こちらは日系経営コンサルティングファームである株式会社コーポレイト ディレクション(CDI)の寄稿記事です。
CDIでは「徒弟制採用」という採用活動を20年近く続けています。
これは採用(参画の意志を互いに固めること)と育成(自ら育っていくこと・そのための環境を整備すること)に責任を持つシニアクラスのコンサルタントが、自らの採用基準を持って採用活動をするという仕組みです。
それぞれの人材が自らの個性を生かしながらコンサルタントとして育っていく場として、適した仕組みだと考えています。
今回は自身も「徒弟制採用」を通じてCDIに参画したエグゼクティブ・コンサルタント(※1)3人がコンサルタントの在り方や「師匠と弟子」の関係について語ります。就職活動に取り組まれている皆さんが、CDIに興味を持っていただくきっかけとなれば幸いです。
(※1)……エグゼクティブ・コンサルタント:CDIの経営を担うシニアクラスのコンサルタント。一般的なコンサルティングファームにおける、パートナーに該当
左から是枝邦洋、藤本隆介、小川達大。この3人は師匠役、つまりは今年の採用担当を担います
面接は「不思議なほどに」心地よい? 良き師匠と巡り合うCDIの選考
──この記事の読者は就職活動中の学生が多いと思います。まず皆さんが、学生としてCDIの「徒弟制採用」に接したきっかけを教えていただけますか。
小川:学生のころを振り返ると、CDIの面接は「不思議なほどに心地よい雰囲気だった」という記憶がありますね。
──心地よい、とはどういうことでしょう。
小川:CDIの新卒採用では、筆記試験、GD(グループディスカッション)などの選考プロセスを通過した後、学生が自分の弟子入りしたいコンサルタントを選ぶのですが、そのとき、私が師匠として選んだのが石井さん(※2)(石井光太郎:CDI代表取締役)でした。
今でも覚えているのは、面接中に「選考って、どういうふうに進めたら良いのかなあ」と相談されたことです。「なんてことを聞く人なんだ」と驚きましたが、「選考する会社と選考される学生」という、会話の前提となる関係性が揺らぐ楽しさを体感したように思います。今思えば、それはコンサルティングの「技」の1つでした。
(※2)……社内の人を「さん」付けで呼ぶのはビジネスマナーとしては正しくないことは分かっていますが、何か気恥ずかしいので「さん」付けで進めます
小川 達大(おがわ たつひろ):CDIエグゼクティブ・コンサルタント
東京大学 法学部卒。CDI新卒入社後、ベトナム事務所の立ち上げ、シンガポール駐在を経験。全社戦略、アジア展開、新規事業開発、M&Aなどさまざまな経営テーマに関するコンサルティングを経験。現在、oriri(CDI Group カンパニー)代表を兼任。
──コンサルティングファームの選考というと、与えられたケースやフェルミ推定を解くイメージがありますが、進め方について学生に質問するのは新鮮ですね。
小川:私は「コンサルタントは、人の話を聞く仕事」だと考えています。相手に自分の考えを述べるにしても、相手の悩みを正しく理解しないことにはそもそも出発点にさえ立てないと直観的に感じていましたし、その出発点に立つことも相当に難しいことなのだろうと思います。
面談のときは、自分の「性能」を品定めされているような感じではなく、石井さんと1人の人間同士として向き合いながら会話をさせてもらいました。この人の下であれば、自分が思うコンサルタントとして育ちそうだ、と感じました。
──確かに、コンサルタントが人の話を聞く仕事だとすると、対話しながら進めていくというやり方がしっくりくるように思います。皆さんはCDIのどのような点に魅力を感じ、入社を決められたのでしょうか。
藤本:私の「師匠」は安島さん(安島孝知、Group Board Member)というのですが、最終面談はプレゼンテーションをさせるスタイルでした。
伝えたいことに対して自分の表現力が追い付かず、もどかしさを残してプレゼンテーションを終えたのですが、それに対する質疑で安島さんから投げかけられる質問が「よくぞ聞いてくれました!」というツボを押さえてくる。おかげでこちらは言いたかったことを全部吐き出し、スッキリ爽快で帰路に就いたのを覚えています。
当時、「経営者の相談業」がしたくてコンサルティングファームをいくつか見て回っていましたが「これが相談業か!」と直観的にピンときました。まさに、良き師匠との巡り合いでしたね。
藤本 隆介(ふじもと りゅうすけ):CDIエグゼクティブ・コンサルタント
東京大学 農学部卒。CDI新卒入社後、オーナー企業に対する多面的・長期的な支援を経験。「事業づくり」と「人材づくり」の一体型支援を行うコンサルティングチームを立ち上げる。現在、株式会社ストラテジックインサイト取締役、oriri(CDI Group カンパニー)ヴァイスプレジデントを兼任。
是枝:私の「師匠」も安島さんなのですが、面談での彼の話にとても引き込まれました。
彼によると、この仕事は究極的にいえば、手足を縛られた状態でテーブル越しに経営者と対峙(たいじ)する。経営者がテーブルの上に数千万円を積んで「何か面白いことを言ってみろ」と言う。それに応える。満足していただく。そういう仕事だと。その話を聞いて、CDIに入社したいというよりも、安島さんの弟子になりたいという気持ちになりましたし、その私にとって「徒弟制」は非常にしっくりくる制度でした。
指導するわけでもなく、背中を見せるわけでもない。師匠と弟子の関係性とは?
──CDIに入社してから、師匠とはどのような関係になるのでしょうか。一緒に仕事をする機会も多いイメージですが。
是枝:私の場合は意外とそんなことはないですね(笑)。CDIに入社してから10年以上が過ぎ、経験したプロジェクトは100件を超えましたが、安島さんと仕事をしたのは、実は片手で足りるくらいです。だからといって疎遠かというと、そんなことはなく、いつでも相談できる師匠として心の支えになってくれました。
例えば、自分がマネージャーになりたてのころ。安島さんが依頼を受けた仕事のプロジェクトリーダーを担当しました。若干空回り気味だったのか、資料が報告会の期日に間に合わなくなってしまい、どうしようもなく「クビになって責任を取ろう」と思いつめ彼の部屋へ行きました。
安島さんは何も言わず、私を連れて手ぶらでクライアントのところへ向かいました。私はクライアントに突き出されるのだろうとビクビクしていたのですが、1時間後、クライアントと安島さんの間では議論が大いに盛り上がり、事なきを得た、むしろクライアントから非常に感謝されていました。
今思えば、そのときのクライアントが求めていたのは、プロジェクト自体の位置付けやその先にあるものの目線合わせであり、資料ではありませんでした。そんなことも分からないほどに舞い上がっていた、ということかもしれません。しかし、当時の私からすると、柔道の達人が身じろぎもせず巨漢を投げ飛ばしているような、魔法を見るような気持ちだったことを今でも覚えています。
是枝 邦洋(これえだ くにひろ)
京都大学大学院 人間・環境学研究科修了。CDI新卒入社後、上海オフィスに出向。東京オフィス帰任後も、一貫して日本企業の中国事業戦略立案・実行支援に携わる。現在、CDI上海オフィス董事(とうじ)総経理、oriri(CDI Group カンパニー)ヴァイスプレジデントを兼任。
藤本:私の場合は、長期のプロジェクトで安島さんと時間を共有する機会が多かったですね。クライアントの社長が「何を考えているか」「どんな景色を見ているか」「われわれをどう見ているか」といったことについて「感想戦」をする時間を多くもらいましたし、今の自分が持つコンサルティングの土台を成しています。
「向き合って指導をする」わけでもなく、「先頭を走って背中を見せる」でもなく。「横に並んで同じ景色を見て同期していく」とでも表現するのがしっくりきますね。
小川:私の場合は、今に至るまで石井さんと同じプロジェクトに関わる機会は多くはなかったです。でも、自分が何かを考えたり、行動しようとしたりするとき、「石井さんだったら、どうするだろう」と頭の中にいつもいる人ではあります。
しかも、同じプロジェクトの機会があっても、あまり具体的な教えはもらっていない気がします。私が手取り足取り指導されることが苦手であることを配慮してもらっているのかもしれませんが……(笑)。
自分が成長することで、師匠から学ぶことも自ずと変わっていく
──コンサルタントとして考えるとき、常に頭の片隅にいて意識するような存在なのですね。キャリアを重ねる中で、師匠との関係性に変化はありましたか?
小川:自分の置かれた環境が変化するとき、改めて師匠の存在について考えるきっかけがありました。
入社してからしばらくして私は、CDIの新しい事務所を作るため、ベトナムのホーチミン市に引っ越したんですね。身ひとつで新しい土地に移り住み、窓からの景色だけが取りえの何もないガランとした事務所に、少しずつ事務機器を入れ、人を増やしていきました。自分にできることが何もないことを痛感しながら、自分でもできることに1つずつ取り組んでいく日々でした。
そのとき、社長の石井さんから何か具体的な指示を受けることは少なかったですが、ベトナムに私を行かせることを大いに逡巡(しゅんじゅん)していたこと、社内で「小川を帰任させるべきでは?」という声が出たときに全力で守ってもらっていたことなどを、後になって人づてに知りました。覚悟を持って環境を作ってもらっていた。その上で見守ってもらっていた、ということだと思います。
是枝:私は自分がCDI上海オフィスの経営を担うことになって以降は、ファームの経営者として相談することが増えました。そこでも、安島さんは何か教えるというよりも、自身がどのような考えでCDIの経営を行っているのか、何を悩んできたのかを共有するだけでしたが、その姿勢から多くのことを学びました。
結局は、(投資先ではなく)自社の経営経験がない人間に、コンサルタントはできないということ。その経験を積めることこそが、CDIの唯一にして最大の強みであることを教えてもらったように思います。
藤本:関係性が変わっていく、という感じはあまりしませんが、「師匠」が言っていることややっていることに対する、こちらの理解(解釈)力が備わることに伴って、学ぶことも自ずと変わっていく、ということかもしれません。
小川:そういえば、ベトナムにいたころのことで、今も覚えていることがあります。石井さんがホーチミン市まで出張に来たときに一緒に食事をして、エネルギーあふれる新興国の街並みが見えるビルの屋上にあるバーで、その夜景を見ながら、石井さんがふと「最近、僕は、コンサルティングがうまくなってきている気がするんだよなあ」と言いました。
30年以上経営コンサルティングに現場で取り組んできた人が、もっとうまくなろうとしていること、そして、そのことに目をキラキラさせていることにとても感動したことを覚えています。
コンサルティングも採用も、「観る力」を問われることに変わりはない
──すてきなエピソードですね。最後にここまで読んでいただいた皆さんにメッセージをお願いします。
藤本:「徒弟制」を支えているものは、人を「観る力」と、その力を信じることへの矜持(きょうじ)だと思います。コンサルタントは経営者や法人を「観る」仕事ともいえますから、採用方法とコンサルティング理念が根底のところではつながっています。
「観る力」を武器として磨き続け、コンサルタント同士もまた「観る力」でつながることでその価値を引き継いでいく、これがこの集団の成り立ち方であり、そこにCDIのユニークネスの源流があるのだと思います。
この営みを引き継いでいくことに、改めて身が引き締まる思いですし、そんな私たちに共感して参画してもらえる人に出会えることを、大変楽しみにしています。
是枝:自分は運良くエグゼクティブコンサルタント、他社でいえばパートナーのクラスまで到達することができました。しかし、入社したころにあこがれた師匠の境地にまではまだ達していない。むしろ、やっと入り口に立てたという感覚です。
そんな自分が師匠として採用する立場になる。当時の自分のように、学生の皆さんに選んでいただけるのか。CDIの徒弟制は、そのような緊張感があるから成り立つものだと考えています。皆さんの応募をお待ちしています。
小川:今度は、私が人を採用する番になりました。採用した人に対して、石井さんにしてもらったようなことを全て与えられるほどの力は私にはないでしょうし、私は私ができることをするだけです。ただ、採用した相手、他でもない「その1人の相手」と向き合い、個性の芽が枯れないように努力することは怠らないようにしたいと思います。
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