2021年に設立された「Japan Advanced Semiconductor Manufacturing」(JASM)。半導体受託生産の世界最大手である「Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited」(TSMC)の熊本工場運営子会社にあたります。
世界的な半導体への旺盛な需要に対応することを目的に熊本県に設立された子会社で、その半導体技術によって日本の産業分野のイノベーションを促進し、日本経済の活性化への貢献も期待されています。
今回はJASMのMaterial Management Departmentに所属している望月勇輝さんに、熊本県へのUIJターンについてお話を聞きました。
東京は想像よりも遠くない。国内外へのアクセスは抜群
──まず自己紹介をお願いします。
JASMに1年ほど在籍し、現在はMaterial Management departmentで主にサプライチェーンマネジメントのバイヤー業務を担当しています。
出身は静岡県で、大学では国際ビジネスを専攻していました。前職では自動車業界の生産メーカーに新卒で入社し、最初は群馬県で働き、その後に福岡県久留米市に出向して人生で初めて九州に住むことになりました。
──UIJターンを決意したきっかけは何でしたか?
以前から、英語を駆使して海外と関わりのある仕事をしたいという気持ちは持っていました。その上で、前職に入社した2020年にコロナ禍による半導体不足によって、自動車業界で生産台数の減少などが起こったことを目の当たりにし、半導体にも興味を抱きました。
JASMへの転職は転居も伴っていましたが、熊本であれば久留米からも1時間半ほどで距離的にも遠くありません。20代のうちに新しい業界にチャレンジしたいという思いもあり、転職を決めました。
──UIJターンで熊本県を選んだ理由を聞かせてください。他の地域と比較検討はしましたか?
すでに久留米に住んでいたことが大きかったですね。九州は気候もよく、食事もおいしい。そして、物価も高くないという、住みやすい条件がそろっています。振り返ると、久留米で暮らすうちに九州が好きになり、より知りたいという気持ちが芽生えていました。
また、想像以上に東京に近いと感じられたのも理由の1つでした。東京で暮らしていた学生時代は九州を非常に遠い土地とイメージしていましたが、実際にはそこまで遠くなく、飛行機に乗れば東京まで1時間半で着きます。
実は海外へのアクセスも抜群で、福岡空港のほかに、阿蘇くまもと空港からも香港と台湾、韓国への国際線が就航しています。今は阿蘇くまもと空港まで10分ほどのところに住んでいることもあり、距離的な抵抗感はなくなっていますね。
グローバル企業は東京だけにあるわけではない
──UIJターン前後で、生活スタイルはどのように変化しましたか?
まず仕事が一変しましたね。前職では群馬で生産管理や物流関係、久留米では営業職に従事していました。
ところが、現在は購買業務となるため、取引先さまとのやりとりが中心となっています。具体的には、半導体生産に必要な化学製品やガス、作業着や手袋といった消耗品のバイヤーとして、品質や価格を考慮して多くの商談を行っています。
まだ入社して1年ほどですが、TSMCにとって日本初となる工場の立ち上げになるため、大変なことも多くありました。誰も経験のないプロジェクトで、正解がなく手探りの状態。一方で、任される裁量が大きいとも言えます。品質部門や製造部門といった他部署はもちろん、TSMC本社とも連携しながら業務を進めることで、自身の成長にもつながっている実感はあります。
また、TSMC本社とのやりとりは基本的に英語となり、資料も英語です。日本語が上手な海外国籍の社員も多く在籍していて、今では、グローバル企業の選択肢は東京だけという状況ではなくなっていると感じています。会社としても言語学習をサポートする体制が整っていて、英語/中国語を含む12カ国語を学べるe-Learningを無料で利用できたり、英語力の向上を検証/実感できるようにTOEICを年2回会社の補助で受験することができたり、日々の仕事以外にも自身の成長につなげられる学びの環境が用意されています。
──仕事以外での変化はありましたか。
久留米に住んでいましたから、生活環境が激変したわけではありません。
とはいえ、気軽にアウトドアができる環境があるので、朝からハイキングに出かけたり、夏は天草市のビーチや自然豊かな福岡県の糸島に足を延ばしたりと自然を満喫できています。
海外へのアクセスの良さを生かして、韓国にも行きましたね。熊本からなら東京までと変わらず同じ1時間半で着きますから、すでに2回訪れています。
また、JASMでは、1ポイント=1円で使えるT flexというポイントが毎年約4万ポイントが付与されます。このT flexは社員のウェルビーイング向上のために多くの使い方ができるようになっていて、旅行や習い事、家族との時間にも利用できるため、台湾旅行に使おうかなとも考えています。
──UIJターンして良かったと感じる点を聞かせてください。
熊本は人々が温かく、自然は豊かで食事もおいしいため、非常に住みやすいですね。
私はプライベートでお酒を飲むことも多くありますが、繁華街は非常に栄えていてアクセスも抜群です。九州での街の規模としては福岡の天神に次ぐほどの大きさで、1度でも訪れてみるとその素晴らしさを実感できると思います。
熊本、「よかとこ」。1度はおいで
──改めて、熊本県の魅力だと感じる点を教えてください。
繰り返しになりますが、まず豊かな自然ですね。私の出身地である静岡県に似ていて、海や山が身近にあるところは個人的に魅力に感じています。それに国内外へのアクセスも抜群に良いところです。
なおかつ、熊本城や阿蘇といった観光スポットも充実しているところも魅力ですね。あとは、なんと言っても食事がおいしいところです。
──熊本県へのUIJターンを考えている人へのアドバイスがあれば教えてください。
もしも住む場所がネックになっているのであれば、1度訪れてみることをお勧めします。1度訪れて少しでも滞在してみると、熊本のことを好きになってしまうのではないでしょうか。
飛行機で東京へも海外へも行きやすい環境ですから、まず実際に訪れてみて、東京以外の選択肢があることを肌で感じられれば、移住への実感も湧いてくるのではないかと思います。
正直なところ、移住前は私も、「熊本はあまり栄えていないのではないか」と勝手なイメージを抱いていました。ところが、実際に住んでみるといい意味でイメージは変わり、今では「勘違いしていてごめんなさい!」と謝りたくなるほど、本当に素晴らしい場所だと感じています。
TSMCの進出に伴い、現在の熊本は日本で最も熱い場所の1つだといえます。例えば、JASMはTSMCの第二工場の立ち上げに向け、全国から積極的に人材を採用する予定です。エンジニア職をはじめ、理系人材はもちろん、私のような文系出身の人材が活躍できるポジションが数多くあり、これからも増えるでしょう。
熊本は本当に魅力的ですから、まず訪れてみてください。1度訪れれば、必ず、「よかとこ」と感じるはずですよ。