「ある朝、目が覚めたら、あなたは『就活生』になっていました。どの会社へ入りたいですか?」
(※ただし、自身がこれまで所属した組織は選べません)
社会人の先輩をお呼びして、この「究極の転生質問」に答えてもらうシリーズ企画。今回は、学生時代にライターとして各種Webメディアで執筆、新卒で「LINE株式会社」に入社し、現在ではエッセイ・脚本・コピー執筆などを行う『インカメ越しのネット世界』の著者りょかちさんにご登場いただく。
取材・執筆はワンキャリ編集部のインターン生・鳥越が行った。
<りょかちさんの「社会人年表」>
・2016年(24歳)
神戸大学経営学部を卒業し、LINE株式会社に入社。LINEバイトやLINE Creators Studio(現・LINEスタンプメーカー)の企画開発、LINEアプリのマーケティングなどに携わる。
この頃より、自撮りを上げる「自撮ラー」としてTwitterで話題になる。
・2017年(25歳)
『インカメ越しのネット世界』(幻冬舎、2017年)上梓(じょうし)。
・2021年(29歳)
LINE株式会社を退職。
キャリアSNS「YOUTRUST」にて運営中の「ユートラ編集部」編集長に就任。
・2022年(30歳)
『恋が生まれたこの街で #東京デートストーリー』(KADOKAWA、2022年)上梓。
「ユートラ編集部」編集長を卒業。
インタビュアーである私は、来年4月に人材業界の企業に企画職として入社する。ただ、その選択は消極的なものだった──。
もともとは日系のSaaS業界が第一志望。最終面接で落ちつづけ、持ち駒を増やす一環として人材業界の企業を受験した。総合職の「配属ガチャ」を恐れ、大学でマーケティングを専攻していたこともあり、何となく企画職の選考を受けたところ、たまたま内定をもらった具合だ。
内定者座談会に参加しても、周りはビジネスコンテストの優勝者や、在学中からUXデザイナーとして活躍しているような優秀な人ばかり。入社まであと半年の今になり、何とはなしに選んだ「新卒企画職」という重圧に不安を抱いている。
そこで、新卒から企画職という珍しいキャリアを歩んだ方のお話を伺い、不安を払拭(ふっしょく)したいと思い、今回りょかちさんに取材の依頼をした。
実は、りょかちさんはワンキャリアの元インターン生。自身に重なる点も多く、大学生活を過ごす上でのロールモデルとして背中を追っていた。
社外のビジネスパーソンへ取材をするのは今回が初めて。新卒企画職のことや、後述する「個人として生きる」という点を伺うことも含めて、先輩に人生相談をするような心持ちで、取材に臨んだ。
りょかちさん(エッセイスト、ライター)
1992年生まれ。京都府出身。神戸大学卒。学生時代より、ライターとして各種Webメディアで執筆。新卒でLINE株式会社に入社し、アプリやWebサービスの企画開発・コンテンツマーケティングに従事した後、独立。元「ユートラ編集部」編集長。現在では、コンテンツ企画からディレクションを一気通貫で行うコンテンツプランナーとして活動するほか、ミレニアル世代の価値観やWebサービスについてのコラム・エッセイ・脚本・コピー制作を行う。著書に『インカメ越しのネット世界』(幻冬舎、2017年)、『恋が生まれたこの街で #東京デートストーリー』(KADOKAWA、2022年)。
「第一志望企業に落ちたら読んでほしい、『自撮ラー』りょかちのやりたいことを叶えるための話。」「内定企業ラベルほど剥がれやすいゴールドラベルはない」などワンキャリアでも記事を多数執筆。
インタビュアー:鳥越 壮一郎(インターン)
2000年、大分県生まれ。明治大学商学部4年生。学生団体で動画メディアの運営を経験した後、2020年9月にワンキャリ編集部に長期インターン生として参画。2023年4月から大手人材会社の企画職として働く予定。
<目次>
●最終面接に失敗し就職浪人に。ネットオークションの経験を生かしてIT企業を受験、LINEに内定
●出版社へのコンプレックスを乗り越えて気づいた、Web業界で「文化」をつくる覚悟
●新卒の役割は固定観念を壊すこと。元LINE・ZOZO執行役員田端氏に学んだ「金魚の話」
●頭で描いたものを世の中に産み落とす企画職。社会と対話し、愚直にチームを取り仕切る
●SNS上の不特定多数にとっての何者かではなく、身近な人にとっての何者かになりたい
●就活生に転生したりょかちさんが選ぶ「3つのキャリア」
最終面接に失敗し就職浪人に。ネットオークションの経験を生かしてIT企業を受験、LINEに内定
──現在では、エッセイスト・ライターなどの活動をされているりょかちさん。学生時代はどのような就活をされましたか?
りょかち:実は就職浪人を経験していて、就活は2年間やっていました。1年目は雑誌社や出版社を受けていたものの全部落ちてしまい、2年目でIT企業に複数内定して、その中からLINEに行くことを決めました。
──なぜ、雑誌社や出版社を受けていたのですか?
りょかち:単純に文章が好きだったからですかね。
小学生の頃から、自己表現の中で一番落ち着くのが「書くこと」でした。読書感想文で入賞するなど、自分の成功体験がそこに寄っていたというのもあります。
在学中に始めたライターは、最初はワナビーの部分もあって「やってみたい!」という気持ちだけでした。関西の大学だし、こういうことをやっているのはフリーペーパーの団体ぐらいで、あまり書く場みたいものはなかったように思います。
もともとブログのようなものはやっていましたが、私が大学卒業間近の頃、世の中で「キュレーションメディア・ブーム」が来た時期あたりから、Web上で記事を書き始めました。同時期には、編集部やメディアでライターのインターンもしていましたね。
「自撮ラー」時代のりょかちさん
──文章が好きであれば、確かに就活生の頃に出版社を目指したくなりますね。
りょかち:ただ、出版社の最終面接までたどり着けたのですが、心が折れてしまう経験をしまして。圧迫面接のような状況になり、面接官は私に言い返させたかったと思うんですけど、当時の私は質問に言い返せずヘコんじゃったんですね。
そのまま落ちてしまい、最後の面接ということもあってか、こんなに頑張ってダメだったから、まだダメなんだなと、自分の中で区切りがつきました。
頑張ったら何でも叶(かな)うと思っていたけど、叶わないことはあるんだなと思いました。勉強とも全然頑張り方が違うなと。そこで、ちょっと目が覚めて、もっと頑張り方を変えなきゃと思ったという感じですね。
──そこから、なぜIT企業を受けることになったのですか?
りょかち:2年目、もう1回就活をしようと思ったときに、別に出版社じゃなくてもいいかなと思ったんですね。私がやりたいことって「自分が社会に情報を出したときに、誰かが反応してくれる点に面白みを感じること」かもしれないと考えました。
実は以前、「ヤフオク!」をよく利用していました。商品を売る際に、説明欄などの文章を工夫してみたところ、文章によって売上が変わるという経験があって。いろいろ書いて試して、みんながどう思ってくれるのかを考えるのが、自分の好きなことなのかなと気づいたんですね。
そう思って、WebサービスやWebメディアもありだなと考え、IT企業を受けていました。出版社も並行して受けていたんですけど、IT企業の選考結果の方が断然良かったですね。
出版社へのコンプレックスを乗り越えて気づいた、Web業界で「文化」をつくる覚悟
──私がりょかちさんの著書を読んだときに、新卒1年目のときに感じた「レガシーなメディアへの敵対視」という言葉が気になりました。LINEに入社した当時の心境について、詳しく教えてもらえますか?
私はWEBの世界で成功しなきゃ。これからは絶対WEBの時代なんだから。絶対WEBで、紙媒体で出来ない面白いものを作るんだから。私は編集者じゃなくてWEBディレクターになって良かったはずなんだから。
(中略)
自分の選んだインターネットという世界観や、自分が手にしている若さだけを肯定すればするほど、その正反対の場所で輝くレガシーなメディアのことを自然と敵対視してしまっていたのだと思う。
※引用:りょかち『インカメ越しのネット世界』(幻冬舎、2017年)
りょかち:やっぱり「なりたいものになれなかった」という気持ちはずっとあったんですよね。既になりたいのかさえ分かんないけど、「君にはできない」と言われたことが、なんというかコンプレックスで、自分に足りない何かがあるなと当時は思っていました。
──就活2年目になって区切りをつけられたとお話しされていましたが、それでもどこかでは出版社のことを考えてしまっていたんですね。
りょかち:まあうん、やっぱりなんていうか、憧れではありますね。今やもう向いていないと思うんです。でも当時は、負けたくない、振られたからには見返してやるみたいな気持ちでしたね。
──とはいえ、新卒2年目の頃にはレガシーなメディアへのコンプレックスが、少しずつリスペクトへと変わっていったとお話しされていますね。
りょかち:そうですね。自分がWeb業界で働く中で、自分と同じようにキラキラした雑誌の中にも頑張っていた人がいるというのが想像できるようになったし、LINEの仕事も好きになれたので、Web業界で生きていこうと思えるようになりました。
LINEの人たちはすごく優しく仕事を教えてくれたし、さまざまな情報を収集しようとする自分の特性が、意外とWeb業界の早いサイクルに向いているなと感じ始めて、この持ち場でもっと新しくて面白いことをやっていかなきゃと考えていましたね。
──現在でも、りょかちさんがWeb業界に軸足を置いているのは、このときの思いがあったからなのでしょうか?
りょかち:はい。サービスづくりにもずっと関わっていきたいし、見返すというよりは、昔の雑誌のように世の中を変えるような「すごい文化」をつくっていかないといけない感じですかね。
──確かに、出版社ってすごく威厳がある気がします。
りょかち:もう単純に「あんなにいろいろな時代の空気をつくったメディアすげえ。でも、Web業界に私は向いているし、Webの世界でそれをやっていかなきゃ」と今では思っています。
新卒の役割は固定観念を壊すこと。元LINE・ZOZO執行役員田端氏に学んだ「金魚の話」
──りょかちさんはLINEで、Webディレクターの役割を担う企画職に配属されました。企画職は一般的に「花形」といわれることもあり、ビジネス経験が豊富な方が活躍されているイメージです。新卒でLINEの企画職で働くということに、不安はありませんでしたか?
りょかち:ありましたね。しかも、LINEは本当に優秀な人が集まっていて、周りは「インターンをしていました」という人ばかり。自分の場合は、Webディレクターの勉強もしないといけなかったし、Web業界自体も初めてで、技術のことも学ばないといけませんでした。
ただ、toCサービスは新しいインターネットの使い方を追いかけていくことも大事であったこともあり、ここで自分は「居場所」を見つけることができたという感じですかね。
──居場所を見つけることができたとは、どういうことでしょうか?
りょかち:新卒でも新卒なりの強みを生かせるということです。
LINEやZOZOで執行役員を務めていた田端信太郎さんって、いらっしゃるじゃないですか。彼が新卒によく言っているのが「金魚」の話です。
水槽の中で泳いでいる金魚。あるとき水槽を真ん中で区切って、その右側でずっと泳がせていると、区切りを取ってもずっと水槽の右半分の中で泳いでいるんですね。反対側に行かず、ずっと右側にいる。ここで水槽に新しい金魚を入れると、その区切りがあった時点を知らないから、自由に全部泳ぎ始めるじゃないですか。これを見た他の金魚も、全面を泳ぎだすらしいんですよ。
新入社員は金魚なんだよ。
— 田端塾長@堀江さんと生YouTube質問会を10/4火曜16時半〜 (@tabbata) April 22, 2018
会社は学校じゃねえ!金魚鉢だ!
組織になぜ記憶のない若者、馬鹿者が必要なのか?分かるかい?
金魚鉢理論の図解化ありがとう!!! https://t.co/gUfpN2vU5Y
──新しく入ってきた金魚に、先にいた金魚が倣(なら)って同じように動き出すんですね。
りょかち:その通りです。結局、大人みんなの中で当たり前だと思っていること、会社の中でこうすべきだと考えられていることを壊していくのが、新卒の役目だと思っています。
あとは、Webサービスって若い人がターゲットになることが多いので、そのターゲットに近しい人が誰だろうと考えると、新卒になるんですよ。
この2つが新卒である私の武器だなと思えていたので、不安もあったし勉強しないといけないことも多かったけど、それより楽しい気持ちの方が強かったです。
──どのような職種であっても、周りに新しい考え方を広められる新卒の自分自身が価値になるということなんですね。
頭で描いたものを世の中に産み落とす企画職。社会と対話し、愚直にチームを取り仕切る
──そもそも、企画職ってどういう職種なのでしょうか?
りょかち:企画職は、会社によって領域は変わると思いますが、基本的には新しい機能やサービスを企画して実現するということに尽きると思っています。自分の頭の中で描いたものを、さまざまな人の力を借りつつ、世の中──例えばLINEだったら何千万人が使っている中に、産み落とすという言い方もできそうです。
このように使っている人がいるとか、やっぱりリリースしてほしい機能だったよねとか、そんなユーザーの反応が分かる。自分が社会と対話できるような感覚は、面白い点だなと思います。
──社会との対話ですか……! やりがいがある分、責任も大きそうです。どのような点が大変でしたか?
りょかち:企画したことを、責任を持って実現まで持っていかないといけない仕事である点です。みんなが欲しいものってなんだろうと考える企画の部分ももちろん難しいし、これは役に立つと思ったことを、そのまま世の中に産み落とす実現の部分も大変なんですね。
例えば、絶対これ役立つじゃんと思っても、エンジニア的にはそれはできないとか、それでやるんだったら1年ぐらいかかるといわれるとか、それよりも優先すべきことがあるとか。
企画を実現させるために、さまざまな人に頼み事をしないといけないし、思わぬリスクがあったら対応しないといけないし、そういう大変さはありましたね。
──もしコードが間違っていても自分で修正ができないので、エンジニアに頼むしかないみたいな、職種をまたいだコミュニケーションで苦労することは多そうです。
りょかち:まさに。たとえばUIの企画で考えても、狭い画面の中で何かの文字を大きくするには、何かの文字を小さくしなければならないことも多かったので、周りの人にその理由や価値をきちんと伝えながら、企画を進めていくようなことは、簡単ではないなと思っていましたね。
──実は、自分が面接を受ける前にりょかちさんの企画職時代のnoteを拝見したことがありました。画像のように、いろんな人の思惑を取りまとめるのは本当に難しそうです。
『LINE の新卒企画職として、私がやってきたこと #弊社のPMはこんなふう』より
りょかち:そうですね。最初は、スキルのない自分が調整役をやっていいんだろうかと悩むこともありました。頭の中にあるものを世の中に出すまでに、トラブルによって進められないなどいろいろなことが起こるので「ほんとにもう今すぐ諦めたい!」といつも思うんです。
だけど、プロジェクトの難度が上がれば上がるほど、仕事の意義みたいなものが分かってくるようになりました。責任を持ってこのサービスをよくするために、この機能は絶対に必要だから何としても出さなければいけないと。
改めて、難しいことを愚直にやり続けることって偉いなと思うし、オーナーシップを持って企画を前に進める企画職って、本当に素晴らしい仕事だと思いますね。
SNS上の不特定多数にとっての何者かではなく、身近な人にとっての何者かになりたい
──「りょかち」というお名前で、学生時代から現在まで「個人」として活躍されていることもお伺いできればと思います。「自撮ラー」として有名になられた印象がありますが、もともとインフルエンサーのような存在になりたいといった思いがあったのでしょうか?
りょかち:あんまり有名になりたいと思ったことはないかなって感じです。「自撮ラー」として知られるようになったのは、LINEに就職することになり、今はやっているサービスをなんでも使おうと思ったのが、きっかけでした。当時は、自撮りアプリがはやっていました。それで私も自撮りをしてSNSに上げてみたところ、「アプリを使うとめちゃめちゃ違う!」みたいな感じでバズったんですよね。
──なるほど。ここで少し私の悩みをご相談してもよいでしょうか。自分が大学に入学した2019年、「個の時代」に生き残るためにスキルを身につけなければいけない、という話を何度も耳にしまして。インフルエンサーに感化されて「何者かになりたい」と思いながら活動してみたものの、挫折した感覚とともに「個人として生きる」って何だろうと思った記憶があります。まずは、りょかちさんがビジネスシーンで語られる「個の時代を生きる」といった言葉を、どのように解釈されているかをお聞きしてみたいです。
りょかち:確かに名前が知られていれば、やっぱり得することが多いですよね。明らかに私より社会人経験が多い人からも、「りょかちさん、よろしくお願いします」みたいに丁寧に接せられる。「若いのにりょかちさんすごいね」と、いろいろな人が寄ってきて調子に乗ることもあったし、それでいい思いをしていたことは否定しません。「何者かになりたい」というのもすごくよく分かるし、それに対する焦燥感も分かります。
ただ、誰かにとっての何者かになりたいって、SNS上の不特定多数にとっての何者かになるよりも、自分の友だちだったり、仕事で関わったりした人にとっての何者かになる方が、よっぽど価値があるなと思っています。
結局、私も今フリーランスになって仕事をくださるのって、過去に自分と一緒に仕事をした人が、りょかちさんに頼みたいと言ってくださるからなんですよね。もちろん自分の拡散力で役に立てることはあるから、その期待も含めて依頼されているというのはあるけど。企画職時代に仕事をしたことで、ディレクターなら誰でもいいというわけではなく、りょかちさんというディレクターに頼みたいと思われるようになったというように、身近な人にとっての何者かになる方がいいなと思います。
──不特定多数にとっての何者かになるのと、友だちや仲間といった周りの人の何者かになるのは、具体的にどういう実感の違いがあるのでしょうか?
りょかち:例えばインターンをしていても、これはこの人に任せたいといったものってありますよね。重要度が低いこの仕事はこの人でいいかと思うけど、この会社にとって大事な仕事はやっぱりこの人に任せたいというように。そういうのが、近くの人にとっての何者かだと思います。
不特定多数にとっての何者かであれば、この人だったら悩みをスパッと切ってくれそうとか、自分のモヤモヤに答えを出してくれるんじゃないかとか、といった信頼だと思います。ただ、その信頼を別に不特定多数から得なくてもいいじゃんというか、身近な人に何者かだと思われるだけでも十分なのではという感じですかね。
──確かに、上司やインターン生から難しい仕事を任されたときは、それだけでも十分に満足できていたし、「個人」として周りから認められていたかもしれないと思えてきました。
りょかち:うん。私なんか、フォロワーが1カ月で5,000人増えるよりも、大学のサークルで「りょかちさんに会長になってもらいたいです」って言われたい(笑)。身近な人の何者かになりたいし、それを目指した方がいいなと思います。
就活生に転生したりょかちさんが選ぶ「3つのキャリア」
──最後に、就活生に転生したりょかちさんが選ぶキャリアについて伺います。
りょかち:1つ目は「サイバーエージェント」です。みんないい人だし、企業でしかできない楽しさ、悔しさ、挑戦、失敗を経験させてくれる会社だと思うからですね。
先ほどの「何者かになりたい」の話でいうと、私にとっての何者かの人が多い。会う人、会う人、コミュニケーションは気持ちいいし、大変なことでも逃げずに一緒にやってくれそうだし、一緒に働きたいなと思います。
もう1つは、新卒社長のような抜擢(ばってき)文化みたいなものがあるからですね。就活生になったときのキャリア選択を考える上で、いつか人は転職するし、いつか個人になるかもしれないという前提を置きました。だとすれば、新卒はやっぱり大企業じゃないと経験できないことをやった方がいいと思うんですよ。
個人になったらいくらでも小回りが利く仕事はできる一方、でかいサービスのPMになり、何千万人のユーザーに触れるのは、既存の大企業じゃないとできないですよね。
私は最初のLINEでそのような経験をしましたが、今、就活生に戻ったとしてもやりたい経験なので、規模の大きい仕事があり、失敗を励ます文化を持っている点で、サイバーエージェントを選びました。
──2つ目は?
りょかち:「多国籍に展開するtoCサービス企業」です。1社挙げるとすれば「Notion」かな。
まず、これからは日本だけで完結する仕事をする方が、少ないんじゃないかと個人的には思っています。
また、LINEで働く中で、日本がどういう国か、どういうカルチャーを持っているか、それが海外とどのように違うのかを分かっていて良かったと思うことが多くて。自分の外側にこういう国があることを実感するのもそうだし、外側と比較して日本ってこうなんだという感覚に気づけたのは、すごくいい経験だったなと感じていることも理由の1つです。
──Notionを選んだのは、なぜでしょうか?
りょかち:日本で頑張っていこうという感じがするからですね。日本で展開していても、展開するやる気のようなものがなければ、あまり面白くはないと思います。Notionは、最近広告も出していますし、今から仕掛けていくぜというところがいいなと感じています。
Notion国内初のブランドキャンペーンは開始から一週間経ちました。
— Notion Japan :jp: (@NotionJP) August 23, 2022
東京駅、渋谷駅、羽田空港や街のバス停等で看板広告を設置しています。
看板広告を見かけたらぜひ写真を撮ってSNSに共有しましょう:selfie::skin-tone-2: pic.twitter.com/zOTLRvErcB
──3つ目は?
りょかち:「企業の中で文章を書く仕事ができる会社」を挙げました。UXライターや記者などの仕事をイメージしています。
──事前アンケートでは、理由に「一生付き合っていくのは会社ではなく職種だから」と書かれていましたね。
りょかち:やっぱり会社もすごく大事だけど、「これまでしていたことは何か」と転職で問われるときは、結局職種に近いことを問われがち。今はリスキリングがあるから「一生大事」だとはならないかもだけど、やりたいことを優先するのがいいかなって感じですかね。
それこそ今だったら、総合職のような博打(ばくち)感のある仕事はできるだけ避けたいと思います。やりたいことが分からない新卒はそれでもいいかもしれないですけど、今だったらインターンなどで多くの人が経験を積んでいるじゃないですか。
だから、自分の得意なことが分かっているんだったら、それを極めてみたい。学生ライターの経験があったから、今それで得をしているけど、じゃあ最初から新卒でそれをやっていたらどうなるんだろう、というのを自分が体験したいというのもありますね。
──どの選択肢もLINEで働いたり、ライターを経験したりしたりょかちさんだからこそ見えてくる視点のように感じられました。本日はありがとうございました。
*
あっという間に時間が過ぎていた。今は、りょかちさんに聞きたかったことは伺えたのだろうかと取材を振り返っている。上手なインタビューができたかは不明だが、将来への不安が少し解消されたような実感が、確かにあったように思える。
LINEでの仕事のこと。企画職としての経験がないため、現時点で共感することが難しい部分もあった。しかしそれ以上に、乗り越えてみたい壁の大きさが一部、分かったような気がして、わくわくが止まらない。新卒入社後、りょかちさんが話していたことの意味が理解できるようになったときに、この記事を一人の読者として読み返しに来られればいいなと思う。
「個として生きる」こと。インフルエンサーに憧れを持ち「多くの人に支持される、何者かになりたい」と考えていた当時の自分の感覚は大事にしたいが、りょかちさんが話すような「身近な人にとっての何者か」になれればと思えるようになった。もし機会があれば、上司やインターン生、友だちに自分ってどんな存在なのだろうかと聞いてみたい。
何より取材を通して、もっとりょかちさんの生き方を知りたいと感じた。またどこかでお話を伺えたらと思うし、いつかは自分が、一緒に仕事をする上での「何者か」のような存在になれればいいなと考えている。
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