歴史が長い不動産領域ですが、テクノロジーの浸透によって大きな変貌を遂げようとしているのをご存じでしょうか。近年、テクノロジーで不動産業界を変革するPropTech(プロップテック)(※1)が世界的に注目を集めています。
今回紹介するのは、日本における不動産業界変革の先頭に立つ、新進気鋭のベンチャー企業・GA technologies(ジーエー・テクノロジーズ)です。同社は、不動産テック総合ブランド「RENOSY(リノシー)」の運営を中心に、不動産管理アプリ「OWNR by RENOSY(オーナーバイリノシー)」などのサービスを提供しています。
GA technologiesグループが目指す「滑らかな不動産取引」の世界、そして不動産業界を超えた今後の事業展開について、CEOの樋口龍さんに熱く語っていただきました。
(※1)……Property(資産)とTechnology(技術)を組み合わせた造語。ReTech(リーテック)(Real Estate Tech)とも呼ばれる。
<目次>
●PropTechが秘める可能性とその領域を先導するGAテクノロジーズが掲げるミッション
●会社によってユーザー体験の差が激しい不動産業界。滑らかな不動産取引を実現するGAテクノロジーズグループの「一気通貫戦略」
●売上高は3年で5倍以上に──圧倒的成長スピードと今後の事業展開
●「役員になってやる」くらいの意気込みがある学生に来てほしい
●君はレンガを積んでいるのか、大聖堂を作っているのか。樋口社長が考える「仕事に夢中になる秘訣(ひけつ)」
PropTechが秘める可能性とその領域を先導するGAテクノロジーズが掲げるミッション
樋口 龍(ひぐち りょう):GA technologies 代表取締役社長 CEO。幼い頃より世界的なサッカー選手を目指し、ジェフユナイテッド市原(現J2)に育成選手として所属。24歳の時にビジネスマンへ転身。「テクノロジー×イノベーションで、人々に感動を。」を経営理念に、2013年に株式会社GA technologies(GAテクノロジーズ)を設立し、代表取締役社長 CEOに就任。不動産テック総合ブランド「RENOSY」の運営を中心に、データドリブンでユーザー利便性の高い不動産取引を目指す。
──近年、PropTechが注目されていると思いますが、なぜそこに着目されたのでしょうか。
樋口:不動産業界の市場規模は43兆円と、極めて巨大なマーケットですが、いまだにテクノロジーが入っていないレガシーな業界で、参入企業が少ない、ブルーオーシャンであることが理由です。皆さんの身近にあるようなゲーム、Web広告、SNSなどのテクノロジーだけで完結するビジネスは、競争の激しいレッドオーシャンな業界なんですね。なぜなら、参入障壁が低く、既にスタープレーヤーが群雄割拠しているからです。だからこそ、GAテクノロジーズはまだテクノロジー化が進んでいない、かつ、市場規模の大きい領域に参入し、業界を変えていこうとしています。このような想いがあるからこそ、われわれは創業時に「テクノロジー×イノベーションで人々に感動を。」という企業理念を掲げました。
あえて理念の抽象度を高くしているのは、現時点での事業領域である不動産にこだわっていないからです。金融、保険、建設など不動産に隣接する領域はもちろんのこと、領域にとらわれることなく参入していきたいと考えています。
そして、われわれには、「世界のトップ企業を創る」という壮大なビジョンがあります。どうせビジネスをするのであれば、トップを目指し、世界一必要とされるサービスを創り続けたいと本気で思っています。
──日本でもPropTechの波が来ていると感じますか。
樋口:とても感じています。2019年に入ってPropTechに関する様々な動きが目立ってきています。7月には、日本で初となる PropTech に特化したベンチャーキャピタル「デジタルベースキャピタル」の設立が発表され、最大10億円規模を目標とする PropTech特化ファンドも組成されます。また、PropTechに特化したピッチカンファレンス(※2)が初開催されるなど、注目が集まっています。
(※2)……スタートアップ企業が自社サービスを投資家にアピールする会議のこと
会社によってユーザー体験の差が激しい不動産業界。滑らかな不動産取引を実現するGAテクノロジーズグループの「一気通貫戦略」
──ここからはGAテクノロジーズの事業について伺います。GAテクノロジーズは、一言で言うと何を目指す企業なのですか。
樋口:私たちが目指しているのは、不動産業界のAmazon。1クリックで不動産を購入できるような世界です。それを実現する上でさまざまな課題があるのですが、特に不動産領域ならではの煩雑な業務プロセスを効率化し、不動産取引を滑らかにしたいと考えています。
Amazonのすごさは、ECの黎明期に「インターネットで物が買えるのは当たり前になる」と予想し、リアルな倉庫や物流拠点に投資し続けたことにあります。その結果、予約した次の日には商品が届くという圧倒的なUXを実現し、ECの頂点に立ったのです。
私たちは、このようにネットとリアルの垣根を超え、ビジネスを一気通貫する流れがすべての業界に広がっていくだろうと考えています。
──不動産ビジネスにも一気通貫が必要な理由は何でしょうか。家探しをしたことのない学生もいると思うので、業界の問題点を分かりやすく教えてください。
樋口:例えば、皆さんにとって身近な不動産サービスとして、物件検索サイトがあると思います。確かにどのサイトも使いやすいように工夫されていますが、ネットで予約した後は店舗に行って書類を交わさなくてはなりません。これが旅行業界だったら、ネットで予約した後に店舗に書類を取りに行くことなんてありませんよね。
他にも、サイトに載っていた物件は実はもう売れてしまっているという「おとり物件」だったり、物件によって担当する会社がバラバラで対応のクオリティも担保されていなかったりと、問題点は枚挙にいとまがありません。
こうなってしまうのは、不動産取引が分業制で行われているからです。例えば、検索サイト運営者、住宅を販売する企業、投資用不動産を販売する企業といった具合に細分化されていて、プレイヤーが多すぎるんです。
──なるほど。顧客からすると、不動産取引の過程や目的ごとに別の業者とやりとりするのは負担に感じます。
樋口:そうです。お客様は信頼できる会社の1人の担当者にまとめて相談したいはず。お客様の利便性を考えると、不動産ビジネスは絶対に一気通貫にならねばなりません。
──しかし、不動産ビジネスを一気通貫しようとすれば相当なコストがかかりますし、新しいビジネスモデルは不確実性が高いため覚悟が必要ですよね。
樋口:もちろん不安はありますが、「高いリターンを得るためには、高いリスクを取らねばならない」というのが資本主義のルールです。
インターネットのガリバー企業の多くは1990年代、つまりインターネット黎明期に生まれています。彼らのような世界的企業を目指すGAテクノロジーズは、まだ黎明期のPropTech領域にあえて挑戦しており、「Techのない最後の市場」と言われるこの不動産業界で、必ずガリバーになってみせます。
売上高は3年で5倍以上に──圧倒的成長スピードと今後の事業展開
──2018年、GAテクノロジーズは上場を果たしましたね。
樋口:私たちが目指すのは世界的企業ですから、上場は通過点にすぎません。上場するとチヤホヤされますが、そこで満足したくないので、お祝いをしたのは1回だけ。上場してからは以前よりもストイックに働いていますよ(笑)。
──上場以降の取り組みや事業の成長について教えてください。
樋口:上場後も手を緩めることなく、シナジーを生み出せる企業のM&Aを積極的に行ってきました。上場してまもなくイタンジ、リーガル賃貸保証の2社に参画してもらいました。2019年9月にはイエスリノベーション、また12月には、4社目のモダンスタンダードがグループ会社となりました。同社は高級賃貸領域のリーディングカンパニーで、業界最高水準の高級賃貸メディアを持っています。グループになることでのクロスセルを達成できる点も見逃せません。お互いの強みがお互いに効果を生み出すと確信しています。
われわれがM&Aを行う際の判断軸は、その企業のビジネスモデルの重要性もさることながら、目指すべきビジョンに向けて、ともに力を合わせてやっていけるか、お互いシナジーを生むことができるか、そして、M&A先の経営メンバー・社員と一緒にビジョンを目指したいと思えるかどうかです。
──なぜ、ここまで積極的な投資にこだわるのでしょうか。
樋口:それは、先ほどお話しした通り、われわれが目指すビジョンの実現のために尽きます。そして、まだまだベンチャー企業ですので、飛躍的な成長のために、挑戦し続けたいと考えています。
事実、私たちは急成長を成し遂げてきました。過去2期の売上高も、96億円、201億円と伸長しているのですが、その勢いを落とすことなく、直近の決算では、392億円という事業成長を果たすことができました。日本のIPO銘柄の増収額ランキングでもGAテクノロジーズは、ソフトバンクに次ぐ2位になっています(※3)。
来期の売上高は、550億円を目指しています。ちなみに、売上高500億円以上を達成すると、国内不動産業法人数の約29万社のうち40位内に食い込むことになります。次なる成長戦略は、海外展開。既にマーケットリサーチは始めており、さらなる事業成長をもくろんでいます。先ほどお伝えした、Amazonのようなプラットフォームをつくるべく、お客様とマーケットにますます感動とインパクトを与えていきたいと思っています。
(※3)出典:日本経済新聞 11/23朝刊
「役員になってやる」くらいの意気込みがある学生に来てほしい
──インタビューも終盤に入ってきました。ずばり樋口さんが一緒に働きたい学生像を語っていただけませんか。
樋口:抽象的に聞こえるかもしれませんが、“いい人”です。いい人って何かというと、素直さ、謙虚さと高い向上心を持ち合わせている人だと思っています。世界的企業を目指すからこそ、今の自分に固執せず、高い目標を掲げ、自己を変え続けて、そして最後までやり遂げるGRITが重要だと思っています。
あとは、当たり前のことを当たり前に大切にできる人です。それは、不平不満やうそを言わない、人に感謝するなどです。子ども時代にできていたことですが、大人になるとずる賢くなってしまい、難しいですよね。そういった小さい積み重ねの徹底が企業の文化となり、他社との差別化につながるのかなと思っています。
そして、何よりも「テクノロジー × イノベーションで、人々に感動を。」という理念に共感できる学生に来てほしいです。興味の対象は不動産でなくても構いません。実際、不動産業界出身の社員は5%程度ですし、これからの事業領域は不動産に限られませんから。
──GAテクノロジーズにはどのような職種があるのですか。
樋口:不動産業界を全てカバーしていますから、非常に多くの職種があります。エンジニア、AIエンジニア、企画、セールス、カスタマーサクセス、設計、人事、マーケティング、広報などさまざまです。
──新卒入社後はどのようなキャリアパスを描いていくのでしょう。
樋口:最初の2年間は配属された部署で頑張ってもらいます。2年たったら社内求人や異動希望などで他の部署へ異動することが可能です。
われわれは、地方都市(大阪、名古屋、福岡、北海道、横浜)にも支社を設立しているのですが、その立ち上げには新卒の若手社員も参画しています。また、実績を出した社員だと、3年目で10人ほどの部下を持つ部長になった例があります。これからはさらなる抜擢(ばってき)人事に取り組み、3年目で部長よりも上の部門責任者や子会社の社長になれるような機会を増やしていくつもりです。私たちの人材の考え方として、年次や性別などに関わらず、Valueを体現し、実績を残している社員には、より成長できる機会を提供していこうと思っています。
私たちは創業初年度から新卒採用をし続けていて、会社の未来を担う新卒には並々ならぬ思いがあります。「新卒で入って役員になってやる」くらいの意気込みがある学生にはぜひ来てほしいです。
──GAテクノロジーズで活躍できる人、合わない人について教えてください。
樋口:社内で活躍しているのは、考えながら走れる社員です。GAテクノロジーズに監督者や評論家はフィットしません。役職者やメンバーを問わず、全ての社員が率先垂範することが求められます。なので、改善するための行動を何も起こさず、不平不満を言うことは当社の求めるマインドやスタンスとは異なります。週1回全社員が集まる全社朝会でもよく話すのですが、「口動家ではなく行動家であってほしい」と考えています。
他には、目的意識や目標達成意欲が極めて高い社員も活躍しています。現状を正しく認識して目標とのギャップを把握し、そのギャップを埋めるために努力する、という考え方ができる人は高く評価されていますね。
一方、もちろん良い悪いではありませんが、うちには目標を達成するための努力を惜しまない風土があるため、ゆったり働きたいという人には合わないかもしれません。
あとは、会社の課題に対して面白がれるか。これだけ急成長していれば当然、事業や組織の課題が成長痛として起こります。それを伸びしろと捉え、その環境を使って自分を成長させたいと思う学生さんに来てほしいですね。
君はレンガを積んでいるのか、大聖堂を作っているのか。樋口社長が考える「仕事に夢中になる秘訣(ひけつ)」
──最後にこのインタビューを読んでいる学生に向けてメッセージをお願いできますか。
樋口:まず、ファーストキャリアでは伸びている業界、これから伸びようとしている業界を選ぶべきです。なので、テクノロジーを活用する企業に行った方が良いと思います。
そして、「夢中になるための努力」を大切にしてほしいです。3人のレンガ職人の寓話にある通り、同じ作業をしていても、「レンガを積んでいる」ではなく「大聖堂を作っている」と考えられる人の方が仕事に夢中になれるでしょう。楽しい時間はすぐに過ぎ去りますよね。目的意識によって仕事の楽しさが変われば、生きる時間軸が変わってくるんです。
「自分の仕事が世界を変えている」と思い込んだ方が絶対に得です。だからこそ、皆さんには「夢中になるための努力」をしてほしいと思います。
▼GA technologies 会社説明会のお申し込みはこちら
会社説明会
【ライター:スギモトアイ/編集:辻 竜太郎】