「学生時代の専攻や研究を生かして、ものづくりに携わりたい」。このように進路を考えている理系学生もいるのではないでしょうか。
一方で、企業側も「他社に負けない技術力で、国際競争を勝ち抜きたい」と技術開発に力を入れ、どの業界も競争が激化しています。その中でも活況を見せているのが半導体業界。どのような製品・サービスにも半導体は不可欠になっており、生産現場には最先端の技術が注ぎ込まれています。
今回取材したのは、半導体製造装置メーカー「東京エレクトロン(TEL)」で働く3人のエンジニア。学生時代の専攻は全く異なりますが、「世界最高峰の半導体製造装置を、お客さまに届ける」という共通の目標の下、それぞれの専門性を発揮しています。
1つの製造装置が出来上がるまでに、どのような楽しみや苦労、こだわりがあるのか。3人にお聞きしました。
<目次>
●「メカ=筋肉・骨」「エレキ=神経」「ソフト=脳」? 各エンジニアの役割とは
●世界を「あっと驚かす」開発に挑戦できる環境と風土
●半導体製造装置のトップランナーだからこその責任感と達成感
●ソフトエンジニアにも顧客の感謝の言葉が届く「距離の近さ」
●数十回の失敗も「成果」。挑戦を後押しし、キャリアの幅を広げる
●好奇心を大切に、自分のやりたいことを見つけてほしい
「メカ=筋肉・骨」「エレキ=神経」「ソフト=脳」? 各エンジニアの役割とは
──本日お話をお聞きする3人は、役割が異なります。矢口さんはメカエンジニア、田中さんはエレキエンジニア、小林さんはソフトエンジニア。1つの半導体製造装置を作るのに、こんなにも多様な職種があるとは知りませんでした。
矢口:そうですね。私も就職活動をするまでは、東京エレクトロンのエンジニアの仕事を知らなかったです。
今回ご紹介する職種以外にも、プロセスエンジニアやフィールドエンジニアといった職種もあります。半導体というナノスケールの製品を生み出す製造装置には、各分野の最高レベルの技術を集結させる必要があります。それぞれの専門分野を持ったエンジニアたちが連携することで、高品質で高性能な製造装置を生み出し、さらに進化させることができるのです。
矢口 徹磨(やぐち てつま):東京エレクトロン宮城 メカエンジニア
2019年、東京エレクトロン宮城に新卒入社。量産部隊を経て、先端機能開発室に配属され、将来、半導体製造装置に必要になりそうな機能を検討し、個別に開発する業務に従事している。
──矢口さんの仕事であるメカエンジニアは、どのような役割なのでしょうか?
矢口:半導体製造装置は、大きく分けると「設計・製造・評価」の3ステップをスパイラルで繰り返すようなイメージで作られています。この3ステップのうち、メカエンジニアはおもに装置の設計を担当します。具体的には、3D CADによるモデリング、製図、流体シミュレーション、電磁界シミュレーション、強度シミュレーションなどです。先ほど「スパイラルで繰り返す」と話したのは、設計して作り上げた装置を実験で評価して、その結果を次の設計にフィードバックさせて機能・性能のアップを図っているということです。イメージ、できますかね(笑)。
──専門知識がない学生には、少しイメージしづらいかもしれません(笑)。
矢口:そうですね……。半導体製造装置を人の体に例えるなら「筋肉や骨」を作っていると考えていただくといいかもしれません。きちんと動くためには、各部位の形や大きさなどが適切でないといけないのですが、実際はどれも複雑で高い精度が求められるため、メカエンジニアが必要と考えていただくといいかもしれません。
──なるほど。分かりやすいですね! 田中さんと小林さんのお仕事も、同じような例えができるのでしょうか?
小林:ソフトエンジニアは人の体でいうと「脳」の部分を担当します。製造装置が正しく動くようにソフトウエアを開発することが役割です。
田中:エレキエンジニアは「神経」を作る仕事だと考えていただくといいと思います。メカエンジニアが設計したハードウエアと、ソフトエンジニアが考えたソフトウエアをつなぐための電子回路を作っています。
──ありがとうございます。それぞれの職種の違いが分かってきました。
世界を「あっと驚かす」開発に挑戦できる環境と風土
──ここからは、皆さんのお仕事についてお聞きします。まずは、メカエンジニアである矢口さんの現在の仕事内容を教えてください。
矢口:東京エレクトロン宮城に2019年に入社し、量産部隊を経て、先端機能開発室に配属されました。先端機能開発とは、将来、半導体製造装置に必要になりそうな機能を検討し、個別に開発していく仕事です。より優れた半導体を製造するために、装置に必要とされる機能の開発ですね。開発しながら「これはいけそうだ」となったら、実際に装置に組み込んでもらうようにフォローアップもしています。
──その中でも矢口さんが担当している仕事の内容を、もう少し具体的に教えてください。
矢口:半導体は多結晶シリコンの薄い円盤(ウエハー)から、膨大な数の半導体チップを切り出して作ります。そのときに、プラズマガスで微細加工をするプラズマエッチング装置が重要な役割を果たしていて、その設計に携わっています。もう少し詳細に説明すると、プラズマガスはものすごく高温になるのですが、その熱をいかに効率よく冷却するか、その冷却系の仕組みを設計しています。
──極めて専門性の高い分野なのですね。
矢口:はい。現在の冷却系の仕組みでは、すでに限界が見えています。そこで、新しくこれまでとは全く異なる方式で冷却できないかと知恵を絞っています。例えば、3Dプリンターを活用して、これまではできなかったような構造の冷却系の機構を作ってみるといったことにも取り組みます。
──そういったチャレンジができること、そこが半導体製造装置のメカエンジニアのやりがいでしょうか。
矢口:そうですね。半導体製造装置は1台で数億円~数十億円もする高価なもので、世代を追うごとに機能が向上しています。現行世代、次世代、次々世代と常に時代の先の先を見据えながら、メカエンジニアに必要とされる高度な技術を習得していく必要があります。
入社前、「とにかくすごいものをつくりたい!」と思いメカエンジニアを志望しましたが、入社後は本当に世界最先端の技術に触れる機会が多く、その最先端技術で半導体業界を「あっと驚かせる」ような装置の開発に日々、取り組んでいます。入社時の夢を今でもずっと追い続けていて、東京エレクトロンでそれができる環境にいられることに喜びを感じています。
半導体製造装置のトップランナーだからこその責任感と達成感
──エレキエンジニアの田中さんも、現在の仕事内容について教えてください。
田中:大学では電気電子工学を、研究室で通信工学を専攻し、卒業後に熊本にある東京エレクトロン九州にエレキエンジニアとして入社しました。半導体の製造では、ウエハーに特殊な薬液を噴射して洗浄する重要な工程がありますが、エレキエンジニアとして、その洗浄装置を管理・制御する仕組みの開発に携わっています。
田中 明賢(たなか あきのり):東京エレクトロン九州 エレキエンジニア
2013年、東京エレクトロン九州に新卒入社。1年間の製造研修を経て、枚葉洗浄装置のモジュール開発を担当している。大学では電気電子工学を専攻し、研究室では通信工学を研究していた。
──エレキエンジニアの仕事も専門性が高いように感じます。もう少し、具体的な話を聞いてもいいでしょうか。
田中:はい。具体的には、モーターの回転、薬液の噴射、半導体製造装置内の雰囲気などを管理し制御する仕組みの設計や開発ですね。半導体製造装置の中には、とても数多くのセンサーが設置され、温度や回転速度などを管理しています。そこで、半導体製造装置の中のどこにセンサーを取り付けて、どういったデータを取得できるようになれば、より優れた半導体製造装置になるのかといったことを考えながら、半導体製造装置内の管理と制御の仕組みの開発に携わっています。
──なるほど、より優れた半導体製造装置を世に送り出すにはどうしたらいいのかを常に考えていらっしゃるのですね。
田中:子どもの頃からものづくりにとても興味がありました。就職のときにも、最先端のものづくりができて、かつ、大学で学んだ電気の知識が生かせる東京エレクトロンを志望しました。だから、最先端のものづくりに関われることはやりがいの1つです。また、半導体製造装置のトップランナーだからこその責任の大きさを感じられることもやりがいです。
──どのような責任の大きさを感じるのでしょうか?
田中:東京エレクトロンは全世界に半導体製造装置を提供しています。万が一、不具合を抱えた半導体製造装置が市場に出てしまうと、世界中の半導体メーカーの生産状況や、世界的な半導体需給にも影響を及ぼしかねません。実際、半導体製造装置にトラブルが発生したときには、海外の半導体メーカーの工場にまで直接出向き、調査や復旧の対応を行う場合もあります。
──確かに、それは大変ですね……。
田中:一方で、世界中の半導体メーカーの工場では、たくさんの東京エレクトロンの半導体製造装置が稼働しているのを目の当たりにすることもよくあります。自分が開発に携わった半導体製造装置がこうして、さまざまな国の半導体工場で使用されているのを目にしたとき、とても大きな達成感を味わい、仕事のやりがいを感じました。
ソフトエンジニアにも顧客の感謝の言葉が届く「距離の近さ」
小林 沙樹(こばやし さき):東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ ソフトエンジニア
2012年、東京エレクトロン テクノロジーソリューションズに新卒入社。半年ほどの研修を経て、枚葉成膜装置のHOST開発グループに所属し、製造装置が正しく動くためのソフトウエア開発に携わっている。学生時代は、プログラミング専攻の短大で学んでいた。
──小林さんが、半導体製造装置メーカーであえてソフトエンジニアを志望した理由は何だったのでしょうか?
小林: 高校時代から、ハードを動かすことができるプログラミングに憧れがあり、高校卒業後の進学も情報技術科でプログラミングを専攻できる地元・山梨の短期大学を選びました。そこで、山梨の東京エレクトロン テクノロジーソリューションズの存在を知り、2012年に入社しました。
──仕事内容についても教えてください。
小林:入社後、半年ほどの研修を経て、枚葉成膜装置のHOST開発グループにソフトエンジニアとして所属しました。分かりやすく説明すると、半導体製造装置を動作させるためのソフトウエアの開発を担当しています。
ソフトエンジニアの役割は、半導体製造装置を動かす仕組みを作ることです。半導体製造装置には、装置内でウエハーを搬送するためのロボットや機器、プラズマガスでエッチングをする装置、ウエハーを洗浄する装置など、さまざまな機器やモジュールが組み込まれていて、それらが正確に動作するように細かく制御しなくてはなりません。そのためのソフトウエアを開発するのが、私たちソフトエンジニアの仕事です。
具体的にお伝えすると、ウエハーを効率よく搬送するためのスケジューラーの作成、半導体製造装置の状態を管理するデータの作成、見やすく使いやすい操作画面とするためのユーザーインターフェース(UI)の作成、半導体メーカーのシステムと連携するための通信システムの開発などが挙げられますが、その中でも私は、半導体メーカーのシステムと連携するための通信システムの開発を担当しています。
──ソフトエンジニアの魅力や、やりがいをどう感じていますか。
小林:半導体製造装置は高さ2〜3メートルもあり、その大きさからも分かる通り、正確に動かすためのシステムの数も膨大です。ソフトウエア開発の部門では、数人~数十人でグループに分かれ、膨大なシステムのそれぞれの機能を分担して作成しています。各グループがお互いに連携・協力することで高性能・高品質なソフトウエアを組み上げて、半導体製造装置がきちんと動作するように仕上げているのです。このように仲間と協力しながら、膨大で複雑なシステムを作り上げていくところに魅力を感じています。
東京エレクトロンの半導体製造装置(同社提供)
──ずっとパソコンに向かってプログラミングをするわけではないんですね。
小林:そうですね。他にも、東京エレクトロンの半導体製造装置をお使いになっている半導体メーカーの人たちとの「距離が近い」ところにやりがいを感じます。
当社の半導体製造装置に何かトラブルが起きると、フィールドエンジニアを通じてソフトエンジニアにも報告されます。その中には、緊急性が高く、すぐに対処しなくてはならないものもあります。そんなときには、ソフトエンジニアだけでなく、メカやエレキ部門のエンジニアたちからも知恵や解決策のアイデアを出してもらい東京エレクトロンとしてのワンチームで、みんなが仕事の優先順位などを調整しながら対応しています。こうしたことで、トラブルが解消したときなどに、お客さまから感謝の言葉をいただけることがあります。自分たちが作成したソフトウエアが実際に使用され、喜んでいただけることに大きなやりがいを感じます。
数十回の失敗も「成果」。挑戦を後押しし、キャリアの幅を広げる
──田中さん、小林さんの話を聞いて、矢口さんが改めて感じるメカエンジニアならではの仕事の魅力はありますか?
矢口:東京エレクトロンは特許出願に非常に積極的です。特許を出願することは、メカエンジニアに限らず技術者や研究者にとってのモチベーションやインセンティブになるでしょう。特許を出願して取得できたら、「エンジニアとして優秀」というお墨付きをもらえたということ。メカエンジニアとしての、今後のキャリアの選択肢を広げてくれます。東京エレクトロンは、その後押しをしてくれます。
私はメカエンジニアとして、これまで3件の特許を出願していますが、これからももっと出願していきたいと思っています。メカエンジニアは特許を出しやすい職種なので、特許に魅力を感じる学生にはぴったりの仕事ではないかと思います。
田中:やりたいと思ったことにはどんどん挑戦できる環境があることは、東京エレクトロンの全職種に共通する魅力ですよね。しかも、「たとえ失敗しても、悪い評価はされない」という良さがあると思っています。
私が担当している開発の仕事でも、「数十回も失敗して、ようやく1回だけ成功した」ということがよくあります(笑)。そんなときでも、「たとえ数十回、失敗しても『1回は成功する』なら、失敗はどんどんしていい」と部署内で言ってもらえます。
矢口:こうした考え方は東京エレクトロンの全体に通ずるもので、例えば3つの方法があって1つ目と2つ目の方法で失敗しても、「1つ目と2つ目の方法だとうまくいかないことが分かったことが成果」という考え方をする組織です。
端から見ると失敗のように見えるのですが、実は成功に向かって進んでいるという考え方をしてもらえるので、失敗を恐れずに挑戦できる学生にはぴったりの会社だと思います。
好奇心を大切に、自分のやりたいことを見つけてほしい
──改めて3人にお聞きします。東京エレクトロンには、どのような学生が向いているのでしょう。
小林:ありきたりかもしれませんが「やる気にあふれる学生」ですね。やればやるほど評価してもらえる会社だと思っています。実際、自分が頑張って出した成果は、きちんと報酬として正当に評価されて返ってきます。プログラミングが好きな人、プログラミングにも良いプログラミングと悪いプログラミングがあるのでコードを最適化するのが好きな人なども向いています。あらかじめ決められたことに対するコードを書くだけではなく、自分で考えチャレンジできるチャンスがあり、評価してもらえる土壌がある会社だと思います。
田中:エレキエンジニアは、半導体製造装置というハードウエアと、半導体製造装置に組み込まれているソフトウエアを結びつけるという重要な役割があります。そのため、実際に設計や開発をするときには、ハードやソフト部門のエンジニアたちと関わり合いながら取り組むことが多いのです。人と関わる機会が多く、ハードやソフトなど他の分野の知識も身に付けることができます。さまざまな分野の人たちと協力して、チーム力や総合力で仕事をやり遂げたいと考える学生には向いていると思います。
矢口:自己成長したい人には、東京エレクトロンはとても魅力的な会社です。メカエンジニアというと、学生時代に何か特別な技能や知識を身に付けておく必要があるのではと思う学生もいるかもしれませんが、そんなことはありません。私の専攻は物理でしたので、図面の書き方や工学の知識はありませんでした。それでも入社後の社内研修で必要な知識を身に付けることができ、同時に大きく自己成長することができました。
研修もしっかりしているので、好奇心旺盛で「いろんなことを自由に試したい」と思う学生には向いていると思います。東京エレクトロンが行動規範として掲げているTEL Values(TELバリュー)の1つに「チャレンジ」があります。東京エレクトロンには挑戦できる環境と風土があり、個人に与えられる裁量が大きいと感じています。これはエンジニアを目指す方にとって、とても魅力的なことだと思います。
──最後に、就活中の学生に向けてのメッセージをお願いします。
矢口:就活中に思い悩むことはいろいろあるかと思います。学業との両立、将来のキャリアパス、なかなか決まらない内定先で落ち込んだときに、1人で抱え込んで悩んでいると負のスパイラルにはまってしまいます。
そんなときには、ぜひ周りの家族、友人、先輩、先生などと話をしてみてください。そこで悩みが解決せずとも、話すだけで気持ちが楽になると思います。気持ちが楽になったら、自分の思いをエントリーシート(ES)や面接にぶつけてみてください。きっとあなたのことを求めている会社が現れると思います。もし、東京エレクトロンに興味を持っていただけたら、東京エレクトロンにもその思いをぶつけていただければと思います。
小林:学生生活を楽しみつつ、自身が興味あること、ないことなど、さまざまことを学んでみてください。学んだことがそのまま業務に生かせるとは限りませんが、それを身に付けるまでの経験や考え方は決して裏切りません。
なお、英語は学生のうちにある程度、習得しておくとよいです。東京エレクトロンには海外のお客さまが多いので、英語を使う機会がそれなりにあるのですが、私自身は全く英語がまったくできずに入社したことで、それなりに苦労しました。実は今も苦労しています(笑)。
田中:早い時期から自己分析を行い、自分がやりたいことを明確にしておくことをおすすめします。多くの学生は、就職活動の時期になって初めて自己分析をすると思いますが、短い期間でおこなった自己分析内容で、将来にとって重要な就職先を決めてしまうのはもったいないと思います。
これまで、自分が想像していた仕事とは違ったと、入社後に後悔している人をたくさん見てきました。できるだけ早く自己分析を始めて、自己理解を深め、それを基にできるだけ多くの企業と出会い、そして、悔いのない選択をしてほしいと思います。
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【ライター:タンクフル】