これまで数々のトップランナーのキャリア観に深掘りをしてきた、北野唯我の「シリーズ:激論」。今回は、起業家・インフルエンサー・モテクリエイターとして、飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍している、菅本裕子氏(通称:ゆうこす)に話を伺った。前編はこちら。
【見どころ】
・「嫌われる勇気がないと、そもそも愛されない」その真意とは
・「実名で活動する」意味
・「ファン」の顔が見えるだけで、仕事は楽しくなる
・もしも今、ゆうこすさんが就活生なら?
でも嫌われる勇気がないと、そもそも愛されないですよね?
菅本裕子(ゆうこす):1994年5月20日生まれ。「モテるために生きてる!」「モテクリエイター」と宣言し、フォロワーは累計で約100万人(Instagram、Twitter、YouTube、LINEなど)。HKT48退団後、ほぼニートから、22歳にして個人事務所KOSを設立し、SNSを駆使した自分プロモーションで、ファンを広げ続けている。
北野:前編では、ビジネスマンとしての「モテる奥義」を伺いましたが、後編では「自分の名前でいきていく」方法について教えてください。
今は、SNSをやっている若者も多いなかで、「炎上」や「実名のリスク」を気にする人もいますよね。ゆうこすさんは「炎上」や「誰かから嫌われるリスク」は怖くないのですか?
ゆうこす:そもそも、嫌われる勇気がないと、愛されないと思うんですよね。
多分、普通、人に好かれたいから嫌われる勇気が出ないと思うんですが、そもそも嫌われる勇気がなかったら好かれないですよね。だって私がそうだったし、嫌われる勇気がなくて、皆に好かれたいとなったときに、その皆ってどの世界なのか、相手が見えていないじゃないですか。
北野:確かに。「皆に好かれたい」といったときの「皆は」、ボヤッと「誰かに」嫌われたくない、と思っています
ゆうこす:そうですよね、本当は自分が好かれたい世界で好かれればいいだけの話なんですよね。自分の半径何メートルかは分からないですけど。
北野:面白いです。ゆうこすさんの場合だと、「どの半径数メートル」なんですか?
ゆうこす:私だったらぶりっこをしたいけれどできないという世界です。そこで嫌われたらアウトって感じなんですけど、反対にいうと、それ以外の知らない世界から嫌われたって、知らんわ! と。
SNSは実名だと、命をかける。相当自分に厳しくなれる
北野: SNSって、匿名でやっていらっしゃる方もいるじゃないですか。それは実名の方がいいとか、ゆうこすさんから見て、アドバイスはありますか?
ゆうこす:どっちでもいいんですけど、それは実名に越したことはないですよね。なぜかというと、人生をかけてるじゃないですか。例えば、さんまさんが「さんまのまんま」「さんまのお笑い向上委員会」とか自分の名前が付いているからこそ、自分のやることとか自分のことに相当厳しくなるのは当然ですよね。
北野:つまり「自分の名前」をかけるからこそ、厳しくなれる。プロになれると。ビジネスの世界でも同じですね。
ゆうこす:そうです、もしそれが匿名だったら、最悪逃げられるし、辞めればいいし、みたいなのがあると思います。どちらでもいいんですけど、実名の方が自分を追い込めるかな、みたいなのはあります。でも、そこまでストイックにやらなくてもいいかなとも思いますけど。
同じ仕事に見えても全然違う。「ファン」の顔が見えるだけで、仕事は楽しくなる
北野:この「実名で活動する」って意味だと、ゆうこすさんは、HKT時代の仕事と、今の仕事で、(1)同じだと思う部分と、(2)違うなと思う部分ってありますか?
ゆうこす:アイドル時代の仕事と、今の仕事は同じ部分もありますが、ファンに対する熱量みたいなところは、私は大きく変わったかなと思います。
私はアイドル時代、ファンを一人ひとり見られていなくて、そんなはずないのに、「ファンがいなくても成り立つ」と思っていました。もともと大きいグループだったので、入ってすぐに紅白でバックダンサーができたり、ラジオ番組、雑誌、全部決まって、実感値がなかったんです。
でも辞めてニートを経験して、初めてファンがいて成り立つんだということを経験しました。今の「モテクリエイター」という仕事って、ファン一人ひとりの人からモテるっていうことなので、一人ひとりの顔が見える。だから、一人ひとりに対する思いだとか、ファンに対する熱量みたいなところが私は変わったかなと思います。
北野:これってすごく本質的な話の気がしていて、それこそ大きな会社に勤めていると、本当は、お客さんがいて成り立つけど、お客さんの顔って見えづらかったりしますよね。
例えば僕の場合、自分の名前で本を出すとなったときに、この時代、書籍って何もしないと誰も買ってくれないので、一人ひとりに手で売っていくイメージでした。この本はこういう意味があって、だからこういうことが必要なんだというのを本当に一人ずつ語る感じです。
北野唯我(きたのゆいが):兵庫県出身。ワンキャリアの執行役員。著者。博報堂、ボストン コンサルティング グループを経て現職。テレビ番組・ラジオ番組のほか、日本経済新聞、東洋経済、プレジデントなどのビジネス誌で「職業人生の設計」の専門家としてコメントを寄せる。
初の著書『転職の思考法』(ダイヤモンド社)は発売2カ月で10万部突破のベストセラーになっている。
具体的には、今回の書籍は2ヶ月で10万部いったんですが、最初の頃にやっていたのが、Twitter上で「#転職の思考法」でつぶやいた人全員にコメントバックするということをしていて。しかも、宣言してやっていたんです。「Twitterでつぶやいてくれた人は全部見て反応します」と。
それってやっぱり、本を読んだ人からしたらすごくいいユーザー体験だと思うんです。自分がめっちゃ感動して良かったと思う本の感想をツイートしたら、著者がそのまま「ありがとうございます」と言ってくれるって、すごくいい体験じゃないですか。
今でもやっているんですけど、その経験ってやっぱりファンというか買ってくれる人の顔が見えたな、とすごく思っていて。でも、会社の冠で仕事していた時代は「相手の顔」が結局、見えていなかったと思うんですよ。
なので、「ファンやお客の顔が見えるかどうか」で仕事の楽しさが変わる、というのは、ビジネスマンも同じなのかな、と話を聞いて思いました。
人はネガティブなものについてこない。太陽タイプと月タイプ
北野:ゆうこすさんと話していて思うのは、鋭くて繊細な面もありつつ、めちゃくちゃ「ポジティブ」でもある。これはご自身ではどう思いますか?
ゆうこす:もともと私、誰よりもネガティブだったと思うんです。でも、SNSで個人で発信を始めたときに、人はネガティブなものになかなかついてこない、ONE PIECEの「ルフィ」みたいなバカポジティブだから応援しようとかついていこうと思えると気付きました。
ネガティブを売りにする人も、結局それはネガティブをポジティブに発信しているんだと思います。人を引きつけるにはポジティブでいないといけないんだなということに、多分SNSの発信をし始めて気付けたのが一番大きかったのかなと思います。
北野:やっぱり「ポジティブなものにしか人は引きつけられない」と。
ゆうこす:はい。あと私がそもそもネガティブな人がそんなに好きではなくて。自分がネガティブなくせに(笑)。
北野:(笑)。確かにゆうこすさんは、根の思考法としてはもともとすごく繊細だけど、それを乗り越えた思考法ですもんね。一方で、「根っからのルフィ」みたいな方もいるじゃないですか、何が起きても幸せそうな人。僕はいつも、「月タイプ」と「太陽タイプ」と言っているのですが。
「太陽タイプ」の人の良さもあると思うのですが、もともとはネガティブかもしれないけれど、ポジティブになって、努力を積み重ねていった、ポジティブな「月タイプ」な人って、それはそれでいろいろな人を救えるし、たくさんの人に好かれるというのは、いつも言っている話なのですが。
ゆうこす:多分どっちもある人の方が絶対いいですよね。その方がいろいろな人の気持ちになって考えられるので。なのでネガティブな人は、最終的に最強な人になるための第一歩をもう踏んでいるわけですよね。太陽だけ、月だけよりも、「太陽と月を併せ持った人」が一番いいと思うので。
行きたい会社ではなく「受け入れてくれる会社」がいい。でも、それが正解かもしれない
北野:今もし、ゆうこすさんが就活生だとして、就職活動がスタートしたとします。そもそも、就職活動をしますか?
ゆうこす:したい企業があればすると思います。
北野:どの会社を今なら受けると思いますか?
ゆうこす:えー、ゆうこすが受けたい会社なんだと思う?
(※編集部注:取材に帯同した、ゆうこすの会社の社員にふる)
社員:どちらかと言うと、受け入れてくれる会社が……。
ゆうこす:ちょっと待って。書かれたよ今メモに!(一同笑)
でも、今のは正解かもしれないです。というのも、就活もゴリゴリ自分から入れてください、入れてくださいと言いたくなくて。「入ってください」と言われたいんですよね。
そういう人の方が、自分から自己中に融通を利かせられるし、びくびくせずにいられるじゃないですか。だからそのためにも多分私は、学生のときからSNSで自己発信をして、その中で「知ってる、入ってください」と言ってくるくらいがいいです。だからちょっと王様目線で、入ってやってもいいけどな、くらいの。入ってもいいよくらいの視点でいたいです。
北野:本質的にはそうかもしれないですね。
ゆうこす:なのでもし入りたい企業があったら、SNSでアピールをします。これって、他の人たちよりもアピール時間が長いからいいですよね。
北野:最後に、同じような質問ですが、自分の子どもがいて21歳の就活生だとしたら、どうアドバイスしますか?
ゆうこす:そうですね、私の子どもということは多分私の遺伝子により、結構飽き性だと思うんです。今の時代、何が良くて何が悪いかということも数年後には変わっているかもしれない世界じゃないですか。
なので、いろいろな企業で働ける子になってほしいし、個人でも企業でも、いろいろなところで働ける子になってほしい。
北野:なるほど。
ゆうこす:その際実績なのは「肩書」ではなくて、多分「経験」ですよね。転職するときに、LINEにいた、だけじゃなくて、LINEでこのサービスの立ち上げをやりましたと言われたら、おお、となると思うんです。だからどの企業にいたかというよりは、どれだけ自分に任せてくれるかというか、そういうところを選べと言いたいです。
北野:楽しくてあっという間でした! ありがとうございました。
一流たちが激論を交わす 〜北野唯我 インタビュー「シリーズ:激論」〜
・フリークアウト・ホールディングス取締役 佐藤裕介氏
・KOS代表取締役 菅本裕子氏(ゆうこす):前編/後編
・JAFCO Investment (Asia Pacific) Ltd CEO 兼 (株)ジャフコ 常務取締役 渋澤祥行氏
・アトラエ代表取締役 新居佳英氏
・リンクアンドモチべーション取締役 麻野耕司氏:前編/後編
・ヴォーカーズCEO 増井慎二郎氏
・元楽天副社長 本城慎之介氏
・東京大学名誉教授 早野龍五氏:前編/後編
・陸上競技メダリスト 為末大氏:前編/後編
・元Google米国副社長 村上憲郎氏:前編/後編
・ジャーナリスト 田原総一朗氏
・サイバーエージェント取締役 曽山哲人氏