こんにちは、ワンキャリ編集部です。
日本を代表する総合商社7社が一堂に会する特別企画「総合商社の採用戦略」。
今回は三菱商事の人事部採用チーム 古閑さん(写真左)と、入社1年目の井上さん(写真中央・男性)、星野さん(写真右・女性)に対談形式でお話を伺いました。
三菱商事の採用戦略 押さえるポイントはここ!
・面接で見るのは結果より過程。輝かしい経験は必須ではない
・若手に機会を与え、自ら考えさせる。海外研修も「学んで終わり」ではない
輝かしい経歴はいらない。面接で見極めるのは『過程』に現れる想いや信念
——本日はよろしくお願いします。今回は「どんな人材が三菱商事に内定するのか?」という疑問を明らかにしていきます。古閑さんからは採用担当の目線で、1年目社員の二人には、就活生に近い目線で語っていただきます。
まず古閑さんに伺います。就活生の中には、「三菱商事の社員は粒ぞろいのエリートばかり」というイメージを持つ学生もいるようです。実際のところ、内定者にはどんな特徴を持つ学生が多いのでしょうか。
古閑:出身校や学生時代の経験で一括りにするのは、正直なところ難しいです。例えば総合商社というと「体育会系や帰国子女でないと入社できないのではないか」という声を聞くことがありますが、もちろんそんなことはありません。強いて共通点を挙げるなら、人によって形は様々ですが、みんな強い想いや信念を持っていることでしょうか。さらに三菱商事の魅力は、このさまざまな想いや信念を持つ社員が互いに尊敬し、個々の能力を掛け合わせることで初めて生まれる事業価値を社会に創出し続ける環境だと思います。
古閑 孝典(こが たかのり):三菱商事 人事部 採用チームマネージャー。理工学部卒、2008年三菱商事入社。総務部にて、株主総会・取締役会事務局業務等を担当した他、学校法人海陽学園出向や北京でのグローバルトレイニー(実務研修)を経験。2015年7月より現職。
——だからこそ、選考の段階でも学生の想いや信念が見られていると。1年目社員の星野さん(女性)と井上さん(男性)に、就活生目線での意見をお聞きしましょう。お二人は、面接で自分をどのようにアピールしましたか?
星野:私は持ち前の好奇心旺盛さを、商社の「現場主義」につながる資質として伝えました。面接で話したのはドイツ留学中のエピソードです。現地のベジタリアン文化のトレンドを調査した際、その答えが牧場にあると知り、動物が大の苦手でしたが、ファームボランティアを志願しました。多国籍のボランティアワーカー、ドイツ語しか喋ることのできないホスト先の農家達と言語や文化の壁を越えて1ヶ月間寝食を共にし、他国の文化を学んだ経験から、「気になることを追及する為なら、未知の環境でもすぐに飛び込んでいける」強みをアピールしました。自分の強みを深く理解するため、就活中は自己分析だけでなく、友人や部活の仲間にもお願いし、他己分析をしてもらいました。
井上:私は、「部活動や研究において、周囲の協力を得ながら目標に挑戦し続けた自分」を伝えるように心掛けていました。どのような局面でも、自分の力だけで出来ることは限られている、と常に考えていたので、学生時代はチームメイトや研究室のメンバーに素直に頼りサポートを引き出すようにしていました。加えて、アピールではありませんが、面接はコミュニケーションの機会であると考えていたので、積極的に質問をしていました。
面接官の方に「仕事で涙が出るほど嬉しかったことは?」と伺った時、目を輝かせてご自身の経験を話してくださったのを覚えています。また、具体的な対策では、友達と模擬面接をしたのが効果的でした。
——お二人の話を聞いていると、「自身の姿を自然体でアピールすること」が内定の秘訣かもしれませんね。
古閑:強調したいのは、「突き抜けた専門性や輝かしい経歴はもちろんその人の魅力の一部ですが、我々はそのようなスキルや成果だけに注目しているわけではありません」ということです。私たちが確認する個性やポテンシャルは、結果よりも過程にあります。具体的には、高い目標を掲げ、達成に向けてすべきことを自ら考え、実際に行動していく、このプロセスをしっかり見極めるようにしています。運動部でキャプテンを務めたり、留学経験が必須というわけではありません。アルバイトや勉強、サークル活動など、対象は何でも良いので、想いや信念を持って何かに取り組んできたかどうかを聞きたいと思っています。
星野:言われてみれば、過程の部分はかなり詳しく聞かれました。面接で部活の話をしたとき、「この時はどうしたの?」「なんでこうしたの?」「その時どう思った?」と、自分でも忘れていたエピソードを思い出すくらい深掘りされたのを覚えています。
三菱商事の魅力は「経営人材が育つ環境」と「格好いい大人たち」
——入社に至るまでのキャリア選択についても伺います。1年目社員のお二人は、どんな軸で就活をし、なぜ最終的に三菱商事を選ばれたのでしょうか? まず、星野さんにお聞きします。星野さんは、複数の総合商社に内定し、三菱商事を入社先に選ばれたそうですね。
星野:はい。私の就活の軸は、「経営人材として必要な能力が得られること」でした。その点、総合商社はトレーディングのスキルと経営ノウハウの両方がバランスよく身に付く環境だと考えて志望しました。
最終的に三菱商事を選んだのは、それらの能力を確実に学べると感じたからです。事業規模の大きさや1200社を超える関係会社の多さを踏まえ、活躍できる分野や確率を最大化できる環境だと思えたのが決め手です。
星野 環(ほしの たまき):三菱商事 自動車事業本部。言語文化学部卒、2017年入社。現在は中東アフリカ向けの車両輸出業務に携わる。
——一方で、経営に必要なスキルやノウハウは、コンサルなどの他業界でも身に付きますよね。経営者を目指す学生の中には、総合商社が扱う事業分野の幅広さを敬遠する人も少なくありません。星野さんは、その点を不安に感じることはありませんでしたか?
星野: 就活中はもちろん商社以外も受けていて、特定の商材だけを扱ったり、事業に対して外部から関わることの面白さも感じましたが、私は業界や事業全体の在るべき姿を模索しながら、上流から下流までの様々なフェーズに主体的な立場で関わりたいと考えていたので、総合商社しかないと感じました。同期を見渡しても同じように考えて、総合商社で働いているケースが多いように感じています。私自身、「経営人材になる」という目標の達成に必要なスキルやノウハウは、商材に左右されないと思っています。ゴールに向かうための道筋が無数にあって、キャリアを柔軟に考えていけるのも、総合商社で働く魅力ですね。
——それは興味深いですね。井上さんにもお聞きします。井上さんは理系大学院の出身ということで、周囲にはメーカーを入社先に選ぶ人も多いかと思います。その中で総合商社を志望していたのはなぜですか?
井上:確かに、周囲には研究室の推薦でメーカーに入社する人も多く、私自身も外資系消費財メーカーに1月に内定をいただきました。そこで私が総合商社を選んだのは、就活の軸だった「働く人の魅力」です。その中でも三菱商事は、OB訪問や面接で会う社員が、年齢の近い先輩も経験豊富なベテラン社員も、業界のプロを目指して全力で仕事に打ち込む、素直に尊敬できる人たちばかりでした。若いうちに知識やスキルだけを得たいなら、外資系企業という選択肢もあったと思います。しかし、長い人生を見据えて「短期的な成長だけでなく純粋に『業界のプロを目指す格好いい大人』を目指したい」と思った時に、「こんな人になりたい」と思える人が多かったのが、三菱商事だったんです。
——過去インタビューの「商社パーソンはビジネスパーソンとしての戦闘能力が高い」という言葉に通ずるところがありますね。
海外研修も手探りで結果を出す。機会と場を与え、自走する若手を育てる風土
——続いて、入社後のお話もお聞きします。お二人は三菱商事で働く中で、入社前後のギャップを感じることはありましたか?
井上:ギャップではありませんが、思った以上に自主性を求められて驚きました。上司から仕事の指針を示されたりしっかりとした指示をもらうことはもちろんあるのですが、「君自身はどう考えているのか」を問われる場面が多く、自ら考えて仕事を進める緊張感を持つことができています。
井上 達也(いのうえ たつや):三菱商事 石油化学品本部。農学生命科学研究科卒、2017年入社。現在は合成樹脂等のトレーディング業務に携わる。
星野:同感です。一方で、研修・教育制度はとても充実していると感じます。私の場合は、自動車ディーラーや工場での実地研修など、現場感覚を身に付ける機会が豊富にありました。
古閑:その理由は、三菱商事の人材育成方針にあります。入社直後には財務会計や貿易実務など、基礎的なスキルを学ぶ研修の場はありますが、あくまでもこうした研修はOJTを補完するプログラムとして用意しており、人材育成の方針はOJTを重視しています。「機会や場所を与えることに重きを置いて、そこで何をして、何を学び、何を得るかは本人に考えさせる」というスタンスです。そこで得た学びをつなぎ合わせる、つまり、点と点を結んでできた線が個人のキャリアとなります。点と点を結び、円を作るも人もいれば、星型を作る人もいる、そこにも各人の個性が出ると思っています。会社が画一的なキャリアを提示するのではなく、個々人が自身の目標を達成するために、オリジナルのキャリアを形成していくのです。
若手の研修制度として、入社8年目までに、全ての総合職社員が約1年間、海外経験を積む「グローバル研修生制度」があります。これは研修とはいえ、現地の状況を自分で分析してミッションを探し、自ら仕事を作り出し、結果を残さなければなりません。
配属は「リスク」にあらず。商社の本質は考え、行動し、実行する力
——なるほど。総合商社での「入社前後のギャップ」といえば、配属リスクが挙げられます。三菱商事ではどのように解決しているのですか?
古閑:まず当然のことではありますが、私たちは「最大の資産である人材」を適時適材適所に配置することが重要だと考えています。社員が実力を発揮できない部署に配置しても、会社・社員の双方にとって何一つプラスはないので、選考中と内定後、それぞれのフェーズでミスマッチの最小化に取り組んでいます。まず、そもそも入社以前のミスマッチを避けるために、選考で学生をしっかりと見極めています。また内定後には、全ての新入社員を対象に配属面談を行っています。
——そうすると、本人の希望と異なる部署が「フィットする」と判断されることもありますよね。それはミスマッチに繋がったりしないのでしょうか。
古閑:配属面談では、「何をやりたいか」と同時に、「何故それをやりたいか」も聞くことにしています。「何」に当たる部署名や事業内容も大切ですが、「何故」として挙げられる本人の興味や情熱は、仕事をする目的やモチベーションの源泉であると考えています。また、その「何故」を満たす「何」は、本人が気づいていない分も含め、三菱商事の中にたくさん存在しています。従って、配属面談でじっくりと話を聞いた結果、本人が希望する部署と異なる部署に配属する場合もあります。それは、客観的に見た本人の適性や資質、面談で語られた働くことへの目的意識やキャリアイメージをもとに、より適した配属先があると判断するからです。仮に、希望通りに配属された場合も、入社後に不本意な結果になってしまう懸念がある。私たちは、それこそがリスクだと考えています。
加えて、そもそも総合商社に共通して言えることですが、商社パーソンに本質的に求められるのは「自ら考え、行動し、実行する力」で、これはどんな事業に携わっても同じです。そこに意義を感じる人であれば、部署配属でギャップを感じることはほとんど無いはずです。
井上:その点、特定の分野へのこだわりが強すぎる方は、より「変化への適応」が求められる総合商社にマッチしない可能性もあります。私が携わっているのは樹脂などの化学素材ですが、技術革新や製造プロセスの変化など、事業環境が日々激変しているのを実感します。自分の軸をしっかりと持ちながらも、色々な分野に興味を持って新しいビジネスを作っていきたいと思います。
古閑:一番大切してほしいのは、自分の本音や本質と、会社やそこで働く人が純粋にマッチしていると思えるかですね。「選考に受からない=能力が足りない」ということではありません。最後は皆さんと企業のマッチングだと思うので、ぜひ皆さんの「本音」で会社選びや就職活動に臨んでもらいたいですね。
就活生へのメッセージ:古閑さん「就活を、己を知るきっかけに」星野さん「最後まで選考を受けよう」井上さん「人に会うことを楽しんで」
——インタビューも終盤です。最後に皆さまから、就活生にメッセージをお願いします。
古閑:就活を、ぜひ自分を見つめ直すきっかけにしてほしいですね。社会で活躍していけば、それだけ責任や周囲からの期待値も上がり、よりチャレンジングな環境に対峙することになりますから、困難に直面するでしょう。その時に、困難を乗り越える原動力となるのは、「自分を理解できているかどうか」だと思います。自分が頑張れる原動力がわかっていれば、どんなに高い壁でも乗り越えていくことができます。逆に、自己否定をするのは絶対にだめです。ネガティブになって消去法的に物事を考えるのは簡単ですが、いざという時は逃げ出すための言い訳にもなりえてしまう。だからこそ就活中の今、自己肯定をするクセをつけて、自分の信じる道を突き進んでもらいたいです。
また、就職活動をしていく中で耳にするであろう「ウワサ」は、あくまで参考にとどめるのが良いと思います。最後は自分で直接会って、見て、聞いた、一次情報で物事を判断してほしいですね。
星野:たとえ内定を持っていたとしても、最後まで貪欲に選考を受けてほしいと思います。自分の人生やキャリアについて、ここまで真剣に考えられる時間は就活以上にはないので、最大限に活用してほしいです。
井上:就活では行きたい会社を選んだり、自分を選んでもらうことも大切だとは思います。しかし、それ以上に大切なのは色々な人に「会える」ことだと思います。企業の人はもちろん、就活生やインターン先の同期など、人との出会いで自分の世界を広げられる良い機会です。言ってしまえば、エントリーボタンを押すだけで色んな人に会って話を聞けるチャンスですよね。人に会うことを楽しめていれば、きっと憧れの会社との縁もできると思います。
——古閑さん、井上さん、星野さん、ありがとうございました。
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