外資系コンサルティングファームで活躍する女性社員のリアルに迫る特別企画。
今回は、A.T. カーニーの新卒4年目社員の高橋さん(写真左)、第二新卒入社2年目社員の岡浦さん(写真右)にインタビューを行いました。
今回の見どころ
・「1年目からプレゼン」「プロジェクトは少数で」少数精鋭の環境
・入りたいプロジェクトや希望する働き方は、自分から意思表示できる
・プロジェクトの「手触り感」「独自性」はA.T. カーニーならでは
・専門コンサルティングとの違いは、全社にわたる変革を起こせること
・入社の決め手は「ナショナルクライアントへの貢献」と「組織規模」
・フィーリングは意外に重要。会社全体とのフィット感を見極めて
「外資コンサル×女子」特集ラインナップ
ベイン・アンド・カンパニー/A.T. カーニー/ボストン コンサルティング グループ
「1年目からプレゼン」「プロジェクトは少数で」少数精鋭の環境
──本日はよろしくお願いします。早速ですが、お二人の入社から現在までのキャリアを伺えますか。まずは高橋さんからお願いします。
高橋:入社後は幅広い業界において事業戦略やオペレーション戦略に携わりました。その後はハイテク業界や総合商社などの戦略立案を中心に、年間4~5本のプロジェクトに従事しています。特に多く携わったテーマはM&Aなどの海外戦略です。市場・企業調査を踏まえ、買収先企業の成長性や買収会社とのシナジーなどを検討してきました。
──岡浦さんは第二新卒として入社されたそうですが、前職も含めて伺えますか。
岡浦:はい。前職はPR会社で、企業のマーケティング支援をしていました。入社後はマーケティングやコミュニケーション、ブランド戦略のプロジェクトを中心にしつつ、事業戦略や海外戦略といった多くのテーマに携わっています。業界も消費財やハイテク、通信など幅広く経験してきました。
現在は、消費財業界のクライアントに対し、競争戦略の支援を担当しています。プロジェクトはマネジャーと2人1組で進めることが多く、若手は調査・分析だけでなく、クライアントにどういった提言をするかという部分にまで責任を持っています。
──若手のうちから、クライアントとのコミュニケーションまで求められるのですね。
岡浦:他のコンサルティングファームと比べても、若手が任される部分は多いのかなと思います。戦略系のプロジェクトの場合、A.T. カーニーでは平均2~3人でプロジェクトを組み、1カ月から3カ月程度でアウトプットを出します。もちろん上司や同僚からのサポートを受けつつですが、若手であってもある程度の塊で仕事を任され、担当範囲については責任を持ってクライアントの前で話すことを求められます。入社1年目からクライアントの前でプレゼンするのが普通ですね。
入りたいプロジェクトや希望する働き方は、自分から意思表示できる
──A.T. カーニーは他の戦略ファームと比べて常駐案件が多く、「現場主義」であることも特徴です。実際にクライアントのもとで働くことは多いのでしょうか?
高橋:案件によりますが、プロジェクト期間中はクライアント先に常駐し、A.T. カーニーのオフィスに1カ月以上来ないこともあります。私はさまざまな業界や企業を知る機会があることに魅力を感じているため、常駐してクライアントと協働できるのも1つの面白さだと感じています。
高橋 百合花(たかはし ゆりか):東京大学法学部卒業後、2015年にA.T. カーニーへ入社。電機・総合商社・金融業界を中心に、事業戦略・海外戦略・収益改善・オペレーション戦略などの幅広いプロジェクトに従事している。
──その思いに沿うように、高橋さんは幅広い業界・テーマを手掛けていますね。A.T. カーニーでは誰もが幅広い業界を担当するのでしょうか? アサイン(業務割り振り)の流れについて教えてください。
高橋:若手に幅広い経験を積ませるという基本方針はありますが、アサインにあたっては本人の希望が重視されます。A.T. カーニーでは、自身の志向するキャリアや伸ばしたい能力を踏まえ「どういったプロジェクトの経験を積みたいか」を意思表示できます。中には特定の分野の経験を若手から深めたいという理由で、業界やテーマを絞ってアサインを希望する人もいますよ。
ちなみに、ワークスタイルについても希望を出すことができます。リモートワークや時短勤務をしたい場合、アサイン前に希望を宣言しておけば、柔軟な働き方がしやすいプロジェクトに優先して割り振られます。
プロジェクトの「手触り感」「独自性」はA.T. カーニーならでは
岡浦 加奈(おかうら かな):早稲田大学国際教養学部卒業後、PR会社を経て2016年に第二新卒としてA.T. カーニーへ入社。消費財・通信・ハイテク業界を中心に、事業戦略・ブランド マーケティング戦略・ビジネスデューデリジェンス・収益改善などの幅広いプロジェクトに従事している。
──それは興味深いですね。では、数ある戦略ファームの中でも、A.T. カーニーならではの強みや魅力はどういったところにあると思われますか?
岡浦:プロジェクトの「手触り感」があることですね。クライアントは日系の大手企業が中心で、グローバルプロジェクトであっても、日系企業が海外戦略を展開するにあたって意思決定をするためのものが多いです。「海外の本社に聞いてみます」といったことがなく、アウトプットをそのまま日本で使って経営判断していただけるのは、手ごたえを感じやすいと思います。
またあまりフレームワークにこだわらず、毎回テーラーメードでクライアントの課題に応えていく「匠の技」的な部分があるのも面白い点ですね。型にはめずにゼロから考えていく姿勢が、独自性のあるプロジェクトが立ち上がる背景にあると思います。
──確かに、A.T. カーニーでは新規ビジネスや宇宙産業の支援など、独自性のあるプロジェクトが多く立ち上がっています。今後は、どのような事業展開を予定されているのでしょうか。
高橋:お付き合いのあるクライアントがさらに良い方向へ進めるよう、1つのプロジェクトに閉じることなく、より全社的な支援をしていきたいと考えています。そのため、1つのプロジェクトに多様な専門家が関わり、より多くの側面から支援ができる体制を整えています。
例えば、業界のプロが責任者としてプロジェクトを進めながら、新たな課題が出てきた場合にはマーケティングのプロやM&Aのプロも議論に交じり、クライアントの思考がより進化するように進めていきます。
専門コンサルティングとの違いは、全社にわたる変革を起こせること
──これまでのご経験の中で、特に印象的、または達成感を感じたプロジェクトを伺えますか。具体的には「苦労が大きかったもの」か「社会に対して大きなインパクトを与えたもの」を教えてください。
高橋:印象的だったのは、米国企業の買収を検討した海外戦略プロジェクトです。私は市場環境や競合・買収先企業の調査を行いました。ニッチな業界だったので、市場の全体像やKSF(Key Success Factor)であったり、買収先企業の強み・ポジションを把握するのに苦労しましたね。弊社の米国オフィスとチームを組み、現地で情報を持つ人にインタビューを重ねることで仮説を進化させていきました。最終的に買収先企業のポジションや成長性を明確にできたことが、1つの成功体験となりました。
──市場に精通した現地オフィスと協力し、難局を乗り越えたのですね。外資系ファームならではのエピソードといえそうです。岡浦さんはいかがでしょうか?
岡浦:私にとって印象的だったのは、あるメーカーの10年後のブランドを考えるプロジェクトです。前職でもブランド戦略は経験してきましたが、10年後まで先を見据える機会はありませんでした。正解がない中で、クライアントの課題や市場の変化を踏まえた有益なアウトプットを生み出すのは、難易度の高い仕事でしたね。
──企業ブランディングは、PR会社や広告代理店が担うことも多い領域です。コンサルティングファームならではの強みは、どういった点にあるのでしょうか?
岡浦:マーケティングの枠を超えて、商品戦略・営業戦略・経営戦略と、クライアントに対してより全社的な変革をもたらせることです。PR会社や広告代理店はあくまでマーケティングの範疇でブランドと向き合います。前職のPR会社から転職したきっかけも、その壁にもどかしさを覚えたからでした。会社全体を俯瞰しつつ、領域横断的に複数年にわたる戦略にまで踏み込めるのは、やはりコンサルティングファームならではです。
有給は100%消化。メリハリをつけて働ける環境
──ここからは、コンサルティング業界に対する先入観について伺います。「激務」「UP or OUT」というイメージを持つ学生もいるようですが、実態はいかがでしょうか? まずは「激務」について伺えますか。
高橋:忙しい業界と言われますが、「思ったほどでもない」というのが正直な感想です。確かにクライアントへの報告会の前など、忙しい日はあります。ですが、報告会の後など、キリの良いタイミングでは早めに帰るようにして、メリハリをつけて働くことができる環境です。
岡浦:確かにコンサルタントならではのメリハリも魅力の1つですね。プロジェクトが終われば自由に休暇を取れるのですが、プロジェクト終了後はオンとオフの切り替えがはっきりしているので、心置きなくプライベートを満喫できます。コンサルティング業界全体の働き方が変わってきているので、かつての「明け方まで働くイメージ」とは違いますよね。特にA.T. カーニーは、有給消化率が高いと思います。私も昨年は100%消化しました。
──有休100%消化ですか! 意外なお答えですね。では、キャリアパスについてはいかがでしょう。一般的な「UP or OUT」というイメージに対し、A.T. カーニーの採用ページでは、コンサルティングファーム以外に成長の場を求めることをネガティブに捉えず「Progress or Out」と表現していますが。
岡浦:プロフェッショナルファームとして品質を維持することは、当然、必要なことです。とはいえコンサルタント1人1人の成長速度が違うので、A.T. カーニーでは「何年間で次のランクにプロモーション(昇進)しなければならない」と硬直的には考えていません。A.T. カーニーでプロジェクトを通じて成長を続けるのであれば、会社としてもサポートしてくれます。
一方で、「A.T. カーニーで十分成長したので、今後の成長は別の場に求める」という考え方は自然なものとして受け止められています。よく「Up or Outですか?」と聞かれるので、似た言葉で「Progress or Out」と表現していますが、表現自体は少し誤解を生みやすいので、今後は変えていくかもしれませんね。
また、私個人の感覚としても、会社として中長期的に社員のキャリアを考えてくれていると感じます。たとえばプロジェクトが始まる時には、「そのプロジェクトを通じて自身がどう成長したいか」をマネジャーと話す機会があり、本人が能力を伸ばせるような役割を与えてもらえます。
高橋:人材育成には力を入れていますよね。A.T. カーニーでは入社時からメンターがつき、キャリア開発上の悩みがあればメンターに相談できます。プロジェクトの上司と違って変わることがないので、一緒に長期的なキャリアプランを考えることができる存在です。私の場合は、年に3~4回は会って話していますね。
「尖った個性とマイルドな性格」A.T. カーニーの社員像
──お話を伺っていると、一部の学生がコンサルティングファームに抱くような、厳しくてドライなイメージとは差がありますね。その他に「お金好きが集まる」「ギラギラしている」という先入観もあるようですが、実態はいかがでしょうか?
岡浦:お金好きというより、向上心が高い人が集まっているように感じます。A.T. カーニーの場合、個性は尖っていても性格はマイルドな人が多いんです。個性というのも斜に構えているわけではなく、それぞれが強みを持っているという意味です。
例えば私と同期にあたる2016年度の新卒社員には、弁護士資格を持つ者や、自身のNPOを運営している者がいます。それだけでなく、セスナのパイロット、ファッション誌の特派員、はたまた東大理学部の出身者など……刺激的なメンバーですよ(笑)。
──学生からは、A.T. カーニーには穏やかで落ち着いた、いわゆる「大人な社員」が多いとも聞きます。
高橋:若手のうちからクライアントと接する機会が多いからかもしれませんね。プレゼンで説得力を持たせるためには態度も重要ですから、プロフェッショナルとして落ち着いた振る舞いが自然に身に付いていくのだと思います。
──なるほど、現場で場数を踏んでいるからこその落ち着きかもしれませんね。そんなA.T. カーニーで、特に活躍している人物の特徴があれば教えてください。
高橋:若手のうちは、与えられた仕事の背景まで考えられる人が伸びますね。「なぜこのリサーチをするのか」「調査結果がどのようにアウトプットに生きるのか」まで考え、能動的に動ける人は活躍できると思います。また、クライアントへのコミットが高い人は、アウトプットの質も高く、結果的に評価も上がるようです。
入社の決め手は「ナショナルクライアントへの貢献」と「組織規模」
──インタビューも終盤です。最後に、そんなお二人のキャリア選択について伺います。新卒で入社された高橋さんは、どのような軸で就職活動を行っていたのでしょうか?
高橋:私はどこへ行っても通用するスキルを身に付けたいと考えていました。その点、日系企業や公務員で身に付くスキルは職場特有のものになる傾向があるのではと思い、外資系企業を中心に就活をしていました。
コンサルティングファームは、考え抜いてアウトプットを出す仕事のプロセスに魅力を感じて志望しました。外資金融のIBD(投資銀行部門)もキャリアの選択肢として検討しましたが、経験できる役割や、提案の幅広さを理由にコンサルティングファーム1本に絞りました。
──では、その中でA.T. カーニーを選んだ決め手はどこにあったのでしょうか?
高橋:日本経済に与えるインパクトの大きさです。先ほどお伝えした通り、A.T. カーニーは日系の大手企業──いわゆるナショナルクライアントへの貢献を掲げていて、私はその点に大きな魅力を感じました。加えてA.T. カーニーの規模感は「自由度が高く、いろいろなことに挑戦したい」という自分の思いと合致するのでは、とも考えていました。実際に入社してからも、さまざまなことに挑戦できる機会に恵まれたと感じています。
──岡浦さんも、転職活動を通じてA.T. カーニーを選ばれた理由を伺えますか。
岡浦:前職で「より上流から企業の戦略に携わりたい」と感じたのをきっかけにコンサルティング業界を志望したのですが、その中でもA.T. カーニーは一番フィーリングが合いました。
特に面接官が皆、柔らかい雰囲気で、温もりが感じられたのが印象的でした。もちろん面接では思考力を見るため、ロジカルに深掘りしていく質問はされますが、高圧的な人はいませんでした。むしろ、議論して一緒に考えていこうとする姿勢が感じられましたね。それは入社後も変わらず、プロジェクトチーム全員でクライアントに向き合う文化にも表れていると感じています。
フィーリングは意外に重要。会社全体とのフィット感を見極めて
──最後に、ワンキャリアの読者に向けてメッセージをお願いします。
岡浦:さまざまな業界の人とざっくばらんに話せるのは、就活生の特権です。この機会を最大限に活用して、これまで興味のなかった業界にも目を向けながら、自分の軸に合った会社を見つけてほしいですね。
また、志望する企業の社員には、1人でなく複数人に会っておくことをおすすめします。入社後その人と一緒に働くことができるとも限らないので、1人の社員で判断せず、会社全体がフィットするかどうかを見ておいた方がいいと思います。
高橋:学生時代は気づきませんでしたが、社員とのフィーリングが合うかは仕事を進める上では重要なポイントです。こうした情報は、ネットでは分からないものです。セミナーや、実際の面接、ジョブなどを通して直接社員と会って話し、一緒に働きたいと心から思えるかどうかを見極めていってください。
──お二人とも、ありがとうございました。
「外資コンサル×女子」特集ラインナップ
ベイン・アンド・カンパニー/A.T. カーニー/ボストン コンサルティング グループ