外資系企業といえば、高給激務・頭がキレるといったイメージの他に「UP or OUT」、つまり昇進するか・クビになるかを迫られる厳しい人事制度がその特徴です。
この制度を知ったときに「UP(昇進)しなかった人は最終的にどこへ行くのか」を不安視される方もいるでしょう。課長・部長と上のポジションになるほど役職の数は減っていきますから、全員が常にUPすることはありえません。となれば、OUT(クビ)になった人はどうなるのか。新卒入社の際に、商社など終身雇用を前提としたトップ企業と比較するのであれば、なおさらOUT(クビ)のリスクが外資の大きなデメリットとして目に映るはずです。
今回はそんな外資系企業の「OUT」に焦点を当ててみます。
<目次>
●1. 外資でもリストラされて辞める人はほとんどいない
●2. 「UPのためにOUTする」同業他社の転職を通じて出世していく
●3. 年収を求めて、業界下位へ転職する場合も
●4. 「そもそもUP or OUTの風土がない」専門職として安定したキャリアを目指す
●5. 「活躍する業界を移す」ベンチャーへ転職する
・起業、またはベンチャーに活躍の場を移す
・外資系企業の日本支社の立ち上げに関わる、という場合も
●6. 「ゆるさを求めて」外資の業績を土産にして日系企業へ転職する
●7. 新卒で外資に入ったからといって、一生外資とは限らない
1. 外資でもリストラされて辞める人はほとんどいない
「外資系は、OUT(クビ)になって辞める人がたくさんいる」というのは、多くの学生が思い浮かべる外資像ですが、これは大きな誤解です。実際は、ほとんどの人はクビによって退職することにはなりません。というのは、その前にみんな辞めてしまうからです。
実際に働いていると、本人が成果を出していても役職に空きがないため昇進できないといった場面が発生します。そういったときに、外資系社員はさっさと他の会社へ転職し、転職先で昇進を狙います。UP or OUTではなく「UPのためにOUTする」事態が頻繁に起きているのです。
2. 「UPのためにOUTする」同業他社の転職を通じて出世していく
1社にとどまる方は少数派で、ほとんどの方は同業他社へ転職を繰り返しながら出世していきます。その背景には多くの外資系企業は「出戻り転職」を歓迎していることがあります。たとえば新卒でA社へ入ってB社へ転職し昇進。その後B社での業績を引っ提げてA社へ戻りさらに昇進する、といった出世コースがあるのです。
もちろん、出戻りはせず新たな会社へ転職しその度に昇進し続ける場合もあります。
多くの外資系企業では即戦力を重視しますから、生え抜きの社員よりも転職者を歓迎する風土が強く、長年自社で貢献した社員より転職者の方が待遇がいいこともザラにあります。
つまり、実際にUP or OUTが実行されている企業はほとんどなく、狭い業界で同業種の転職を繰り返し上の役職を目指すケースが多いのです。
3. 給与を求めて、業界下位へ転職する場合も
また、役職というよりも「より高い給与」を求めて転職する場合もあります。
たとえば外資系コンサルティング会社はトップ企業であるほど給与が安いという特徴があります。業界1位であれば誰もが応募してきますから、給与条件で争う必要はないわけです。従ってさらなる待遇を望むのであれば業界下位へ転職することが求められます。ある40代の男性は、中小コンサルティング会社勤務。「社名が欲しければ新卒で入ったA社に残るべきでしたが、ペイが違うので」とはにかんでいました。
4. 「そもそもUP or OUTの風土がない」専門職として安定したキャリアを目指す
「UP or OUT」が意外と機能していない話をお伝えしましたが、そもそも「UP or OUT」の風土がない職種もあります。その代表格が人事・法務などの社内の秩序を担う部門です。
たとえば人事部門は、日本支社のトップにでもなりすべての責任を負うのでもない限りクビはありません。
人事部のサブリーダー職で活躍する40代社員は「私のキャリアは一言でいうと、平凡・安定ですね。数値目標なんかもやっぱりあるけど、進退に関わるってことはまずないよね。ただ、他部門のお偉方と仲良くしなけりゃ首のすげ替えもあるんで、いかに人脈作っておくかはいつも考えるよねえ」と語ります。
5. 「活躍する業界を移す」ベンチャーへ転職する
ここまでは、転職する・しないに関わらず外資の中に居続けるというキャリア選択をお伝えしましたが、活躍の場を他に移すという選択肢も存在します。
起業、またはベンチャーに活躍の場を移す
コンサルティング会社や外資メーカーの前線で活躍する方は起業の志を抱く方も少なくありません。そういった方はある程度外資系企業でスキルを身に着けたのち、当初の予定通り独立起業していきます。
また、最初は昇進コースを目指していた社員も起業する仲間に魅力を感じ、一緒に退職するケースもあります。ある40代男性は創業間もないITベンチャーへ興味を惹(ひ)かれ、友人と一緒に退社しました。現在は「何もかも任されて大変だよ」と言いながらも、精力的に活躍しています。
外資系企業の日本支社の立ち上げに関わる、という場合も
さらに、外資系企業が日本へ初めて支社を出すときに、他の外資で勤めている社員へ高い給与でオファーを出すことがあります。支社スタッフは10名以下とベンチャーと同規模になることも多く、高給と高い裁量権に惹(ひ)かれて辞めることも少なくありません。
編集部の身近でもGoogle出身者でアメリカの広告系ITベンチャーの日本支社を立ち上げる際にこのような例がありました。
6. 「ゆるさを求めて」外資の業績を土産にして日系企業へ転職する
外資系企業で昇進を目指せば、競合他社を転々としながら激しい競争を勝ち抜く必要があります。20代の頃はその中でガツガツ働いていたものの、40代に差し掛かるタイミングで「そろそろ、まったり働きながら昇進できる企業へ行きたい」と考える方が少なくありません。
そういった場合に、日系企業へ転職するという選択をする40代もいます。特に近年、外資系投資銀行から商社の事業投資部門へ転職される方は、そういった背景事情を抱えています。1日90分睡眠の激務を経験した彼らにとっては、総合商社の職場環境ですら「ゆるキャリ」に見えるようです。
7. 新卒で外資に入ったからといって、一生外資とは限らない
ここまで、外資系企業へ就職した方がたどりやすい人生コースについてお伝えしてまいりました。ここまでで分かるのは、外資系企業へ入ったからといって「UP or OUT」の人生をたどる人ばかりではないということです。また、たとえ相性が外資系と悪かったとしても他の企業で活躍できる人が多いことです。
外資系企業を選ぶ最大のメリットは短期間で転職・独立できるスキルが身につく点。
「たとえばさ、新卒でウチに入ってきて合わないって子は一定数いるわけじゃん? それでも転職したくなったら引く手あまただし、大抵どこでも行けちゃうわけ。だってそれだけ実力を叩(たた)き込んでるんだもん。日系企業でさ、入社2年目ですって言って鳴り物入りで転職できる子ってそう育たないでしょ。そこが違う。その違いこそが外資に入る最大のアドバンテージってことは、みんな知ってほしいよねえ」と、今回インタビューした40代の社員が語っていました。これをご覧いただいた皆様も外資における「UP or OUT」の現実を踏まえ、冷静にキャリアを選んでいただければと思います。
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▼参考
・ONE CAREER PLUS『マッキンゼー・アンド・カンパニー/転職体験談』(別サイトに遷移します)
・ONE CAREER PLUS『デロイトトーマツコンサルティング/転職体験談』(別サイトに遷移します)
他MBBやBig4、外資系金融などの転職先も掲載されているので、興味のある方はご覧ください。
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