勢と呼吸で発するなめらかで聞き取りやすい声」と言い換えることができるでしょう。
もちろん、個人の生まれ持っているもので多少の差が出てはきますが、技術的な部分で十分補えます。ボイストレーニングをすれば、誰もが得られるものなのです。
こういう声で話せるとどうなるか。パッと思いつく限りでも、以下のようなメリットがあると考えます。
<いい声のメリット>
・滑舌よく声が聞き取りやすいため、相手に正しい情報を伝えやすくなる
・声に芯ができ、言葉の説得力が増す
・声の出し方やケアの方法を知ることで、喉を痛めたり大事な日に声が出なかったりすることを防ぐ
・口まわりの筋肉が発達することで、顔がシュッと見える
・モテるかも……?
どうでしょうか? 皆さんが思っている以上に、声の印象は意外と大事です。
「声に芯があり、何を言っているか聞き取りやすくて、顔もシュッとしている」
うん、そんな人はきっとモテるでしょう。あとは「円滑なコミュニケーション能力」と「明るい笑顔」を身につければ、もう言うことはありません(?)。
今すぐできる!「いい声」を作るためのトレーニング
長々とお話ししてきましたが、お待たせいたしました! ここからは簡単にできる、基本のトレーニング方法をお届けします。
私が知っている練習方法以外にも、私の周りにいる声のプロたちにお願いをして、実際に行っている練習方法を教えていただきました。以下の4つに分けてお伝えします。
1. ストレッチ
2. 姿勢
3. 腹式呼吸
4. 滑舌
1. ストレッチ
声を出すのに適している姿勢と呼吸は「自然体でリラックスしている状態」です。
体に無駄な力が入っていると、筋肉がこわばったり、呼吸が止まったりといいことがありません。まずは背伸びや屈伸などで一息つきましょう。
こわばりやすい首のストレッチとして、以下の方法がおすすめです。1分もあればできると思います。
<簡単な首のストレッチ>
1. 首を左右交互に10回ずつ横に曲げる
2. 上下交互に10回ずつ縦に曲げる
3. 首を、円を描くように5回ずつ回す
首を曲げたり回したりするときはゆっくりと、無理のない範囲で行ってください。
また、こちらのストレッチはデスクワークをしている方にもおすすめです。凝り固まった首が、次第にごりごり動き出しますよ。
この他にも、プロたちはこんなストレッチを行っています。
・ネックロール(首のストレッチ):頭を、大きく円を描くようにゆっくり回す
※後ろへあまり行き過ぎないように、自分の気持ちのいいところで回すよう注意してください
・アームプル:右腕を左腕の方に向けて伸ばし、左腕で抱えるように手前に引き寄せ、右腕付け根の筋肉を伸ばす(左腕も同様に)
・腕回し:両腕を横に広げてひじを90度に曲げ、腕の付け根から後回しを20回ほど行う
・腰回し:腰を、地面と水平に円を描くように回す
2. 姿勢
声を出すのに適している姿勢は、一言でいうと「自然にまっすぐ立つ・座る」こと。当たり前な話に聞こえますが、これが意外と難しいのです。
まっすぐ立っているつもりでも、側から見ると、猫背や猿腕(肘が外側に曲がってしまう腕のこと)だったり、首だけが前に出ていたり、かかとに重心が乗っていたり……。
特に女性は骨盤の関係で腰が曲がりやすいので注意が必要です。ちなみに私は、意識をしないとすぐ首だけが前に出てきてします。
姿勢のチェックをするときはぜひ、鏡の前で試してみてください。一人一人、体の特徴が違うので、自分の特徴を確認することも大切です。
面接やOB・OG訪問ですと、椅子に腰掛けての対話が多いかと思いますので、今回は背筋を伸ばしても疲れない座り方をお伝えします。
<疲れにくい座り方>
1. 手の甲をお尻に当て、そのまま椅子の中心に腰掛ける
2. 背筋を伸ばしたまま体を前後に揺らし、骨盤の位置を変える
3. お尻に敷いた手に一番骨盤が当たる(痛い)ところをキープしつつ、手をゆっくりお尻の下から抜き取る
はじめのうちは骨盤の位置が分からないかと思いますので、ゆっくりと前後に揺れて骨盤の位置を確認してください。
まっすぐ座れているかがいまいち分からないという方は、家族や友だちに見てもらいましょう。壁に背中をつけて座り、「まっすぐ」のイメージを覚えるのも有効です。
以前、私がボイストレーニングのレッスンを受けた際に、先生に「頭から股まで串刺しにされた状態で、頭の上から糸でつられているイメージを持って」と言われました。
姿勢をまっすぐにしたいときは、自分がバーベキューの肉になったつもりでやりましょう。
また、こちらの記事でも姿勢について書かれていますので、ぜひ読んでみてください。
その他、プロたちが行っている姿勢を保つ方法はこちらです。
・両足を肩幅に開いて、つま先立ちをする。ゆっくり下ろしたら真っすぐに前を見る
・姿勢のことは姿勢のプロに。骨盤矯正を受ける
・普段から友人に姿勢の指摘をお願いしている
3. 腹式呼吸
人の呼吸法は大きく分けて「胸式呼吸」と「腹式呼吸」の2つがあります。
違いをざっくり言うと、「胸式呼吸」は肺に空気を入れてろっ骨を開くイメージ、一方の「腹式呼吸」は肺の下の方にある横隔膜を下げ、おなかが自然に膨らむイメージです。芯のある声を出したいときや、歌を歌うときは「腹式呼吸」が適しています。
腹式呼吸の感覚を覚えるには、以下のようなトレーニングをしていただくのがいいかと思います。感覚をつかんだ後は、普段の生活で意識的に腹式呼吸をすることで、自然に呼吸を改善できます。
<腹式呼吸のつかみ方>
1. 足の裏が床につくくらいの高さの椅子に腰かける
2. 体の上半身を折り曲げて頭を下げる
3. 手は自然に下へ伸ばす
4. そのままの状態で自然に呼吸をする
5. 息を吸うとおなかが自然に膨らむので、膨らんだらそのまま息を止めて上半身を起こす
6. おなかに手を当てて、ゆっくりと息を吐く(このとき、おなかが自然にへこむ)
※2〜6を繰り返す
できているのか確信が持てないという方は、仰向けに寝転んで自然に呼吸をしてみてください。寝転んでいるとき、人は自然に腹式呼吸になっています。おなかに手を当てて呼吸を感じてみてください。
腹式呼吸に慣れてきた方は、以下のトレーニングを試してみてください。
<リップロール:息を安定させて送り出す練習>
1. リラックスした状態で、唇を軽く閉じる
2. 1の状態のまま、腹式呼吸で息を吐く
3. 唇をプルプルと震わせながら10秒程度息を吐く
※1〜3を繰り返す
最初のうちはうまく唇を震わせることができないかもしれません。実は私も、相当練習しました。
唇から息がスーッと抜けてしまう方は、口角を指で軽く押さえるとやりやすいと思います。
その他、プロたちのトレーニング方法はこちらです。
・腹式呼吸:まずはおなかに空気を入れるイメージで息を吸う。吸うと同時におなかを膨らませてみる。そのとき、肩が上がらないように気をつける
・ロングトーン:息を吸ったら口を「シ」の形に。歯と歯の隙間から「シー」と息を出すように10秒間で息を吐ききる。慣れてきたら15秒、20秒と時間を長くする
・タントリル:上顎に舌を軽くくっつけ、巻き舌で「ラ行」を意識して、腹式呼吸で息を出す
4. 滑舌
滑舌の練習方法と言うと、多くの方が「早口言葉」を挙げるのではないかと思います。
もちろんそれも有効ですが、はじめて滑舌のトレーニングをするという方は、まずは、表情筋と舌筋を鍛えるところから始めることをおすすめします。
滑舌とは言葉を明確に発音する「口や舌の動き」を指しています。そのため、口まわりの表情筋や舌筋を鍛えるのが有効なのです。結果的に言葉がなめらかになり、早口言葉もうまく話せるようになると思います。
ぜひ、以下のようなトレーニングで筋肉を鍛えてみてください。
<滑舌のトレーニング>
【表情筋の鍛え方】
1. 割れていない割り箸を横にして、奥歯で箸を軽くかむ
2. そのままの状態でゆっくり発声をする【舌筋の鍛え方】
1. 上下の唇を軽くくっつけ、口を閉じる
2. 口を閉じたまま、舌を唇の裏と歯茎の間に差し込む
3. 舌先に力を入れ、歯茎をなぞるように舌を時計回りに動かす
収録の際、私もきれいなボールペンなどで試すことがありますが、表情筋のトレーニングはわりと即効性があるような気がします(※個人の感想です)。
その他、プロたちの滑舌トレーニング方法はこちらです。
・やっぱり外郎売! 慣れてきたら、何分で唱えられるかタイムアタックをしてもいいかも
(参考資料:みんなの知識 ちょっと便利帳「言葉の練習 外郎売(ういろううり)」)
・早口言葉を言ってみて、自分が苦手な行を見つける(人によって舌の長さや口の構造が違うため、苦手な言葉も違う)
・滑舌ではないが、声のトーン(高さ)を上げると、聞き取りやすい声になる気がする
・やっぱり般若心経! 声が続くまで唱えると腹式呼吸のトレーニングにもなる
(参考資料:般若心経カクカクしかじか「般若心経 縦書き ふりがな付き」)
あなただけの「声」が、就活の武器になりますように
声というのは指紋と同じく、全く同じ人はいないといわれています。そして、いい声はトレーニングをして声を磨くことによって保たれます。
そう捉えると、声というのは個性や特技と同じであり、「声を磨くこと」は「自分だけの武器を磨くこと」に通じると私は思います。
冒頭でもお話ししたように、就活で「声」に注目して対策をしている人はあまりいないように感じます(アナウンサーさんなどは別だと思いますが)。それだけに少しのトレーニングで大きな効果が生まれるはず。ぜひ声を磨いて、あなただけの「いい声」で面接に臨んでいただけたらうれしいです。
声のプロとして、かげながら皆さんを応援しています!
【現役声優が解説:いい声のつくり方】
・「緊張で声が出ない」「滑舌に自信なし」 そんなアナタに贈る、就活でも使える「いい声」のつくり方
・もう「滑舌が苦手」とは言わせない!就活生も家で簡単にできる滑舌の鍛え方
・話し方を変えるだけで、志望動機に説得力が増す!?就活でも使える声の「表現力」を鍛えよう
(Photo:I love photo , Lizardflms , Pixel-Shot , Anton27/Shutterstock.com)
※こちらは2020年1月に公開された記事の再掲です。