※こちらは2018年1月に公開された記事の再掲載です。
ベストセラー就活本『絶対内定』シリーズの著者で、キャリアデザインスクール 我究館の館長を務める熊谷智宏氏のスペシャルコラム。本日から、全3回の連載形式でお届けします。
きみの本音はどこにあるのか。まずはそこからだ。
「将来の夢、ヤリタイコト」
就職活動を前にして、多くの人がこのテーマと向き合う。
僕は『絶対内定』という書籍を通して、夢やヤリタイコトを描くことの重要性を語ってきた。しかし、実は同時に伝えきれていないことがある。
それは、「将来ヤリタイコト」ってそんなにピュアなものだけじゃなくてよいってことだ。
もっと言うならば、人に語りやすい、キレイゴトだけじゃなくてもよいということだ。
まずは自分の心の声に正直になることだ。
「異性にもてたい」
「みんなにすごいと言われたい」
「世界中を旅するように生きていたい」
「大きな影響力がほしい」
完全に自己中心的で、人に話せないようなことだってかまわない。
コンプレックスの裏返しのようなことだって。
とにかく自分のホンネに全身全霊で正直に行くべきだと思っている。
多くの就活生が「夢やヤリタイコト」を高尚なものと捉えすぎている。
上記のような思いを持っている自分ではだめなのではないか、と思い、前に進めなくなっているように思う。
僕は「もったいない」と心から思う。
もしきみが、就活を前にしてこのテーマで立ち止まってしまっているとしたら、もう少し読み進めてみてほしい。
夢(ヤリタイコト)を考えるときの3つの切り口。
僕は『絶対内定』で、将来の夢を3つの切り口で考えることを提案してきた。
Being:目指す自分像(能力、人格など)
Having:手に入れたいもの(年収、地位、家、車など)
Giving:社会に与えたい影響(誰のために、なんのために仕事をするのか)
これらのどれか1つではなく、この3つ「すべて」が満たされてはじめて、自分の人生が豊かになると考えているからだ。
BeingとHavingは自分が何を得られるかをベースにしている。
自分が何を手に入れたいか、どんな能力を身につけたいのかなど、
「自分の好奇心を満たしてくれるもの」
「自分の自尊心や虚栄心を満たしてくれるもの」
がここに該当する。
僕が冒頭に例を出したものと同じ。
他にも例を挙げると次のようなものだ。
「英語を使ってバリバリ仕事ができるようになりたい(Being)」
「みんなに頼られるリーダーシップと専門性がほしい(Being)」
「○○商事に入って、年収も周囲からの評価も手に入れたい(Having)」
「毎年2回は海外旅行に行ける時間とお金の余裕がほしい(Having)」
Givingは、自分が社会や人にどのように貢献できるかをベースにしている。
「世界をもっと便利にしたい」
「情報格差をなくして、世の中を公平な場所にしたい」
「日本の製造業の発展に貢献したい」
「社会の当たり前を守りたい」
などがこれにあたる。
Givingを元に将来志望する業界や企業を探すと自分が進むべき道が見えてくる。社会に出るということは、他者に貢献することを通して経済活動に参加することを意味しているからだ。
そのため、これからはじまる面接やリクルーター面談などで何度も聞かれる「就職活動の軸はなんですか?」はこれを聞いていると思っていいだろう。就活の選考の場面ではGivingを説明できるようになっている必要がある。
しかし、ここで冒頭の話に戻りたい。
多くの学生は、このGivingを聞かれる機会が多すぎてBeingやHavingが頭の大部分を占めている自分に自信がなくなってくる。
「自分は自己中心的な人間なのではないか」
「語っている夢は嘘なのではないか」
「本音を言ってないのではないか」
と自信を失っていくのだ。
そして「ヤリタイコトが分からない」と混乱してしまうのだ。
100%ピュアなGivingなんてありえない
こんな質問を先日受けた。
「財閥系の企業に入って、みんなに『すごい』と言われるのがモチベーションになっている。俺は、性格が曲がっているのではないか」
「幼い頃から、お金持ちの生活に憧れてきた。『年収が高いから、その企業に入りたい』ではだめなのか」
「まずは成長を求めていきたい。それでないと、自分が社会に何ができるかなんてわからない。それじゃダメなのか」
結論から言うと、
上記のような思いを持っていて「よい」と思っている。
大学生の頃は、正直BeingやHavingが大きいものだ。
人によってはGivingの何十倍も大きく感じる人もいるだろう。
それでよい。まったく心配しなくてもよい。
まだ実力も実績もない段階ではGivingを描いても、それを実現するための自信も実感も湧かないはずだ。なので、自分の中でもまだ確信が持てないGivingでもよい。
どんなに小さな思いでもよいから、自分の中にあるGivingを育んで欲しい。
たとえ今は小さくても、きみの中にある思いには必ず理由がある。
人は理由もなく、何かに興味を持ったり、何かに思いを抱いたりしないものなのだ。
それでも、Givingが見えてこない場合は、
次の問いを自分に立ててみると言葉になることが多い。
きみの中に社会に対する問題意識はないだろうか。
きみの中に幸せにしたい誰かはいないだろうか。
きみの中に心から価値があると感じられる商品やサービスはないだろうか。
ここにきみのGivingの種が隠れている。
例えば、Dくん。
彼は地方出身者だった。東京の大学に進学する前は、限られた情報や人のネットワークの中からしか刺激をもらうことができなかった。しかし、スマートフォンや同時に進むアプリやサービスの開発によって圧倒的に多くの刺激を受け取れるようになった。あれから3年が経ち、刺激にあふれる日々が当たり前になったが、最先端のものに興味を持っている自分を振り返ったときに、「テクノロジーで、地方と都市部の情報格差をなくしたい」という思いを再度胸に抱くことができた。
続いてEくん。
大学時代にアジアにバックパックの旅行に行った。まだまだ、貧困な地域が世の中にはたくさんあることに驚く。帰国後「俺なんかにできることはない」と思っていたので、そのときの驚きも忘れていた」しかし、就活を通して通信やインフラの事業を通して、途上国の発展を加速させれば貢献できるかもしれないと思うようになる。そこで、「日本の技術で途上国の発展に貢献したい」というGivingを抱くようになった。
きみの中にも、こんな思いは必ずあるはずだ。
今日の段階では、まだ小さくて、確信を持てなくてもよい。
ペンと紙を手にとって、まずは自分の思いを書き始めてみよう。
その先にきみの夢やヤリタイコトはあるはずだ。
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▼特別連載『絶対内定』著者の本音コラム
第1回:「就職活動で語れる夢やヤリタイコト」探しに悩むきみへ
第2回:ES、面接で語る自己PRで学生がしている勘違い
第3回:30歳の社会人たちに聞く「かつての夢」と「いまの夢」