「リーダーシップ」「グローバル志向」「コミュニケーション能力」といった、採用HPに並ぶ聞こえのいい言葉。
「圧倒的成長ができる環境に行きたい」「ホワイトで高給取りが一番」など、就活の軸を考えるときについつい口をついて出てしまう台詞。
これら全て「マジックワード」または「ビックワード」と呼ばれる曖昧な言葉であることを、皆さんは理解した上で使っていますか?
※本記事では「マジックワード」という用語に統一します。
東洋経済オンラインによると、マジックワードとは「内容のあることを言ったつもりだけど、実は何も意味していない」言葉と定義されています。
今回は、就活で使われることの多いマジックワードを複数個あげた上で、陥りがちなミスリードと、そのような言葉に遭遇した際どのように対処すれば齟齬(そご)なく企業研究・選考を進められるのかをお伝えします。
準備編:企業ごとに「マジックワード」を比較
まず、マジックワードとは、解釈が人によって違う言葉であると定義しましょう。
下の表をご覧ください。
こちらはワンキャリアが各企業の魅力を表した文章のうち「ワークライフバランス」「グローバル」「リーダーシップ」「コミュニケーション能力」の4つのマジックワードがどのように説明されているかを抜粋し編集したものです。
※スマートフォンの方は左右に表をスクロールしてご覧いただけます。
ワークライフバランス |
グローバル |
リーダーシップ | コミュニケーション能力 | ||
伊藤忠商事 |
・朝型出勤制度: 20時以降の残業は原則禁止、 残業は5:00〜8:00の 早朝勤務時間に行う制度 ・110運動: 取引先との会食や社員同士の飲食を、 1次会のみ夜10時までとする運動 |
コミュニケーション能力のベース: 相手の置かれた状況を汲み取り、 気の利いた行動をとるスキル |
伊藤忠商事 | ||
ユニリーバ |
・希望を出せば、日本から 出て海外で働くチャンス有り (オランダ、アメリカ等) |
ユニリーバ | |||
ベイン・アンド・ カンパニー |
・内定者もジョブを通して 「会社としてそこまでホワイトを 押していないが、ジョブの際も 22時にはオフィスを出るよう 義務付けられたし、その時間に 外に出る時にはオフィスに ほとんど人はいなかった」と 自身の経験を振り返える |
・全社の中で日本オフィス のプレゼンスはそこまで 大きいわけではなく、 グローバルオフィスの一角 という意味合いが 強いファーム |
クライアントとの コミュニケーション能力では 負けない、相手から全てを 引き出す自信がある」と自身の強みを分析 |
ベイン・アンド・ カンパニー |
|
ワークライフバランス |
グローバル |
リーダーシップ | コミュニケーション能力 | ||
JR東海 |
・他のインフラ業界に属する 企業と同様に、 JR東海の福利厚生は充実。 例えば各主要駅付近(新横浜駅、 名古屋駅、新大阪駅付近など)に 3LDKの社宅があり、 また転勤の際の 単身赴任寮は品川駅直結 |
・面接では 「あなたの考えるリーダーシップとは 何ですか?」という質問もされた ・「グループ面接に来ていた学生の 回答は全然違った。 カリスマ性がある学生、 挑戦をし続ける学生、 黙って俺について来い タイプの学生、など様々だった」 |
JR東海 |
||
東京海上日動 |
『福利厚生の充実度』 ・毎週水曜日は、残業が原則禁止 ・入社2か月目で研修中であるにも 関わらず、60万円のボーナス支給 ・家賃補助が 約10万円。社内結婚をした場合 さらに上乗せされる制度 |
・内定者によると「近年では 入社4年目の社員でも海外で 駐在するケースが存在し、 海外勤務への障壁は 年々低くなっている。 特に今の新入社員は、 40歳になるまでには 必ず1回は海外勤務経験を することになるだろう」 と海外経営企画部の社員が 話していたとのこと。 海外で働く機会をうかがい、 商社を志望する学生に とっても併願するに 値する企業と言える。 |
東京海上日動 |
||
資生堂 |
・協調性を保ちながら 熱い議論ができること。 グループワークの際に ガツガツと他人の意見を無視し 自分の正当性を主張する学生は 選考途中で落とされ、 チームの意見を軋轢なく まとめようとした行動が 高い評価を得た。 |
資生堂 |
詳細はこちらから。
・伊藤忠商|事総合職2018年卒の選考対策ページ
・ユニリーバ・ジャパン|マーケティング職2017年卒の選考対策ページ
・ベイン・アンド・カンパニー|アソシエイトコンサルタント2018年卒の選考対策ページ
・JR東海|総合職2018年卒の選考対策ページ
・東京海上日動|グローバルコース2018年卒の選考対策ページ
・資生堂|事務系(マーケティング)2018年卒の選考対策ページ
表のように、「ワークライフバランス」という一言を取っても、22時には完全退社ということなのか、20時以降の残業は禁止していることなのか…など、企業によって実際の意味合いが違うことがわかるでしょう。
基本編:マジックワードを解き明かす2つの手順
各社ごとにマジックワードの意味合いが違うことがわかりましたね。
それでは上記以外の企業、マジックワードに触れた場合どのように解釈すればいいのでしょうか。
誰でもわかる基準を設けることが難しい場合は、以下の2つのステップを踏むと良いでしょう。
(1)具体的な数値に分解し比較によって企業に順位づけをする
例えば「ホワイト」という言葉は、「労働時間」が短いことと「給料」が高いことが両立する状態であると分解できます。
「労働時間」「給料」2つの指標はどちらも数字にできる指標です。
このようにマジックワードは数字にできる言葉に分解してマッピングすると良いでしょう。
(2)自分はその数字が受け入れられるか、入れられないか判断を下す
「残業100時間は平気だな」「残業は20時間以内に収まるのがホワイトだと思う」など、(1)で整理した数値があなたにとってホワイトかどうかは別問題です。
だからこそ、自分ならどこからどこまでが「ホワイト」かを考えてもう一度マッピングを見直すと良いでしょう。
応用編:マジックワードを耳にした時に逆質問。マッピングを充実させよう
一度定義をする、つまり自分の中にマジックワードを測る物差しを持っていれば、例えば別の企業で「うちはホワイトなんだよね」という発言を聞いたとき、数値や具体例を挙げてもらうなど逆質問をするという応用が利きます。
基本的な逆質問の質問例について詳しくはこちら
・【最強の逆質問】面接で企業の採用担当者から好印象を受ける質問例10選
実践編:マジックワードが出てきたときの対処例
マジックワードは使い勝手がいいからこそ、実際の選考でも乱用されます。
この項では実践編と題して、実際の就活のケースでの使い方を示しましたので参考にしてください。
(1)グループディスカッション(GD):議論の初っ端、定義の穴に潜むマジックワード
グループディスカッション(GD)では「どこでもドアがあったらどのように使うか」「大人と子供で違うこと」「飼料を与えて採用する人物を選定せよ」など、そのままだと論理的な合意形成が難しいお題が出ることがあります。
議論のはじめに「大人とは」「採用の範囲は」言葉の定義をすることがありますが、使い勝手の良いマジックワードが出て来る上、流れてしまいやすいです。
「○○(マジックワード)って、人によってAという意味、Bという意味があると思うけど、今回のGDではどういう意味?」のようにあまりにもあやふやであれば全員の前提条件を揃えるためにうまく利用するといいでしょう。
(2)面接:マジックワードを分解し説明できれば、説得力が増す可能性も
「あなたの考えるグローバルとはなんですか?」
ESや自己紹介などで、マジックワードを使用してしまうと、面接官から質問されることがあります。
先述したように、マジックワードを分解し、自分は何が重要だと考えているのか示すだけで自分なりに考え意見を持っている学生であることを面接官に示すことができるでしょう。
まとめ:自分の物差しでマジックワードを使いこなそう
いかがでしたか。
マジックワードとは相手に解釈の余地を与える言葉ですが、一方で世の中に絶対的な意味を持つ言葉はありません。
あやふやな言葉が溢れているからこそ、言葉をそのまま受け取るのではなく、一旦立ち止まって自分で意味を考えることで、自己分析、企業研究から面接まで幅広く応用することができるでしょう。