「高くて明るいイメージの声が好きだ」「説得力のある声になりたいな」
自分の憧れの声イメージに近づきたい、そんな方に向けて現役声優が「『いい声』のつくり方」をお伝えします。
ワンキャリアをご愛読の皆さん、こんにちは。
声優として活動しております、藤東知夏(ふじとう ちか)と申します。
突然ですが、皆さんは好きな声や憧れの声ってありますか?
中には、好きな俳優や声優、身近にいる友人など、自分の憧れの人と同じ声になりたいと思ったことがある方もいらっしゃるかもしれません。
全く同じ声になる、ということは不可能に近いですが、声の出し方や共鳴について学べば、理想の声に近づけることはできます。
今回は「『いい声』のつくり方」シリーズ第3弾として、「声の響かせ方」と「声の表現方法」についてお話しします。これらをマスターすれば、就活の面接選考などでも役に立つはず! ぜひご覧ください。
それではさっそく、「『いい声』のつくり方」スタート!!
<目次>
●理想の声が手に入る!? いい声を出す秘訣(ひけつ)は、体中を使う「共鳴」にあり
●言葉に感情が乗って説得力も増す! 声の表現方法「プロミネンス」を教えます
●重要なのは「声」のコンディション。声を大切にするお手入れとケア方法
●あなたの声は、あなただけのものだから
理想の声が手に入る!? いい声を出す秘訣(ひけつ)は、体中を使う「共鳴」にあり
これまでこの連載では、「いい声」を出すために、腹式呼吸や姿勢、滑舌(かつぜつ)が大切だとお話ししてきました。
今回ご紹介するのは「共鳴」。これもいい声の非常に重要な要素です。
人間の体の中には、「共鳴腔(きょうめいくう・きょうめいこう)」と呼ばれる、声が反響する空洞部分が存在しています。
声(声帯を振動させて生まれる音)を鼻腔(びくう・びこう)、口腔(こうくう・こうこう)、胸腔(きょうくう・きょうこう)などの共鳴腔で共鳴させ、「倍音(ばいおん) (※)」を作り出すことで、響きが良く、声量のある声が出せます。プロのオペラ歌手を想像してみると、分かりやすいでしょう。彼らは共鳴を使いこなし、あのダイナミックな声を出しているわけです。
そして、どの共鳴腔に響かせるかによって、声の印象や他者への聞こえ方が少し変わってきます。
今回は主な3つの共鳴腔について、声のイメージと響かせ方の練習方法をお届けします。
・鼻腔共鳴
・口腔共鳴
・胸腔共鳴
(※)……声や楽器の音などを発した際に基音となる音と同時に混ざり込む、人の耳では感じられない周波数のこと。一般的に倍音を多く含む音は心地よいとされている。
鼻腔共鳴
鼻腔共鳴は、鼻の奥の空間を使って声を響かせる方法で、クリアで明るさや温かみのある声に聞こえます。
口よりも高い位置で共鳴させるため、無理がなく高めの声を出したいときに向きますし、クリアに聞こえるため、「声が通らない」と感じている方も鼻腔に響かせるのをおすすめします。
たまに「鼻声」と勘違いする方もいますが、こちらは鼻が詰まっていたり力が入っていたりするので、響いている状態とはいえません。
▼鼻腔共鳴の練習方法
口を閉じて、自分の出しやすい音で「ンー」とハミングをします。慣れてきたら、ハミングから口を開けて「アー」の発声に変えます。このとき「ンー→マー」のように発音するとやりやすいです。鼻が振動していれば鼻腔共鳴ができています。
口腔共鳴
口腔共鳴は、口の中で空間を作って倍音を生むことで、しっかりとした中音域が響くようになり、声量も上がります。
体育館などで声を出すと音が響きますが、これは天井までの空間に高さがあるためです。それと同じで、口の中に空間や高さを出すことが大切です。
▼口腔共鳴の練習方法
あめ玉を口で挟むくらいの大きさに口を開き、縦開きを意識して「ホー」と発声します。このとき、口蓋垂(こうがいすい)が振動していれば口腔共鳴ができています。
胸腔共鳴
胸腔共鳴は声帯を閉じ、喉を開くことで低音の響きが良くなり、落ち着いた声が出せます。「チェストボイス」とも呼ばれており、いわゆる「地声」に一番近い発声といわれています。
▼胸腔共鳴の練習方法
胸に手を当て、リラックスした状態で縦開きを意識して「オー」と発声します。このとき、胸が振動していれば胸腔共鳴ができています。
共鳴はボーカルトレーニングの際にもよく使われており、こちらをマスターできればマイク乗りが良くなり、歌にも効果があります。カラオケが好きな人はぜひ。
言葉に感情が乗って説得力も増す! 声の表現方法「プロミネンス」を教えます
さて、声の準備ができたら次は「表現力」を鍛えましょう。
皆さんは「声に抑揚がない」「感情が伝わってこない」などと言われたことはありませんか? それは強調のテクニック、「プロミネンス」をマスターすれば解決できるかもしれません。
プロミネンスとは、言葉の中で、最も伝えたい重要な単語やキーワードを強調する表現技法のこと。主に次のような方法があります。
・強調したい部分を強く発音する
・強調したい部分をやや声のトーンを上げて読む
・強調したい部分のゆっくり読む
・強調したい部分の前で間をとる
例えば「私は 御社が 第一志望です」と言う場合、どこを一番強調するかでイメージが大きく変わります。
「私は」を強調すれば、他の誰でもない自分が、という印象に。
「御社が」を強調すれば、「他の会社ではなくあなたの会社に」が強調されます。
「第一志望です」を強調すれば、「第二、第三ではなく」という意味合いを持ちます。
全てを強調したいんだ! と思うかもしれませんが、強調は1つの文章のかたまりに1カ所のみ使う方が効果的です。
また、強調したい部分の前で間をとって強めに発声する、声のトーンを上げてゆっくり読む、など組み合わせて使うこともできます。
プロミネンスを使うと、あなた自身がその文章の中で何を大切にしているのか、どこを一番伝えたいのかを振り返ることにもなります。エントリーシート(ES)の推敲(すいこう)にも使えるかもしれません。ぜひ試してみてください。
重要なのは「声」のコンディション。声を大切にするお手入れとケア方法
腹式呼吸や姿勢、滑舌、声の共鳴とプロミネンス……。
「いい声」を作るためにはさまざまな練習が必要ですが、個人的に一番大切だと思っているのは、声を大切に扱う、つまり、声のケアをすることです。
特に今の季節、冬は寒さが厳しく、空気も乾燥します。少しでも油断すると喉がイガイガ……鼻水がタラタラ……。
せっかく練習をしたのに、本番でその力が発揮できなければもったいない。
いい声で冬を乗り切るために、すぐにできる声のケア方法をお伝えします。
喉が痛いときは◯◯を直飲みしよう 声を守る6つの方法
声のケアで一番効果的なのは、乾燥を防ぎ、湿度を適度に保つことです。
それでもなお、喉や声の調子が悪いなというときは、以下に挙げる方法を試してみてください。
風邪のひき始めや喉が痛いとき、カラオケで歌いすぎたときなどに効果的です。
1. はちみつ大根
作り方はこちらのレシピなどを参考にしてください。
そのまま飲むことに抵抗がある方は、お湯や炭酸水で割ってどうぞ。私は生姜湯(しょうがゆ)に混ぜて飲むのがお気に入りです。生姜には体を温める効果があるので、一石二鳥。ぜひ試してみてください。
2. はちみつを直飲み
はちみつには、殺菌・抗菌作用があるため、喉が痛いなと感じたときにすぐ大さじ1杯くらいを直飲みすると治まることが多いです。注意点としては、1歳未満の子どもや赤ちゃんにはリスクが高い食品なので、絶対に与えないでくださいね。
3. マシュマロを食べる
市販のマシュマロにはほぼゼラチンが含まれています。このゼラチンが、のどの炎症を覆う役目をしてくれるため、痛みを緩和してくれます。プレーン味のものがおすすめです。
4. 吸入器を使う
これを使えば、大抵は喉の痛みが治まります。お値段は6,000円〜20,000円程度とピンキリですが、できれば暖かい湯気の出るスチーム吸入器がおすすめです。
使ったあとはお手入れをしないとカビや雑菌が発生する可能性があるので、その点だけご注意ください。
5. 寝るときにマスクをして加湿器をつける
繰り返しになりますが、喉には乾燥が大敵。エアコンをつけていなくてもマスクをして、加湿器をつけて眠るのが声のケアとしてはおすすめです。もし加湿器がなければ、水でぬらしたバスタオルを寝室に置いておくだけでも効果があります。
6. 声を出さない
喉に違和感があるときは、可能であれば筆談などで対応し、しゃべることを極力避けるのがベストです。たまに、喉が痛いからと小声(ウィスパーボイス)で話す方もいますが、このしゃべり方は余計に声帯や喉に負担をかけるので、やめたほうがいいでしょう。
ちなみに、逆に絶対やってはいけないことは、お酒を飲みながら大声を出したり、カラオケで歌ったりすることです。恥ずかしながら私の実話です……。
風邪の治りかけの時期にやってしまった結果、ひどい声帯炎になり、1カ月近くまともに声が出せなくなったことがあります。
声を出そうとしても空気が漏れる音しか出ず、すごく落ち込んだことを覚えています。
もし、次の日に会社でプレゼン予定があったら? 1週間後に面接を控えていたら?
少しの油断から大変な事態になることがあるので、皆さんも気をつけてくださいね。
あなたの声は、あなただけのものだから
──自分の声が好きじゃない。
中にはそう思っている方もいるかもしれません。実際、私もそう感じたことがありました。
でも、「隣の芝生は青い」という言葉があるように、あなたの「嫌い」は誰かの「好き」かもしれません。
例えば、自分で「声が低くてかわいくない」と思っていても、他の人は「ハスキーで魅力的だな」と思っているかもしれません。
「声が高めで子どもっぽい」と思っていても、「いつもフレッシュで明るい声だな」と思われているかもしれません。
短所は長所でもあります。
持って生まれたあなただけのものだから、せっかくならポジティブにとらえて、いいところをどんどん磨いていってほしいです。
今はきっとおうち時間が増えている方が多いと思います。
声磨きは簡単にできるものが多く、あまり大きな声を出す必要もないので、ぜひこの機会に試してみてくださいね。
それでは、まだまだ乾燥した時期は続きますが、はちみつを飲んで声も体も元気に過ごしていきましょう!
【現役声優が解説:いい声のつくり方】
・「緊張で声が出ない」「滑舌に自信なし」 そんなアナタに贈る、就活でも使える「いい声」のつくり方
・もう「滑舌が苦手」とは言わせない!就活生も家で簡単にできる滑舌の鍛え方
・話し方を変えるだけで、志望動機に説得力が増す!?就活でも使える声の「表現力」を鍛えよう
(Photo:jakkapan , fotobook , arigato , Warut Chinsai , Subbotina Anna , Nejron Photo/Shutterstock.com)