こんにちは、トイアンナです。
就活のアドバイスを始めてはや7年、気づけば就活講座のコーチとなっておりました。今回は数百人近い就活生からお話をうかがう中で見えてきた、2019年卒の就活トレンドを予測したいと思います。
今年はメーカーの内定倍率が過熱します。したがって現在メーカー志望の学生にとっては厳しい戦いが予想されるでしょう。その理由は、「安定志向層」の流動です。
はじめに:就活のメインストリームは「安定志向」か「リスクテイカー」
例年、就活生はおおまかに2つのグループへ分かれます。
ワーク・ライフ・バランスや終身雇用を求める「安定志向」の学生と、高い給与や裁量権の大きさを渇望する「リスクテイカー」たちです。
後者のリスクテイカーたちは例年、ベンチャーや外資系企業を本命とします。ベンチャーや外資の多くは経団連の就活解禁を待たず、学部3年・修士1年の5月ごろに採用を開始しますので、解禁時にはあらかた採用が終わっています。
つまり、今から動き出す層の大半は前者の「安定志向」の学生です。
今回は「安定志向」の学生の特徴と、そのトレンドがどのように推移したかを説明していきます。
安定志向の学生はこれまで「商社を崇拝」してきた
前提として、「安定志向」の学生は以下の基準で本命企業を選びます。
・リストラがなさそう
・内定したら親が喜んでくれそう
・転職せず定年まで勤められそう
このような条件を踏まえ、2019年卒までは伝統的日系企業が選ばれやすい傾向にありました。特に安定志向の学生からもてはやされてきたのは、以下の業界です。
【安定志向の学生がこれまで好んできた業界】
・総合商社(特に三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅)
・損保会社(特に東京海上日動火災保険)
・インフラ
・メガバンク
・素材メーカー(特に旭化成、旭硝子(AGC))
・大手食品メーカー(特に明治、森永製菓)
特に東大・京大をはじめとするトップ大学の就活生にとっては「本命が総合商社」「滑り止めにメガバンク」が定式化しており、何も考えずエントリーする学生も後を絶ちませんでした。そんなトレンドに総合商社の社員すら危機感を抱いており、「安易に選ぶものではない」と警鐘を鳴らす発言も数多く生まれています。
・現役商社マンが斬る、「あの彼が商社ではなく、ゴールドマン・サックスを選ぶべき3つの理由」
・「総合商社に優秀な人は来ない時代がくる」総合商社の中の人が語る、就活への警鐘(前編)
しかし、今年はこのトレンドが変わりつつあるのです。
トレンドが推移した要因は大別して2点あります。
1. 震災後の過熱した商社ブームが鎮静化
まず、今年は「脱・商社&メガバンク現象」が起きています。
トップ学生の志望企業ランキングを見ていくと、総合商社とメガバンクが軒並みランクダウンしているのです。
そもそも総合商社の人気は2014年卒ごろからヒートアップしており、今年になってようやく沈静化しました。過熱した商社ブームの背景にあったのは東日本大震災。東電の対応不備で安定志向の学生が志望していたインフラ業界への信頼が崩れ落ちたとともに、「日本の価値を世界へ発信せねば」と感じる学生が大量に生まれました。
私も、就活生を指導していて何度「日本復興の礎となりたい」「日本の価値を再び知らしめたい」という文言をエントリーシートで見たでしょうか。トランプ大統領の「MAKE AMERICA GREAT AGAIN(アメリカを再び偉大にしよう)」と同じ愛国トレンドが、日本では東日本大震災後の就活市場で起きていたのです。
さらに、総合商社が従来の貿易業からM&Aなどの投資へ乗り出したことにより「金融業界との差がわからない」というブランドイメージのぶれが起きました。金融業界と重なる業務が生まれたため「より倍率の低い金融業界へ就職してから商社へ転職すればいい」といったキャリアパスが生まれたことも否定できません。
2. 失速するメガバンク、唯一生き残るSMBC
次に、メガバンクの人気が失速した要因も見ていきましょう。
先ほどのランキングによれば、三菱UFJ銀行、みずほフィナンシャルグループは就活生人気が二桁ダウン。高学歴層の滑り止めだったメガバンクは、もはや「そもそもエントリーしない」対象となっています。
※三菱東京UFJ銀行(BTMU)は、平成30年4月1日より三菱UFJ銀行(MUFG)に変更となりました。
これは、人員削減計画によって安定志向の学生が求める「終身雇用」への期待が裏切られたためでしょう。昨年、みずほフィナンシャルグループが19,000人の従業員を削減すると発表。さらに三菱UFJフィナンシャル・グループは9,500人、三井住友フィナンシャルグループは4,000人分の業務量を将来削減すると発表しています。
唯一、就活生のランキングで前回より上位にランクインしたのが三井住友銀行ですが、これは「他に受けられるほど安定したメガバンクがない(21歳・同志社大)」という消極的な理由と思われます。
安定志向の学生は一斉に「日系メーカー」を目指す
では、安定志向の学生は今年どこを目指すのでしょうか。今年は圧倒的にメーカーが人気です。特に下記の企業が、過去10年で類を見ないほど「本命企業」として名が挙がっています。
【今年人気が過熱すると予想される企業一覧】(あいうえお順・略称表記)
・旭化成
・旭硝子(AGC)
・アサヒビール
・キリンホールディングス
・サントリーホールディングス
・資生堂
・ソニー
・東レ
・日産自動車
・日立製作所
・富士フイルム
・明治
なお、メーカー人気に「外資系メーカー」は含まれません。これは安定志向の学生が好まない「不安定な雇用」が外資系メーカーには存在するからです。
また、日系メーカーでも「ガツガツした社風」といわれるトヨタやキーエンスはリスクテイカーの学生から支持される一方、安定志向の学生からは忌避される傾向にあります。これらの企業も倍率は上がるかもしれませんが、理由は異なる背景事情によるものでしょう。
まとめ:覚悟を持って「これから」を生き抜く就活をしよう
あれだけ人気があった総合商社・メガバンクの人気が凋落するなど、就活市場の人気は常に流動し、このように逆転現象さえも起きることがあります。
したがって、この記事を読んでいる就活生は、下記2つを肝に銘じてください。
1)大卒から30歳までで自社の評価は大きく変わる
いま最高と評される企業へ行っても、30歳になる頃には「そんなところへ就職しちゃったの? ご愁傷様」と言われる可能性があることを肝に銘じてください。いま人気企業を目指すな、というわけではありません。それでも、自社の人気が凋落し、存続の危機に陥ったとき、その会社から逃れるだけのスキルは身に着けておきたいものです。
例えば東日本大震災が起きた2011年まで、東京電力は「不景気でも絶対に安心できる会社」として安定志向の学生がこぞってエントリーする企業でした。また、東芝は同年の就職人気ランキングでサントリーや日本テレビを上回る36位を記録しています。それからたった7年後の今年、2社がどのような状況にあるかは、語るまでもありません。
2)あなたが受ける会社は、とんでもない高倍率かもしれないと意識しよう
「今年は好景気だから」と数社しか受けない学生が多くいます。しかし、メーカーやインフラ業界を中心に、誰もが聞いたことのある企業は100~1,000倍もの高倍率となっている企業は少なくありません。「大手企業への内定は宝くじに当たるようなもの」という期待値で臨んでください。特に東大・京大・早慶の学生は油断する傾向にありますが、いくら学歴があっても普通に落ちます。筆記試験からOB・OG訪問まで、足元を固める地道な対策はしすぎても足りないくらい、念入りに行ってください。
2019年卒就活戦線は、すでにエントリーシート(ES)と面接ラッシュが始まっています。学業との両立は大変かと思いますが、あなたが本命企業へ行けるよう、記事を通じて全力で応援しています。きっと桜咲くよう、これからの数カ月を駆け抜けてまいりましょう。