数あるテレビ局の中でも、全国ネットでの放送権利を有する民放キー局(以下、キー局)。
エントリーする学生の数が多く、「突出した個性がないと受からないのではないか」「特殊な選考フローがありそう」とのイメージを持つ就活生も少なくないのでは。
ワンキャリア編集部は今回、キー局に内定したBさんにインタビュー。
Bさんにキー局の選考や内定者の特色を伺うと、
「選考自体は一般企業と変わりませんよ。他の内定者も性格がさまざまなので、ユニークな人しか受からないということはないと思います」
と答えてくれました。では、彼はどのような工夫をして高倍率の選考を勝ち抜いたのでしょうか? 就活のスタンスや成功の秘訣(ひけつ)を伺います。
<目次> ●最終内定先は社風と就活軸で決断。決め手となったキー局の魅力とは? ●思いの裏付けに体験を。志望動機に説得力を持たせよう ●内定獲得の秘訣は「等身大」で挑むこと。OB・OG訪問は「素を出せているか」を知るいい機会 ●面接は5〜10分。「伝えたい思いをどう伝えるか」を意識し、アイデアを可視化した ●突破率100%!? 得意なグループディスカッション(GD)で気をつけていたこと ●就活は前向きなメンタルを維持することが重要。「恋愛ゲーム」だと捉えて楽しんでいた
最終内定先は社風と就活軸で決断。決め手となったキー局の魅力とは?
──もともとテレビが好きで、キー局を受けたんですか?
Bさん:そうですね。就活では「社会に大きな影響が与えられる仕事」を目指していたので、多くの人が番組を視聴するキー局は、その志向にぴったり当てはまったというのもあります。
──なぜ「社会に影響を与えられる仕事」を就活の軸にしたのでしょうか。
Bさん:働く上で一番のやりがいになると思ったからです。自分の過去を振り返ってみると、「自分が中心になってチームを引っ張り、困難を乗り越えながら成果を上げたとき」に最もワクワクしていました。自分が目立ちたがり屋、というのもありますが、周りを巻き込みながら、大きな影響を生むポジションにいたいと考えたんです。
──影響力があるという観点だと、他の業界でも当てはまるところはあると思います。キー局を選んだ決め手は何だったんですか?
Bさん:「届けたいものを直接届けられる可能性が高い」と感じたことです。テレビ局ってスポンサー(番組の制作に必要な資金を提供してくれる企業や団体のこと)はいても、クライアントはいないんです。「自分たちはこれがいいと思うけど、クライアントがこういうからこうしなきゃいけない」という場面が少ないのかなと。
また、内定先が挑戦的な社風だと感じたのも大きいですね。「困難を乗り越えながらも、何かを成し遂げること」にワクワクする自分にとって、非常に魅力的でした。もしかすると、内定先が違えば、別の業界を選んでいたかもしれません。
思いの裏付けに体験を。志望動機に説得力を持たせよう
──就活を始めた当初から他の業界は見ていなかったんですか?
Bさん:いえ、就活を始めたのは5月ごろなのですが、サマーインターンには30〜40社くらい参加しました。メーカーや銀行、コンサルに建設……と、いろいろな業界に行きました。
──3、40社!? 結構行きましたね。
Bさん:忙しかったですが、幅広い業界を見た経験はその後の就活で生きました。私はある程度志望業界を決めていましたが、それが間違っていなかったのだと、他業界のインターンに参加したことで確信できました。
──5月に就活を始めたとのことなので、すぐに行動されていますよね。迷いはありませんでしたか?
Bさん:はい。誌面やネットで情報を集めるよりも、とにかく行動をして体験することが大事だと思っていたからです。例えばキー局の選考で「コンサルや広告ではダメなの?」と聞かれるように、面接などで企業側から他の業界について質問されることも多いでしょう。そこで「自分はインターンに参加してこう思いました」と話ができるのと、ネットで調べたら出てくるような内容を話すのとでは、説得力が全然違いますから。
──確かに、それは面接官の印象も良くなりそうです。
Bさん:志望動機などの思いを伝えた際に、納得してもらえることが多かったですし、面接時の会話もスムーズになりました。「過去にこんなスポーツをやっていて、こういうところに喜びを感じるので、この仕事が自分に合っていると思うんです」など、就活以外の経験も交えて話すと、より説得力が増すと思います。
──後輩にアドバイスをするとしたら、いろいろな体験をした方がいいと伝えますか?
Bさん:うーん……。体験を増やすというよりかは、今までの楽しかった体験に対して「どうしてこの瞬間が楽しいと感じたのか」と理由を考えるくせをつけることが大事だと思います。そうすると自分の感情を客観的に見つめることができて、思いを伝える際の根拠がブレなくなりますよ。一貫性のあるアピールはどの業界でも重要でしょうし。
内定獲得の秘訣は「等身大」で挑むこと。OB・OG訪問は「素を出せているか」を知るいい機会
──就活を進めていく中で、特に意識していたことを教えてください。
Bさん:等身大の自分をさらけだすことです。私の性格上、取りつくろって落ちたら後悔すると判断したのもありますが、企業側も「この人はありのままの姿で臨んでいるな」と感じると、一緒に働いたときのイメージがつきやすくなると思います。ただ、自分の思いや性格が間違って伝わることは避けたいので、選考を通して「企業側からどう見られているか」も知るようにしていました。
──どのようにしてですか?
Bさん:OB・OG訪問をした際に「◯◯さまから見て、私は御社に合うと感じますか?」と聞いていました。質問の意図は「自分の話している姿が、現場の方々にどう見えるのか」を知るところにあります。
OB・OG訪問は客観的に自分を見られるいい機会だと思っていたので、もう一つの志望業界では多数の企業に訪問しました。キー局には先輩がいないのと募集自体が少なくてできなかったのですが、面接の際など、社員と関わるときにかなり役立ちました。
──自分の印象を聞いて、何か気付いた部分はありましたか?
Bさん:頑張っているつもりだったのですが、案外、等身大の自分が伝わっていないと感じました。最初のころは「真面目だね」や「いろんなことを考えて話しているね」と言われていたのですが、自分が見せたいと思っていた本来の姿とは、少し違っていたんです。
──なるほど。その後の選考でどう変えていきましたか?
Bさん:かしこまって言葉使いを無理に正そうと考えないようにしたり、本音で話すことをさらに意識したりして、意図的に好印象を与えようとするのを一切やめました。
その上で「強み」や「大事にしているもの」を伝えようと意識しているうちに、自分の見せ方が定まったように感じます。やがて「君って飾らないよね。安心できる」と言っていただくことが増えて、これでいいんだなと自分でも納得できるようになりました。
──等身大の自分をさらけだすのは、勇気がいることでもあると思います。
Bさん:やってみると、逆に「全部さらけ出して落ちたならしょうがないじゃん」と、吹っ切れられるようになりました。私の場合、就活に悔いが残るのは「素が出せていないまま落ちること」だと思っていましたから。
面接は5〜10分。「伝えたい思いをどう伝えるか」を意識し、アイデアを可視化した
──キー局って受ける人数が非常に多いですよね。周りと差をつけるために工夫していたことはありますか?
Bさん:キー局の選考では、エントリーシート(ES)や面接で「どういう番組を作りたいですか?」「この課題を解決するためのアイデアを教えてください」とよく聞かれるんです。言葉だけではうまく伝えきれていないと感じることが多かったので、目に見える形になるようにプレゼン資料を作っていました。
──面接の質問に備えて、ということでしょうか?
Bさん:そうですね。「伝えたいものを正確に伝えるにはどうしたらいいか」という発想で作っていたので、質問がなければ出しませんでした。また、ESの内容を補足する感覚で作成したものもあります。
──企業側の反応が気になります。
Bさん:びっくりされたり、「すごいね」と言ってもらえたりとさまざまでした。一番うれしかったのは、言葉だけではあまり伝わっていないなと感じた直後にプレゼン資料を見せた際、「これを見てよく分かったよ」と言ってもらえたときですね。
キー局の選考は面接が多い反面、一回一回が短いんです。5〜10分以内にいかに自分の魅力を伝えられるかという難しさがあったので、「伝えたい思いをどう伝えるか」「等身大の自分をどれだけ知ってもらえるか」を集中して考えていました。
突破率100%!? 得意なグループディスカッション(GD)で気をつけていたこと
──キー局の選考って、一般企業とはちょっと違うかもしれないというイメージがあるんです。実際に変わったフローはありましたか?
Bさん:そうでもないですよ。面接の回数が多いので、そこが山場だとは感じましたが、突飛(とっぴ)な質問が飛んでくるということもありませんでした。
──そうなんですね。ユニークな人が重宝されそうだと思っていたので、変わった質問がないのは意外です。
Bさん:そうですね。志望動機やガクチカなど、質問内容は一般企業と変わらないと思います。
──どのような人材が求められていると感じましたか?
Bさん:他の内定者とも会っていますが、みんな性格がバラバラなんです。その中で共通していると感じるのは「人の気持ちを考えられるところ」ですかね。「人を喜ばせることが好きな人」が求められていると思います。
──なるほど。「どのような番組が響くのか」を考える上で、「どうすれば視聴者が喜ぶのか」が理解できているのは大事ですよね。各フローのアドバイスなどあれば、お聞きしたいです。
Bさん:グループディスカッションでしょうか。練習や対策をしたことがないんですけれども、就活当初から一度も落ちたことがなくて。
──すごいですね。どのような点に気をつけていたのでしょうか?
Bさん:ESでも自分の強みは「リーダーシップ」だと書いていたのですが、それが証明できるように、自分が先頭に立ち、チームを引っ張っていくことを意識していました。
もう一つは「チームの成果」です。人事の方が見たいのは「その人が組織に入ったときの動き方」だと思うので、自分の意見にはこだわらず、「チームとして最大のパフォーマンスを出すために、自分がどう動くべきか」を最優先に考えていました。
──意見がまとまらないときは?
Bさん:そういうときもたくさんありました。私はファシリテーター(司会)をやることが多かったんですけれど、「どこでまとまっていないのか」を示してから、「こういう部分でこっちのほうがいいから一回こっちで進んでみようか」と誘導していました。チームの雰囲気を壊さないような言い方が大事だと思います。
就活は前向きなメンタルを維持することが重要。「恋愛ゲーム」だと捉えて楽しんでいた
──お話を聞く限り、就活をスムーズに進められていたと感じます。その要因はどこにあるのでしょうか?
Bさん:前向きなメンタルを維持していたことですかね。就活を「恋愛ゲーム」のようなものだと考えて、楽しめるように心がけていました。
──「恋愛ゲーム」というと?
Bさん:落ちたらもちろん悲しいのですが、そこを少し軽くとらえるように意識していました。「振られちゃったよ〜!」みたいな感覚ですね(笑)。
告白せずに失恋すると未練が残るけど、全てを伝えて振られると「まぁしょうがない」と清々しく思えることもあるじゃないですか。それを就活に置きかえて、「何が悪かったんだろう」と考えすぎたり、落ち込みすぎたりしなかったことが順調に進められた秘訣かなと思います。
──いい意味で楽観的だったんですね。キー局を受けるにあたって、持つべきマインドというのはありますか?
Bさん:特にキー局は倍率が高いので、受けるのであれば、どう頑張っても落ちるかもしれない……という覚悟も必要です。3年くらい就労してやっと入ったという方もいるくらいなので。その覚悟があって、それでも受けたい、熱意は負けない、という部分もはっきりさせておくべきでしょう。
──ありがとうございます。最後に、就活生に一言お願いします。
Bさん:偉そうなことは言えないのですが、就活は人生の大きな区切りの一つであり、特に頑張るべきことの一つではないのかなと思います。過去の自分の努力を無駄にしないためにも、後悔のないように、「自分らしさを伝えること」を大事にして全身全霊で挑んでほしいです。
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