就活生の多くが、インターンシップに関心を持っているのではないでしょうか。
一方で、「インターンシップは効果があるの?」「インターンシップで新卒採用のミスマッチは減るの?」とその効果に疑問を持っている人も多いようです。
この記事では、「実施企業」「インターンシップに参加した就活生」「新卒社員」の三者の観点から、インターンシップのデータを見ていきたいと思います。
インターンシップで見極めるべきポイントとは一体何でしょうか?
概況:実施の目的は「採用寄り」へ変化、実施数は7割に増加
まずは、現在、インターンシップがどれだけ実施されているのか、その推移を見てみましょう。
※2017年度のみ実績値に予定値含む(2017年12月~2018年1月時点)。建設業は2011年度の数値なし
出典先は(※1)に記載。
上記のグラフによると、インターンシップを実施する企業数は、2011年度は36.4%だったのが2017年度は68.1%と倍増しています。
従業員5,000人以上の大企業にいたっては、2017年度は91.7%がインターンシップを実施しているのです。インターンシップを行っていない大企業は少数派といえます。
では、企業はどんな目的でインターンシップを実施しているのでしょうか。こちらの図をご覧ください。
数年前は「社会貢献寄り」だった目的が、「マッチングや採用といった直接的な『採用寄り』」に変化してきているのが分かります。
インターンシップの実施目的(インターンシップ実施企業[実施予定を含む] /複数回答)
※出典:リクルートキャリア 就職みらい研究所調べ「就職白書2018-インターンシップ編ー」
最も多い目的は、「仕事を通じて、学生に自社を含め、業界・仕事の理解を促進させる」です。
また、「学生に就業体験の機会を提供することで、社会貢献する」という目的が、7割から5割へと大きく減っています。
対して、「採用を意識し学生のスキルを見極める」「採用に直結したものとして実施」の2つを足すと、約5割になります。
(※1)出典:「リクルートキャリア 就職みらい研究所調べ」2013~2018年度の『就職白書-インターンシップ編-』より筆者が加工しグラフを作成。各年度のデータの出典先は以下の通り。
・2017年度、2016年度「就職白書2018-インターンシップ編-」
・2015年度「就職白書2017-インターンシップ編-」
・2014年度「就職白書2016-インターンシップ編-」
・2013年度「就職白書2015-インターンシップ編-」
・2012年度「就職白書2014-インターンシップ編-」
・2011年度「就職白書2013-インターンシップ編-」
実態:「大変満足」でも13%が「就職したくない」? 満足度と志望度は一致しない
インターンシップを行う企業が大幅に増え、目的も採用を意識したものに変化しています。
これは学生にとっても、入社前にマッチングを行う機会が増え、入社後のギャップを少なくするためには良いことなのかもしれません。
では、インターンシップ後に、学生の意識はどのように変化するのかを見てみましょう。
こちらの調査結果によると、インターンシップ後に「この企業(業界、職種)には就職したくない」と意識が変化する人が一定数います。
※出典:株式会社ディスコ 「2019年卒 特別調査インターンシップに関する調査(2018年3月発行)」
興味深いのは、「この企業に就職したい」と思ってインターンに行った人の中でも、8%が「この企業に就職したくない」に変わっていることです。
また、「就職は意識しない」でインターンシップに参加した人においては、「この企業に就職したい」に変わった人数の約2倍が「この企業には就職したくない」に変わっています。なぜか、ネガティブな方向に意識が変化している人が多いのです。
次は、インターンシップの満足度が、その後の就職志望度にどう関係してくるかを見てみましょう。
※出典:株式会社ディスコ 「2019年卒 特別調査インターンシップに関する調査(2018年3月発行)」
上記の図から分かるように、インターンシップに満足なら「この企業に就職したい」と思う割合が高くなる、不満足なら低くなる、という当たり前の結果が出ています。
しかし、面白いのは、インターンシップに大変満足だった人でも、13%が「この企業には就職したくない」に変わっていることです。
これはなぜなのでしょうか?
要因:「インターン先に就職したくない」に変化する理由は「仕事内容」「事業内容」
これについては、インターンシップに行った企業に就職したくない理由を見ると推測できます。
下記の図からも分かるように、「インターンシップ後にその企業に就職したくなくなる理由」は、「仕事内容が自分に向いていないと思った」「事業内容に興味が持てなかった」がツートップとなっています。
※出典:株式会社ディスコ 「2019年卒 特別調査インターンシップに関する調査(2018年3月発行)」
インターンシップのプログラム自体には満足しても、「そこで知った仕事・事業の内容が自分には合わないと分かったため、その企業には(いい企業だとしても)就職したくないと思った」という状況が考えられます。
ということは、インターンシップは企業と学生のミスマッチを防ぐ機能を多少は果たしているようです。
対策:インターンで見極めるべきは「◯◯」。入社後の最大のギャップとは?
新卒採用のミスマッチを減らすために、インターンシップ中に学生が把握すべきこととは何でしょうか?
それを考えるヒントとして、新入社員が入社後、どんなことにギャップを感じるのかを見てみましょう。
下の図は2022年に実施された新卒入社社員による入社後の状況に関する調査結果です。
※出典:レバレジーズ株式会社「キャリアチケット調査 入社後状況に関する調査」
「入社後ギャップ」の1位は、「仕事内容や配属について」です。
配属が希望通りでなかったことへのギャップの他に、希望部署に配属されたとしても、業務内容が自身と合っていなかった場合もあるようです。部署の事業内容を事前に確認しておくとよいでしょう。
続いて2位は、「ワークライフバランス」となりました。
3位には、成長環境やキャリア開発が挙げられています。インターンシップや企業研究、面接の中で、仕事内容・社風・キャリアパスなどを事前に確認できれば、入社後のギャップによる早期離職を食い止められるかもしれません。
また、4位には、組織の特徴や社風に関するものが挙げられています。社内の雰囲気や文化が自分と合っているかを確認することが重要となってくるでしょう。
総括:インターンに参加する前に、自分がやりたい仕事を明確にしておこう
「インターンシップの変遷」「参加した就活生の感想」「新卒社員が入社して感じたギャップ」をご紹介してきました。
これらのポイントをまとめてみましょう。
【企業】
・インターンシップを実施する企業数は年々増加し、全体では7割、大企業では9割が実施
・目的は「業界・仕事への理解促進」と「採用に直結したものとして実施(採用寄り)」に変化
【就活生】
・インターンシップの内容には満足しても、「その企業に就職したくない」と意識が変化することがある
・企業に就職したくなくなる理由は「仕事内容」「事業内容」
【新卒社員】
・入社後のギャップを少なくするには、入社前に「仕事内容」「社風」「キャリアパス」などを確認しておくこと
インターンシップで入社後のミスマッチをなくしたいのなら、まずは、インターンシップに参加する前に、「自分がどういう仕事をしたいのか」「どんな仕事ならできるのか」について考えておきましょう。
その上で、インターンシップに参加し、「仕事内容が自分に向いているか」「事業内容に興味が持てるか」を必ず確認しましょう。
これらのデータを活用することは、自分の志望動機を今一度見直すきっかけにもなりそうです。
インターンシップの効果に疑問を持つ声も多いようですが、売り手市場において優秀な学生を確保するために、企業に打ち寄せるインターンシップの波は止められないのが現状なのかもしれません。
それなら、入社後のミスマッチをなくすための好機ととらえて前向きに利用するのも、戦略の一つだと思います。
(Photo:StunningArt/Shutterstock.com)
※こちらは2018年9月に公開された記事を一部加筆しました。