就活生の中でも人気が高い金融業界。
融資、信託、証券、投資など、総合的な事業を展開するフィナンシャルグループに魅力を感じる方も多いでしょう。
3大メガバンクのひとつから内定を獲得した東京大学のAさんもその一人。志望業界を始めから金融に絞り、第一志望行に合格しました。
「勉強、部活、アルバイト、サークル……。学生生活は何で成り立っているかと聞かれたら、100%部活と答えていましたね」
そう語るAさんは部活との両立に見切りをつけ、就活を翌年に持ち越すために、自ら留年という道を選んでいます。就活を2回経験した彼だからこそ分かる、本命の企業から内定を獲得するための秘訣(ひけつ)とは──。
<目次>
●就活の軸は「理想のスキルと経験が得られるか」 コンサルも魅力的だけれども……
●3つの軸に焦点を合わせた逆質問で、効果的なアピールを!
●納得就職には準備が大事。企業選びの基準を明確にし、スケジュールには余裕を持って
就活の軸は「理想のスキルと経験が得られるか」 コンサルも魅力的だけれども……
──最初から志望業界を金融に絞っていたとのことですが、なぜ金融なのでしょうか?
Aさん:もともとファイナンスに興味を持っていたのもありますが、得られるスキルと経験が、自分の求めるものに合致していると思ったんです。いろいろな人の話を聞く限り、最近の企業ニーズは融資だけではなくて、証券の知識だったり、信託だったりとさまざまです。幅広いスキルを求められると感じていたので、金融業界で働くことで知識を身につけ、総合的に提案できるような人材になりたいと考えました。本選考では3大メガバンクにエントリーし、最初に第一志望行から内定をいただきました。
──その時点で就活を終了されたんですか?
Aさん:はい。もともとそう決めていました。
──スキルや経験にフォーカスすると、コンサルを選ぶ方も多そうです。
Aさん:そうですね、実はコンサルも考えました。コンサルも金融も経験を積めるうえ、顧客の課題にソリューションを提案する点は共通しています。
金融を選んだ理由は2点あります。まず、顧客との関わり方の差ですね。コンサルはクライアントの課題を洗い出し、解決策の提案をする形が多いと分かりました。一方金融は、各行が提案した解決策を一緒に実行する部分まで担います。この違いが、自分の中では大きかったです。
──もう一つは?
Aさん:顧客と関わる期間ですね。プロジェクトベースで顧客が変わっていくコンサルに対して、金融は銀行が融資をしているお客さまへ継続的にサポートをしていく。長期的な信頼関係が築けるのがいいなと思い、金融を選びました。
──他に考えた業界はありますか?
Aさん:私は体育会系の部活に入っていたので、スポーツにまつわる業界も考えました。好きなことを仕事にできたら素敵(すてき)だと思って。ただ、特定の業界に入ると、キャリアの幅が狭まってしまうリスクがあるのではないかと思いました。それならば、さまざまなスキルを身につけられる業界にまず入って、将来的に気持ちがあれば、好きなことに貢献できる人材になろうと。新卒でスポーツ業界に就職する必要はないなと判断しました。
3つの軸に焦点を合わせた逆質問で、効果的なアピールを!
──Aさんは本命の企業に内定されています。どのような点に力を入れたのでしょうか?
Aさん:人事とのLINEのやりとりやOB・OG訪問など、与えられた全ての機会をアピールの場だと考えて、志望動機や人柄を伝えるように意識しました。自分のパーソナリティを売り込むイメージです。業界を問わずにいえることですが、基本的に就活はその企業の方々とのマッチングであったり、どのように自分が活躍できるのかを知ってもらったりすることが重要だと思っていて。一回一回の面談で、「この子は他の学生よりもちゃんとしているな」と思ってもらえるように意識していました。
──具体的にはどのような言動ですか?
Aさん:金融業界は窓口が広い分、業務内容を事細かに知らないまま受ける人もいるかと思うのですが、私は十分な企業理解を示せるよう、念入りに準備をしました。「金融業界はこういう存在で、こういう仕事ができて、将来はこんなことをやりたい」ということを人よりも明確に話せれば、志望度の高さをより強くアピールできます。志望度の高さは選考でも重視されていると感じていたので、基本的な知識をもとに、他の学生よりも深い逆質問ができるようにもしていましたね。
──なるほど。例えば、どのような逆質問をされていたのでしょうか?
Aさん:OB・OG訪問で、現役の社員さんと1時間ほどの面談をする機会が10回くらいあったんです。毎回質問をするとネタ切れになりやすいので、基本的な軸を3つ決めていました。
その方々がどうして金融、どうしてメガバンク、どうしてその銀行に入ったのかという「過去の話」と、今はどのようなお仕事をされているのかという「現在の話」と、これからどのような人材になりたいのかという「未来の話」。これらを聞きたいと最初にぶつけていました。
一回一回の会話で仕事の細かいお話が出てくるので、「もう少し具体的に教えてください」と深掘りしたり、「銀行のお仕事ってこうだと思っているんですけれども、実際はどうなんですか?」と、自分の仮説を交えつつ、会話を進めたり。そのように意識して逆質問をしていました。
──「過去・現在・未来」を主軸にした逆質問ですね。その質問をすることで、手応えを感じましたか?
Aさん:かなり本質的な話を聞けたり、「そんな仕事があるんだ!」という金融業界の裏話を聞けたりしたので、選考の手助けになりました。
──裏話を聞き出すのはすごいですね。なかなか難しそうなイメージです。
Aさん:すべての方が人事というわけではないので、話すのが得意な方とそうではない方がいらっしゃるだろうと思っていて。どのような方であっても、気軽に話しやすいような話の伝え方や聞き方を心がけていました。現役社員の方がざっくばらんに話してくださったのは本当にありがたかったですね。
──メガバンクは特に「なぜうちなのか」を重視すると聞きます。実際はどうだったのでしょうか?
Aさん:それは選考を通してずっと言われていましたね。OB・OG訪問を重ねることは、企業の魅力をしっかりと理解しようとしたプロセスを知ってもらえて、なおかつ、深く理解できている学生という評価につながると思います。実際、私もそうでした。
──競合他社との違いについては、どのように話されたのですか?
Aさん:3大メガバンクを比べたときに、グループ内での連携が一番取れていて、組織内の風通しがいいと感じたのが第一志望行でした。その点を踏まえ、融資だけではなく、総合的なソリューションを提案できる人材という、最終的になりたい姿になれるのがここだということを強調していました。あとは社風を用いるのも効果的だと実感していたので、「多くの方の話を聞いた結果、一緒に働きたいと思えたのはこういう理由で、ここの方でした」というのも伝えていました。
──どのような社風だと感じていたのでしょうか?
Aさん:総じてニュートラルな方が多いと思っていて。銀行や証券など、今自分がどのような会社にいるかではなく、グループとしてどうにかしていきたい、こうあるべきだというのを一番熱く語ってくださっていた印象を受けていたので、面接や面談ではそう話していましたね。
──面談の機会は10回ほど設けられたとのことですが、Aさん的に、理想の回数というのはありますか?
Aさん:具体的な回数は人によると思うのですが、自分が納得できるまでできたらいいのではないでしょうか。私はその回数が多かっただけです。実際に社員の方からお話を聞くと、疑問がさらに出てきて、それを解消する……という繰り返しでした。中途半端にせずに、何度も足を運ぶのが大事だと思います。
──お話を聞く限り、現役社員さんとの対話の中に工夫を凝らしていたことで、Aさんの強みが発揮されたように感じます。OB・OG訪問は、やっておいてよかったなと思いますか?
Aさん:もちろん。人事の方は話せることに限りがありますし、最前線で活躍している方々のお話を聞くのはすごく重要だと思います。特にメガバンクは、一回一回の面談で、現役社員の方が受けた印象や評価が人事に共有されています。そこを逆手にとる使い方もできますよ。
実際に「あなたは毎回、勉強熱心に話を聞いて当行に対する理解度を深めようとしてくれている。そこがいいと思いました」とフィードバックをいただいたこともありました。
納得就職には準備が大事。企業選びの基準を明確にし、スケジュールには余裕を持って
──Aさんは一度、部活を理由に就活留年をされています。難しい判断だと思うのですが、どのような経緯でそこに至ったのでしょう?
Aさん:就活と部活を両立させるのが難しくて。大事な大会と1回目の就活を始めた時期がちょうど被ったんです。そのときは4月ごろでしたが、当時朝から夕方まで部活にのめり込んでいた私は、就活を深刻に考えていませんでした。「周りが始めたから自分もやるか!」みたいな状態です。業界を絞らず、とりあえず数社ほどの有名企業にエントリーしたのですが、軒並み落ちてしまって。5月あたりから、部活に集中しようと切り替えました。
──結構早い段階で、大胆な決断をされましたね。
Aさん:気持ちを立て直す余裕も時間もなかったので、どちらも悔いが残らないようにするには、就活留年がベストだと思いました。結果的には部活に集中できて晴れやかな気持ちでしたし、2回目の就活で納得のいく内定先を選べたので、1年持ち越したのは良かったと思っています。
──なるほど。気持ちを立て直せないほど、1回目の就活はつらかったんですね。
Aさん:特に落ちた理由が分からないことはすごく堪えました。私は、テストの点数とか成績とか、数字で評価される経験しかしていなかったんです。でも、就活は何点だから合格、不合格ではなくて、自分がどの点で評価されてどの点で評価されていないのか、全く分からないものなので。
──就活を始めた時期は比較的遅めですよね。
Aさん:実は、準備していないのにも関わらず、「体育会系だし、学歴もそこそこあるし、受かるんじゃないかな?」と甘く考えていました。コロナの影響で就活が早期化しても、体育会系は私も含めて情報に疎い人が本当に多くて、「あ、もう本選考が解禁されているの?」みたいな感じなんです(笑)。
──もう少し早めに準備ができていたら、1回目の就活をそのまま続けていましたか?
Aさん:部活か就活かを選ぶとなると、部活を取っていただろうとは思います。ただ、しっかりと準備をして早めに内定をもらえていたら、心の余裕はできたかな。気持ちの切り替えがスムーズにできて、部活とも両立できたかもしれないですね。
企業選びの段階から、「自分にマッチしている企業なのか」「やりたいことができるのか」「そもそも自分は何を得たいのか」を固めた上で選択できていれば、選考に挑む心構えも結果も全然違ったと思います。
──事前の準備が大事とよくいわれますが、心の準備も相当大事なのだと感じます。2回目の就活は部活を終えてから始めたんですか?
Aさん:はい。引退したのち、12月から本格的に動き始めました。1回目の失敗を省みて、心構えも含めた事前の準備がちゃんとできたからこそ、いい結果が得られたと思っています。始めた時期によって周りの状況に違いもありましたね。1回目の就活を始めた4月は内定が出ている人も結構いて、選考に挑む本気度が高く、みんな臨戦態勢だと感じました。2回目の就活を始めた12月は、本選考がまだ先だということもあり、第一志望が決まっていない人も多い印象を受けました。
それもあって、気持ち的にも、スケジュール的にも、比較的余裕を持って臨めたなと思います。
──ご自身の経験を踏まえ、就活はいつ頃から準備を始めるのがいいと思いますか?
Aさん:やはり3年生の夏、サマーインターンにエントリーするところからですかね。サマーでいろいろな業界を見て、そこから自分がやりたいことを見極めて、ある程度意志を固めた上で冬から春にかけて本当に行きたいところの選考を受ける。そんなスケジュールがいいのではないでしょうか。
──ありがとうございました! 今後のご活躍もお祈りしております。
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