企業理解や選考優遇など、就活にとってさまざまなメリットがあるインターンシップ(インターン)。最近では、インターンを実施する企業は増え続ける一方で、学生の参加率もこの4〜5年で右肩上がりに増え、8割以上に達するともいわれています。
しかしその一方で、時間の浪費に終わってしまうインターンがあるのも事実。ワンキャリアの調査では、実に27%のインターンについて、就活生が「ムダだった」と答えています。
そんな状況を鑑み、ワンキャリアは5万件以上のクチコミから「本当に行ってよかった」と思うインターンのランキングを「就活クチコミアワード」として公開しました。そのトップ10社である「GOLD賞」を受賞した企業のうち、今回は三井物産をインタビュー。インターンにかける思いやこだわりを人事総務部 人材開発室の古川さんと近藤さんに伺いました。
──「就活クチコミアワード インターン部門」のGOLD賞、おめでとうございます!
三井物産 人事総務部 人材開発室 室長 古川智章さん
古川:学生の方々からこのように評価していただけて、とてもうれしく思います。相当な時間と手間をかけ、アイデアを練り、きちんと学生の意見を反映して作り上げたインターンだという自負はありますね。
──ありがとうございます。あらためて、三井物産が実施しているインターンの内容を教えてください。
近藤:昨年は新規事業立案がテーマのインターンを2泊3日で実施しました。6人ずつの8チームに分かれ、それぞれに金属、エネルギー、流通、ICTなど社内の各部門の業務に関連する新規プロジェクトの検討をお題としました。どのプロジェクトチームに入るかは、本番の1週間ほど前に第5希望まで聞き、インターン当日に発表します。
──まるで配属発表のような雰囲気ですね。
近藤:そうかもしれません。検討するプロジェクトの内容は、私たち人事だけで決めるのではなく、インターンに携わる各部署の社員に提案をお願いしたのですが、いつもの業務で当たり前に使用していると思われる業界用語や略語が多用されていて、調整にはなかなか苦労しました。
インターン初日は、まず三井物産のビジネスについて講義を行った上で、そこからグループワークをスタートさせました。最終日の発表はプレスリリースという形で、インターン参加者に記者発表会をやってもらうという構成です。最後の発表は、参加者や社員による採点があり、優勝チームも決めます。評価ポイントに「総合力の発揮」といった、他の部門とのつながりという要素も入れました。三井物産のビジネスの現場では、たとえ部門が違っても、実際に仕事をするときは他部門と関わることが多いためです。
古川:また、今回はグループワークとは別に、ドイツやアルゼンチンなど、海外に駐在している社員とオンラインで話す時間も設けました。
三井物産には「海外修業生制度」という研修制度があり、英語圏以外で語学学習や勤務をしている社員がいるので、彼らに協力してもらいました。時差があるため、朝8時にスタートといったスケジュールになることもありますが、それでも多くの学生が参加しますよ。
Skypeを使って海外の社員とテレビ会議を行う時間も設けた
近藤:商社における実際の業務や職場環境が分かりにくい、という声を採用担当としてよく学生の方から耳にしています。そのため、当社のインターンでは、「商社の仕事」や「商社で働く」ということを体験してもらいます。
──とても綿密なプログラムですね。それらを踏まえて、御社のインターンにおいて「ここだけは他社に負けない!」という点はどこでしょうか。
近藤:インターンに協力してくれる現場社員のコミットですね。インターンに対する社員の本気度は目を見張るものがあります。インターンでは1チームに1人、現場社員がアドバイザーとしてつき、毎晩参加者との1on1も実施します。
宿泊型のインターンなので、彼らは本当に丸3日間業務から離れることになる。これは想像以上に大変なことですが、参加するアドバイザー全員が「単なるインターン」ではなく「自分たちが三井物産のリアルを発信する」という意識を持って、全面的に協力してくれます。人事としてもいい意味で緊張感を持って臨めます。
古川:商社はよく「インターンに現場社員を呼ぶのが難しい」といわれます。でも、ウチは学生の持つエネルギーや熱量に興味を持ち、接してみたいと考える社員が多い。それが「人の三井」と言ってもらえる所以なのだと思います。
近藤:実際、仮に出張などで予定が合わなかったとしても、別の日程で参加できないか聞いてくる社員も多いです。また、インターンでは、社員が学生へのフィードバックをするセッションがあることは先にお話しした通りなのですが、「学生からのフィードバックを知りたい」というアドバイザーも多くいるくらいです。
グループワークの様子。壁一面のホワイトボードを駆使して、熱い議論が行われていく
──すごいですね、まるでベンチャー企業のような力の入れようです。社員のコミット具合やインターンの内容から、「三井物産について知ってもらう」という目的に加え、優秀な学生をアトラクトをするという狙いもあるように思えるのですが、いかがでしょうか?
近藤:もちろん、インターンで「いいな」と思った学生には、来てもらいたいとは思います。ただ、直接採用につなげようとは考えていません。
古川:そもそも、インターンの目的は「三井物産の良いところも悪いところも知ってもらうこと」。ファンを作ろうとは思っていません。仕事とは、朝から晩までするものであり、「仕事が合う/合わない」は非常に重要な観点です。
だからこそ、少しでも商社の仕事を知ってもらい、「本当に商社がいいのか?」そして「本当に三井物産がいいのか?」を見る機会として、利用してもらいたいと思っています。
近藤:インターンの段階で人を「選ぶ」ことをすると、学生は、選ばれるような成果を出すことを意識するようになってしまいます。「優勝したら何かある」ではなく、あくまで「三井物産とはどういうところなのか?」を知ってもらう場にしてもらいたいのです。
──近年、インターンを開催する企業も参加する学生も増えてきています。今後、三井物産にとってインターンの目的や役割はどのように変わっていくと思いますか?
古川:「三井物産を知ってもらう」という目的は、おそらく今後も変わらないと思います。インターンは、あくまでも「就業体験の場」だと考えています。
近藤:目的は変わりませんが、私たちは「インターンは生き物」だと考えており、学生のニーズや状況に合わせて、毎年コンテンツを変えています。正直なところ、夏休みが終わる頃から、もうインターンのことで頭がいっぱいでした(笑)。
三井物産 人事総務部 人材開発室 近藤里穂さん
古川:経団連(経済団体連合会)がインターンに関するルールを定めていたこともあり、過去には4泊5日や1泊2日で行ったこともあります。全国各地で面接をするなど、なるべくいろいろな学生が参加できるように工夫しています。宿泊型のプログラムにしているのも、その一環です。
近藤:毎年多くの学生に応募いただいていますが、ここ数年「その期待に応えきれていないのでは?」という気持ちが個人的にはあります。以前よりも「少しでも興味がある業界や企業のインターンに応募しなければいけない」と考える人が多くなったと思いますし、それに応えられるだけの席が用意できていないのも事実です。
インターンの合否と本選考は全く関係ありませんが、仮に不合格になってしまった場合、学生に与える心理的ダメージは大きいですよね。かといって、インターンの回数を増やすとなると、今までのように、内容にこだわることが難しくなるというデメリットがあります。難しい問題ですが、新しい方法を試し続けることこそが大切なのだと考えています。
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