「それっぽい就活生」から脱却せよ
3月に入り、就活ムードが一気に高まっている。会社説明会にエントリーしたり、OB・OG訪問先を探したりしているアナタ。
突然だが問題だ。
<今までの講義まとめ>
・第1講:企業研究はするな!東大生に勝てる、たった1つの法則
・第2講:就活は最終面接から逆算せよ
・第3講:そんな自己分析やめてしまえ!すべては等身大の企業・業界分析から始まる
・第4講:ESは自慢大会ではない!「平凡でも受かる」回答を生み出す最強ツール
・第5講:面接は「完璧」がスタートライン。無敵の回答のカギは4Kにあり
これは、第5講で解説した「イイタイコトを伝える」復習も兼ねている。
どうだろうか。
特に町田の連載を普段から読んでくださり、何かを得ようとしてくれている学生に問いたい。おそらく、多くの人がなんとなくしかできないだろう。
私が言いたいことは「記事を暗記しろ!」ということではない。
「人の話や情報なんて、『それっぽく』理解しているようで実際全然できていない」ということである。
この状況は就活の場でも大量発生する。3月を迎え、採用の広報活動が解禁された。
説明会、OB・OG訪問、少人数座談会……など、『就活してるな』とわれわれに思わせてくれる情報が格段に増えるのだ。
しかし、当然ながら、大手企業は説明会で『就活生っぽい』質問をしたり、何回もOB・OG訪問をしたりするだけで、内定をくれるような甘い場所ではない。
就活生っぽい振る舞いは、まったくの無意味だ。
ここで先ほどの「要約」に話を戻す。
「へぇ、そうなんだー」程度の理解からはなにも生まれない(いつも読んでいただけるのはうれしいことだが……)。
「町田はこういう風に記事で述べている。この点は使えそう! この点は少し納得できない! 良い部分についてはこの1週間で具体的に取り組んでみて自分のものにしてみよう!」
くらい徹底的にやってほしい。深く理解することや、それを言語化する考え方は盗めるのだ。
今回はそれを3月から始まる企業説明会やOB・OG訪問に具体的に当てはめていく。
『就活っぽい』ことではなく、地に足のついた就職活動を実践してほしい。
<目次>
●説明会攻略編
●OB・OG訪問攻略編
【説明会攻略編】説明会は「写経選手権」ではない
目をまっすぐに前に向けながら、大げさにうなずき、言われたことのほとんどをノートに書き写す就活生を、去年は何度見てきたか……。しかし、これで「就活した感じ」がするのは危険なサインだ。
1つ素朴な疑問。
「ノートにそれだけ写して、使える情報はいくつあった?」
私だってノートにメモはした。
しかし、彼らとの決定的な違いは、情報を選んだ──つまり、「目的や成果」を求めてノートをとったことだ。
「何に使える情報か分からないから、とりあえずメモして、家に帰ってから情報を整理するんですよ!!」
と言われそうだが、私は「持ち帰って整理する」手法は面接でも使えるの? と問いたい。
面接で質問された時「ごめんなさい。いったんその質問持って帰って整理します……」は通用しない。
メモ取りに手を動かした説明会に充実感を覚えるのは危険なのだ。
では、説明会における「目的や成果」とは何なのか? 以下、詳しく解説していく。
「最強の説明会メモ」説明会は対話なき『面接』である
では、会社説明会で何を成果にすべきか?
「エントリーシート(ES)や面接で使えるエピソードを明らかにする」ことだ。
そのプロセスは、実は面接によく似ている。
人事(企業):説明会でその企業について学生に伝える。(第1講)
就活生:説明を聞き、自分自身のエピソードや興味関心とどのようにつなげられるかを模索する
相手の言ったことに対し、自分とどうつながるか(どうつなげるか)を思考するのである。
まさにそれは面接で用いる思考回路と同じ。
つまり、「説明会は対話のない『面接』」といえるのだ。
そんな絶好の機会を写経に徹するのはもったいない。「対話なき面接」ができている説明会の聞き方は、以下のような感じだ。
人事:(前のスクリーンに資料を出しながら)わが社は◯◯の分野で同業他社よりも多くの利益を上げております。
町田:へえー、この会社は○○の分野に強いのか【情報を理解する】
ってことは、入社したら◯◯力が必要そうだから、じゃあ、バイトのエピソードをアピールしよう【必要な資質の仮説を立てる】
でも、そもそもなんでこの分野が得意なんだろう。仮説を立てて、後で人事に個別に質問してみよう。もしその機会がなかったらOB・OG訪問の時に聞いてみよう。【次のアクションを想定する】
こんな思考回路で話を聞けば、もう家でESに書くネタに悩むことはない。ノートへのメモは、以下のような感じである。
このようにノートに記入を続ければ、面接で使える(自分のコトバになっている)武器が増えていくのだ。
もし、このメモの10倍を写経したとしても、「自分ごと」に置き換えられていなければただの『それっぽい情報』である。
例えば、このような思考回路で説明会に10回臨み、それぞれ5回メモができれば、それだけで既に5×10=50パターンの武器ができる。50回できれば、自分という人間のパターンが見えてくる。
これは就活において、「レスポンスの速さ」や「適切な自己分析」という評価につながる。
【第1講】・【第2講】で特に強調したが、やはり相手(人事)があっての就活である。
相手の発言を読み解き、自分ごとにしてほしい。
【OB・OG訪問攻略編】OB・OG訪問は「株主総会」ではない
説明会で「写経名人」があまた現れるように、OB・OG訪問ではIR情報や経営計画に絡めた「難解質問の名人」が現れる。このような感じのやり取りである。
Aさん:IR資料によれば、御社は◯◯に力を入れているわけなのですが、この割合は現在の時代の流れを見るとうんぬん……
社員:……。
いや、それはもうやり取りとは言わない。その光景はもはや株主総会である。
もちろんIR情報を下準備として見てきたのは評価するが、OB・OG訪問の相手は経営者ではなく現場の社員だ。この手の就活生はOB・OG訪問の目的をそもそも分かっていない。
現場社員に経営方針について質問しても、OB・OG訪問を有効活用しているとは言えないのだ。
では、どうすればOB・OG訪問を有効に使えるのか。現場の情報を知り、自分ごとに置き換えることだ。
等身大の質問を活用せよ
OB・OG訪問で得られる圧倒的なメリットは、「現場の情報」を知れる点である。
つまり、自分ごとに置き換えることのできる情報を多数入手できるのだ。成功例を紹介する。例えば、鉄道会社ならこのような形だ。
町田:◯◯さんのお仕事のつらい部分ってなんですか?
社員:やっぱり、『当たり前が当然のように求められる』部分かな。電車は時間通りに動いて当たり前と思われているから、1分でも遅れれば文句を言ってくる人もいる。自分が直接悪くなくても頭を下げなければならないしねー。
町田:なるほど。それでもこのお仕事は楽しいですか?
社員:うん! 大変なときもあるけど、感謝されることもたまにあってね……その感覚が何ものにも代えられないんだ!
いかがだろうか。
一見、中学生の職場訪問みたいなレベルの質問だが、IR情報の質問攻めよりもよほど可能性に満ちている。なぜなら、具体的で、自分ごとに置き換えやすいエピソードが聞けたからだ。
例えば、上記のやりとりで聞けた情報は面接でこのように使うことができる。
人事:OB・OG訪問してくれたみたいだけど、どうだった?
町田:はい! ○○さんにお話を聞きましたが、特に共感したのは「当たり前を求められることによるつらさ」です。そして、その苦労を上回るやりがいにとても興味が湧きました。
人事:ほう。それはどういったつらさ?
町田:電車の定時運行のように『できて当然』が求められる業界だからこそ、その期待に応えられなかった際にきちんと説明し、謝らなければならない点です。私も学生時代のバイトでは、そのような環境のもと働いていたので、とても共感しました。
人事:バイトでは、そういうときどうしてたの?
といった感じである。このようなエピソードをOB・OG訪問で聞けるメリットは2つある。
1.「デメリットが分かっている学生」として安心感を与えられる
仕事のやりがいなどのプラスの情報が中心となる説明会では見えない、仕事の厳しさなどの「デメリット」をOB・OG訪問で聞き、面接で語れると安心感が生まれる。企業を褒めることは誰でもできる。分かりやすく、アナタが信頼している友人や家族を想像してほしい。きっとあなたの短所を理解した上で、受け入れてくれているはずである。
長所を知っているだけでは安心できない。自分の悪い部分を受け入れてくれた時その人を信用するだろう。企業人事の心理も、それと同じである。
2. 求められる資質が分かり「ウチに合ってる学生」と感じさせるエピソードを示せる
例えば、毎回のように問われる「リーダーシップ」や「協調性」を問う質問。この言葉の定義は、企業や業界でまったく異なってくる。例えば、鉄道業界なら、自社内の社員を引っ張るリーダーシップも大事だが、顧客と目線を合わせて人間関係を調整する能力も必要である。言い換えれば、そのような「調整力」が必要な企業でカリスマ的なリーダーシップをアピールしても、むしろ「なんか違うな……」と評価されかねないのだ。
反面、どんな資質が求められているかを知った上でES・面接を進めれば、人事はアナタを「ウチに合っているなー」と評価するだろう。
それは、説明会やOB・OG訪問を通じ、自分が「潜在的に御社に向いている=採りたくなる人材」として証明・検証できているからだ。その意味でも、もう選考は始まっているのだ。
いかがであろうか。
説明会やOB・OG訪問で大事なのは、『それっぽい』時間を無為に過ごすことではない。
自分事に置き換えられた情報を増やすことだ。
これから移動も増え、緊張状態も続くと思う。こんな時だからこそ何が目的か、どんな手段を用いるかよく考えてほしい。
それでは今回も、最後に宿題を出す。
筆記試験対策は当然ながら進めておくのが前提だ。
何度も言うが、筆記試験がクリアできなければ、学歴にかかわらず足切りだ。それで就活は終わってしまう。悪いことは言わないので、頑張って対策をしてほしい。
──【第7講:MARCH生こそ胸を張れ】につづく
──町田イチロー、Twitterやってます。相談や質問はこちら(@MARCHdaICHIRO)へ
<町田イチロー 「MARCH生の就活全勝メソッド」講座一覧>
・第1講:企業研究はするな!東大生に勝てる、たった1つの法則
・第2講:就活は最終面接から逆算せよ
・第3講:そんな自己分析やめてしまえ!すべては等身大の企業・業界分析から始まる
・第4講:ESは自慢大会ではない!「平凡でも受かる」回答を生み出す最強ツール
・第5講:面接は「完璧」がスタートライン。無敵の回答のカギは4Kにあり
・第6講:OB訪問・説明会を攻略せよ。「それっぽい」就活生を脱するコツ
・第7講:MARCH生こそ胸を張れ
・課外授業:合説に参加するか否かを自分で考えるための仮説検証
・第8講:面接まであと1週間、後悔しないための「最終チェックリスト」
※こちらは2018年3月に公開された記事の再掲です。