※こちらは2022年9月に公開された記事の再掲です。
「プロフェッショナルとして誇れる能力を身に付けたい」「ビジネスパーソンとして成長できる環境に身を置きたい」。成長意欲が高い学生ほど、こういった視点で就職先を探しているのではないでしょうか。
日本ロレアル株式会社「メイベリン ニューヨーク」のブランド ディレクター市川竜太さんも、その1人でした。「ビジネスのプロになりたい」とコンサルティングファームなどを就職先として考えていた時期もあり、それこそ化粧品の知識も当時はありませんでしたが、同社への入社を決意。15年にわたって同社のブランディングやマーケティングの最前線で経験を積み、今では「自身が担当分野の社長のつもりで仕事に当たってほしい」と若手にチャンスを提供しています。
ビジネスのプロを目指していた市川さんはなぜ日本ロレアルに入社し、その後どのような成長を描いたのか。キャリアを振り返りながら、同社で若手が成長する理由にも迫りました。
<目次> ●「化粧品のプロ」を目指すのではなく「ビジネスのプロ」を目指す ●「美とビジネスの両立」という難題が、若手時代の成長につながった ●入社5年目でヒット商品を開発。挑戦を後押しした「Test & Learn (テスト&ラーン)」の文化 ●メンバーの強みを発揮し、変化にも対応できる組織の多様性 ●オーナーシップのある新卒も事業をリードし、成長を加速させる ●変化の激しい時代にワクワクできる仕事を見つけてほしい
「化粧品のプロ」を目指すのではなく「ビジネスのプロ」を目指す
──まずは市川さんが日本ロレアルに入社した経緯を聞かせてください。
市川:私は海外の大学でビジネス全般を学んでおり、ビジネスのプロになりたいと思っていました。何となくファイナンスやコンサルティングの会社に興味を持っていたのですが、明確な理由があったわけではなく、就活を始めたばかりの頃は業界や企業を絞れずに悩んでいました。
そのとき、たまたま参加したキャリアフォーラムで日本ロレアルを知りました。当時はロレアルについてあまり知りませんでしたが、会社説明を聞いているうちに、徐々にその社風に魅力を感じていきました。
市川 竜太(いちかわ りゅうた):日本ロレアル株式会社「メイベリン ニューヨーク」ブランド ディレクター
2008年、新卒入社で日本ロレアル株式会社入社。日本発ブランド「シュウ ウエムラ」の製品開発やブランディングを担当し、2013年から日本国内のメイベリン ニューヨークのマーケティングを担当。ニューヨーク本社や上海オフィスでの経験を経て、帰国後2021年からメイベリン ニューヨークの日本事業マーケティング責任者に就任。(所属部署はインタビュー当時のものです)
──どのような点に魅力を感じたのですか?
市川:社員一人一人が仕事に対してオーナーシップを持ち、こだわりと情熱を持って働いている点です。製品のパッケージにある文章の改行位置までこだわっているという社員の方の話は、今でも覚えています。
加えて、若いうちから責任のある仕事を任せてもらえる環境があることを知り、こんな会社で働いてみたいと思いました。一次面接で人事の方に言われた「ロレアルならビジネスのプロになれるよ」という言葉に、会社への憧れが一層強まりました。
──もともと化粧品などへの興味はあったのでしょうか。
市川:いえ、全くありませんでした。そのため「化粧品のことなんて全然知らないけど、入社してから活躍できるのか」という不安はありましたね。
しかし、そのことを人事に伝えると「私たちが育てたいのは化粧品マニアじゃなくてマーケティングのプロです。入社時の知識は関係ありません」と言われて。マーケティングには興味がありましたので、その言葉に安心して入社を決めました。
実際に働いてみると、もちろん化粧品の知識は必要ですが入社後身に付きますし、入社前に化粧品の知識がなくても全く問題ありませんでしたね。
──ビジネスのプロになりたいと考えるなら、コンサルティングファームも選択肢となりそうですが、何が入社の決め手になりましたか。
市川:就活を通して自分のやりたいことを考えながら、事業会社で働く魅力を強く感じるようになって。マーケティング自体はコンサルティングファームでもできますが、クライアントのビジネスのごく一部に携わるマーケティングであると感じました。
日本ロレアルのようなメーカーなら、自分たちのビジネスの川上から川下まで関われる。そう考えると、コンサルよりも私がやりたいことにマッチすると思いました。
加えて、化粧品はマーケティングだけでは計り知れない要素も少なくありません。お客さまが購入してくださる理由は、価格や効能だけでなく「パッケージがかわいい」といった感情的な付加価値が理由にもなります。そういったワクワクする感情をお客さまに届けられるなら、すてきな仕事だと思いました。
──右脳と左脳の両方が求められる仕事ですね。
市川:そうですね。ロレアルには「詩人であれ、農夫であれ(Poet and Peasant)」という考え方があります。これは、感性や発想力が豊かな詩人と、勤勉かつ実直にものごとを進めていく農夫、その両者の気質を持ち合わせることの大切さを意味します。それまでビジネスばかり学んできた私にとって、直感(右脳)も論理(左脳)も大事にする考え方はとても新鮮に映りました。
「美とビジネスの両立」という難題が、若手時代の成長につながった
──入社してからは、どのようなキャリアを歩んできたのでしょうか。
市川:入社してすぐに配属されたのは、日本生まれのブランド「シュウ ウエムラ」です。日本に本社機能があり、製品開発やブランディングの仕事からキャリアを始めました。
4年ほど働いてからは、さらにビジネスの経験を積みたいと思いメイベリン ニューヨークのマーケティング部署に異動します。その数年後にはグローバルな仕事がしたくて、ニューヨーク本社でメイベリン ニューヨークのマーケティングをするため渡米しました。
シュウ ウエムラのときも世界に向けてマーケティングをしていましたが、ニューヨーク本社は消費者の規模も違えば、働く部署のカルチャーの多様性も全く違います。メイベリン ニューヨークという世界一のメイクアップブランドとしてのダイナミズムを実感できる経験でした。
アメリカで3年半働いた後は変化を求め、当時市場が急成長していた北アジアのマーケティングに携わりたく、上海オフィスに異動しました。しかし、ちょうど新型コロナウイルスが急拡大したタイミングだったので、日本からテレワークをすることに。結局一度も上海オフィスに足を運ぶことなく1年半の任期を満了し、昨年から日本でメイベリン ニューヨークの日本事業マーケティング責任者を務めています。
──海外での経験を経て、再び日本のマーケットに挑戦しているのですね。最初に配属されたシュウ ウエムラでは、どのような経験ができたのでしょうか。
市川:自分のキャリアにおいて大きな意味を持っています。日本ロレアルにはいくつか日本発のブランドがありますが、シュウ ウエムラほど「日本を世界に」を体現しているブランドは他にありません。一緒に働く人たちは「自分たちで日本の美を作っていくんだ」という責任と情熱を持っていました。
同時に、アジア、北米、ヨーロッパも視野に入れて市場分析もしていました。単にいい製品を作るだけでなく、世界に誇れる美とビジネスモデルを作っていこうとしている姿に強く憧れました。キャリアの一歩目をそのような環境で過ごした経験は、今の仕事にもとても生きています。
──「美」と「ビジネス」の両方を追求するのは、入社前に聞いていたロレアルの姿と一致しますね。
市川:はい。最初は美とビジネスはてんびんのようなもので、その最適なバランスをとることが重要だと思っていました。しかし、仕事を通じて、バランスをとるのではなく、シナジーを生み出して両方を最大化できるものだと分かりました。こだわり抜いた美に対して、考え抜かれた戦略がマッチすると、想定もしていなかった結果が生まれることがロレアルでは何度もありました。
もちろん、美を求めるためにビジネスをおろそかにしてはいけませんし、ビジネスを理由に美を諦めてもいけません。難しいテーマですが、そこに対して若いうちからチャレンジさせてもらえたことが、成長につながったと思います。
入社5年目でヒット商品を開発。挑戦を後押しした「Test & Learn (テスト&ラーン)」の文化
──「若いうちからチャレンジできる」という点は、他の社員の方もよく話されていますね。市川さんが印象に残っている若手時代のチャレンジは何でしょうか。
市川:特に印象に残っているチャレンジは入社して5年目、日本でメイベリン ニューヨークの仕事をしていたときのことです。当時は眉メイクの製品を担当していて、日本人の眉メイクの課題を解決できる製品を思いついたんです。しかし、当時のブランドは眉メイクに対する優先順位が低く、普通に提案しても投資してもらえる可能性は極めて低い状況でした。
そこで既存の製品を使って小規模のテストを繰り返し、その結果を持って提案することにしたのです。その内容に会社も納得してくれて、製品開発に進めることになりました。ただ、いざ製品を一から開発するとなると数年はかかりそうでした。
そんなに待っていられないと思った私は開発メンバーと一緒にアメリカの研究所に出張し、滞在期間3日間のなかで現地の研究所のスタッフと直接やりとりをすることで開発を早めることに成功しました。その製品は今でもベストセラー商品で、あのとき強引にでも上司たちを説得してよかったと思います。
──入社5年目で、そんな大きなチャレンジができる環境なんですね。
市川:日本ロレアルは単に大きな仕事を任せるだけでなく、若いメンバーが自分で仕事を創造していける環境でもあるんです。事業の成長につながるのであれば、入社年次に関係なく声を上げられますし、会社も耳を傾けてくれます。
仮に自分が発案した仕事がうまくいかなくても、そこから大きな学びを得られますよね。ロレアルでは「Test & Learn(テスト&ラーン)」という考え方を大事にしていて、仮に仕事がうまくいかなくても、学びに変えれば失敗ではないと捉えています。それはビジネスを川上から川下まで行える、メーカーならではのポジティブなサイクルだと思いますね。
──自分から発信して仕事を作っていく人は多いのでしょうか?
市川:オーナーシップを持って働いている方は多いです。どの部署に配属されたとしても、全員がそのチームのリーダー、小さな会社の社長のような気持ちで考え、行動しています。全員がオーナーシップと責任を持って発言しているので、自然と自分から仕事を作っている人が多いと思います。
メンバーの強みを発揮し、変化にも対応できる組織の多様性
──お話をお聞きしていると、ロレアルでの仕事はやりがいがある反面、難度も高そうです。市川さんはこれまでの仕事で、壁にぶつかった経験はありませんか。
市川:壁にぶつかっても、結果的にそれを学びに変えてきたので、壁にぶつかった経験が思い出しづらいんですよね(笑)。「Test & Learn (テスト&ラーン)」の文化が根付いているロレアルでは、皆そう答えるのではないでしょうか。
ですが、アメリカに渡った直後は大変でした。日本でもマーケティングをしていましたが、アメリカのカルチャーは全く知らなかったため、ゼロからインプットしなければいけなくて。それでも価値を発揮するために、単にアメリカのカルチャーを学ぶだけでなく、日本ならではの経験を生かそうとするのに尽力しました。
──どのような経験がアメリカで役立ったのですか。
市川:日本は世界で最もコスメアイテムが細分化されており、一つのアイテムだけで何種類もラインアップがあるのは当たり前です。海外にはそのような感覚がないため、日本人ならではの感覚をアメリカで活用しようと思いました。おかげでアメリカに渡ってすぐに自分の個性を生かして価値を発揮できましたし、その間にアメリカのカルチャーをインプットできました。
──足りない部分を補うだけでなく、自分ならではの強みを生かしたのですね。
市川:そうです。ロレアルはメンバーの個性を尊重してくれるので、自分の強みを発揮しやすい環境だと思います。例えば同じ仕事でも、人によって進め方が違いますし、会社もそれを認めています。組織や仕事のあり方が固定されているのではなく、そのときのチームによって常に変化できることがロレアルの強みですね。
特に今は変化の激しい時代。新型コロナウイルスの影響もあって、3年前と今とでは美に対する価値観も大きく変わりました。そのように社会が変化しているのに、組織のあり方が変化しなければ時代に淘汰(とうた)されていくだけです。
私たちはまるで生き物のように組織の形を変えてこられたからこそ、変化の激しい世の中でも常にお客さまに価値を提供するだけでなく、メンバーそれぞれが働きやすい環境も実現できています。
──どのような環境が働きやすさにつながっているのでしょうか。
市川:会社としての働き方に関する制度を作っている立場ではありませんが、社内にはさまざまなライフスタイルや国籍の人が働いているため、多様な働き方に理解があるんです。例えば仕事に対するモチベーションだって、人によってそれぞれ違いますよね。昇進やキャリアアップを一番に考える人もいれば、楽しく仕事をするのが一番だと考える人もいる。
そのどちらかを正解にしてしまうと組織の多様性がなくなり、パフォーマンスが下がってしまう人がいます。どんなライフステージでも、どんなモチベーションでも、お互いを尊重しあうから学びがあり、組織として強くなっていく。上司たちがそのような考えのため、制度がなくても働きやすい環境が醸成されているのだと思います。
私自身も2児の父親であり、ライフステージの変化に合わせて働き方を変えています。それでも、海外勤務などさまざまな挑戦をすることができているのは、ロレアルが多様な働き方を尊重しているからだと考えています。
──組織の多様性は、ビジネスとはどのようにつながるのでしょうか。
市川:例えば「働くママ」向けの製品を作るとしますよね。私たちはいきなり消費者テストをするのではなく、まずはチームで集まって「忙しいママはどんなメイクをしているんだろう」と話し合うんです。メンバーに働くママがいれば、それだけ具体的な仮説が可能になり、より有意義な消費者テストができます。
データも重要ですが、数値からは見えない情報も重視するからこそ、私たちのビジネスは血が通ったものになっていきます。多様性のある組織では、多様な消費者の視点に立って考えられるため、具体的な仮説を立てられるようになり、結果的にビジネスの成長につながっていきます。
オーナーシップのある新卒も事業をリードし、成長を加速させる
──組織の多様性がビジネスを成長させる原動力でもあるのですね。市川さんのチームはいかがですか。
市川:私の組織も多様性にあふれています。男女比は女性6割に男性4割ですし、新卒入社と中途入社が半々です。入社1~3年前の若いメンバーが半数を示していますが、結婚しているメンバーも子供のいるメンバーもいます。国籍もタイや香港出身の方もいて、さまざまな観点で多様性のあるチームですね。
──市川さんのチームにも、若くしてチャレンジしている方もいるのでしょうか?
市川:例えば今年から新卒2年目の男性メンバーに、メイベリン ニューヨークの中で最も重要度の高いマスカラ製品を任せています。最初から大きな仕事を任せることで、責任感とオーナーシップをもってもらうのが目的です。
彼には去年の年末にマスカラを任せることを伝える際「マスカラの事業を一つの会社と見立てて、社長のつもりで仕事に当たってほしい」と伝えました。自分で考え、自発的に提案してほしいと伝えたところ、見事に事業をドライブしてくれています。2年目だからと指示を受けた仕事をするだけでなく、自分から仕事を作りながら活躍してくれていますね。
──まさにオーナーシップを発揮してくれているんですね。
市川:そうです。また、彼も決して化粧品という商材にだけ興味があって入社したわけではありませんが、今やマスカラに関しては日本トップの知見を持っていると思います。入社時に化粧の知識は必要ないと言いましたが、本気で仕事をしていけば自然と知識はインプットされていきますから。
また、マーケターとして成功したいなら好奇心も欠かせません。好奇心があるからこそ、自らインプットしていき、質の高いアウトプットが可能になり、プロフェッショナルとして成長していくのです。彼は結果の見えにくい仕事からも貪欲に学ぶ素直さもあり、ものすごいスピードで成長してきました。
変化の激しい時代にワクワクできる仕事を見つけてほしい
──これからどのようなチャレンジをしていくのか聞かせてください。
市川:一歩先の未来に向けて、美を提供していきたいと思っています。例えば、新型コロナウイルスの影響でマスクを着けるのが当たり前の時代になりました。私たちは5年後、10年後のメイクがどのように変化していくのかを考えなければいけません。
顔が半分隠れた環境で育ってきた若者たちは、これからどんなメイクをするのか。ティーン世代からの支持が高いメイベリン ニューヨークは人生において初めてメイクをするときに買う方も多く、これからの美を創る上で重要なブランドです。今のニーズも大事ですが、これから社会のニーズがどのように変化していくのか考え、いち早く「美」を提供していきたいと思います。
──変化の激しい時代だからこそ、チャレンジのしがいがありますね。
市川:もう一つのミッションは「日本から世界へ」です。日本ロレアルは世界のトレンドを日本に持ち込めることを強みに成長してきましたが、これからは日本のトレンドを世界にも発信していきたいと思います。
特に今はSNSが全盛の時代。世界のトレンドが一瞬で手に入りますし、自分たちから世界に発信することも可能です。だからこそ日本のメイベリン ニューヨークが日本のトレンドを発信し、アジアを始め世界全体に波及させていきたいと思います。
──そのようなチャレンジをしていくために、どんな学生に興味を持ってもらいたいですか。
市川:一番求めているのはリーダーシップを持っている学生です。リーダーシップとは決してリーダーだけが持っているものではありません。リーダーじゃなくても、自ら考え組織を導いていける人と一緒に働きたいですね。
そしてリーダーシップと同じくらい重要なのがアントレプレナーシップ(起業家精神)です。プロとして自分の武器を持つことは重要ですが、決して自分の職種にとらわれるのではなく、大きな情熱で周りを巻き込んでいける方と一緒に働きたいと思います。
──最後に学生の皆さんにメッセージをお願いします。
市川:私たちの会社に入社するかどうかに関係なく、ワクワクできる仕事を見つけてほしいと思います。近年はワークライフバランスが叫ばれていますが、私たちの起きている時間の半分かそれ以上はワークです。そのワークが充実していなければ、ライフを充実させるのは難しいでしょう。どんな仕事でもいいので、自分がワクワクできる仕事を見つけてほしいですね。
そして、学生のうちは仕事がどんなものか分からないので、偏見を持たずに社会を見てほしいと思います。私も「男だから化粧品の会社は関係ないな」と偏見を持っていたら、今のようにワクワクできる仕事をしていなかったかもしれません。
現時点で化粧品メーカーが視野に入っていない方も、少なくとも日本ロレアルはビジネスのプロになれる環境が整っていることを知っていただきたいです。少しでも興味が湧いた方はぜひ話を聞きに来てみてください。
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【日本ロレアル】インターン プレエントリー
【ライター:鈴木光平】