こんにちは、ワンキャリ編集部です。今回は「内定ブルー特集」の第1弾です。就職活動を頑張り内定を獲得した後に強烈な後悔から内定ブルーに苛まれたあるインターン生のお話をお届けします。ぜひ一読ください。
就活はいきなり日常に現れた
大学に入学してからは、サークル、バイト、クラ友と海外旅行と、それなりにリア充を楽しんできた。どこにでもいる私文の学生として普通の学生生活を謳歌していた。
——大学3年の11月。
少しずつ寒くなり、ちょうど息が白くなり始めた頃だった。
仲の良いサークルの友達を飲み会に誘ってもつれない返事をされることが増えた。
そうか、世間はもう少しずつ就活を気にし始めているんだ。
バイトやサークルに打ち込んでいた私は、いきなり現れた就職活動に違和感を感じた。
「周りもそんな感じだし、大丈夫でしょ!」
就活をはじめてからも、決して模範的な就活生だとはいえなかった。何回か説明会をブッチ(※1)したし、企業研究なんて何をすればいいか分からなかった。
しかし「周りもそんな感じだし、大丈夫でしょ」と思っていた。
海外に関わる仕事ってかっこいい、給料もたくさんもらえそうという理由で総合商社を第一志望にした。
気づけば6月1日、経団連の定めた面接解禁日になっていた。
就活生として頑張った私は、総合商社の面接を受けていた。
「御社を志望した理由は、幅広く世の中に影響を与えられる仕事だと思ったからです!」
人事部長との最終面接では笑顔で対応できたと思う。
しかし、総合商社からの内定はもらえなかった。
程なくして、複数の大手企業から内定をもらい、私の就職活動は終了した。
最終的にはある金融機関に入社を決めた。
その時の正直な感想は
「なんだ、『就活ヤバい』って世間で言うけど正直こんなものか」
だった。
「就活」は、「内定」の2文字を残して突然に去っていった。
私の生活の中心は再びバイトとサークルになった。
(※1)ブッチ:事前の連絡もなく、約束を反故にすること
社会人になる楽しみ
大学4年の9月になり、最後のサークル合宿を目前にワクワクしていた頃、スマホが鳴った。
内定先からのメールだった。
「改めて内々定おめでとうございます。本日は内定式兼内定者研修のご案内です。下記の登録フォームから出欠をご入力ください。」
文面を読んでワクワクした。
これからの40年を一緒に過ごす同期はどんな人なんだろう。
社員さんはどんな人なんだろう、優しい人が多いといいな。
研修ってなにするんだろ。資格とかもやっぱり必要なのかな。
就職先に関するさまざまな疑問が生まれた。素直に楽しみだった。
辛いことも楽しいことも最高の同期と乗り越えて、そしていつか社会に貢献できる人になりたい。思いもよらず、内定先への期待感が高まっていた。
気付いてしまった違和感
内定式の日がやってきた。
サークルの友達には「内定式から研修とか社畜じゃん!」とか「飲み会は社員に飲まされるから覚悟しとけよ」などあることないこと吹き込まれたが、内心は楽しみだった。
この会社で40年働くんだ。頑張らなきゃ。
期待感と高揚感を抱いて、研修センターの扉をくぐった。
席につき、内定者の自己紹介が行われた。
それぞれ思い思いに。楽しそうに話しているが魅力的な人はあまりいなかった。
「なんでみんなこんなに盛り上がってるんだろう」
少し、取り残された感じがした。
研修後は飲み会だ。
「みんなはまだ若いから分からないと思うけど、仕事って辛いこと9割だからね。辛さを耐えて頑張るのが仕事だよ」
「社会人になって大事なのは、会社に期待感を持たないことだよね。その代わり土日は同期で旅行行ってぱーっと楽しんだり、プライベートを充実させたりすると楽しい人生になると思うよ」
アルコールも手伝って社員はざっくばらんになんでも話してくれた。
でも会話の8割はネガティブな話だった。愚痴の方が盛り上がったかもしれない。
仕事ってそんなに愚痴を言わないとできないことなのか?
飲み会を終え、終電に揺られ最寄駅に着いた。家までの帰り道、私は先輩社員たちのセリフを頭の中で反芻していた。膨らんでいた「キラキラした社会人像」は叶いそうになく、内定先への違和感が確実なものになっていった。
周りと比較してしまうちっぽけな自分
内定式翌日、サークルに行くと同期たちは内定式の話題で持ちきりだった。楽しそうで溢れている。
現実への不安を抱きつつも、キラキラしていた。
そんな声を聞きたくない自分がいた。
彼らに比べて自分はどうだ。自分で決めた進路なのに、自信が持てない。人と比較をしても何にもならないのを分かっていたが、自分ではどうしようもなかった。
劣等感に苛まれた。
このままこの内定先で働いていいのか?
他の人はキラキラしているのになんでこんなに憂鬱なんだ。
「就活ってラクショー」じゃなかったのかよ。
なんだよ、ちくしょう。
内定ブルーに陥っていた。
てめぇの人生、てめぇが決めろよ
限界だった。
後悔、不安、劣等感、そんな醜い気持ちを自分1人では抱えきれず、信頼していたサークルの先輩にLINEを送った。
「ご相談があるんですが、来週の土曜日お時間ありませんか?」
「いいよ。じゃあ来週の土曜、いつもの居酒屋でね」
弁護士を目指していた方だった。しかし司法試験に失敗し、専門商社に進んで2年目。第1志望とはいえない進路に進んだ先輩なら自分の気持ちを理解してくれるのではと思った。
先輩との約束の日、挨拶もそこそこに、私は先輩に気持ちを投げつけた。
就活をなめていたこと、内定先に納得できていないこと、本当は就活を後悔していたこと、サークルの同期に劣等感を抱いていること。堰を切った醜い感情はとめどなく溢れ出て、途中で止めることはできなかった。
「みんなキラキラしてるんですよ、本当に辛いんすよ!」
「俺だって商社マンになりたかったっすよ」
「外資行ってもどうせ首になるだけじゃないっすか。なんであいつらあんなに偉そうなんすか」
感情的な自分に、自分で驚いた。
気づけば頼んだビールは6杯を超えていた。お酒に強くない私にしては、かなり飲んでいる方だった。酔っ払い、溜まっていた思いもすべて吐き出して、ふわふわした心地よい気持ちになったときだった。
「お前さ不満ばっかり言ってるけど、それって結局自分のせいじゃん。不満ばっかり言ってないで、てめぇの人生なんだからてめぇで決めろよ。」
一言で頭がかち割られた。先輩の言葉は続いた。
「仕事って自分でやる気を出して、自分で失敗から立ち直れる人じゃないとやっていけないよ。今のお前じゃ絶対に通用しない。現状で本気で頑張ってみろって。歯を食いしばって頑張るなら俺はお前を応援するから。」
少し目元が潤んだのはお酒のせいだけではなかった。
新たな決意を胸に
次の日、学園祭が賑わっている横で私は簿記2級の参考書を買い、図書館へ向かった。
先輩の言葉を受けて、今の環境でできることを精一杯やろうと決意した。
まずは金融の知識を身につけることから始めようと思い、勉強を始めたのだ。
もう周りに文句を言うのはやめよう。自分ができることを淡々とやっていこう。
他の人と比べるのもやめよう。自分なりに必死で頑張ってみよう。
内定ブルーに陥った時期は辛く、自分の就職活動を後悔し、周囲に不満を漏らしてばかりだった。
しかし、不安を吐き出したからこそ、社会に出る前に大事なことを学べた。少し回り道だったが、自分には必要な時間だった。
大学4年生の冬。
少しずつ寒くなり、ちょうど息が白くなり始めた頃、もう内定ブルーを感じることはなくなっていた。
編集部より:内定ブルーを乗り越えるたった一つの方法とは
もし、あなたが内定ブルーに悩んでいるなら、社会人視点を身に着けるチャンスと考えてみてはいかがでしょう。
「今の環境が合わないな」と感じる時、その人が取れる行動は2パターンあります。
・違う環境に身を移す
・自分の関わり方を変える
学生までは、「違う環境に身を移す」ことをたやすく行える身分にありました。サークルやバイトが合わなければ、別の環境を探せば良かったのです。
しかし、そのままでは社会を生きてはいけません。「会社」は、社員の生活を保証してくれる代わりに社員には責任が与えられます。そのため「会社」を選び直すことは、そう簡単にはできません。そのため「自分の関わり方を変える」選択肢を持っていなければ生きにくくなってしまいます。
今回の主人公は内定ブルーと向き合うことによって、「環境」ばかりを考えてしまう学生視点から、「自分の関わり方」を考える社会人視点へ変換することができました。
これを学生のうちに得られたのは彼にとって大きな財産となるでしょう。社会人になったら環境に対しても、与えられる仕事に対しても「自分で意味づけする」力が必要になるからです。
全3回:「内定ブルー特集」
【第1弾】内定ブルーを克服するたった1つの方法~就活を終えて分かった仕事との向き合い方~
【第2弾】現代の幸せ病「内定ブルー」が蔓延する構造的な理由を検討してみた
【第3弾】良い企業から内定もらって調子に乗っている友人と内定ブルーの美人がキラキラ系パーティーで出会ったら地獄だった話