ワンキャリアの就職人気ランキング上位の常連業界が、総合コンサルティングファームです。転職に有利なスキルを身に付けられる上、近年は採用数も増加傾向にあり、より現実的な選択肢となっています。
一方で、目的もなくコンサルに就職することを「モラトリアムの延長」と捉える意見もあり、コンサルに就職することの是非はよく議論の的となります。
こうした流れの中、コンサル会社でありながら「瞬間的な待遇や条件、きらびやかさ、『ここの看板を背負えばなんとかなる』という考え、または『コンサルはセカンドキャリアを前提とした職業』と『踏み台』のように捉えるキャリア観だけで選ぶなら、コンサルはやめた方がいい」と警鐘を鳴らすのが、山田コンサルティンググループ(YCG)です。
新型コロナウイルスの感染拡大による経済への影響が広がる中、人事部シニアマネージャーの増田さんと新卒2年目の津山さんに、これからの時代にコンサルに就職する意味についてお聞きしました。
「当社は『本当の意味での総合コンサルティングファーム』である点が、他のファームとは違います」
増田さんから出たこの言葉の真意にも迫ります。
コロナで本質を見失うな。コンサルも就活も長期の視点が不可欠だ
──新型コロナウイルスの影響で、厳しい経営環境に置かれているクライアントも増えていると思います。このような時代、コンサルタントは何ができるのでしょうか?
増田:こういうときこそ、コンサルの本領を発揮するときです。そして、コロナを言い訳にしていると、本質を見失います。
増田 祥人(ますだ よしひと):管理本部 総務・人事部シニアマネージャー。明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科修了(経営管理修士、MBA)。新卒で楽天に入社し、山田コンサルティンググループに転職。事業再生を中心に、流通・小売、製造業などのクライアントに抱える。その後、総務・人事部に異動し、現職。採用業務を中心に当社の人事業務全般を担当。
私たちは緊急事態宣言が発令された直後の4月15日、「新型コロナウィルス感染症がもたらす経営危機に対し経営者が今やるべきこと」と題した動画をYouTubeで公開しました。経営者にとって現在の急場をしのぐことは非常に重要ですので、補助金制度や資金繰りのポイントを分かりやすく解説しています。
ですが、コンサルタントはそれだけではいけません。10年後、20年後を見据えて長期的な戦略を常に考えるべきです。当社はすでに1年前から、既存案件において中長期的な経営を前提とした全社ベースでの案件検討を実施してきました。具体的には、事業の再生や承継、M&Aなどの案件です。長期的に経営者に寄り添うなら、誰かに会社を継がせる、苦しい経営状況を解決する、という重要な局面こそともに乗り越えるべきだからです。
そのため、コロナの影響で倒産している企業がある一方で、「コロナ前から会社の体力が落ちていなかったか」という視点をコンサルタントは忘れてはいけません。
──重要な経営課題がコロナショックとは別の要因で起きている可能性もあるわけですね。
増田:この反省をどこから学ばないといけないかというと、東日本大震災です。被災した東北の企業に対し、国はかなり手厚い補助金制度を用意しました。このとき「そもそも、この会社がビジネスをできるだけの市場が東北にあるのか」という判断を見誤った状況が少なからずあったと認識しております。その結果、ずるずると存続し、今では伸びしろがないからM&Aで買い手が付かない状況になっている会社もあります。状況を冷静に見極め、二の足を踏んではいけなかったのです。
──津山さんは新卒で入社して1年がたちました。これだけ社会が変化するとは思ってもいなかったでしょうが、入社前後でギャップを感じることはありましたか。
津山:「コンサルは華やかではなく、泥臭く、厳しい仕事だ」。学生時代に参加した当社のインターンでこう言われました。今でも言葉の通りだと思っていますので、この点でギャップはありません。
津山 太之介(つやま たかのすけ):経営コンサルティング事業本部 総合コンサルティング事業部所属。早稲田大学文学部文学科卒業。2019年4月、山田コンサルティンググループ株式会社に新卒入社。人事制度や組織再編に関わるコンサルティング役務を中心に従事している。
私は就職活動を大学3年生の夏くらいから始め、コンサルや投資銀行のインターンに参加しました。他のファームの説明会やインターンでは「あんなことができて、こんなこともできるすごい仕事」という華やかな印象でした。そうではない部分を言ってもらえたことは、自分のキャリアを考える大きなヒントになりました。
──確かに、コンサルは学生人気も高いので、華やかなイメージがあります。
増田:学生の方と接していても、コンサルの人気は感じます。ただ、瞬間的な待遇や条件、きらびやかさ、「ここの看板を背負えば何とかなる」という考え、または「コンサルはセカンドキャリアを前提とした職業」と「踏み台」のように捉えるキャリア観だけで選ぶなら、コンサルはやめた方がいいと思います。
何が起こるか分からない時代だからこそ、10年後、20年後の自分のキャリアや時代の変化を考え、物事を俯瞰(ふかん)しながら就職活動をした方がいいです。極めて難しいことかもしれないですが、まずはこの10年、どんな思いを持ち、何に共感したのかを振り返ることからでも始めてみるべきでしょう。
津山:実は私も、就活中は人気企業ランキングを非常に気にしていました(笑)。だからこの会社のインターンに参加していなければ、華やかさだけに憧れて失敗していたかもしれません。踊らされやすいのは危険ですね。
──コンサルも就活も、長期的かつ本質的な思考が重要になってきている、と。
「総合」コンサルであるかは、クライアントが決めること
──山田コンサルティンググループは、先ほどのインターンでの説明にしても、他ファームとは違う特徴があるように感じます。実際のビジネスモデルでも違いはあるのでしょうか。
増田:当社は財務・会計を基盤としつつも、「本当の意味での総合コンサルティングファーム」である点が、他のファームとは違います。
──「本当の意味で」とはどういうことでしょうか。
増田:例えば学生の方が就活で意識する4大ファーム、IT系のコンサルの多くのお客さまは大企業です。そこから発注される案件は、人事、海外進出、システム導入など特定のコンサル役務に限定したものが中心です。大企業の場合は経営陣に優秀なブレーンがたくさんいますし、経営の総合的な課題をコンサルタントに相談するかというと、NOだと私は思っています。
──つまり、大企業の案件は経営の1パーツでしかないことが多い、と。
増田:一方で、私たちのお客さまである中堅・中小企業の場合はヒト・モノ・カネ・情報が十分ではないケースが多くございます。だからこそ相談される課題というのは、圧倒的に経営ど真ん中のものです。私たちは年間、約2,300社とのお付き合いがありますが、そのうち7〜8割は継続的にお悩みを相談していただいているお客さまです。
──なるほど。クライアントのありとあらゆる課題に対応する意味で「総合」であるのですね。
増田:はい。いくらコンサル側が「私たちは総合系のファームです」と言っても、本当に総合的にお願いするかはお客さま側に決定権があります。先ほどのコロナ対応にしても、どの案件も経営全体を考えながら関わることができるのは、当社のコンサルタントならではです。
津山:私も、作業だけの仕事をしたり、何かのパーツになったりすることは嫌だと思い、この会社を選択しました。大学の同期の中には他のファームで働いている人もいますが、ここに入社したことは後悔していません。それは、パーツの仕事に忙殺され、本質を見失うことがないからだと思います。
M&Aの醍醐味(だいごみ)はマネーゲームでなく、経営者の思いをくみ取ること
──なるほど。では山田コンサルティンググループに入ると、具体的にどのような業務をするのでしょうか。先ほど、事業再生や事業承継、M&Aなどに力を入れているという話でしたが……。
増田:まずM&Aから説明しましょう。売り手側は「ビジネスは元気だけれど、経営者が高齢化し、後継者がいない」という課題を抱える中小企業が多いです。中小企業の場合は経営者が株を保有するオーナーでもある場合がほとんどで、大企業のように株主と経営者が分離しているわけではありません。だから事業承継とセットで考えなくてはいけません。
──メディアで話題になるようなマネーゲームではないということですね。
増田:はい。オーナー社長が自分の子どものように育ててきたビジネスを、どう存続させるかを考える仕事です。
M&Aの案件ではないですが、私はかつて、とある会社の事業譲渡を担当したことがあります。その会社は当時、業績悪化で資産よりも借金が多く、倒産させるのも一苦労という状態でした。事業再生のために、その会社の1業態を売却することになりました。
結果は失敗でした。買い手はいたのですが、売らずに終わりました。
──どうして失敗したのでしょうか。
増田:メンバーの巻き込み方を間違えたのです。M&Aに詳しいメンバーを、その案件の話し合いのときにだけ同席させたのですが、「いくらで、誰に売るか」の論点に終始してしまいました。その会社は「従業員や自分たちの思いを大切にしてくれる人に継いでほしい」と思っていたことを、私は理解していたのですが、M&Aのメンバーには伝えきれていませんでした。
──M&Aは知識だけではなく、経営者の思いをくみ取ることが大事なのですね。
増田:そのためには、経営者に何でも相談してもらえる人間になることが大事です。先ほどの事例は失敗に終わりましたが、社長とは定期的に飲みに行く仲になりました。その都度プライベートなお悩みから事業の方向性に至るまでさまざまなご相談をいただけました。私がすべてお応えできるものばかりではないのですが……(笑)。
それでも頼ってくれることはうれしかったです。
経営者のために計画を立て、銀行に頭を下げる。「戦略から実行まで」とは、そういうことだ
──これまでのお話を聞くと、経営者と信頼関係を築いて一緒に汗をかけるかが、コンサルタントとして大切なことなのでしょうか。
増田:おっしゃる通りです。もちろん圧倒的な知識も必要ですが、知識や資格を取ることだけなら、誰にでもできます。それだけではなく、経営者の声に耳を傾け、時には耳の痛いことも言い、思いに寄り添い、背中を押す必要があります。
近年、M&Aでは買い手側が大企業であることも多く、大企業とお付き合いする機会も増えました。また、企業の海外進出案件も担当するなど、当社の成長余地は大きいと感じています。ですが、私たちが忘れてはならないのは、本当に海外進出すべきかという議論です。「日本の質の高い商品・サービスなら、海外でも売れるだろう」という甘い考えは通用しません。シビアな判断を下すこともあります。
──事業再生も、まさに耳に痛いことも言わないといけない案件ですね。
増田:事業再生は4つのフェーズに分けることができます。(1)現状分析、(2)課題の抽出、(3)事業再生計画の策定、(4)実行支援 です。
私たちのビジネスモデルでは、事業再生を相談されるお客さまは銀行から紹介されることがほとんどです。紹介されたら、まずは現状を分析するのですが、お客さまの中には赤字の原因を理解されていない方もいます。理解されていても、現実から目を背けていたり、客観的に数字が見られなくなっていたりする場合が多いです。
ですから、まずはすべてを明るみに出してもらいます。その上で本質的な課題を抽出し、事業再生計画に落とし込みます。
──分析をした上で、コンサルの商品ともいえるスライド資料を作成するわけですね。
増田:スライドを作っただけでは意味がありません。その後私たちが何をするかというと、お客さまと一緒に銀行を回って、融資や継続した金融支援をいただくために頭を下げます。
──えっ、そこまでするのですか?
増田:銀行からすると、これまでの経営計画とは全く違うものがいきなり提出されるわけです。「これまでのようなお付き合いはできないですよ」と銀行から言われるところを、数年かけて事業を再生することを、われわれが第三者の立場から徹底的に説明するわけです。そのフェーズを通じて、生まれるのが経営者との一体感です。その後、ようやく実行支援に移ります。
──総合コンサルの特徴は「戦略立案から実行支援まで」と聞きますが、最後までとことん付き合うからこその特徴なのですね。
クライアントのメールの宛名が上司よりも先になったときが、成長のバロメーター
──津山さんはこれまでのお話を聞いて、これからどんなコンサルタントを目指したいですか?
津山:私は人事制度や組織再編の支援などを行っているのですが、お客さまに何かあったとき真っ先に上司に相談の電話がかかってきます。「こんなこと、相談してもいいのかな」とお客さま自身も口にするようなことでも相談できてしまう関係です。私は担当してまだ日が短いですが、そうしたコンサルタントになりたいです。
増田:津山さんはそう言いますが、若手が上司を抜く瞬間はやってきますよ。それはお客さまが気付かせてくれます。
例えば、小さいことですがメールの宛名です。最初は上司の名前が先に書かれていたのに、いつの間にか自分が先に書かれるようになる。電話も自分にかかってくるようになります。お客さまからすれば、相談したい人が上司か部下かは関係ないですから。そして、自分にできそうにないこともお客さまが相談してくれ、数日後にはその宿題を打ち返せるようになっていきます。そのサイクルに入れたらすごいと思います。
──津山さんのように入社から1年くらいの時期でも、自分の成長を感じることはありますか?
津山:まず何が成長なのかというと、自分の頭で考えて、自分の言葉で伝えられるようになることだと思います。必要なものを勉強して分かるようになることは成長ではなく、最低限必要なステップです。
そういう意味では、入社して2カ月後にやりがいを感じた出来事があります。社内ミーティングのための資料準備で、上司から指示があったことだけでなく、自分で考えたことも織り込んで作ったところ、その内容が評価されました。1〜2年目は、そういう成長を感じることが日々あります。そのチャンスをつかむか、つかまないかは自分次第です。
──成長できるかどうかは、その人の意識次第ですよね。
津山:一度成長してOKなら簡単です。でも実際は自分が成長を続けることが必要で、自らが常に課題を設定して、自分で考えるというマインドセットが重要だと思います。
──成長する中で、コンサルタントに必要な能力も分かってきましたか。
津山:2つあります。1つはロジカル・シンキングです。論理的に物事を考え、語る技術は、もちろん当社でも重要です。もう1つは、その反対でエモーション、つまり感情です。数字はこうで、事実はこうだ、という話だけでは経営は判断できません。その先まで頭を巡らせてこそコンサルタントです。論理と感情の両輪をうまく回すことが、特に当社では重要なのかなと思います。
増田:エモーションと言えるのは、現場と対峙(たいじ)しているからこそですね。上司との会話は論理的ではないと納得してもらえませんが、お客さまは「論理的に整合性が取れているか」を気にしてこちらの話を聞いているわけではありませんから。
コンサルは99がつらくて、1が楽しい。その1の価値が分かる仲間と働きたい
──これからの時代に生き残るコンサルタントとは、どんな人材だと思いますか。近年は転職前提でコンサル業界に入る学生もいますが……。
増田:コンサルは1年でできるようになる職業ではないです。10年、20年と続けていって一人前になれるものだと思います。
知識だけで成り立つ職業なのであれば、人がやらなくていいはずです。情報を提供するだけのコンサルは、今後いなくなるでしょうね。「1〜2年コンサルで頑張って、その後は転職をして……」と考えるのもありだけれど、もう少し、長期的に考えて選んだ方がいいのかなと思います。
津山:いわゆる上位校の学生は、自信とチャレンジ精神が旺盛な人が多いのかもしれません。仕事内容がバラエティーに富み、課題も毎回違うコンサルを志望する人が多いのは当然なのかなとも思います。ただ、就活のときにランキングに左右される必要はありません。
──なるほど。では、この時代にコンサルで働く醍醐味は何でしょうか。
増田:私がよく学生に伝えているのは「99がつらくて、1が楽しい」ということです。では、その1は何なのかというと、青臭いですがお客さまから「ありがとう」と言われることです。お礼を言われたとき、自分が認められた瞬間です。次に同じことをやってもお礼は言われませんから、自分が成長し続けることが、お客さまの課題解決に直結する仕事です。
──山田コンサルティンググループに向いているのは、どんな人だと思いますか?
増田:自分でやってやるという、圧倒的な当事者意識を持った人だと思います。謙虚さ、素直さも重要だとは思いますが、まず大事なのは当事者意識。逆に向いていないと思うのは、コンサルティング会社に入社さえすれば成長させてくれる、と受け身で入ってくるような人です。
津山:私は踏ん張りが利く人間だと思います。お客さまの大事な経営について判断するのに、無責任なことはできません。だからこそ踏ん張りは重要。向いていないと思うのは、謙虚さがない人ですね。年次が上がっていくと積み上げた経験から自信が出てくると思うのですが、特に若手のうちは謙虚さがないと嫌われそうですね。
──最後に就活生の皆さんにメッセージをお願いします。
津山:どんな軸でもいいので、自分が仕事を選ぶときに大事だと思うものを持って、その軸と合う仕事かどうかを就職活動で見極めてほしいです。合わないところに行く必要はないと思います。そのためにも、真剣に取り組むことが大切です。
増田:私はこれまで「企業の採用ホームページの内容を疑ってほしい」と言い続けてきました。売り手市場だと、企業は人材を獲得するためにイメージを気にした結果、残業時間や土日の過ごし方などの本当の情報が学生に入りにくくなるからです。
コロナによって、ほとんどの企業は今までと採用のやり方を変えてくると思います。でも学生は時代を選べるわけではないですし、売り手市場の就活生も好んでその時代に生まれたわけではありません。とにかく社会人が何と言おうが、自分自身の目で就職先を選んでほしいです。
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【ライター:yalesna/取材、編集:吉川翔大/撮影:百瀬浩三郎】