ワンキャリアが総力を挙げて連載中の「WORLD5特集」。世界経済フォーラムに選ばれたYGLの5名が登場し、キャリア論・世界情勢を語ります。
第5弾は、株式会社ビズリーチ創業者であり代表取締役社長の南壮一郎氏へのインタビューです。後編では南氏がこれからの若者のキャリアと働き方について、KENと激論を交わします。
ーー前編:「世の中にインパクトを与える事業を創りたい。南氏の天職と理想のリーダー像に迫る」はこちら
すべての大学生は留学せよ! 世の中を変えるのは、常識の外にある多様性だ
KEN:前編では南さんの思うリーダー像や、ビジネスマンとしての生き方を伺いました。後編では全国約60万人の就活生たちが今直面している、キャリア選択や未来の働き方についてお聞きしたいと思います。
早速ですが、南さんが「共に働きたい」と感じる学生に共通点はありますか? 今まで数千人と面談してきたご経験をもとに、限られた時間の中で特に着目している点があれば教えてください。
南:最も重要なのは、自らがやってきたことを、自らの言葉でちゃんと伝えられるかじゃないでしょうか。自分が目標としてきたこと、それに対してどのような行動を起こし、どのようなことを感じてきたか。その一連の頭と体の動きが、自分らしい言葉で説明できるかどうかを見ています。もう一点あるとすると、自分自身の常識や価値観が通用しないような環境で物事に向き合ってきた経験があるかどうか。自分が全く通用しない、また理解されないような環境を体験した学生は非常に強いですよね。だから、僕は「全ての大学生は、一度は留学したほうがよい」と必ず伝えています。
KEN:留学ですか。今の大学生には決して珍しくない選択肢だと思いますが、その意図はどこにあるのでしょうか。
南:珍しくない選択肢であり、就職活動のみならず、後の人生に大きなプラスしかないからこそ勧めています。今はさまざまな支援制度があり、チャレンジしやすい環境があるのにもかかわらず、留学する大学生が増えないのはもったいないと思っています。
留学をお薦めするのは、もちろん語学の習得もありますが、それ以上に、日本特有の価値観という自らのコンフォートゾーンを出て、多様な価値観の中で人とコミュニケーションをとり、生活を営む経験が貴重だからです。
今後の仕事のあり方は、価値観がますます多様化するだけではなく、働き方そのものが柔軟になり、変わりゆく状況や情勢の中で、いかに自身が環境に順応するかが重要になってくると思います。自らが確固とした価値観を持ち、かつ周囲の方々の価値観を認めることが真のダイバーシティであるならば、留学経験は今後の労働市場において、最大の価値向上につながると思います。
KEN:なるほど。では、ビズリーチでは、多様性という価値観をどのように捉えていますか。
南:我々はこの8年間で、圧倒的なスピードで成長を遂げてきました。たった2名で始めた事業から800名が働く会社へと変化するプロセスの中で、事業の成長スピードを維持するため、組織の考え方も役割分担も変わり続け、同時に、自らの存在意義も定義し直さなくてはなりませんでした。
通常の会社では味わえない、常軌を逸したスピードでの変化についていけるか否か。また移り変わる社内外の景色を見ながら、柔軟に適応できるかどうか。ビズリーチは、このような成長環境だからこそ、多様な環境下で活躍してきたことがある仲間を欲しています。
また我々は、日本社会における働き方のインフラとなるような事業創りに邁進しており、全ての人、そして全ての企業と向き合いながら、テクノロジーとデータを活用したサービスを創り続けなくてはなりません。多様な価値観、多様な仲間が、未来の日本企業や働き方を支えるキーワードになるならば、ビズリーチも、そのような企業を目指すべきだと思っています。
「成長したいなら成長環境に飛び込もう」これからの若者の働き方とは
南壮一郎:
1976年生まれ。米・タフツ大学を卒業後、新卒にてモルガン・スタンレー証券株式会社に入社し、M&Aアドバイザリー業務に従事した。2004年には東北楽天ゴールデンイーグルスに創業メンバーとして参画し、球団事業においては不可能とされていた初年度からの黒字化成功に貢献した。その後、2009年に株式会社ビズリーチを創業し、即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」を開設し、HRテック(HR×Technology)領域でサービスを展開、現在は同社代表取締役社長。2014年には世界経済フォーラム(ダボス会議)の「ヤング・グローバル・リーダーズ」に選出された。著書に『絶対ブレない「軸」のつくり方』(ダイヤモンド社)、『ともに戦える「仲間」のつくり方』(ダイヤモンド社)がある。
KEN:今まさに日本の働き方は急激に変わりつつあるわけですが、その変化の渦中にいらっしゃる南さんは、就活生たちにどのような働き方を選んでほしいですか?
南:皆さんが活躍する時代においては、情報技術などのさらなる進化により、ビジネスモデルの賞味期限がますます短命化していき、会社は、社員を一生守り続けることはできなくなると思います。そのため、活躍できる人や仕事内容も目まぐるしく変わり続け、キャリアは、自己責任の時代になっていくと予想しています。だからこそ、世の中の非連続な波や変化に適応できる経験を積み、市場できっちり評価されるプロフェッショナルとして働いてもらいたいです。
KEN:具体的に伺いたいのですが、世の中の波を捕まえ、確実に成果を出すために求められるポイントは何でしょうか。
南:自身の経験に沿ってお答えすると、ここぞという時の波をつかまえ、事業として成果を出すためには、実現したい成功経験を積める環境で働くことが重要だと思います。僕にとっては、それが楽天イーグルスでした。志ある仲間と大きな理念をもって働ける環境、そして、社会の変化に沿って事業が急成長している環境で働くことは大きな学びになりました。社会を変えられるような事業は、一人では実現できませんし、価値あることを正しくやらねば、仲間は集まってきません。
また、事業で成果を出すということは、自らが事業の成長を主体的に創り出せるだけの力が備わっていないといけないでしょう。自身がいつか成長を創り出したいと思うならば、まずは、世の中で急成長している事業を営む環境で一生懸命働き、そこで重要視されている価値観や当たり前に行われていることを学んでいくことがポイントだと思います。例え話ですが、学生時代にサッカーや野球がうまくなりたければどういう選択をするでしょう。ピアノや勉強ができるようになりたいならば、どのような行動を取ったでしょう。仕事も、あまり変わりません。
KEN:今おっしゃっていたのは、身を置くべき環境という外的な要素かと思います。対して内的な要素として、働く側にはどんな姿勢が必要だと思われますか。
南:僕は、どんなことでも、まずは基礎づくりが重要だと思っています。地道に地味に、基礎の反復練習を繰り返すことで物事の本質を見極め、当たり前のことを当たり前にできてこそ、実戦で結果が出ると信じています。また、物事を学ぶ姿勢という点もぜひ意識してもらいたいです。学生時代に部活動や勉強に励んだことがある方であれば分かりやすいかもしれませんが、もし自分が小学生に、コーチや家庭教師として教える側になった場合、どのような姿勢や態度の子どもに教えたいですか? 「できないことを素直に認め、アドバイスされたことを愚直にやりきる子ども」、「できるようになったことで周囲のできない仲間の手伝いができる子ども」、「笑顔で明るくまわりを元気にできる子ども」と答えるのではないでしょうか。僕は、皆さんが学生時代に十分なほど、物事で成果を出すための秘訣を学んできたと思います。あとは、やるかやらないかだけです。
自分の道は自分で選ぶ! アドバイスは「自分を信用すること」
KEN:まとめると、「急成長する環境で、切磋琢磨できる仲間とともに、基礎から学んでいってほしい」ということですね。確かにそんな風に働けたら最高だと思いますが、実際にそんな企業を選ぶのは容易ではありませんよね。就活生が参考にできるような、具体的な判断基準はありますか。
南:自分が就職活動をしていたならば、各企業について、この3つを調べると思います。
1つ目として、「急成長」という言葉をきっちりと要素分解するところから始めます。各企業の、過去5年間の業績(売上・利益)や組織規模の推移や成長率を調査しながら、そもそも会社として成長しているのか、また今後、成長曲線を描き続けられるのかを定量的に判断します。基礎的なことですが、意外に皆さん、受けている会社の数字を見ていないように思います。
2つ目として、これから50年以上のキャリアを歩むと仮定するならば、ある程度の期間にわたって、新卒社員にビジネスパーソンとしての教育を施してくれるか否かを定量的に調査します。例えば、1年前、2年前、3年前に入社した新卒社員のうち、現時点で何名が在籍しているかを各企業に聞いてみると、その会社の新卒社員へのスタンス、特に採用時の事業や育成に対するメッセージと、その後の実態がしっかりとシンクロしているかどうかが見えるのではないでしょうか。
3つ目は、会社の平均年齢を確認することです。経験上、平均年齢はその企業を担う中核人材の年齢だと思いますし、現場でリーダーを務めるチャンスが回ってくる年齢にも近しいでしょう。一概には言えませんが、平均年齢が高ければ終身雇用型の働き方かもしれないし、自身が求める働き方を知るよい指標になると思います。
KEN:組織の成長性と教育体制の定量評価ですか。また平均年齢の視点も面白いです。企業に限らず、どんな団体を選ぶ時も使える指標ですね。
南:ありがとうございます。ただしこれは、大学生時代に、どの部活やサークルを選ぶか? という基準とあまり変わらないと思うんですよ。どのような活動をしていて、どのような目標を設定しているのか。その目標に対して、ここ数年、どのような結果を出しているのか。あるいは勧誘時の誘い文句と、その後の活動の実態に対する過去の新入部員の定着率を調べるわけです。求めれば、判断をするためのデータはいくらでも集まると思います。会社選びも部活やサークル選びも、とことん定量的な情報収集をお奨めします。
KEN:例えば「せっかく部活で頑張るなら、部員が定着している強いチームがいい」という考え方と変わりはないわけですね。「企業選び」というと構えがちですが、就活生が10年以上の学生生活で判断してきたことと根本は変わらない。興味深いです。
KEN(聞き手):
ワンキャリアの若手編集長。1987年生まれ。広告代理店、コンサルティングファーム出身。ビジネス経験とは別に、学生時代にボランティア団体を設立・プロボノ支援等のソーシャルセクターでの活動経験を持つ。
南:社会人人生の中でのファーストキャリアはとても重要な選択だと思います。これからの時代のキャリアが、自分で考え、自分で構築していくものに変わっていくのであれば、あくまでも僕の私見ですが「一番最初に選ぶ会社こそ、自分を信じて選んでもらいたい」と思っています。一つの会社で50年、60年と働き続けることを想定されている方には当てはまりませんが、自己責任型のキャリアを歩もうとされている方であれば、就職活動を通じて会社や仕事選びを学ぶのも、今後続くキャリアを模索する旅の序章みたいなものです。自分で考え、自分で判断し、そして、どんどん自分に合った働き方に軌道修正していけばよいでしょう。
KEN:では最後に、南さんの働き方の価値観を教えてください。今の南さんが学生なら、どの企業の、どのフェーズで働きたいですか。
南:僕の仕事における価値観はシンプルです。自分自身、どの会社を選ぼうと、きっと一生懸命働きます。だからこそ、とことん面白い仕事がしてみたい。自分たちの仕事が社会に大きなインパクトを与え、いつか振り返った時に、仲間と創ってきた事業が世の中で表現されていてほしい。自分たちも会社を興してきたからこそ分かるのですが、同じくゼロからスタートした、現在の日本を牽引する全ての大企業のことは、心の底からリスペクトしています。正直、憧れています。子どもっぽく聞こえるかもしれませんが、我々も同じように、社会にインパクトを与えている大企業になってみたい。だからこそ、僕自身は大企業で働くよりも、仲間と一緒に、自分たちで大企業を創ってみたいです。
KEN:今日は貴重なお時間を頂き、ありがとうございました。1時間のインタビューながら、南さんの気迫が存分に伝わってきました。
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