こんにちは、『総合商社シリーズ』でおなじみの伊藤哲士です。
5000文字超えの大盛りの前編:【基礎編】を簡単におさらいをしましょう。
基礎編では「企業内定後の賢い過ごし方」をテーマに、「学生時代に起業するメリット」について、3つの観点からお伝えしてきました。
その3つとは、「ビジネスの作り方を学べる」「社会の仕組みを学べる」「自分の情熱を注げるものがわかってくる」。これらが、「社会人としての素質を早い段階で身につけられる理由」であると説明してきました。
では、それが「社会人になってもうたら、どないに銭になりまんねん? お兄はん。」って思っている人もいると思います。
後編では「起業の経験が社会人になってからのどう実践的に役立つか?」を場面別でお伝えしていきます。「新卒で入社した会社の場合」「キャリア・転職する場合」「独立・起業する場合」の3つに分けています。
【目次】
1. 新卒で入社した企業の場合
└取引先、自社など会社そのものへの関心が高まる
└人事評価などの仕組みが理解できる能力の醸成
└ビジネス上の資金力・ステータスの重要性を認識できる
2. キャリア・転職する場合
└自分の強み、情熱が注げる業界を選べるかも
└自社以外の世界をあらかじめ知れる
3. 独立・起業する場合
└自分の強み、情熱が注げる仕事を見つけやすい
└会社で働きながら独立の準備がスムーズ
└独立のリスクを認識できる
4. 総括:起業の果てしない可能性
1. 新卒で入社した企業の場合
商社以外で働いたことがないので、ここは商社を例に書きます。主に3つあります。
取引先、自社など会社そのものへの関心が高まる
商社の場合ですと、大手メーカー・政府機関などの他に、中小企業とお仕事をすることもあります。
中小企業の社長と面談することがあるのですが、何十億円という売り上げを作る企業の社長の凄さというのは、一度起業を経験してみないと本当に理解するのは難しいです。
すごいなぁとは私も思ってましたが、今考えるとぐぅすごいです。長きに渡り、コツコツと商品の質を高めお客さんを増やし、多くの従業員の生活を支え、時には手に汗握る決断をして繁栄し社会に価値を提供してきたのだと思うとリスペクトしかありません。後輩に「あの社長頭悪いからな〜」と言ってた奴がいたので、ひっぱたいたことがあります。
そのような、社長の過去の話って興味が湧きませんか? 私はこのような社長とたまたま飲みに行って、武勇伝を聞くのが好きでした。そこで関係が築かれ、次の取引に繋がったこともあります。学生時代に起業していたらもっと踏み込んだ話ができたんじゃないかなと思うんです。
取引先の大手メーカーにしても、最初はベンチャー企業です。
どのように繁栄してきたのかに興味を持てれば、もしかしたらメーカーの担当者よりも、その会社のことを理解できるようになるかもしれませんし、ニーズがより把握できるようになるかもしれません。メーカー担当者からすると、「この人はうちの企業のことを本当に思ってくれてるんだな」と軽い錯覚を起こしてくれ、取引や交渉も捗るようになってきます。私は取引先がある小説の舞台になっていたものですから、それを読破して担当者と話しているうちに贔屓にしてもらえた経験があります。例えば、出光興産であれば海賊と呼ばれた男、オリンパスであれば光る壁画とかですかね? これは偶然の産物ですが、この偶然をより増やせるイメージでしょうか。
人事評価などの仕組みが理解できる能力の醸成
ビジネスとは仕組み作りだと思ってます。
「どうやって人を集める?」
「どうやってマネタイズする?」
「どうやって売り切る?」
「どうやってお客さん維持する?」
例えば、日系企業に入社すると、あなたの給料は「固定給+残業代+人事評価」で基本的には決まると思います。勤め人にとって人事評価はとても大切です。
一度起業してみると、人を雇う立場になるので、給料を払ってどれくらいのリターンをその社員がもたらしてくれるのかを考えるようになりますし、なんなら低い給料でもっと働いてくれないかな、残業代で数人分賄えるなら残業代で釣ろう、などと考えるわけです。どうやったら辞めずにモチベーションを維持できるのだろうか? などもありますね。つまり、まさに経営者の目で会社の仕組みを意識するようになります。
私が何社かリサーチした結果、基本的には日系企業の仕組みは、当たり前ですが役員以上の役職に圧倒的に有利になっています。
なので、「出世しなきゃ損じゃね?」と思い、その出世をするには「社内のキーパーソンに気に入られなければだめだ、飲みにいかなきゃ、媚び売らなきゃ」という結論に至りました。
しかし、一時期、上司と飲んで「人事評価あげて! お願い!」みたいな活動をして、一度だけ最高評価を得ましたが、情熱が続かず早々に日系出世ゲームからは降りました。こういうところでも、続ける情熱は大切だと感じたわけです。
しかし、人事評価が高い社員は起業してからも仕組みを理解する能力が高いので、独立してからもビジネスの仕組みを押さえるのが早そうですから、即戦力になりそうですよね。社内の新規事業を作れ! と言われた時にも仕組みをササっと作りフットワークよく動けそうです。
ビジネス上の資金力・ステータスの重要性を認識できる
最後は資金力・ステータスです。私的には、昔の上司が新規の取引先をゲットしたぜ! とドヤ顔で歩く姿を見て滑稽だなぁと思っていたひねくれ者です。同じレベルの競合がいる中でとってきたのならそのクロージング力は評価できますが。
資金力は信頼の証ですし、ステータスはコネクションをぐんぐん引き寄せます。
つまり、本来は難しい新規取引先のゲットも、大企業ではかなりイージーにしていることが、起業をしてみるとよくわかります。起業する際に、能力が高くてもやはり市場におけるあなたの認知度向上には時間がかかりますが、ステータスにひもづくコネクションがあれば、ビジネスの速度は上がっていきます。
大手は個人とは違う市場、商社で言えばインフラ整備とかダイナミックな商売に関われるというのも、先人が築き上げてきた資金とステータスがあるからなのです。そこをちゃんと理解して、取引先などに接してみましょう。過信・傲慢は取引先との関係に悪循環を産みます。自分を過信せずに謙虚に一生懸命働くほうが取引先も会社の同僚もあなたについていきます。
2. キャリア・転職する場合
私は転職はしたことがありませんが、起業をすると選択肢に迷った時の指針になるかと思います。
自分の強み、情熱が注げる業界を選べるかも
転職を考えた時にもやはり情熱が注げる業界、職種を選びたいですよね。「あなたが継続できる何か」が指針になると思いますし、人事評価の仕組みを事前に調べ上げる必要性も理解できていれば転職も失敗率が下がるのではないでしょうか。
自社以外の世界をあらかじめ知れる
一度会社に入ると、かなり意識して外の世界の人と関わらなければ、社内の狭い社会に関係が集約してしまいます。
でも、学生時代に起業を通して知り合った人がいれば、学生のうちから他の社会が知れ、会社に入ってからも交流が持ちやすいかもしれません。私の周りは知り合いづてで転職している人も多いのですが、学生時代にビジネスを通じて知り合いがれば、後々の転職コネクションが築けてしまう可能性ありです。
3. 独立・起業する場合
最後に独立ですね。これは一度起業を経験したかどうかで社内での働き方も変わってきます。
自分の強み、情熱が注げる仕事を見つけやすい
継続できる情熱を注げる仕事を把握済み。(ただし、働きながら価値観は変わるので都度、副業で試してみるのもok)
会社で働きながら独立の準備がスムーズ
ビジネスがスケールするのは時間がかかるものです。
最初から独立を考えているのであれば、新卒で入社した企業の仕事が独立した時の事業にプラスになるものであるか? を考える視点が必要。
起業したことがないと漠然と仕事をし、独立した時に何も積み上げていなかったことに気づく。独立してから積み上げてもいいんですが、勿体無いですよね?
独立のリスクを認識できる
サラリーマン時代は「起業=怖い」でしたが、社会の仕組みを知ると意外と「死なない」いや「死ねない」ことに気づきます。日本の政策は優しい。
これも国の仕組みを理解できるかどうかですよね。銀行から大きな資金を借りて工場とかやらない限りは、テレビのような事業に失敗して家族路頭に迷ったってのは東京ではあまり見ないですし、ホームレスもあれはやりたくてやってますよね。生活保護があるだろ。
そもそも大手に内定もらえるようなスペックであれば給料は下がれど職に困ることはないと思います。
失敗を恐れずに中流階級を抜け出す気概があるか、もしくは情熱を注げるものを追求するか、というシンプルな選択肢になります。
1年くらい生活できる貯金をして、1年トライしてダメだったらまた就職してお金を貯めて、と続けていくような起業家も出てきていいような気がします。転職がどんどん難しくなるというのはあるので、まだ現実的ではないかもしれませんが。
4. 総括:起業の果てしない可能性
ここまで起業は後でためになるよ〜という話をしてきましたが、これで本当に残りの学生期間で起業する人は100人に1人いればいいところでしょうか。
個人的に勿体無いなと最近思っているのが、すでに社員教育もしっかりしている大手企業が「優秀な学生」を雇って、その優秀な学生が会社に固定給で雇われて満足しているところなんですよね。むしろ優秀じゃない社員ほど大企業に入社して教育してもらえば良いのに。(思いつきです)
なぜなら、優秀な社員はもっと社会に新たな価値の創造ができるはず。大企業で働いていると、『情熱を注げる仕事』ができる人もいますが、周りを見ていると「こなしているだけ」の人がすごく多くいるように思うんですよね。時間に制約ができて、「本当にやりたいこと」を探す時間が確保できず、模索できず、気づいたらそのまま同じ職場で働き続ける印象です。(最近は副業始める人が増えてましになったけど)
大企業単体で考えれば優秀な社員の確保は大切ですが、日本全体の底上げを考えたらそっちなんじゃないかな〜と思ってます。彼らは独立しやすくなるし、その先には社会を変える新しい方向に導く可能性もある。そういう意味でも起業の経験は彼らだけでなく、社会貢献にさえなりますよね。
なので、内定を獲得したからといって甘んじることなく、そこをしっかり自分自身でしっかり見極めるようとするが大切なのではないでしょうか? 起業することは、その一助にもなると思いますよ。
とまぁ、とりとめもなく思うことを書きましたが、起業するメリットが他にもあるよ! という人が当然出てくるでしょうし、それに期待して、私からは以上です。
長くて辛い、楽しい就職活動も佳境ですね。あと、もうひと踏ん張り、頑張ってください。そして、何よりも残りの学生期間を、十分に楽しんでくださいね!(疲れた、牛丼食べるか……もちろん、つゆダクダクで)
【伊藤哲士の総合商社シリーズ】
第一回:『総合商社で投資がしたい』君へ。長いけど読んでくれ。投資業務の理想と現実
第二回:また長くなっちゃいました。総合商社の「海外駐在ガチャ」のアタリとハズレ。
第三回:社内でヒマして年収2000万。商社のエリート窓際族「ウィンドウズ2000」の光と闇を教えよう
第四回:「学生起業のすゝめ」内定後〜入社まで、君たちはどう過ごすか?【基礎編】
第五回:「学生起業のすゝめ」内定後〜入社まで、君たちはどう過ごすか?【実践編】