「激務」「お金が好きな人が多い」「冷淡」「UP or OUT(昇進か、クビか)」……。
外資系金融機関、いわゆる「外銀」と聞いて、こんなイメージが浮かんだ方はいませんか。
外資金融はファーストキャリアとして高い人気を誇る一方で、「限られたエリートだけが活躍できる業界」と、遠い世界に感じる方も少なくないはず。
上記のイメージも、2020年卒・2021年卒の就活生から寄せられた生の声です。
しかし、実際に働く社員はこのように語ります。
「外銀は決して超人の集まりじゃない」「金融は、思ったよりもずっと身近な業界」と。
今回は、外資系金融機関であるJ.P.モルガンで働く法学部出身の庄司さん(入社4年目/写真右)と文学部出身の水野さん(入社2年目/写真左)に話を聞きました。
経済・金融のバックグラウンドを持たない彼らは、なぜ外資金融を入社先に選び、日々どんな風に働いているのでしょうか?
外資金融のイメージと実態の間にある意外なギャップを解き明かしていきます。
庄司 奈央(しょうじ なお):金利為替営業部
2016年4月入社。法学部卒。主に日本の機関投資家向けに外国債券の営業を担当。ニューヨーク・ロンドンのチームと連携し、24時間体制でマーケットの動きを把握しながら顧客をサポート。社内のトレーダーやマーケターなど他の職種とも協力しながら、顧客との長期的なビジネスの構築をミッションとする。
水野 量太(みずの りょうた):投資銀行部門
2018年4月入社。文学部卒。M&Aの提案活動および執行、社債の引き受けなどを担当。アナリストとしては財務モデルを使った分析やバリュエーション、デューデリジェンスなど多岐にわたる役割を担う。M&Aのプロフェッショナルを目指し、日々の業務の中で幅広い知識の獲得に努めている。
外資金融って、良い意味で「普通の人が普通に働いている職場」ですよ
──今日はよろしくお願いします。まずはお二人の大学時代について教えていただけますか。
庄司:私は法学部出身です。法学といっても専攻は歴史学に近くて、西洋の外交史を中心に学んでいました。課外活動としてはヨット部に所属していて、当時は真っ黒に日焼けしていましたよ。ファッションに関心があったので、ファッションブランドや出版社でインターンをしていたこともあります。
水野:私は文学部の心理学専攻で、人間が動作を学習するときの脳内モデルを検証していました。「心理学」と名はついているものの、脳科学や神経科学に近い、理系寄りの研究です。サークルには所属していませんでしたが、いろいろなジャンルの勉強をするのが好きでしたね。
──お二人の学生時代が垣間見えますね。ここまでのお話を聞いていると、ファーストキャリアの外資金融とは少し縁遠い印象です。就活はどのような軸で進めていたのですか。
水野:私は「将来の選択肢を広げる」という軸で、外資金融のIBD(※)・コンサル・総合商社を志望していました。IBDの仕事はマーケットや財務の知識だけでなく、税務や会計、法律の知識など、総合的なビジネススキルが求められるところに興味を惹(ひ)かれていました。
(※)……投資銀行部門(Investment Banking Division)の略。企業の買収・売却(M&A)や資金調達の提案・サポートを行う。
庄司:私は「海外経験を生かせるかどうか」を軸にしていました。外資金融の他に、ディベロッパーも見ていましたね。就職活動に時間を割くよりも、大学生のうちにできる学びや活動を大切にしたいと思っていたので、入社先もあっさりと決めた覚えがあります。
──金融業界に強い興味があったわけではないのですね。では、お二人が入社先をJ.P.モルガンに選んだ決め手は何ですか?
庄司:個性を大切にしてくれる社風に惹かれました。面接ではどんな厳しい質問が待っているかと緊張しましたが、「どういうことが好きなの?」「何をしているときが1番楽しい?」など、私の個性や価値観を知ろうとしてくれる質問が多かったんです。この社風ならば自分にフィットするだろうと思い入社を決めました。
──意外ですね! 外資金融の面接では、いきなり計算問題を出題されたり、奇抜な質問をされたりすることもあると聞きますが。
水野:確かに、他の投資銀行では「1001は素数ですか?」と聞かれて焦ったこともありました(笑)。
ですが、J.P.モルガンの面接はコミュニケーションやソフトスキルを見極められていたように思います。うちはどの部門にもフェアで裏表がない人が多くて、自然体な社風です。選考のときも、学生に対して「学生を試してやろう」「俺たちのすごさを思い知らせてやろう」みたいな肩肘張った感じがありませんでした。
投資銀行に「超人が働いている」みたいな印象を持つ学生もいると思いますが、良い意味で「普通の人が普通に働いている職場」ですよ。
年金問題で市場が動く? 金融は意外と身近な業界だった
──続いては、そんなお二人の仕事についてお聞きします。「外資系金融機関の仕事」というとなかなか想像しにくいですが、普段はどんな業務に取り組んでいて、どんな点に面白さを感じますか?
庄司:私は外国債券の営業を担当しています。入社前は「金融業界は、24時間マーケットを見続けるオタクみたいな人がいっぱいいる、縁遠い世界だ」と思っていました(笑)。でも、実際に働いてみると、金融は思ったよりもずっと身近なものだと感じています。それが仕事の面白さの1つですね。
一例として、アメリカには「個人が借りた住宅ローンを証券化した債券」があります。個人が住宅ローンをどう扱うかが価格に大きく影響するので、アメリカの人々の生活や行動が垣間見えるプロダクトです。他にも、私たちにも身近な「年金問題」が新聞の見出しに取り上げられるだけで、マーケットが大きく動くこともあります。
日々の生活が直接金融に関わっていると実感しますし、そういう意味では、学生時代から金融を敬遠せずにいればよかったと思いますね。
水野:私はIBDのアナリストとして、先輩たちとチームを組んでM&A案件を担当しています。面白みを感じるのは、新しいことを日々学べることです。J.P.モルガンは入社後しばらくは、幅広い業界のプロジェクトを経験できます。求められるスキルセットも幅広いので、今後どのようなキャリアを歩むにせよ、役に立つ経験を積めていると思います。
──IBDでの経験はどんなキャリアにも生かせるとおっしゃいますが、専門性が金融や財務に限定されるのはリスクではないでしょうか?
水野:確かに「M&A」とだけ聞くと、スコープが狭いのではと思うのも無理はありません。学生時代の私もそう思っていました。
しかし、実際に働いてみると、M&Aのフィールドは非常に広いと感じます。案件によって方法論や仕事の進め方は全く異なりますし、金融や財務の知識に加えて法務などの理解も必要です。案件によっては契約内容の交渉やクライアントの社内調整を手伝うこともあります。
金融の知識に偏らず、汎用性の高いスキルがバランスよく身につきますよ。
金融知識があれば活躍できるほど、金融の仕事は単純ではない
──お二人は大学時代に経済や金融を専攻していませんから、入社当初は大変だったのではないですか?
庄司:正直なところ、入社した当初は右も左も分かりませんでした。ですが、J.P.モルガンでは入社後に1カ月間の研修があり、ひととおりの金融知識をインプットできます。研修期間中に必死で学んだことで、私はビハインドを埋めることができました。
水野:IBDは専門知識が求められるイメージがありましたから、私も「入社してもやっていけるのかな」と不安を抱えていました。でも入社してみると、実は知識よりもソフトスキルの方が大きな比重を占めているように思うんです。
例えば、「先輩にこの資料を見せたらどんなコメントするだろう」「こういう結果が出たらお客さんはどういう反応するだろう」と想像してみたり。何か聞かれたときに答えられるように準備しておけば、「ああ、しっかり考えてるね」って信頼感につながりますし、より多くの役割を任せられるようになります。
金融学科でコーポレートファイナンスを勉強してたからってうまくいくような、単純な世界ではないと思いますよ。
──そう聞くと、「自分は経済学部じゃないから」という理由で金融を受けないのはもったいないかもしれませんね。では、選考に関してはいかがでしょうか? 金融知識を豊富に持った就活生たちと肩を並べることになりますよね。
水野:ジョブでは、知識不足をコミュニケーションでカバーしました。分からないことが出てきたらその都度社員に質問し、その上で自分なりに深く考えるようにしていました。
金融の知識があったとしても、実務に向き合っている社員の目からすると、どうしても違和感のあるアウトプットになることは避けられません。知識があるからといって、それをひけらかしてしまったり、独善的になってしまったりすることは、かえって足かせになるかもしれませんよ。
庄司:確かにジョブのときは金融知識があるチームメイトがいると心強かったですが、それよりも重要なのは素直に社員のアドバイスに耳を傾け、吸収する姿勢だと思います。当時は「経済を勉強しておけばよかった……」と後悔していましたが、今振り返れば、素直に学ぶ姿勢とか、知識がないゆえの自由な発想とかが評価されたのかもしれません。
法学部・文学部で学べたのは「答えのない問いに挑む姿勢」と「自ら勉強する習慣」
──では、むしろお二人が「大学時代に学んでよかった」と思えることは何でしょうか。法学部と文学部での学びで、今の仕事に役立っていることを教えてください。
庄司:「答えのない問いを考える習慣」ですね。大学では歴史を学んでいましたが、結果何が正しかったのかは誰にも分からない世界です。今の仕事でも、「何が正しかったんだろう?」と言っている間に市場の状況が変わってしまいます。答えのない問いに向き合ってきた経験は今の仕事に生きていると思います。
水野:私の場合、新しいことを学ぶ姿勢が役立っていると思います。大学時代は、心理学の勉強に加えて、法律の授業を取ったり、資格試験にチャレンジしたり、さまざまなジャンルの勉強をしていました。今もプロジェクトのたびに、未知のスキーム・法制度・会計などを短期間で勉強していますから、大学時代と似たようなことをしているかもしれません。
前のお話とつながりますが、J.P.モルガンには私のような文学部出身者もいれば、工学部でロケットの研究をしていた人もいます。専攻内容よりも、さまざまなことを学ぶ姿勢や、自ら勉強する習慣の方が重要です。
「外銀=激務」はもう古い。少数精鋭だからこそ、人材が大切にされる
──ここからは、学生が外資金融に抱くイメージの実態についてお聞きしていきます。
学生から「激務」「お金が好きな人が多い」「冷淡」「UP or OUT(昇進か、クビか)」といった声が上がっていますが、まず「激務」についてはいかがでしょうか。
庄司:実は夜遅くまで働くことはほとんどありません。マーケットが開いている時間に合わせて仕事をしているので、出社は朝7時過ぎ、終業は早いときは18時、遅くとも19時には帰っています。その後は皇居ランをしたり、ヨガに行ったりです。
外国も含めればマーケットは常に開いていますが、ロンドンとニューヨークにもメンバーがいるので、チーム内で引き継ぎを行いながらお客さまを24時間体制でカバーできるんです。
水野:業務量が多くなることもありますが、その理由の多くは「自分が満足するまで調べたい、分析したくてやり過ぎちゃう」という自発的なものです。誰かに強制されて長時間働くわけではないので、つらさはありませんね。
──意外なコメントです。外資金融は少人数ということもあり、体力勝負を求められるイメージでした。
庄司:J.P.モルガンは部門に関係なく、人を大切にする会社だと思います。経営陣が「どうしたら社員がもっと長く、充実して働けるか」を真剣に考えている姿勢を感じます。私の周囲にも育休や産休を取っている人もいますし、働き方について会社からヒアリングを受けることもあります。
外資金融は男性社会・体育会系のイメージが強いかもしれませんが、バランス感覚やコミュニケーション能力など、女性ならではの感覚を生かせる場面が多いですね。実際に、私の同期は男女比5:5で、会社全体では女性社員の割合が少し多いくらいです。女性だからと引け目に感じて受けないのはもったいないなと思います。
若く、温かく、自然体。外銀は「冷淡な競争社会」ではない
──働き方のギャップが明らかになりましたが、社風はどうでしょうか。外資金融は高給でも知られていますから、「お金が好きな人が集まっているのでは?」と思う学生も少なくないようです。
庄司:「お金のためだけに頑張っている」という人はJ.P.モルガンでは見たことがないです。ですから、ちょっと誤ったイメージなのではないかと思います。お金目当てじゃ働けないですね。
一方で、自分が出した成果に見合ったお金をもらいたいというのは、決して悪いことだとは思いません。一生懸命仕事をして実績を出したからには何かしらの評価をされたいですし、その結果がお金ということだと思います。
──お金をもらえるのは結果論であって、お金のために働いているわけではないと。「冷淡そう」というイメージについてはどう思いますか?
水野:どうして「冷淡」っていう印象になるのかよく分からない……(笑)。
水野:冷淡どころか、すごく親密ですよ。日系大企業と比べるとチームの単位が小さく、かつ年齢層も比較的若いので、チームワークは抜群です。若手の集まりは高校のクラスのような雰囲気で、オフの日は会社の同期とフットサルをすることもあります。投資銀行各社のフットサルリーグがありまして、J.P.モルガンは結構強いんですよ。
庄司:私も就活生の頃は、外資金融に「冷淡な競争社会」というイメージを持っていましたが、全然そんなことはありませんでした。「UP or OUT」という言葉もありますけど、クビを恐れながら仕事をしている人は見たことがなく、お互いサポートしながらチームで仕事をこなしているのが実態です。
また、少人数のチームなので、お互いの雰囲気に敏感です。スランプのときには食事に誘ってくれたり、とても気遣ってくれますね。あと、年齢層が若いので、同僚のライフイベントを見る機会もあります。先輩が結婚されたり、お子さんが生まれたりしたら皆で祝いますし、先輩のお子さんが成長していくのを一緒に見られるのもうれしいことです。
──すてきですね。高い成果を求められる中で、温かいチームワークはどのようにして生まれるのでしょうか。
水野:仲良くすることが第一目的ではなくて、同じゴールに向けて走っていく中で自然とチームワークが生まれてくるものだと思います。何か特別なイベントで盛り上げたりしなくても、一人ひとりが責任感を持って仕事をすればおのずと和が生まれてきます。1年目、2年目でできる役割は限られていますが、それでも誰かがその役割をしないと仕事は完結しません。その責任感を一人ひとりが持っているからチームワークが成り立っているのだろうと思います。
──共通の目的を達成するために一丸となる。まるでプロスポーツ選手の絆のようです。
外銀の先入観を乗り越え、一歩踏み出してほしい
──インタビューも終盤です。お二人の今後の目標を教えてください。
庄司:AIの出現によって、金融業界全体が急速に変化していくと予想されています。そんな局面だからこそ、私のような若手が気づけることや、探し出せるビジネスチャンスがあると信じています。アナリストとしての3年を終えたので、今後は営業としてさらに活躍していきたいですね。
水野:今はアナリストとしてベーシックな知識や慣習を学んでいる段階ですが、2年後、3年後を見据え、チームの中心となって案件を引っ張っていきたいです。J.P.モルガンでは、その役割をすぐに求められるようになるとも思っています。
──最後に、この記事を読んで外資金融、J.P.モルガンに興味を持った学生に向けて、メッセージをお願いします。
水野:外資金融は謎に包まれているイメージもあり、キャリアの選択肢に入れていない方も多いかもしれません。私自身も最初から金融に興味があったわけではありませんが、考えることが好きな人は投資銀行に向いているのではないでしょうか。気になったことをスルーせずにしっかり調べ、「どうしてこうなるんだろう」と突き詰めて考えられる人は成長も早いと思います。興味を持ってくださった方は、ぜひ受けに来てほしいです。
庄司:マーケッツ部門では瞬間の判断が求められるので、考えたことを「えいっ」と実行できる、行動力やチャレンジ精神のある人が向いていると思います。
外資金融は「狭き門」というイメージが先行して腰が引けてしまうかもしれませんが、ぜひ躊躇(ちゅうちょ)することなく、自分が頑張ってきたことに自信を持って話していただけるとうれしいですね。
──水野さん、庄司さん、ありがとうございました。
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【ライター:中山明子、山本久留美/編集:辻竜太郎/カメラマン:赤司聡】