※こちらは2017年5月に公開された記事の再掲です。
こんにちは、ワンキャリ編集部です。
ワンキャリの人気ライター、トイアンナ・北野唯我(KEN)・熊谷真士が学生の悩みに答える「就活道場」。
今回のテーマはこちら。
就職せず、いきなり起業する学生についてどう思いますか?
・トイアンナ:学生時代に起業を2社ほどしまして、どちらもポシャりました
・北野唯我(KEN):5歳児の「起業家」がいないのは、なぜだ……?
・熊谷 真士:良いんじゃないでしょうか
三者三様の答えをお楽しみください!
トイアンナ:学生時代に起業を2社ほどしまして、どちらもポシャりました
トイアンナ:
大学を卒業後、外資系企業にて約4年勤務。600人以上の人生相談を受けた実績を基に独立。現在はマーケター、ライターとして広く活動中。
就職せず、いきなり起業する学生についてどう思いますか?
こんにちは、トイアンナです。就職せずいきなり起業する学生、私は応援します。と申しますのも私も学生時代に起業を2社ほどしまして、どちらもポシャったからです。私の周りで就職せずに起業した方はその大半が学生時代に創業し、そのまま1年程度は軌道に乗せています。それだけで十分すごいじゃありませんか。
ただし「ある条件」が揃った学生には起業より就職を勧めたいと思います。
金がなければ諦めよ
どんな学生が、たとえ学生時代に起業しても就職を選ぶべきか──結論から申し上げますと「金か親の援助がない」方です。
まず資金繰りですが、学生起業で「お小遣い程度なら毎月儲かっている」のと、安定した利益を従業員の分まで叩き出せるのとでは話が大きく変わります。
たとえば今、私はライターとして独立しており、社員が自分だけの会社を経営していると例えることができます。そんな私が学生時代に就活せずそのままライターを目指すとして月5万円稼げたから踏み切るのと、月30万円まで収入を増やしてから独立を目指すなら、どちらが安心できますか?
答えは間違いなく後者ですし、実際にはここから社会保険料や所得税が引かれますから月収30万円でも危ういでしょう。ですから「ちょっと稼げる」程度なら就職していただきたいと思います。ましてや学生時代から借金経営を続けているのなら、無理せず廃業の軟着陸地点を探すべきでしょう。
起業家はリスクを減らすよう努力するもの
ただし、たとえ身入りが少なくとも起業してそのまま進める方もいます。親の援助が期待できる方です。資産があるお家ならもちろんのこと、親御さんも起業家でノウハウを受けられる、いざとなったら親の会社へ就職できるといった保険が効くならば、リスクを取ってでも起業したほうが楽しいでしょう。
成功した起業家のお話を聞くと、実は親御さんが太い業界のパイプを持っていたり、儲からない時期は奥さまに食べさせてもらったなど、安心してリスクを取れる環境にあった方も少なくありません。もとい成功する起業家に多いのはリスクをなるべく減らせる人間であり、向こう見ずな決断を下しまくるタイプは少ないのです。
ここまで申し上げて、それでも起業する方はいるでしょう。進んでください。どうせこの程度で止まるような方は起業に向いていません。失敗すれば最悪の場合、倒産や自己破産もあるでしょう。そこで追い詰められて死ぬような人間にだけはならないでください。もし起業を志す方がいらしたら、死なないことだけ周囲に約束していただければ十分です。行ってらっしゃい。
北野唯我(KEN):5歳児の「起業家」がいないのは、なぜだ……?
北野唯我(KEN):
1987年生まれ。本名北野唯我。事業会社、コンサルティングファーム出身。学生時代にボランティア団体を設立・プロボノ支援等のソーシャルセクターでの活動経験を持つ。
就職せず、いきなり起業する学生についてどう思いますか?
こんにちは、KENです。この質問を読んで、最初に感じたのが
「15歳で起業する高校生はいるのに、5歳で起業する幼稚園児がいないのは、なぜだ?」
ということでした。というのも、そもそも年齢や学生は、記号(ラベル)でしかないわけで、これだけ人類のテクノロジーが進化した世界では、5歳の幼稚園児が起業することだって可能ではないか。ではなぜ「15歳で起業する人はいるのに、5歳で起業する人がいないのだろうか」と。
話は少しそれますが、幾分か前に大学を4カ月で辞め、18歳で起業した学生がネットで炎上した。彼を批判する大人の論旨の1つは「手段が目的化している」だった。「本来、起業はやりたいことの手段であるべきなのに、起業自体が目的になっている。起業はそんな生半可な気持ちでできるものじゃない。世間なめるな」というのだ。
私はそれを読んで「この大人たちも、手段が目的化しているなぁ」と感じた。つまり、「なぜ、『18歳』で『学生』だったらダメなのか?」ということだ。「学生」というのも、「18歳」というのもマクロで見れば「手段」でしかない。手段を目的化し、批判するのはまさに自分を棚に上げているように見えたからだ。
実際のところ、この事件で大人達が違和感を覚えたのは「学生だから」ではなく、「世間を全く知らない純粋ウブであるがゆえの、彼の痛さ」だったのだ。だがそれは、本来大人たちが一番失い、「手に入れたくても手に入れられないもの」だったのだ。だから大人は論理をつけ、彼を批判したのだ。
話を戻そう。
そうすると、この問いを本質的に考えるためには、
「15歳の人間」と「5歳の人間」は何が違うのか? に答える必要がある。
リアルな話、5歳のCEOは嫌だ
リアルな話、日本では15歳以上しか会社を登記できないらしいが、法律とはその時点でのルールであり、今後変わる可能性がある。選挙権の年齢が変わったのと同じ理屈だ。だから「法律上不可能」という答えは本質的ではない。
だが、それでもやっぱり5歳のCEOは私は嫌だと思う。
その理由はシンプルで、どちらかというと「肉体的な要素」が大きい。5歳だと体も未発達だろうし、重たいPCも自分で運べなさそうだ。会議に出たペットボトルも開けてあげる必要がありそうだ。だから嫌だ。
では、体が十分に発達した15歳だったらどうだろうか?
15歳のCEOは、全然アリ。
私の場合は「全然アリ」だ。彼がもしも天才で神から与えられた才能があるなら、むしろ積極的に手を差し伸べたいと思う。「若い」というのは生存できる年数の期待値が高いということだから、偉大なことを成し遂げられる可能性も高い。
何がいいたのか?
それは、この質問をしている時点で、その前提には「年齢やラベルによって価値が変わるはず」という仮説が存在しているように見える。だが、それは明らかに違う。なぜなら、もしも年齢が人の魅力を決定するのであれば、60歳の大人はすべからく20歳よりも「3倍カッコいい人」であるはずだ。だが、実世界は全くそんなことはない。年齢は経験を得るための、手段でしかないのだ。
質問にストレートに答えるならば「年齢は関係ない」ということであり、質問者に対して思うのは「もうちょっと、ゼロベースで世界を見てみてほしいな」ということだ。
熊谷真士:良いんじゃないでしょうか
熊谷真士:
京都大学→総合商社→ヘッジファンド/ライター。ブログ「もはや日記とかそういう次元ではない」を運営。
就職せず、いきなり起業する学生についてどう思いますか?
これは実際によく聞かれます。聞かれるたびに「ううう〜〜ん、良いじゃないでしょうか」と答えています。私のあまりにも覇気のない回答に、聞いている側も憤慨しているのではないかと推測します。
さて、「良いんじゃないでしょうか」というショボい回答になる理由なのですが、まずこの質問をする人には個人的に2パターンいると思っていて、1つは「起業してビジネスを育て、やがて社会に大きなインパクトを与えることが人生の目標である」と強く考えている生粋の起業家タイプの人です。こうした人にとってこの質問は「いきなり起業する方が多くのことを学べるか、一度企業に勤めた方が多くのことを学べるか」というような文脈になるのだと思います。
自分自身の身の回りの人を思い出して起業して成功した人を見ると新卒のキャリアにはどちらのパターンもあるので、これは一長一短だなと思います。その人のやりたいことや能力、勤める場合に想定している会社等にもよるな、と思うのです。あまりにも状況によるので一義的なアドバイスが難しく、とりあえず私の第一声は曖昧かつ力無さげな「良いんじゃないでしょうか」になります。それ以上の回答は、固有の状況に応じて考えます。というか僕は成功している起業家というわけではないので本質的に助言出来ることはほとんど皆無に等しいと思います。
さてもう一方のパターンは「会社勤めと起業、どちらの方が幸せか」といった文脈で「就職せずに起業するのはどう思うか」と聞かれる場合です。こちらは同じように「起業」と言っても経済的なインパクトの追求というより自分が余裕を持って暮らせるくらいには稼げるようになる、という線をターゲットにして「起業」という言葉を用いている印象です。
この場合は、論点が「新卒は特権か」「就職しないことによるリスク」「社会的な地位がないのはどうなのか」「企業勤めは辛いのか」といった軸に収束しがちな印象です。こういったテーマ設定は価値観が思い切り出る話だと思うので、その人がどういう価値観を持っているか次第としか言いようがないなと思います。
「社会的承認から得られる快感の度合い」「生活に必要だと思っているお金の量」「その人自身の根本的な能力」「安定や帰属により感じる快感の度合い」といったポイントは人によって大きく違うもので、そういった価値観の差異に応じて正しい選択があるのだと思います。恐らく就職せず起業しようと少しでも思う人にとってはそれが正解だし、それはリスクだと思う人にとってはそのリスクの分かりやすいヘッジをするのもまた正解なのでしょう。ここでは意見を統一する必要はないと思うので私からの回答は曖昧且つ気持ち悪めな「良いんじゃないでしょうかぁああぁぁ〜♡」になります。
というわけでこの質問を受けた場合には上記2つのパターンを想定しながらまずは「良いんじゃないでしょうか」と回答して無責任な空気を出し、もう少し詳しく就職/起業にまつわる具体的な状況やその人の考えを聞くようにしています。逆に言えばこの「就職せず起業」という情報だけでは、私の方では何も助言出来ることはないということでもあります。以上、身の程知らずのドヤ顔ベースの上から目線にてお送りしました。それではまた来週。
「就活道場」の記事一覧
・vol.1:学⽣のうちは遊んでおけっていうアドバイスは本当に正しいのか?
・vol.2:「やりたいことは仕事をやっていく中で見つけていこう」ってのは、実際見つかるもの?
・vol.3:いつも最終面接までいい感じで進むのに、最終で落ちることがよく分からない
・vol.4:新卒として再就職したい企業はどこ?(どこでも入れる前提で)
・vol.5:学⽣時代の期待が裏切られ、社会⼈になって最もがっかりしたことは何か。
・vol.6:幸せな家庭を作っている社会人と、そうでない社会人、どこに分かれ目があると思われますか?
・vol.7:就職せず、いきなり起業する学生についてどう思いますか?
・vol.8:結婚しないと昇進に響くか
・vol.9:中堅となると出世するしないが顕著になってくるが、交友関係はどうなるのか。
・vol.10:社会人1年目と現在との考えのギャップ。(e.g.将来のビジョン、働くモチベーション)
・vol.11:昇進する上で失敗せずにチャレンジするコツは?
・vol.12:大学時代に恋人を作れと先輩方に口を酸っぱくして言われるが、社会人の出会いはそんなに悪いものか?