はじめまして。私は元18年卒で、19年卒として就活を終えた就職浪人経験者です。
7月も中盤に差し掛かり、19年卒の就職活動も終わりを迎えた人も多いことかと思います。皆さんは望むような就職活動を行うことができたでしょうか。
売り手市場とはいえ、優秀な学生が殺到する商社、デベロッパー、マスコミを始めとした超人気業界は狭き門であるのが現状。満足のいくような結果を出せた人の方が少数であるかもしれません。
昨年この時期の私も、志望業界から内定をいただくことができず、就活を終えた解放感ともやもやした気持ちの両方を抱いていたように思います。周囲につられて遊び回る中、私はその間で悩みながらも、就職浪人(以下、就浪)を決意。今年の6月に2度目の就職活動を終えました。
就浪を考えている人、キャリアに悩んでいる人に向けて少しでも参考になればと、私の就浪の過程とその苦労について書きました。
「不利になる」「あきらめきれない」悩み抜いた末の就浪
昨年の就職活動で私は金融業界の内々定をいただいた。
6月に就活にひと段落つき、大学で友人と会うたびに話に上がるのは、「~が○○商事」「~が博○堂」という就職先の話。純粋に友人の就職先は気になったが、いまいち盛り上がり切れない。就活からの解放感からか飲み会も増えたが、それでもいまいち盛り上がり切れない。
なぜなら私は、志望業界に行くことができなかったから。
私に就活のことを考える前から「ある業界で働き、現状を変えたい」という人並みならぬ強い思いを抱いていた。若くして亡くなった高校の先輩の無念を晴らすためにも、その業界で必ずやり遂げたいことがあった。
しかし、1度目の就活は思いが空回りし、志望業界からは内定がもらえないまま、就職活動を終えたのだ。
煮え切らない思いはあったが、就浪は、親への金銭的な負担を強いることにもなるし、再チャレンジしても結局内定がもらえないリスクも高い。「業界によっては、就浪は不利になる」とも聞いていた。だから、転職も視野に入れて、内定をいただいた場所で努力しようと心を固めていた。
しかしどうしてもあきらめきれず、内々定式直前まで悩み抜いた揚げ句、就浪を決断した。
「現実を見た方がよいのでは?」就浪後の初面接、衝撃的な一言
就浪後、初めて迎えた大手メーカーのインターン面接。
クリーニングに出したしわ一つないスーツ、ぴかぴかに磨き上げた革靴、整髪料できれいに整えた髪形。少しでも良い印象を与えたいと、昨年以上に身だしなみに注意して臨んだ。
はきはきと笑顔でこたえられるように、会場の鏡で笑顔を保つ練習までしていた。
面接室に呼ばれた後、自己紹介と軽い雑談の後、いつも通り聞かれそうな「学生時代の経験」を頭で繰り返していると、昨年とは異なる質問を投げかけられた。
「ところで君は学年と年齢が一致しないけど、どういった理由なの?」
就浪に加えて、受験浪人をしていた私は同級生に比べて、2年も遅れていた。
「いつもの流れとは違うけど、まあ想定内。確かに2年のギャップは目につくだろうな」私は心の中でこう考えながら、笑顔を崩さず正直に、受験浪人をしたことと、就浪に至った経緯と、「御社とも関係の強い業界が取り巻く現状を変えていきたい」との思いを語った。
自然と熱を帯びた私の思いを聞き終えた面接官の反応は、想定を大きく外れたものであった。
「現実を見た方がよいのでは? 日本の新卒採用は、入社後の伸び幅を判断するポテンシャル採用。前年失敗している業界に入れる可能性は低いと思う。」
就浪を否定するかのような発言。もう少しオブラートに包んだ言葉だったような気もするが、自身の覚悟を超える反応で衝撃を受けた。
呆然(ぼうぜん)とした私は満足のいく返しもできず、その後は笑顔が引きつり、無難な回答に終始。2度目の就活開幕戦は失意のうちに終了した。
就浪2戦目での「留年ふり」
初戦のきつい反応の理由を見いだせなかった私は、反骨心が湧いていた。「強い思いがあって選んだ決定だし、今更引き返せないのに、初めて会った人に就浪を否定されるいわれはない」今後の面接では思いを素直に話し、反論された際には負けじと言い返そうと心に誓っていた。
しかし迎えた2戦目。また2年遅れに言及された。
私は、とっさに事実とは異なるストーリーで話してしまう。
「浪人の失敗で挫折し、1年留年した。その後反省して、大学生活の間は必死に努力してきた」
面接官の鋭い眼光でのぞき込まれ、先日の面接がふと頭によぎったのだ。元来の小心者の性格も手伝ってか、人生を左右するほどの強い思いや決断を誰かから否定されることを恐れたのだと思う。
面接官の反応は、想定外の高評価。
「自身の非を認め、きちんと努力して実績を積んできたことはすばらしい」と好感触だ。「2年遅れの理由」という最大の難関を乗り越えた以上、就活を一度経験した私が残りの質問をこなすことは、大した苦労ではなかった。
想定外の反応に安堵(あんど)した一方、オフィスから帰る足取りは重かった。
結果として誰かから思いを否定されることはなかったが、悩み苦しみ、親に迷惑をかけてまで──浪人して私大に進み、加えて就浪を選んだ金銭的な負担と、自分の子供が内定を捨て、不利で不透明な再挑戦を選んだことへの心理的な負担をかけてまで──決断した思いを、あろうことか自分で捻じ曲げてしまったことに気付いたからだ。
その日の夜、がく然とした私のもとに届いたのは、インターン合格を告げる連絡だった。
「留年ふり」と「就浪への思い」の葛藤
私はそれ以来、2年遅れの経緯を聞かれると「留年のふり」をするようになった。
エントリーシート(ES)はなかなか通らない、面接の予定も全然埋まらない。メールボックスにお祈りメールがたまるだけ。同時期に就活を始めた後輩たちが次々と志望企業に内々定をいただくなかで、焦りや危機感が募っていった。
その状況に耐えられなかった私は、思いを捻じ曲げてでも、まず選考に残り続けて、最低限の就職先は確保しよう。そんな考えを抱くようになっていた。
自身の思いを捻じ曲げる後味の悪さはぬぐいきれなかったが、「何とか選考に残らないと」という後がないプレッシャーと危機感がそうさせるようになった。
「就浪した」と正直に言ってみても、思いを受け止めてくれたのではないのか?
でも自分は、正直に言った結果、落ちて良いほど選択肢も余裕もないのではないか?
誰かの反対で捻じ曲がるのだから、結局、自分の思いは大したものではないのではないか?
数少ない面接を終えるたび、いくら自問自答しても、答えが出ることはなかった。2年遅れを言及されないたび、帰り道が妙にすがすがしい気持ちだったのを覚えている。
こうして私は、「留年ふり」が板についていった
6月1日の面接解禁まで残り一カ月。いくつか進んでいた選考を重ねていくと、「留年のふり」が板についていき、何の感情もなく話せるようになった。
以前は自分と相手にウソをつく罪悪感から言い訳がましく話していた口ぶりが、次第に熱を込めて、まるで本当に体験してきたかのように話せるようになっていた。身ぶり手ぶりはもちろん、器用に顔芸までこなせるようになった。
自身の思いを隠して、ウソを突き通していく決断をした結果、残された選考はうまく進んでいった。
「第一志望」にはなんて答えたらいい?
そして、ついに第一志望の最終面接を控えた前日。この企業は何とかインターン経由の選考ルートで進んできたので、2年遅れのことを質問されたことはなかった。
第一志望にだけは、せめて隠してきた思いをぶつけたい。
でも受かる可能性は最大限、高めておきたい。
どちらを選んでも、大きな後悔が残るような気がしてならなかった。
「2年遅れの理由を、なんて答えるべきか」って答えは、一晩中考えても見つからないままだった。
迎えた面接当日。肝心の回答が決まらないままだったので、不安しかなかった。この企業が失敗したら、もう心から行きたい企業はほとんど残されていない。面接の朝には、実家の仏壇に手を合わせた。受験浪人以来、5年ぶりだ。何かにすがりたい気分だった。
結局、2年遅れの理由は触れられないまま、面接は大成功のうちに終了。夜に合格通知をいただいた。
就浪のつらさや苦労が報われたように感じ、感無量だった。そして、どちらの後悔を味わうこともなくうまく行った幸運と、些末(さまつ)なことを気にしない企業の度量に感謝した。これまでお世話になってきた恩人たちにひととおり、連絡をして眠りについた。翌朝はかつてないほどすっきりとした気分で目を覚ませた。
それでも。今振り返ってみても、「2年遅れの理由を、自分はなんて答えればよかったのだろう」という答えはいまだに見つかっていない。
就浪には想像以上のつらさ・覚悟が必要
だけど、これはあくまで、運良く成功した例にすぎない。
想定していた以上に就浪ってきついし、それを乗り越えるだけの確固たる軸や覚悟が必要だ。前年度よりうまく行く保証はないし、内定すらもらえないこともあるかもしれない。面接官からは想定以上の強い反応をされるかもしれないし、自分の思いが否定されることがあるかもしれない。
これまで就活の苦労をともにした友人が忙しくしている中、就浪の苦労を伝えるのははばかられる。何より、皆が楽しそうに将来について語る中、自分はこのもやもやした気持ちをどこにぶつければよいかわからなかった。
今思い返すと、あの時の「現実を見た方がよいのでは?」という面接官の厳しい言葉は、覚悟し切っていない自分に対して現実を突きつける、ある意味での「誠実さ」だったのかもしれないとも思う。
まとめ
いかがでしたか。
私には誰にも負けない強い思いがあったつもりだし、その思いを実現するためなら、新卒カード自体を無駄にしてもいいほどの覚悟も持っていたつもりでした。頭では理解していたつもりでいました。
実際に就浪を経験して分かったのは、「想像以上の苦労・どうしようもない不利」があるという事実です。「あと一年やればなんとかなる」という逃げ道的な考えや、半端な覚悟ではとてもやりきれません。
私は幸運も手伝って、志望企業に内々定をいただくことができました。偉そうなことを言っている気もしますが、私の等身大の話から、人になかなか聞けない就浪のつらさや苦しみを知っていただき、心の支えや決断材料に役立てていただければ幸いです。
昨年の私と同じ悩みにぶつかり、行き場のない思いを抱えている皆さんへ、1人でも多くこの思いが伝わればうれしく思います。
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※こちらの記事は2018年7月に掲載された記事の再掲です。