※本記事は、ブログ『週報』に掲載した記事を転載・一部加筆したものです。
(転載元記事:卒業するインターンへ、大真面目に「5つの言葉」を贈りたい)
「自分の進むべき道が、わからない」
そんなとき、人は「誰かのアドバイス」を求める。そしてこの「アドバイスの重さ」は、どれだけ自分のことを真剣に思ってくれているか、によって決まる。
毎春、僕のチームから、インターンが卒業する。その数は約20名。毎日のように顔を合わせていた彼らの卒業は、少しだけ寂しい。卒業式を前に、僕は問いかける。
彼らに言葉を贈るとしたら、なにを選ぶだろうか。
言い換えれば、自分が22歳のときに「あのときは分からなかったけど、本当に大事なアドバイス」はなんだろうか。大真面目に5つある。
1.「会社名を使わずに、自分の仕事を定義する練習」を、せよ
いずれ君が、30歳になると面白い現象が起きる。
それは、勉強を一生懸命頑張ってきた人間ほど、「肩書き」でしか自分への自信を持てなくなることだ。でもこれはおかしな話だ。なぜなら、「勉強を頑張ってきた」ということは「何かを積み上げてきた」はずであり、そもそも「実力そのもの」に自信を持っていいはずだからだ。本来なら「肩書き」なんて必要ない。
では、なぜだろうか? なぜ「何かを積み上げてきた人ほど、肩書きに頼る」のか。
その理由はこうだ
「肩書き以外で自分を語る練習」をしてこなかったから
だ。もちろん、肩書きは力強い。名刺代わりになるので、(意外と)しょうもない人と話すときほど「肩書き」があったほうが楽だ。だが、これをずっと続けると「本物の自信」を身につけるチャンスを失う。なぜなら、周りが「すごいね! すごいね!」と言ってくれるからだ。内定者の肩書きだって、同じだ。
だが、君は違うはずだ。積み上げてきたものがあるはずだ。だから、本当の自信を持って欲しい。そのために明日からでもできる、アドバイスはこうだ。
「会社名を使わずに」自分の仕事を定義する練習を、し続けよ
1つ目のアドバイスだ。
2.「仕事の報酬は仕事」の1メートル先にあるのは「魅力的な人間とだけ過ごせる、部活のような時間」である
「仕事の報酬は仕事」という言葉がある。わかりやすくいうと「仕事を頑張ると、面白い仕事ができるようになる。これが仕事の報酬だよ」ということだ。
だが、最近気づいたが、これはハッキリ言って、半分うそだ。この言葉の1メートル先に真の果実がある。その果実とは
魅力的な人間とだけ過ごせる、部活のような時間
である。人間の本能的な欲求として「自分が魅力的だと感じる人と、一緒にいたい」というのは確実にある。これは生物としてのDNAとして当然だ。だとしたら、仕事ができることの最大のメリットも、これに限りなく近くなるのは必然だ。
結局のところ、人生とは「時間のポジション」であるため、「魅力的な人」と過ごす時間は最大化したいし、「不快に思う人」と一緒にいる時間は最小化したい。そして魅力的な人間の要素の1つには「自発的な目標」が含まれていることがほとんどだ。だって君は「なにもしたくない人」で、魅力的な人をみたことがあるだろうか?
つまり、いずれ君がお金を稼げるようになったとき、これを問いかけてほしいのだ。
「魅力的な人間とだけでつくった、部活のような時間を過ごせているか?」
もしノーであれば君は「お金を稼ぐ」という意味で優秀ではあるかもしれないが、本質的な意味ではまだ「仕事ができる」にはなっていない可能性が高い。2つ目のアドバイスはこうだ。
「仕事の報酬は仕事」の1メートル先にあるのは「魅力的な人間とだけ過ごせる、部活のような時間」である
3.「メディアパワー」だけを信じてはいけない。それは「アサイー」が好きか、「ジャガイモ」が好きか、それだけの違いだ。
サラリーマンでも早くて20〜25歳ぐらいで頭角を現す人間がいる。特に、ウェブメディアの発展によって「インタビュー記事」は、そこら中にあふれている。だが、自分がメディアを運営する立場になったからこそ確信することがある。それは
メディアパワーと、実態のパワーは必ずしも一致しない
ということだ。言い換えれば、メディアに出ているが大したことない人や、その逆もたくさん存在している。
そもそも「短期的に価値のあるものと、長期的に価値のあるもの」は、しばしば逆転する。ROI(※)が高い事業は、すぐに他社に模倣され、ROIが低くなりえる。一方で、ROIが低いが価値のある事業は、長期的に見ると輝くダイヤモンドになりえる。
(※)ROI……Return on Investmentの略。投資した資本に対して得られた利益のことを指す。
仕事選びも同様だ。
誰もが憧れるような会社に入って、それを目的にした人間ほど、10年後は会社の愚痴ばかり語っていることは多い。一方で周りからは「意味わからない」と言われた企業を選んだ人間ほど、10年後は、仕事場でイキイキと働いていることはよくある。一方で最初から最後まで「キラキラしている人」もいる。
これは、例えるなら「アサイー」と「ジャガイモ」の違いだ。
野菜の「ジャガイモ」は確かに、派手ではないが、だが、人類史上、最も多くの人間を救ってきた。劣悪な土壌でも育ち、エネルギーを与える。その偉大なる価値は賢い人間は皆、知っている。一方で「アサイー」はスーパーフードではあるが、限られた裕福な人間しか幸せにしない。つまり、3つ目のアドバイスはこうだ。
「メディアパワー」だけを信じてはいけない。それは「アサイー」を目指すのか、「ジャガイモ」を目指すのか、それだけの違いだ。焦る必要は全くない
4. 性欲より重要になりえるものを探す準備を、週末3分でもいいのでしたほうがいい
20代前半のオスにとって、性欲は限りなく重要なものだ。端的にいうと「モテること」しか考えていない。というか、考えられない。それはそれで素晴らしいことではあるし、生物のDNAとして間違っていないかもしれない。
だが、この歳になって驚くことがある。それは20代前半のときは「性欲の権化」だと思っていた友人たちですら、その衰えがわずかながら見え始めるのだ。そして、その中のいくらかの人は性欲以外の「熱中できるもの」を求めて、さまよい始める。
人生は長い、だが、性欲はいずれ落ちる。
……格言っぽいことをつぶやいてしまったが、つまり、アドバイスはこうだ。
性欲よりも「もっと重要になりえるもの」を探す準備を、週末3分でいいので今からしたほうがいい。さもなくば「空っぽな40代以降」になりえる。
5. 大企業を辞めても今の日本だと、絶対に、死なない。辞める勇気をもってほしい
最後に。就職活動に成功した人ほど、つらくなった時に、退職に躊躇(ちゅうちょ)することが多い。確かに「せっかく頑張って入った会社だし」と思うのは当然だが、自分やその周囲を振り返るに、どう考えても「大企業に合わない人」は存在している。
これはもはや、意欲や、頑張りの問題では絶対に解決できない。その人の価値観、生き方、性格、動物としての本能に近い。それを自分のせいだと考えると、悩み、ふさぎ込む。場合によっては自殺してしまうこともある。だが、辞めることは、君が思っているよりも実は簡単で、イージーだ(←重要なことなので2回言った)。特に20代までで積み上げてきた人は、間違いなくこの日本社会では生きていける。だとしたら、本質的に気にしているのは「世間からの目」でしかない。
だが、「世間からの目」とは非常にあやふやなものだ。それは「オセロ」のように「白黒が急激に変わる」からでもあるが、それ以上に重要な視点がある。
それは、
そもそも、人間の、最も思慮が浅く愚かな行為とは
誰かが悩み悩んだ末の意思決定を、他人が、聞く努力もせず、バカにすること
であるのは間違いないからだ。
悩み抜いた末の意思決定を、聞く努力もせずにバカにする人間こそが限りなくバカなのだ。無視するしかない。少なくとも僕は、仮に世界がバカにしたとしても、絶対に君の悩んだ末の意思決定を、バカにはしない。だから、ボロボロになり立ち上がれなくなる前に、辞める勇気をもってほしいと思う。
最後のアドバイスはこうだ。
大企業を辞めても今の日本だと、絶対に、死なない。辞める勇気をもってほしい
厚かましくてごめん。でも、きっとこの言葉がいつか、あなたの心に残り、読み直す気が来てくれると信じている。
0.1%でも参考になれば嬉しい。
取締役 北野唯我(KEN)
──Twitterはこちら:@yuigak
──ブログはこちら:『週報』ー思考実験の場。
──記事一覧はこちら:ワンキャリア北野唯我(KEN)特集
※こちらは2018年5月に公開された記事の再掲です。