日系から外資、小規模から大手までコンサルティング・ファームには、それぞれ特徴がありますが、その中でもとりわけ「個人主義」というイメージを持たれているファームがあります。それが「A.T. カーニー」です。ワンキャリアでも過去、それを示すような調査結果を出しています。
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コンサルというと「チームプレイ」で仕事を進める印象を持つ人が多いと思いますが、個人主義的なコンサルティングワークとはどういうものか。そもそも、A.T. カーニーが個人主義というのは、本当なのか。
今回は同社に新卒で入り、2〜3年目を迎えた若手社員である横山さん、勝本さん、西岡さんの3人を招き、これらの疑問に答えていただくべく、率直なコメントを伺いました。
「丸一日悩んだことが10分で無になる」 知的好奇心をかき立てられるインターンが入社の決め手に
──今回はよろしくお願いいたします。最初に皆さんがなぜA.T. カーニーへ入社されたかを、自己紹介も兼ねて簡単に教えてください。
勝本:入社2年目の勝本です。これまで消費財、ハイテク業界を中心に5つほどのプロジェクトを担当しました。今日も現在担当しているクライアント先の係長と一緒に店舗を回り、実行中の戦略について議論をして、先ほど戻ってきたところです。私は戦略立案や実行を中心に担当しています。クライアントと過ごす時間を長くし、プロジェクトにのめり込むことで、利用者の視点に加えて、店舗側の視点でも戦略を考えられるようになりました。
──勝本さんが、A.T. カーニーを選んだのはどのような理由からでしょう?
勝本:私は大学から大学院にかけて気象学の研究をしており、もともとは博士を目指していましたが、「知るカフェ(大学生向けの就活支援無料カフェ)」で働いた経験から、就活をしようと決めました。当時は「ミーハー」だったこともありますが、BtoCを中心に複数業界のビジネスを科学したいという探究心もあり、コンサル業界を選びました。
就活期には複数の企業を受けましたが、A.T. カーニーのインターンに参加して驚いたのが、参加者1人に対する時間のかけ方です。マネージャークラスの現役コンサルタントに1on1で毎日1〜2時間フィードバックをもらっていました。その時の経験が入社の決め手ですね。
──西岡さんはどうですか?
西岡:入社3年目の西岡です。勝本さんと被るところがあるのですが、私もきっかけはインターンです。私は留学していたこともあり、夏に日本に帰ってきて、業界を絞らず、さまざまな企業のインターンを経験しました。A.T. カーニーのインターンでとても印象に残ったのは、マーケティング領域に強いパートナーと議論できたことです。語り口はとても柔らかいのに、丸一日考えたことを毎日たった10分で無にしてしまう人でした。良い意味で思考的に楽しく、知的好奇心をかき立てられました。圧倒的な力の差を見せつけられて、燃えたことを覚えています。他にも内定をいただいた企業はありましたが、この経験もあり、A.T. カーニーへ入社を決めました。
──これまでにどのようなプロジェクトや業界を担当されましたか?
西岡:今振り返っただけでも、この2年でざっと10ぐらいのプロジェクトを担当してきました。いろいろな産業に触れたいという思いがあるため、消費財、通信・ハイテク、自動車、化学など業界の重複がほぼない形でプロジェクトを経験できています。最初にアサインされた消費財業界でのプロジェクトでは、数字の扱いが苦手なのに、定量分析の比重が高くて非常に苦労しました。このプロジェクトの最後には1時間強のクライアントプレゼンも任せてもらい、シニアメンバーが「授業参観」のように見守ってくれていたのも、今では良い思い出です(笑)。
西岡 咲(にしおか さき):京都大学 法学部卒。学生時代は英語ディベートサークルに所属。第1回TEDxKyotoUniversityの運営メンバー。大学3年時と入社前年に短期留学を経験。入社後はシンガポール企業のDX、フランス企業のターンアラウンド、大手国内消費財メーカーのブランド戦略などのプロジェクトに携わる
──最後に横山さん、お願いします。
横山:同じく入社3年目の横山です。ここ半年ぐらいは、地方金融機関の業務改革に取り組んでいます。事業戦略の立案からFinTech(フィンテック)の導入支援によるオペレーション改革に至るまで、経営企画的な立ち位置でクライアント企業を支援しています。私は理系で大学院まで進んでいたので、勝本さんに近いですね。大学では生命科学を専攻していたため、もともとは日系大手の研究職を志望していたのですが、何か保険が欲しいと思い……(笑)。インターンに参加したのは冬でした。そこで戦略コンサルという職業が社会に与えるインパクトの大きさや、A.T. カーニーで働くコンサルタントの魅力に触れ、気付けば研究職とは一見遠いこの会社に入ろうと決意していました。若いうちから、仕事の裁量が大きいというポイントも魅力でしたね。
的確な判断のために、「合理性」と「人間味」を兼ね備えたコンサルたち
──皆さん、ご説明ありがとうございます。若手コンサルタントとして日々プロジェクトをこなす中で、コンサルに対するイメージが入社前と変わった点はありましたか?
横山:クライアントにより近いところで、日々仕事をしていく中で印象が変わりました。入社前までは、「コンサルタント=合理的で論理を一つ一つ積み上げていく人」というイメージでした。パートナーやプリンシパルなどは「ロジカルモンスター」だと思っていたぐらいです。しかし実際のところ、A.T. カーニーのコンサルタントは、相手の立ち位置や発言の文脈など、より人間臭いところも考慮した上で判断や行動をしていることに気付きました。
西岡:私は、コンサルはもっと怖いところ、それこそ「Up or Out」「ついていけなければ、去る」という世界だと思っていました。しかし、実際は温かい人が多かった。「こういうところは、コンサルタントとしてちゃんとやった方が良いよね」って、きちんと教えてくれる。自分では気付かなかった、でも納得感のある自らの強みや弱みを的確に指摘してくれるので、日々成長を実感できています。
勝本:西岡さんの言う通りですね。ロジや議事録、Excelワークといった、ささいな仕事でも、しっかりと赤入れやフィードバックが返ってきます。また、次のレベルに進むための改善ポイントも含めてアドバイスをくれる点もうれしいですね。弊社では、1年目から担当モジュールのデリバリーも任せられるのですが、プレゼンでの良いところをいくつか教えてくれた上で、具体的な改善のポイントを約10個並べて一つ一つ説明してもらったことがあります。どれもファクトに基づいて話してくれるため、納得感を持って改善に取り組めました。
勝本 康介(かつもと こうすけ):東京大学大学院 理学系研究科卒。学生時代は「雲力学」の研究と「知るカフェ」の事業統括などを行う。A.T. カーニーでは、不動産業界大手のDX、ハイテク業界大手のAI事業略、小売業界大手のターンアラウンドなどのプロジェクトを経験
若手の裁量が大きいからこその見え方──「個人主義」の本当の意味
──就活生の中には「A.T. カーニーは個人主義」、つまりチームワークよりも個人プレーを重視するワークスタイルだという印象を抱く人は少なくありません。実際、この印象に対して、皆さんはどのように思いますか?
勝本:この言葉を聞いてまず「もしかしたら、イメージだけが先行しているのでは?」という印象を抱きました。確かにインターン期間中は、グループではなく個別で課題に取り組みます(※2020年卒向けオータムジョブ実績)。もしかしたら、そのスタイルがA.T. カーニーのイメージを決めてしまっているのではないかと。
西岡:私も勝本さんの意見に同意です。ただ、チームワークのあり方にも特徴がある気がします。例えば他社の場合、プロジェクトのアプローチの「型」が、比較的かっちりと確立されていると聞いたことがあります。一方、A.T. カーニーでは「こなせば終わり」の部分が少なく、「常に一から考えること」が求められる。そして、自分自身の能力を最大限に発揮した上で構築されるチームワークがあります。両者ともチームワークを発揮することに変わりないのですが、フォーカスされる点が違うため、私たちが抱くのとは違う印象を皆さんに与えているのかもしれません。
横山:西岡さんの話も踏まえた上でお話しすると、私はチーム内での役割や分業の切り方が違うのではないかと思っています。例えば、1つのプロジェクトの中で、顧客データの分析、分析結果からの示唆出し・資料作成、プレゼンというタスクが発生するとしましょう。会社にもよるとは思いますが、多くの若手コンサルタントは、そのタスクの1つを任され、ひたすらその作業をしていると聞いたことがあります。
A.T. カーニーの場合、「タスク」というよりも、プロジェクトの「パート/サブテーマ」で分業するケースが一般的です。そして、担当パートについては若手であっても、分析から役員クラスへのプレゼンまでを全て担当することも少なくありません。もしかしたら、このワークスタイルが、「A.T. カーニー=個人主義」という印象を与えているのではないでしょうか。
──仮に、横山さんが言うように分業のスタイルが2つあるとして、経験の少ない若手としては、タスク特化型の分業の方が仕事をしやすい印象を抱きましたが、どうでしょうか。
横山:正直、良い意味でも悪い意味でも、相手の反応をダイレクトに受けられるのはA.T. カーニーの分業スタイルだと思います。プレゼンが刺さらなかったり、厳しいフィードバックで心が折れそうになったりという、きつい経験をする可能性が高い一方で、若手のうちからさまざまな場面に触れられることで、より多くの経験が積めると思います。企業全体としては、クオリティを保つのが難しくなる面もありますが、それこそ個人の力が高いから成立しているのだと思います。
横山 治樹(よこやま はるき):京都大学大学院 農学研究科卒。学生時代は「神経ネットワーク機能」研究の立ち上げと推進、また、学生が運営する就職支援団体「Nexus」の運営に携わる。入社3年目で、これまで大手飲料メーカーにおける価格戦略、電気機器メーカーのターンアラウンド、地方金融機関における業務改革支援・中期経営計画の策定などにプロジェクトに関わってきた
西岡:おおむね、横山さんの意見に同意です。成果物をクライアントに届ける全過程を見越しておくことで、さまざまな経験ができます。それこそコンサルを視野に入れている学生さんが、「◯年以上経験を積まないと、クライアントの前には出られないのでは」という懸念を持つのは、タスク特化型の分業をイメージされるからかもしれません。
勝本:コンサル志望の人にぜひ知っておいてほしいのが、ファームによっては「与えられた1種のタスクだけで、若手の仕事が終わるという現実もある」ということです。その一方で、A.T. カーニーは若手が最終成果、その先にあるクライアントにとってのインパクトまでを意識した仕事ができます。長所も短所もあるとは思いますが、働き方の違いが、個人の経験や成長にも大きな影響を及ぼすことを把握してもらえたらと思います。
「とにかく若手は仲が良い」 その理由とは?
──ここまでお話を伺っていると、3人とも本当に仲が良いんだなと感じます。
勝本:そうですか(笑)。特別仲の良い3人を集めたように見えるかもしれませんが、そういうわけではありません。規模がそれほど大きくないファームのため、社内の人たちの顔が見えます。
横山:プロジェクトベースで仕事が進むため、定期的に社内交流のためのイベントも開催されています。金曜の夜にはオフィスでビールが振る舞われたり、いわゆる社員旅行もあったりで、普段顔を合わせる機会が少ないメンバーとも気軽に話せる環境が整っています。もちろん若手に限らず、シニアメンバーとの親交もあります。みんな人が好きなんですよ。だから、勝本さんの世代が入ってきたときも仲良くしたいと思いました。
西岡:社員同士はとにかく仲が良いですよね。実はちょうどこの後、新卒・中途入社メンバーも交えた同期の飲み会があるんです。他社に転職したメンバーも参加するなど、働く環境が変わっても付き合いは続いています。
──上辺だけの付き合いではなく、なぜ社員同士がそこまで仲良くなるのでしょう。A.T. カーニーに教育熱心な風土があるのか、後輩への気持ちなのか、その辺りをぜひ皆さんの口から伺いたいです。
西岡:メインは個々人の性格や努力などのソフト面だと思いますが、ハード面でも、人材育成が自身の評価につながる仕組みがあります。A.T. カーニーでは、3年目から中堅として扱われます。私もこの間メンターから「西岡さんも育成に貢献しよう」と言われました。自分の役割の1つとして、育成が組み込まれているのです。
勝本:入社してから、先輩たちに言われて印象的だったのが、「若手の悩みは、過去の自分たちが通ってきた道。悩みきることも重要だが、困ったときはすぐに相談して」でした。伝え方は違っても、皆が共通の認識を持って仕事に臨んでいる印象です。だからどの先輩と仕事をしても、すぐに相談でき、気軽にケアしてもらえる環境だと思います。
横山:制度面で補足すると、半期に一度メンター・メンティーによるランチやディナーを開催しています。こうしたオフィシャルな制度をきっかけに、個人的に交流をするようになるケースも多いです。それ以外にも、プロジェクトの始まりと終わりのタイミングでプロジェクトチームでのディナーがあります。仕事を離れた場面での交流があることで、チームメンバーに対する印象もガラリと変わります。僕自身もこれらの制度を通して、多くの人と親しく話ができるようになりました。
さまざまな企業で勤めている人に触れ、話を聞くことが「成功への道」
──最後に、これからサマーインターンを控えている学生たちに向けてメッセージをお願いします。
西岡:自分の就活を振り返ると「インターンを経験し、環境を見て、ちゃんと納得できた」ことが、企業選択において重要だったと考えています。私は楽しく就活を終えられたと思っていますが、それは、常に納得感がある状態で行動できたからです。納得するまで十分時間をかけてほしいし、その反面必要がないと感じたら早く終わらせても良いと思います。もし、その中で少しでもA.T. カーニーに興味を持ってくれるのであれば、インターンに参加してくれるとうれしいです。
横山:とにかく、業界や業種など狙い撃ちし過ぎずに、受けるまでは行かなくとも、まずはさまざまな企業で勤めている人の話を聞いてみることをおすすめします。自身が思いもよらないことに、マッチングする可能性が眠っていることもあるからです。それでは勝本さん、後輩たちに向けてカッコよくまとめてください!
勝本:むちゃ振りですね。私自身は知るカフェで働いていた経験もあり、その企業で働く人と対面で話すことが大切だと思っています。Webページからも情報は集められますが、多くの場合、表面的な情報に留まりますし、実態と異なる印象を抱くケースもあります。だからこそ、今その企業が置かれている状況や、そこで働く厳しさ、楽しさ、やりがいといった生の情報を手に入れる価値は高いのではないでしょうか。
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【ライター:スギモトアイ/撮影:塩川雄也】