※本記事は、noteに掲載した記事を転載・一部加筆したものです。
(転載元note:「トゲピーのホンネ(その組織に「尖った人材」を受け入れる器量と覚悟はあるか?)」)
はじめまして。ワンキャリア社員の寺口です。3月からnoteを書き始め、思いのほか多くの反響をいただいたため、こちらでも少し書こうかと思います。
キャリアに関していろんなことを発信してると、いろんな方から連絡がきたり、相談の依頼がきたりする。
そんなもんで、特に最近はいろんな学生の方と話す機会がある。みな素晴らしい才能を持った学生ばかりだ。彼、彼女らは賢い。現在進行形ですごいことやってるし、新しいこともたくさん知ってるし、鋭い。目の前の大人のこともよく観察している。世にいう「尖った人材」という類の才能たちだろう。
自己開示して等身大で対話すると、彼、彼女ら「トゲピー」たちは、それぞれの悩みを打ち明けてくれる。
耳が痛い。すごく痛い。
トゲピーのホンネ
「ブロックチェーンについてすごく興味がある。人事にその話をしてもいいですか? もし相手が知らなかったら嫌われるかもと思って」
「いわゆる『就活』をしてるけど、没個性に感じてやめようかと思っている。面接であった企業の人も楽しくなさそうで。今は、知り合いに楽しく仕事をしているおもしろい社会人の方を個別に紹介してもらっています。」
「就活支援会社の面談で、やたらこじつけ気味に勧められる企業があります。やっぱり高いお金もらってる企業を推してるんですか?」
「大手ナビサイトのDMは多いし、最初はしばらく見てたけど興味ない情報ばかり。もうゴミ箱に直行する設定にした。」
「求人スカウトが大量にくるけどコピペっぽくて正直ウザいです。あれってやっぱり一斉送信なんですか?」
「周りは『Facebookはオワコン』とかいってるけど、ベンチャーの人たちとコミュニケーションとる上で必須なので、自分はそのために使っている。友達とはもちろんインスタですけど。」
「最近どこの企業も新規事業のインターンやってますけど、ほんとに新規事業に関われるんですか? 入社したら既存事業にも配属されると思いますし、実際に何するかイメージわかないです。」
採用に関わる人へ。「学生のくせに生意気」と思うか、真摯に受け止めるか
これが尖った学生、トゲピーたちの本音だ。
「学生のくせに生意気だ」という考えが頭によぎったら要注意だ。まず「学生のくせに」という時点で、年下という理由だけで無意識に見下している。
「生意気」というのは、自身の立場が脅かされるという恐怖と紐付く感情であることを認知しておきたい。
テクノロジーの進化やジョブの多様化で、仕事の経験年数自体はかつて程大きな差分を生み出すものではなくなった。
ちょこっと歳上だから、社会にちょこっと早く出てるから自分の方ができるなんてことは、間違っても思わない方がいい。
最近「尖った人材が欲しい」という話をよく聞くが、尖ってるってことはどこか凹んでるってことは忘れないようにしたい。
トゲピーたちはとてもレアな経験をしてる反面、既存社会の枠組みに当てはめたら「生意気」に見えたり、不器用だったり、ゴマすることに興味がなかったりするが、それはそれでいいのではないか。
最低限の礼節なんて、組織に入ってからそっこーで身につけられる。それに、彼、彼女らは「やる意味」に納得すれば素直に受け入れる。
「やる意味」をわからないまま「いいからやれ」と言われると一気に萎えるのだ。これを「社会不適合」というのはナンセンスの極み。
「そんな人材は自社に必要ない」と思うのであれば、多分必要ないのだろう。
トゲピーが偉いわけではない。金太郎飴もある意味では「トゲがない」という個性だ。適材適所である。
問いは、「どうすれば尖った人材が自社で活躍するか?」で、「どうすれば採れるか?」ではない
それでもトゲピーを採りたいとなったとする。
入り口だけ綺麗にしてだまくらかしても、トゲピーはすぐ辞める。理由はつまんないからだ。
自社にトゲピーの活躍の場がないために、組織に強みを活かすカルチャーがないために、もしその凹みを徹底的にツメて、トゲを丸くしてしまうのなら、その学生のためにも、社会全体のためにも、採るのはやめた方がいいなぁ。
もし尖った人材を採りたいのなら、その尖った部分は要は何で、自社のどの事業でどう活かしてもらうか、どういったキャリアのコンテンツを用意できるかくらいは、自問して答えをもっておいた方がいいなぁ。じゃないと新しい才能を殺してしまう。
「自分はトゲピーだ」と思う学生へ。輝ける環境は、一緒に作っていこう
「あ、トゲピーって自分のことだ。」と思った学生へ。
そうです、社会は完璧ではありません。就活だって、システムは完璧ではありません。こんなことは僕に言われなくても、みんな知っていると思いますが、世の中にはシステムがあり、時代は変化し、システムが適応するまではそこに歪みが起きます。
だから、上記の声はすごくわかります。
でも、トゲピーのみんなにはそこで「嘆く人」ではなく「変化を起こせる人」になってほしいなぁと思います。だって、すでにそれができる才能があるから。トゲピーが輝ける環境は、一緒に作っていきましょう。変えようと頑張っている人がたくさんいます。
それと、これは、一言断っておきたいのですが、「尖ること自体が絶対的にいいことではない」ということは、伝えたいのです。
尖るというのは、一言で言えば「型にはまらないイノベーター」ですが、勘違いトゲピーがいるのも確かです。実際にこの記事をnoteに公開したときは、「無能なトゲはいらない。」と厳しい意見が多く寄せられました。無能なトゲってどんな人でしょう。
たぶん、「ずっと文句ばっかり言っている人」のことなのかなと思います。みんなにはそんなダサい大人になってほしくないのです。
だから、ここで言いたいのは「就活なんてクソだ! ぶーたれOK! どんどん愚痴ろう! 就活死ね!」ではなく、「どうやってシステムの中で、夢へ進むための切符を勝ち取るか」を一緒に考えてほしいのです。
例えば、就活がムカつくなら、就活をゲームだと割り切って攻略するのもありだし。
例えば、そのシステムに怒り狂ってるなら、そのシステムで苦しむ人がこれから一人でも減るような仕事をすればいいし。
例えば、就活をしないという手もあります。最近は色々な生き方があるようですね。
「就活なんてクソだ」と「何もせずに」言い続けている人は、多分、きっと、社会に出ても「社会なんてクソだ」「資本主義なんてクソだ」「政府なんて、組織なんて……」と言って、結局環境について愚痴ることに人生の大半の時間を使います。
居酒屋で「会社のオレはほんとのオレじゃないから」と言ってるダサい大人を見たことがあるかと思います。きっとその人は、もし仮にその日からその居酒屋で働いたとしても、数日後には「ここではオレの強みが……」と言っていることでしょう。
最後に、金太郎飴のあなたへ。
繰り返しになるが、金太郎飴は個性だと思う。
悪いニュアンスが染み付いているが、金太郎飴であること自体は悪ではないと思う。バランサーであり、触媒のような存在だ。日本代表の長谷部選手がここでいう金太郎飴かは議論が分かれるかもしれないが、長谷部選手は日本代表に不可欠な存在であることは結果が物語っている。
つまり金太郎飴であるかどうかは論点ではなく、結局のところ、「異物をリスペクトできるかどうか」が重要であると考える。
事実、ほとんどの人が金太郎飴だ。それは仕方がない。
画一的な教育や仕事で個性を奪われ、あれやっちゃだめこれやっちゃだめで好奇心を奪われ、金太郎飴が大量生産された。かつては、金太郎飴であることが学校や社会で生存確率を高めるための戦略だった。日本はその戦略で勝った。恥じることではない。
でも、その勝ちパターンは絶対的ではなくなっている。今まで迫害してきたトゲピーを活かすことを考えざるを得なくなった。
自身は今、「少なくともここに関しては誰にも負け(たく)ない!」という要素があるから、ぎりぎりフラットに話ができている(はずだ)けど、一昔前までの直径ばかり長くなった平べったい金太郎飴で「金太郎飴至上主義者」の自分だったら、トゲピーに対して、恐怖を感じて、しょーもないプライドを守るためにマウントとったり、クソ生意気だなと思ったり、そういった才能との接点を避けたりしてただろう。
あなたはどうだろうか。
何かが突き抜けているかわりに何かが凹んでいる「トゲピー」だろうか、それとも満遍なくステータスあげをやってきた「金太郎飴」だろうか?
「金太郎飴」のあなたに、最後に伝えたい。
いま現時点で、採用や育成に関わる人だけでなく、この記事を読んでいる学生さんも、将来は「トゲピー」たちを仲間に加える意思決定をしたり、彼らをマネージする立場になることもあるだろう。
そもそも尖った人材に振り向いて欲しいなら、まず自分も尖ったところを伸ばした方がいい。そしたら、「おぉ、そこで尖ってるんだ、そこ僕凹んでるから教えてよ」とか、「経験上、これくらいまでは凹んだとこ埋めとかないと損するかもよ」とか、強みを活かすための建設的な対話ができる。尖ったところがなくても、バランサーであることに誇りを持って欲しい。
自分が金太郎飴のように満遍なくステータスあげをやってきた場合、金太郎飴最強説を捨てなければ、自分の成功体験に固執して彼、彼女らをマネージし、たちまちエゴ研磨機能が働いて、トゲピーをミニサイズの金太郎飴にしちゃうってことだ。それは彼、彼女らにとっても社会にとっても罪であることを自覚しないといけないなぁ。
ほんと、人の才能に向き合うって難しいし、覚悟のいることだ。
キャリアや組織、教育について、いろいろ発信してます。ご興味ある方は是非御覧ください。
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