就活をするまで知らなかったけど、実は業績が伸びている。そんな企業の特徴の1つに、BtoB企業が挙げられます。企業向けのビジネスを展開しているため、なかなか日常生活では目には触れない一方、調べてみるとその会社独自の強みを知れることもあります。
今回紹介するダイワボウ情報システム株式会社(以下、DIS)も、この特徴を持つ企業です。同社は「ITの専門商社」として、パソコンやサーバー、その他周辺機器、ソフトウエア、クラウドサービスなど220万の商材を取り扱っています。新型コロナウイルスの感染拡大を背景にしたテレワークの普及やパソコンの買い替え需要の高まりにより、2020年3月期には売上高8,473億円を達成。この10年で売上が倍増しています。
専門商社という立ち位置で「IT業界」に携わる同社の営業職では、どのようなビジネス経験を積めるのでしょうか? 今回は、同じチームで一緒に働く入社11年目の高橋さんと入社4年目の阪野さんにお話を聞きました。
国内のオフィスにあるパソコンの3分の1に関与。日本のIT化の裏にDISあり
──DISは「ITの専門商社」とのことですが、そもそも何を売っている会社なのでしょうか? パソコンやスマートフォンが普及している一方で、あまり御社の名前を聞いたことがなく……。
高橋:私たちは、最終エンドユーザーに直接商品を販売しているわけではないんです。だから、DISという社名を知らないのは無理もありません。私たちの主な取引先は、最終エンドユーザーがパソコンを購入される先となる販売店や、IT機器やシステムを企業に導入する「SIer(システムインテグレーター)」と呼ばれる業態の企業です。
高橋 悟(たかはし さとる):ダイワボウ情報システム株式会社 首都圏営業本部 南東京営業部 南東京第3支店所属。2009年入社。大手SIerを中心とした法人営業を担当。2014年4月より大手メーカー系グループ外勤営業担当。
全国に販売・流通網を持ち、取引先として1万9,000社の販売店パートナーがいらっしゃいます。商品の取扱量も業界トップクラスで、近年はパソコンの買い替え需要などでさらにシェアを伸ばし、企業が使っているパソコンにおいては3台に1台は当社が関わっています。
──それだけ高いシェアを誇れるのはなぜでしょうか。
高橋:営業の視点から感じる強みは2つあります。1つは圧倒的な在庫量です。当社は220万の商材をそろえており、常時200〜300億円分の在庫を持っています。これだけの在庫がある企業は珍しいと思います。例えばパソコンにおいては、メーカーから商品を仕入れる際、DISオリジナルモデルとして売れ筋のスペックで大量にメーカーから調達し、その分1台当たりの価格を下げられるという利点があります。すると、お客さまへは安く販売できます。規模が大きいからこそ競争が優位になる「スケールメリット」が働くのです。また当社に在庫があるため、お客さまが欲しいタイミングで商品を即納できるのも当社の魅力です。
──2つ目はなんですか。
高橋:もう1つは手前みそかもしれませんが、営業メンバーの力だと思っています。商材自体は他の企業から購入できるものもあるので、お客さまと営業の関係性も売上に直結します。「またDISに仕事を頼みたい」と思ってもらえる関係をどれだけ築けるかが大事なのです。実際に私のチームで働いている阪野は、「シュークリーム」を切り札に、大手メーカー系SIer会社との取引を拡大させたと思います。
100個のシュークリームが、10億円の売上に化けた!?
──シュークリームですか?(笑) 一体どういうことでしょう?
阪野:僕は入社4年目ですが、昨年度に個人での年間売上が10億円を超えることができました。それは大手メーカー系SIer会社との取引を大幅に伸ばすことができたからです。
阪野 晃太郎(ばんの こうたろう):ダイワボウ情報システム株式会社 首都圏営業本部 南東京営業部 南東京第3支店所属。2017年入社。品川区エリアの卸売会社、レンタル会社、SIer会社など約80社の内勤担当として、PCを中心としたハードウエア製品やクラウドサービスを含むソフトウエア製品などIT関連商品の提案活動を実施。2018年7月より大手メーカー系SIer会社の外勤営業担当。
DISがこの10年で売上を倍増できたのは、既存のお客さまとのビジネスを大きくしてきたからです。例えば、当社としてはまだ取引していない部署を開拓するなどして、1社当たりの取引量を増やすことに注力しています。
だから、入社2年目で営業担当としてその企業に週1回常駐することが決まったとき、DISを知らない部門の方にどうやってアピールしていこうか、ずっと考えていました。そこで思いついたのが、シュークリームを配ることだったんです(笑)。担当フロアで働く約100名の方に配って回りました。
──確かに、そんなことをする人は他にいないでしょうから、顔は覚えてもらえそうですね。
阪野:紹介ビラだけを配ってもインパクトに欠けると思ったんですよね。最初は、「お菓子会社か何かですか?」みたいな感じでした(笑)。でも、「違いますよ(笑)! 私たちDISというんです」とラフな感じで話題のきっかけがつかめたのは良かったですね。
──シュークリームも一緒に受け取ったら、「食べている間だけでも、ビラを見てみようか」となりそうです(笑)。
阪野:これをきっかけにお客さまに顔と名前を覚えてもらえ、次第に僕に仕事の相談や依頼をいただけるようになりました。1人ひとりお客さまの抱える課題や困りごとに対し、メーカーを巻き込みながらDISができることを提案していく、その積み重ねにより、結果としてこの2年間で売上を伸ばすことができたんだと思います。
高橋:阪野も言うように、あくまでもシュークリームは「認知してもらうためのきっかけ作り」でしかないんです。正直、お客さまとの関係構築のきっかけは何でも良いと思っています。自身でいろいろな切り口から売上につながる施策を考え、自主的に動き営業できるのがDISの面白いところです。それにDISでは、部下や後輩が一生懸命に考えた売上につながりそうな施策に対して「NO」というカルチャーはありません。
文系でもITを仕事にできる。小さな成功体験が、自信に変わる
──阪野さんのように、若手のうちから大きな売上を出せるチャンスがあるのは、確かに面白いですね。学生時代からITに詳しいなど、何か強みがあったのですか。
阪野:いえ、僕自身は文系です。ですがITは伸びている分野ですし、営業職として働くのなら専門知識が身に付く方が良いとも思いました。
──働いてみて、どんな場面で仕事の面白さを感じますか。
阪野:最初は社会人として過ごすだけで大変でした。自分にITの専門知識がなく、お客さまの要望を正確に理解できずに叱責(しっせき)を受けたこともありました。それでも、仕事に面白みを感じられたのは、お客さまと実際に話せる仕事だからです。一緒に大きな案件を成し遂げ、お客さまから「ありがとう」と言っていただけるのは、やはりうれしいです。
ただ単に商品を売るのではない点も面白みです。お客さまから「この製品が欲しい」と依頼の受けるのではなく「こういうことをしたいんだけど、どうすればできるかな?」と相談を受けることがあります。そのときに相手のニーズを考え、自分たちができることは何か、最適な商品やサービスの組み合わせは何かを考えるようにしています。「ただ売って終わり」で終わらない提案や企画ができるのは面白い点です。
──決まりきった物を売るわけではない仕事だからこそ、入社したばかりの頃は大変なこともありそうですね。
高橋:そうですね。私も入社して5年間は、仕事ができないことを痛感させられる日々でした。ですが、自分ができないことを一度受け入れ、日々の仕事を通して改善点を考え、1つひとつの実践を繰り返すことで、結果的に自身の成長につながりました。さらにその次のステップとして、お客さま目線でどうDISがお役立ちできるか新規事業の仕掛けを考え、提案したことが今に生きています。
DISでは若いうちから担当販売店を持つため、プロの仕事を求められます。そのため、実際に商材を提供してくださる多数のメーカーさまとも連携しながら仕事を進めていきます。年々高度化・多様化し続けるITへのニーズに応えるべく、日々勉強しつつ、提案活動を行います。最初から簡単に成功できる人はそういません。私もいろいろな失敗の中からも多くの成功体験を積むことができました。自分で考え、経験したことは自身にとって大きな成長の糧となり、やりがいにもつながっていきます。
──入社1〜2年目からバッターボックスに立てる環境がDISにはある、と。
高橋:そうです。1年目の社員でも、1人で仕事を任せることがあります。最初は売上10万円くらいの小さな案件かもしれませんが、自分が提案した商品が売れることは、売上額がいくらであっても成功体験です。規模の大小にかかわらず、この積み重ねを繰り返していくことが自信につながります。
サブスクにDX支援。市場開拓で代えが利かない専門商社に
──ここまででDISの営業力の強さを理解できた気がします。一方で、私が学生だったら気になるのが「新しいことには挑戦できるのか?」という点です。既存ビジネスの強みを知った分、余計に気掛かりです。
高橋:新しい挑戦という意味では、サブスクリプション型のクラウドサービス(以下、サブスク)が今後の販売戦略の主軸になると思います。学生のみなさんにとっての身近なサブスクといえば、動画配信や音楽配信のサービスなどが有名ですが、IT業界でも同じように、インフラやソフトウエアなどを所有することに対して料金を支払うのではなく、使用することに対して料金を支払うサービスモデルが増えています。
企業向けのサービスで代表的なのは、Microsoft のOffice 365やAzure、Amazon Web Services(AWS)などです。DISでは、2016年からこうしたサービスを販売店が売りやすいよう、さまざまなメーカーのサブスクのサービスを簡単に発注・契約管理できる「iKAZUCHI(雷)」という管理ポータルを販売店に提供しています。そして、2020年7月からはAWSの国内初の販売代理店にもなりました。
──まさに「売って終わりではない」営業を進化させているのですね。
高橋:サブスクの難しい点は、パソコンみたいに「このスペックで○○円です」と売れる商材ではなく、「導入するとこんなことができますよ」という体験を売る点です。だからこそ、顧客ニーズを模索しながら商品を提案する力が、一層求められる時代になったと思います。
阪野:営業メンバーは皆、AWSの販売に必要な知識を学び、専門資格の取得に向けて勉強している最中です。利用を拡大するには販売店も巻き込む必要もあるので、粘り強く協業のお願いをしています。企業の経営者に対して「なぜ今サブスクをやるのか」というプレゼンを行う機会が増えましたし、面白いタイミングだと思います。
高橋:確かに、そうですね。大事なことは、難しい言葉を使わずに、どうやって分かりやすく説明するかだと思います。DISが目指す方向性と、お客さまがやりたいことが合わさるようにする能力は必要ですね。
──デジタルの課題を解決することが次の挑戦なのですね。
高橋:そうですね。現在DX(Digital Transformation)推進が進められていますが、どうITを活用し、それによりどんなメリットがあるかなど、わかりやすく最終エンドユーザーへ説明する必要があります。私たちは直接エンドユーザーへ提案しない分、お客さまに対して最新情報の提供や、協業していきたいビジネスのご提案活動をしております。お客さまと一緒にこれから売れるものを見つけ出し、市場へ仕掛けていきます。商社の基本的なビジネスはトレードなので、「売れているものを調達し、売りに行く」というイメージを持つ学生がいるのかもしれませんが、実は市場を新しく作る動きの方がとても大事なのです。
──「ものを右から左に流すだけ」のビジネスではないのですね。
高橋:そういう見方をして「商社は不要」みたいな考え方をする人もいるかもしれませんが、僕は「商社を介することにメリットがある」と思っていました。商社が間に入るからこそ、流通工数、商品コストが下がる、そして商社がいることで新しい需要を掘り起こし、新たなビジネスモデルをつくり出せるということをもっと学生には理解してもらえるとうれしいですね。
へこたれない素直さでDISに飛び込めば、どこでも通用する人材になれる
──これからDISに入るなら、どんな人が向いていると思いますか?
阪野:いろいろな人と話すからこそ、人と関わる仕事をしたいならDISは向いていると思います。お客さまの声や要望から「ほしいものを理解する力」「難しいことを分かりやすく説明する力」などがあると働きやすいと感じます。
高橋:一方、時にはお客さまから厳しい声をいただくこともあるので、その内容から自分の非をちゃんと認めて反省できることも重要です。
DISでは「自分ができないことを知っている人」が一番伸びると思います。そのため「できないことを認めるところから始めよう」と若手のうちに伝えます。プライドが折れてからの学びは早いと思います。それは真面目に、言われたことを受け入れ始めるからです。ですので、へこたれない素直さや明るさもほしいですね。
──働く上では厳しい環境ということでしょうか。
阪野:入社したら大変な部分もありますが、労働環境は良かったです。入社前は「残業は当たり前なんだろうな」という考えを持っていたのですが、実際に働くと、新人は残業がほぼ禁止で、仕事が終わったらすぐに帰ります。印象がガラリと変わりました(笑)。
今でも残業は19時までと決められており、限られた時間の中で成果を出すことが求められます。そのため、ワークライフバランスを意識した働き方をしたい人には適していると思います。
高橋:生産性を高めるための取り組みは、社内で徹底されています。実際に残業時間の減少と反比例して売上が倍増しています。iDATEN(韋駄天)やEDI発注などの電子商取引の促進、RPA(Robotic Process Automation)の活用など、社内の生産性を高めるための仕組みが整った結果だと思います。
そして、こうした環境の中で若手を育てるのも私の仕事です。部下や後輩が1人の社会人として「どこへ行ってもやれるぐらい成長した」と思えるときが一番うれしいですね。
──最後に就活生に応援メッセージをお願いします。
阪野:コロナの影響もあり就職活動は大変だと思いますが、情報収集を心がけることをおすすめします。自身に合うかどうかを見極める中で、ファーストキャリアからマッチする会社を見つけられるはずです。
高橋:DISは社員の95%以上を新卒入社が占めます。DIS文化しか知らないような人たちがいるので、ある意味独特といえば独特です。ですが、新人を育てていく企業文化は確実に他社よりも強いと思っています。人材を育てる下地はありますので、DISへ飛び込んでくれば安心して成長できると思ってください。
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ダイワボウ情報システム【ライター:スギモトアイ/撮影:保田敬介】