「就活に答えはない。だが、納得できるやり方はある」
今回、全く異なる軸で就活をしてきたトップ企業内定者3人に「そもそも何のために就活するのか、どの企業に行くべきか」を論じてもらいました。
就活を端的に表すと?
受験との差はなんですか?
この2問をキッカケに、3人の思考パターンを読み解いていきましょう。あなたはこの3人のうち、果たして誰に一番共感するだろうか?
A氏:人気・就職偏差値の高いといわれる外資系を中心に就活。徹底した事前準備・対策が功を奏し、早々と外資コンサルへ入社を決めた。
B氏:自分に合っている企業を求めて幅広い業界の就活を経験。安定性や労働環境の良さを理由に、誰もが知る日系大手インフラに進む。
C氏:日系と外資両方の就活を経験。その時々でベストを尽くすことに焦点をあてた結果、外資系ではなく、総合商社に進むことを決意。
A氏:就活は「自分の将来の可能性を広げる絶好のチャンス」
A氏は「ファーストキャリアでは、できるだけ入社難易度が高い企業に入社しておくべきだ」と言う。その理由として挙げたのは以下2つだ。
1つ目は【転職先の幅が広がる】ため。
「働く前から自身の適性を見極めることは難しいが、何かしたいと思ったときに挑戦しやすい環境にいられるかどうかは、ファーストキャリアに大きく影響される」と彼は言う。確かに、マッキンゼー出身者、ゴールドマン・サックス出身者というだけで転職市場では引く手あまたとなる。起業するにしてもその肩書は「実力証明書」として機能することは間違いない。
2つ目は【レベルの高い同期との人的ネットワークを得ることができる】ため。
「レベルの高い同志と切磋琢磨(せっさたくま)することで自身が成長できるだけでなく、彼らとつながっておくことで将来巡ってくるチャンスがあるはずだ」とA氏は話してくれた。
また、受験と就活については、大きな差はないという。
「就活は、暗記能力や計算処理能力など単純な指標で評価される受験とは、評価軸の複雑さや性質が大きく異なるが、受験同様、準備・対策をすればするほど高いところにいける極めてフェアなゲームだと思う」
就活を自分の将来の可能性を広げる絶好のチャンスと考えるA氏は「就活は受験と本質的に一緒だ」と捉えているようだ。
B氏:就活は「婚活。適性が一番大事」
一方、B氏は全く違う視点から就活の意義を語ってくれた。
「就活は『自分に一番合った企業を選ぶこと』が大事。就職先の良し悪しを考えることがまず間違っている。背伸びして、外資系や皆が行きたがるような企業に入社したって、優秀な人に囲まれて苦労するだけ。埋もれるよりも、身の丈にあった会社に行って、そこで評価されて回ってくるチャンスをつかんだ方が長い目でみるといいと思う」
「企業と自身のマッチング、適性が大事だ」と語るB氏の話には2つの価値観が見え隠れする。
1つは【仕事は必ずしも人生のすべてではない】という考え。もう1つは【終身雇用】という考え方である。転職するという感覚はないように感じた。「就職は企業との結婚」という言葉を思い出させるB氏の発言は、日本における雇用の在り方を長い間支配してきた価値観ともいえるだろう。
就活と受験について、B氏は、両者は全く異なるものだと主張した。
「就活は受験と違って対策するものじゃない。自分自身を深く理解した上で、ありのままを見せて受け入れてもらうことが大事」と言う。
一見すると「甘い」と捉えられがちな考えだが、B氏はこう言う。
「受験と違い、正解・偏差値という分かりやすい指標ではなく『就活では人間そのもの』が見られる。これまでの21年間に何を考え、生きてきたかが問われるのだから、対策しても、それは小手先にしかならないと思う。大学と違って、企業は30年という長い期間ずっと一緒になる。自分が自然体で働ける企業じゃないと、お互いにとって不幸になる」
こういう発言に、B氏の考え方が顕著に表れているだろう。
C氏:就活は「就職先を決めるプロセスが一番大事」
「就活って結局『自分が納得できるような意思決定を行うプロセス』だと思う」
そう主張するC氏は次のように語ってくれた。
「どの業界、企業に進んだとしても、こんなはずじゃなかったと思うときは来ると思う。そんなときに『あのときこうしておけばよかった』と後悔する人と、『自分で選んだ道だから頑張ろう』と思える人の差は、自分が納得感を持って主体的に意思決定をしたかどうかの差だと思う」
「だからこそ、どうせ受からないからといった後ろ向きの理由や、単に就職偏差値が高いからという安直な理由で進路を決めることは、後々の不幸につながるんじゃないかな」
つまり【就活は結果よりもプロセス】ということだ。
そんなC氏は、就職先は受験と違って「偏差値で選ぶべきでない」と主張する。会社の規模や知名度で志望度が変わるのは、他人の思惑に左右されているようなもの。主体性を持って、その時点での最高の意思決定を繰り返すことに集中すべきだという。
「目標に向かって努力する過程が大事という意味では、就活と受験は同じ。受かるためにできる限りの対策をするのは就活においても当然だと思う。その結果決まった企業なら、納得できる」とも話してくれた。
まとめ
A氏は、明らかに「企業を手段」とみている。企業は利用しつつ、利用されるという関係を求めているように見える。
B氏は「自分ができることにフォーカスをあてて、その結果が就活に表れる」という考えだ。
C氏は、A氏が持つ合理的判断と、B氏が持つ長期的視点を合わせたような思考パターンを持つ。
A氏、B氏、C氏、誰が正しいということはないし、多くの学生は3人それぞれの意見を合わせ持った中間にいるのかもしれない。しかし、3人に共通している点が1つあった。すがすがしい顔、自分の就活に納得していた表情だ。
さて、あなたは誰にもっとも共感しただろうか? あるいは誰にも全く共感しないだろうか。
そして1年後の自分は、果たしてどんな考え方を後輩におすすめしているだろうか。
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