「若手の意見も反映される仕事がしたい」「グローバルに働きたい」
このような思いを持ち、就職活動をしている人もいるのではないでしょうか。
三井化学で働く廣瀬公寿さんもそうした学生の1人でした。文系出身で、学生時代に世界一周の旅を経験。海外勤務に憧れ、就職活動時には総合商社からも内定を獲得しました。悩んだ末、三井化学を選んだ理由は「わがままが通りそうと思ったから」でした。
「わがままが通りそう」な会社とは一体どういうことなのでしょうか。そして入社後にその「わがまま」は通ったのでしょうか。さまざまな製品開発や海外勤務をした経験を基に、廣瀬さんに三井化学で働く理由を語っていただきました。
若手から「わがまま」に働きたい。だから三井化学を選んだ
──本日はよろしくお願いします。まずは廣瀬さんが新卒で三井化学に入った理由から教えてもらえますか。
廣瀬:実は就活生のときは総合商社からも内定をもらっていたんですよ。当時の自分からすると、商社ってキラキラして見えて。だから、どちらに入るかはかなり迷いました。きっと総合商社に入っても社会的意義ややりがいのある仕事はできたのだろうと思いますが、三井化学の方が「わがままが通りそう」だと思ったんです。
廣瀬 公寿(ひろせ きみひさ):2012年、三井化学株式会社へ新卒入社。
本社機能性ポリマー事業部 TPX・ミリオングループにて、国内外の営業や新規用途開発などに従事。2016年4月から上海に渡り、中国国内の営業統括として活躍。2017年6月に帰国し、本社機能性コンパウンド事業部アドマーグループへ移動。国内・中国の営業を行いながら、新入社員の育成なども務める。
──「わがまま」ですか? どういうことでしょう。
廣瀬:最初に感じたのは、面接のときです。三井化学の面接は、志望理由を聞かずに1時間くらい雑談する方式です。その会話中に「廣瀬さん、生意気そうだもんね」と言われて、僕も「そうですね。自分の意見は最後まで曲げませんが、折れなくてはいけないときなら折れます」と返す場面がありました。
そんな回答をしたら、普通は扱いにくい学生と判断されるはずです。それなのに三井化学は僕を採用しました。正直、驚きました。同時に「すごく良い会社か、変な会社か、どちらかしかない!(笑)」と思い、興味が湧いたんです。
──面接っぽくないやりとりですね。廣瀬さんが考える「わがまま」ってどんな定義ですか。
廣瀬:「自分の芯や考え方を持ち、仮説を提案できること」です。もちろん、単なるわがままは当社でも許されませんよ。真っ当な主張や行動という前提がある上でのわがままなら許されるのが、三井化学です。
入社先を迷っていたときも「(総合商社に)行きたければ、行けばいい。君がやりたいこともあるだろうし、うちの会社はあくまでも選択肢の一つだから」と言ってくれました。当時、三井化学は業績が赤字で、それについて聞いたときも「赤字は一過性のものだと思う。でも、入社から5年の間に成長機会を与えて、社外でも通用する人材に育てる。少なくても、うちは5年は倒産しないから(笑)」と話してくれました。真っ当な主張に対して、真っ当に答えてくれました。
──実際は倒産もしなかったし、業績は黒字転換しましたけど、会社側の心意気を感じる言葉ですね。
廣瀬:そうですね。付け加えるなら、社風だけでなく、若いうちからビジネスの意思決定に関われそうな点も魅力に感じ、入社を決めました。三井化学は、高い技術力を強みに自社で製品を作るため、自分たちの意思が事業に反映されるビジネスモデルです。入社年次にかかわらず責任ある仕事を任せる風土もあったので、若手のうちから事業の戦略立案や意思決定に当事者として携われそうでした。
少数精鋭だから、新製品開発に2年目の意見が反映された
──入社前から「わがまま」を通せそうなイメージが持てたのですね。入社後、その「わがまま」は通せたのですか。
廣瀬:自分の意見がダイレクトに事業に反映されるのは、面白い点ですね。三井化学は担当製品や地域ごとに部署が分かれており、意思決定に関わるメンバーは大きな部署でも7、8人です。若手社員もその一員として働き、研究や製造、物流、法務に総務、海外の関連会社などを巻き込みながら、事業に自分の意思を反映できます。
──もっと社員数が多い企業だと分業制になり、自分の意見を通すにはそれなりのポジションに就かないといけないこともありそうですしね。
廣瀬:私は世界一周をしていた学生時代にブランド名が入った日本の製品を海外で見たこともあり、知名度があり規模が大きいB to C企業に対して「かっこいいな!」と思ってしまいます(笑)。従業員数や規模がトップクラスのメーカーだからこそのやりがいもあると思いますし。でも、若いうちから意見を反映できるのは、少数精鋭の三井化学ならではの面白さですね。
──若手のころ、実際に事業に意見を反映したケースはどのようなものがありましたか。
廣瀬:入社2年目のころに開発営業をやることになりました。当社の製品は特徴も用途も顧客もまちまちで、画一的なマニュアルのようなものはありません。「どんな情報を集め、どう研究職の人に動いてもらえれば、新しい提案を顧客にできるだろうか」ということを一から自分で考えなければなりませんでした。
当時は愚直な方法しか思い付かず、売れている製品を購入していただいた20社くらいにアポイントメントを取り「なんで買ってくれたんですか」と聞いて回りました。入社1、2年目の未熟者だから「仕方ないな」とお客さまも応じてくれたのだと思いますが、そこから当社の強みが分かり、新しい用途を考えられるようになりました。そうやって考えたアイデアを、他の営業メンバーと一緒に顧客に提案しました。アイデアを10個提案したら、興味を持っていただけるのは1個くらいなのですが、実際にそこから製品になったこともありました。
──まさに0から1を作るのですね。実際にどんなアイデアが製品になるのですか。
米がくっつかないしゃもじからスマホのカメラレンズ、そして海洋ゴミ問題までを支えるプロダクト作り
廣瀬:クッキーを焼いたことってありますか? お菓子作りが好きな人なら分かると思うのですが、オーブンで焼くときに焦げ付かないようにシートを下に敷きますよね。あれに使われているのがTPX®という三井化学独自の製品で、くっつかないという特性を持っているんです。
「これ何かもっと使えないかな」と当社の若手が考えていて。ちょうど当時、ザラザラした表面にして、米がくっつかないしゃもじが流行(はや)っていました。それを見て「そもそも素材を変えれば、ザラザラにしなくてもくっつかないのでは!?」と考えて、実際に製品になりました。その後は、「カレーやシチューなどを入れることが多いプラスチック製密閉容器に使えるのでは」「プラスチック製密閉容器もできるならまな板もいけるのでは」と製品が広がりました。こんな感じで一つの突破口を見つけたら、そこからバッと事業を広げられる人もいます。
──面白いですね! 正直に申し上げると、化学メーカーの仕事に発想力が求められるとは思っていませんでした。
廣瀬:私も友人に仕事の説明をするときに「プラスチックを作っているんだよ」と話したら、「町工場なの?」と言われたことがあります(笑)。実はプラスチックとひとくくりにしても、その種類はストローから飛行機の部品までいろいろとあるんです。
──他にも、三井化学の製品が使われている身近な物はありますか。
廣瀬:スマホのカメラレンズです。三井化学が独自開発したアペル®という透明樹脂は小さくても高性能なレンズに加工できるため、ほぼすべてのスマホのカメラレンズに採用されています。他にも口紅の香りを邪魔しない無味無臭のプラスチックを提供していたり、自動車の部品や食品パッケージなどに活用したりしています。
──本当にさまざまな場面で用いられていますね。
廣瀬:身近な物だけでなく、社会課題に応える取り組みも行っています。最近、地球温暖化や海洋汚染の原因になるとして、プラスチック製レジ袋が有料になりましたよね。こうした環境問題に化学メーカーとしてできることはないかと考え、石油ではなく植物由来のプラスチックを使った環境に優しい製品を生産したり、リサイクルのプロセスをビジネスとして提案したりしています。こうした活動を通して、社会課題から新たな製品を生み出す考え方も身に付いてきました。
──こうした社会課題の解決に向けた一歩は、まさにビジネスの醍醐味(だいごみ)ですね。
廣瀬:そうですね。化学産業は国内総生産(GDP)に占める割合が高いこともあり、社会に与える影響が非常に大きいです。新型コロナウイルスの感染拡大がニュースになった直後はマスク用素材の供給体制を強化しましたし、三井化学がソリューションを提案することで力になれることはないかと考えるようになりました。この提案力は海外勤務でも大いに役立ちました。
──社会課題がどんどん増えているからこそ、これから入社してくる若手も働きがいがありそうですね。
廣瀬:まさにそうだと思います。社内外の環境や社会のニーズを踏まえ、自分たちはどうしていきたいかを、自分たちで考えられます。何に注力するかも自分たちで決められるので、基本的に「自分たちが面白い」と思ったことに対して研究開発費を投入できるのは、メーカーならではの強みです。
──世の中の変化に対しても敏感である必要がありますね。
廣瀬:そうですね。例えば、私が入社した2012年はスマートフォンを持っている人が2〜3割の時代でした。今では、ほぼ10割ですよね。スマートフォンが増えるにつれてアペル®が売れるようになりましたし、昔と比べてリチウムイオン電池の需要も大きくなりました。化学メーカーは、世の中や人々のライフスタイルの変化に合わせ、新たな用途を開拓し、お客さまに提案していくことが求められているのです。
顧客にもスタッフにも「中国ならでは」を提案し続けた1年間
──廣瀬さんは学生時代から海外勤務を希望し、実際に4年目で上海に転勤し、1年余り働きました。現地では、どのような業務をしていたのですか。
廣瀬:日本と同じように、中国のお客さまにもプラスチックの提案を行っていました。また、現地に駐在して毎日現地スタッフと膝をつき合わせることで、三井化学の製品や販売戦略への理解を深めてもらうミッションも担っていました。
特に意識したのは、「中国ならではの用途を現地スタッフが自発的に考え、顧客へ提案するカルチャー作り」です。製品の特性は日本の本社スタッフがよく理解していますが、現地のニーズは現地スタッフが一番理解しています。一方で、日本で生まれた用途や製品をただ自国で売ればよいというマインドが現地スタッフの課題でした。「中国ならではの用途」を提案していけば、ビジネスチャンスになると思いました。
──「中国ならではの用途」には、どういうものがあったんですか?
廣瀬:例えば日本は自前主義が好まれ、当社もそうですが1から10まで全ての工程を一貫して製造するケースが多々あります。しかし、中国の場合だと1から5までを請け負う企業もあれば、6から10までを担う企業もあります。この違いを生かせれば、日本とは違う顧客を獲得できると思いました。
──どういうことでしょうか?
廣瀬:日本では6から10だけを担う企業がなく、そこにビジネスチャンスはありませんが、中国では6から10だけを担う企業があることを発見し、担当製品の新しい使い方を提案しました。ビジネスモデルが日本と違うからこそ、受け入れられるのではと考えました。こうした取り組みは商売の芽となり、3年経った今でも拡大していると聞いています。
──実際に海外で働く中で、気付いた点や面白さがありましたら教えてください。
廣瀬:それぞれの国や地域にある社会課題を見つけ出し、解決に向けたソリューションを提案できるかが試される点です。
例えば、東南アジアでは高温多湿な環境でも涼しさを感じられるようにと、食品だけではなく日用雑貨でもメンソールの香りを添加している商品が多く存在します。
こうした製品に陳列時の香りの減少を防ぐ三井化学のフィルムが採用されるチャンスがあり、私の担当している材料も使われました。その地域だからこその課題は、現地に行かない限り気付かないし、自社ができることを常に考えていなければ提案できないと思います。
10年でシフトした戦い方。価格競争から付加価値の勝負へ
──廣瀬さんが入社されて以降もビジネスチャンスはどんどん生まれているのですね。三井化学のビジネスモデルにも変化はあったのでしょうか。
廣瀬:この10年で戦い方が変わったという印象です。例えば2007年度は、石油化学品を中心とした基盤素材が利益の7割を占めていました。一方、最高益を更新した2018年度のタイミングでは、全体収益の3割まで縮小しています。その分伸びたのが、長期経営計画「VISION2025」で成長3領域とされている「モビリティ」、「ヘルスケア」、「フード&パッケージング」です。
※引用:三井化学株式会社 「VISION2025」
──顧客からのニーズがあるところを重点的に攻める戦い方へシフトしたということでしょうか。
廣瀬:そうです。基盤素材は需要が高い一方、価格競争に陥りやすく、市況や景気によって業績が左右されます。対して、成長3領域は、いかに競合と性能の差別化をして付加価値を高めていくかという戦い方が求められます。
──パワーゲームから付加価値の勝負に変化した、と。
廣瀬:その通りです。VISION2025でポートフォリオを変革しているのも、付加価値に重きを置いた結果です。どれだけ自分から社会ニーズを考え、差別化するか。このニーズを読み解く力があれば、理系、文系関わらず活躍できると思います。なぜなら、バックグラウンドによって視点が違うからです。例えば、コンビニをよく利用する若手だからこそ知っている食品パッケージのニーズ、普段から化粧をする女性だからこそ気が付いたコロナ禍における肌ケアの重要性など、さまざまです。
──日常の気付きから仮説やアイデアを出すことは、簡単そうに見えても、実際は難しそうです。どんな人が向いていますか。
廣瀬:「いろいろなことに興味を持っている人」、「疑問に思ったときに、『なぜ』を立ち止まって考えられる人」はよくアイデアを出している印象です。こうした人は自分なりの仮説を持っています。だから、もしそれが間違っていたとしても次につながる建設的な議論へ進展しやすく、アイデアも前に進めやすいんですよ。
「生意気な若者」との議論が、世界規模の課題解決につながる
──まさに「わがまま」が大事なのですね。廣瀬さんが一緒に働きたい人はどんな人でしょうか。
廣瀬:生意気な人です。本当に生意気なだけだと困りますが(笑)、自分の意思や仮説を提案できない受け身な人でも困ります。受け身の人がいると、4人のメンバーで構成されている部署なら議論の約25%が死んでしまうからです。
──実際に、社内には生意気な人が多いのでしょうか?
廣瀬:先輩、後輩関わらず多いですよ。互いにやりたいことをしっかり主張できるので、ぶつかりがいがあります(笑)。ちょっと乱暴な言葉ですが、その中には相手の考え方の足りない部分を補い、後押しするというプロセスも含まれています。例えば、生意気だなと思っていた後輩も、今ではある製品の中核人物になっています。「こいつ、腹立つな」と感じるときもありますが、主張はいつも正論なので、本音では「憎めないやつ」とも思っているんです。
──そういう議論から世界規模の課題解決につながる製品が生まれるかもしれませんよね。逆に三井化学に向いていないのはどんな人ですか。
廣瀬:縦割り思考が強い人です。事務系総合職は、事業部から製造や研究はもちろん、法務に総務、物流まで目を配ります。お客さまや社会的なトレンドを見ているのは当たり前です。自分の仕事にだけ注力していると、みすみすチャンスを逃してしまうこともあります。
──なるほど。実際に三井化学に向いているかいないかは、どうやって見極めるのがいいと思いますか。
廣瀬:たくさんの人と会って話すことだと思います。実際に三井化学も、採用担当者や現場含め数多くの社員が学生と会います。複数の目で、能力だけでなく「三井化学とフィットするか」を見ているんです。皆さんもぜひ、仕事や業種、待遇だけでなく、社員の人柄も含め「この企業で働きたいか」を総合的に判断してみてください。
コロナで大変な部分もあると思いますが、Webなども上手に使い、自分の肌に合うか合わないかを感じることをおすすめします。
──ありがとうございます。最後に、この記事を読む学生に向けてメッセージをお願いします。
廣瀬:就活を始めた頃は、企業を見るときも憧れが大きな要素を占めていると思います。憧れがあるのは良いことである一方、ただ憧れているだけだと良い面しか見えてこないケースもあります。
内定をもらった後でも構わないので、「本当にこの会社でいいのかな」と振り返ってみてほしいです。これまで見ていなかった企業やサービスなどにも目を向けると、より自分にフィットしたものや自分の価値観の根源が見えてくると思います。
内定を獲得し、企業と対等の立場になってから「どこに行こうかな」と悩んだほうがきっと楽しいですよ。
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【ライター:スギモトアイ/撮影:赤司聡】