業界ごとに就活生の過ごし方をご紹介する内定図鑑。第3弾は、就活生に絶大な人気を誇る「総合商社」です。
総合商社といえば、帰国子女や体育会系の部活に所属している人が選考で有利になるイメージがありませんか。
今回インタビューさせていただいたのは、総合商社の内定を獲得したCさん。
Cさんは帰国子女でもなく、体育会系の部活に所属していたこともありません。そんなCさんが内定を獲得した背景には、面接官に自分を印象付けるためのユニークな必勝法がありました。
<目次>●総合商社を目指したのは「日本のプレゼンスを高めたい」から ●サマーインターン1社からの逆転。秋にはコンサルの内定を獲得 ●30回のOB・OG訪問でから優遇ルートを獲得。秘訣(ひけつ)は「商社パーソンになりきること」 ●面接官に覚えてもらうための「あの手この手」──麻雀やゲームの話も武器になる ●差別化する要素は「立派」なものでなくてもいい
総合商社を目指したのは「日本のプレゼンスを高めたい」から
──なぜ総合商社を志望していたのですか?
Cさん:海外に行って日本のプレゼンスを高めたいからです。
幼いころから海外旅行によく行っていたのですが、海外から見ると、今の日本の存在感ってどんどん薄れている感覚があるんです。アメリカを訪れた際、海外の友人に「日本って最近落ちてきているよね」と言われて。仲の良い友人なんですけど、そのときは、少し悔しかったです。
──そうなんですね。ということは、総合商社だけに絞って就活を行っていたのでしょうか?
Cさん:日系メーカーも海外と関わるチャンスがあるので見ていましたが、第一志望は総合商社でした。7大商社(三菱商事、伊藤忠商事、三井物産、丸紅、住友商事、豊田通商、双日)の中でも優先順位を決めずに、内定をいただいたところに行ければいいと考えていました。
サマーインターン1社からの逆転。秋にはコンサルの内定を獲得
──総合商社や日系メーカーを中心に就活を進めていたとのことですが、いつごろから就活を始めましたか?
Cさん:大学3年生の7月からですね。日系メーカーと総合商社は冬インターンが多いので、夏インターンは日系メーカー1社のみの参加でした。
──参加が1社だったことで、就活への焦りはありましたか?
Cさん:ありましたね。友人が、夏インターンで戦略コンサルタントのインターンや内定直結型のインターンに参加している姿を見て不安になりました。
ただ、大学3年生の夏から就活に力を入れても、総合商社は4年生の6月ごろにしか内定が出ません。「途中で息切れするし秋からで良かった」と自分に言い聞かせて、モチベーションを保っていました(笑)。
──モチベーションの維持は大切ですよね。その後、秋インターンではコンサル業界を受けられ、見事に内定を獲得されています。なぜ、コンサルを受けたのでしょうか?
Cさん:一番の理由は、自分の腕試しをしたかったからです。総合商社とコンサルで求められる力は、共通している部分が多いと考えています。論理的思考力が試されるケース面接やグループディスカッション(GD)など、総合商社を受ける準備ができるのかなと。コンサルへの志望度は高くなかったですが、内定を持っていることで安心して総合商社の本選考に臨めました。
──実際に総合商社では、コンサルの内定を持っていると有利になることはあるのでしょうか?
Cさん:外資系の戦略コンサルタントの内定を持っていると優遇を受けられるということは先輩から聞いたことはあります。ですが、「コンサルの内定を持っているか」と面接官に直接聞かれたことはないですね。総合コンサルタントの内定だったので、有利になったという感覚はありません。
30回のOB・OG訪問で優遇ルートを獲得。秘訣(ひけつ)は「商社パーソンになりきること」
──OB・OG訪問を約30回されていたとのことですが、いつごろ行いましたか?
Cさん:大学3年生の2月です。大学の名簿やアプリから訪問先を見つけて、ほとんど毎日OB・OG訪問をしていました。1日に3回訪問することもありましたよ。ですが、秋のうちにOB・OG訪問を行えば良かったと後悔しました。社員の方も年末年始は仕事で忙しく、OB・OG訪問をする学生も多くいます。秋から訪問することで、志望度の高さも示せますし、社員の方も比較的対応しやすいのではないかと思います。
──やはり早めの訪問が吉だと。訪問先はどのように選んでいましたか?
Cさん:訪問先の方の年代は気をつけて見ていました。最初は、若手社員の方にお願いしていました。OB・OG訪問は評価される場でもあると考えていて、失言をして評価がマイナスになるのを恐れていたからです。そこから徐々に慣れていき、裁量が大きいベテラン社員の方にお願いをしていました。
──OB・OG訪問をして良かった事はありましたか?
Cさん:優遇ルートに進めたことです。面接が1回免除になったことには驚きました。5回訪問した企業から、6月に内定をいただくことができました。
──総合商社志望の学生にとって、OB・OG訪問は必須ですね。訪問時に意識されたことはありますか?
Cさん:訪問がスムーズに進むよう、10個から15個くらいの質問事項を用意し、前日に送付していました。当日はそれに加えて、プライベートに関することも聞いていました。話が弾んで、15分ほど雑談をすることもありました。また、OB・OG訪問の間は、商社パーソンになりきることも意識していました。働いている姿を想像していただくためです。OB・OG訪問を通じて、商社パーソンは、明るくてコミュニケーション能力が高い人が多いと改めて気付かされました。会話の中でも元気に返答し、できるだけ楽しい空間にしようとしていました。
面接官に覚えてもらうための「あの手この手」──麻雀やゲームの話も武器になる
──エントリーシート(ES)や面接など、選考のフローについてもお聞きしたいです。総合商社でのESではどのようなことを書いていましたか?
Cさん:サークルやアルバイトのことを書いていました。サークルに関しては、副リーダーとして大会の成績向上に貢献した経験を、アルバイトに関してはお客様の回転率を上げた経験を書きました。正直、大したことは書いていない気がします。内容よりも見せ方が大切ですね。
人事はESで、学生が「どのような状況で何を考えて行動する人間なのか」を見ています。そのため、僕は自分が感じたことや考えたことを多く書いていました。これは、実際に働く際にも、目の前の仕事に対してどのように向き合う人間なのかを判断してもらえる材料にもなると思います。
──面接で、周りと差をつけようと意識していたことはありますか?
Cさん:自己紹介で少し変わった話をして面接官を楽しませることですね。面接の最初に自己紹介をするじゃないですか。最後に「趣味は麻雀(マージャン)です。本日はよろしくお願いいたします」と言っていました(笑)。
──攻めますね〜! 面接官の反応はどうでしたか?
Cさん:これは意外とウケました。年代が高い男性の面接官は、麻雀が好きな方が多くて、話が盛り上がります。普通は、学生時代に頑張ったことなど真面目なことを伝えて終わると思うのですが、面接官の印象に残ることはあまりないと思いますね。
──確かに「麻雀」は印象に残りますね。若い面接官の場合は、内容を変更することもあったのでしょうか?
Cさん:変えてました。若い方であればゲームの話です。「PS4を12時間ぶっ通しでやっています」と言っていました。この話は、結構仲良くなれますし、面接官の印象に残ると思いますね。
──面接官への印象付けを意識されているんですね。
Cさん:そうですね。印象付けは一番意識していました。あくまで憶測ですが、最終的に人事の方が内定を出すか出さないかを判断するとき、「そういえば、麻雀の話をしていたやつがいるな。あいつを採っておくか」ってなると思うんですよ。だから、いかに印象に残っているかが大切なのではないかと。
──どうしたら、印象に残る学生になるのでしょうか?
Cさん:ギャップを作ることですかね。面接を受けていて、よく「真面目だね」と言われていたので、「だったら不真面目のほうがいいな」と考えて麻雀やゲームの話をしていました。個人面接だけでなく、集団面接でも周りの学生も笑わせる勢いで言ってました。ハートの強さが求められるかもしれませんが(笑)。
ただ、やはりこれくらい印象に残るようなことをしないと、総合商社は倍率が高いので突破できないと思っていました。僕は体育会系でも帰国子女でもありません。どうしたら勝てるかを考えたとき、リスクを負ってでも思いきり目立つ必要があるなと。
──面接官を楽しませる、という点で他に工夫できることはありますか?
Cさん:逆質問の時間ですね。面接官にとって「自慢話」になるようなテーマを質問していましたね。例えば「今までにやりがいを感じた仕事はありますか」という質問。面接官自身の経験なので、気分よく話してくれていたと思います。
──ありがとうございます。最後に就活生に向けてアドバイスをよろしくお願いします。
Cさん:「帰国子女でも体育会系でもないのに、総合商社の内定を獲得できるのか」と不安に考える学生もいると思いますただ、実際、伝える内容以外にも工夫次第で勝負できます。自分の強みを見つられれば絶対に結果がついてくると思います。頑張ってください!
差別化する要素は「立派」なものでなくてもいい
自己紹介でのアピールや面接官への「おもてなし」など、Cさんならではの必勝法に驚かれた方もいるのではないでしょうか。しかし、その根底にあるのは、自分をどう差別化するかという基本的な話です。
面接官の印象に残るようなエピソードを探し、自分ならではの必勝法を見つけてみる。まずは、普段自分が他人に与えている印象と与えたい印象について考えてみることも良いでしょう。
そして、まだOB・OG訪問をしていない学生は今から始めてみましょう。総合商社志望の学生にとって、OB・OG訪問は内定に近づく第一歩になるはずです。
以下に、OB・OG訪問の準備方法や手順をまとめています。ぜひご覧ください。
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