こんにちは、ワンキャリアの多田薫平です。
ワンキャリアに1人目の新卒として入社し、今は事業企画や採用コンサルティング、キャリアアドバイザーなどをやっています。曲がりなりにも4年間、1年に1,000人以上の就職活動生と会って相談に乗り、さまざまな「悩み」を聞く生活を続けてきました。
ただ、よく聞いてみると、「それって今悩むことではないよね」と思うことが少なくありません。今、悩んだところで絶対に答えが出ないことを考えていたり、本当に考えるべきは別の問題だったりと、貴重な時間を無駄にしてしまっていることもあります。
特集「就活の羅針盤」は、そんな状況を脱するために、就活の全体像を見るための思考法を提案する企画です。第1回のテーマは、情報収集と取捨選択のお話。
就活を始めたての人は「情報不足の砂漠」をさまよいがち
──予告編は「就活生で悩むポイントは5つしかない」という話でしたね。
多田:そうですね。図でも示したのですが、就活生が悩むポイントはまず「選ぶ」と「受かる」の2つに分けられます。その2つを接続する形で「どう自己分析をするのか」という悩みが発生していると考えるといいでしょう。
ですので、今の自分の悩みはどこに当てはまるのかを理解した上で、解決方法を探るのが有効です。
──例えば、「就活を始めたものの、何をしていいか分からない」という悩みもあると思うのですが、それはどこに当てはまるのでしょう?
多田:まず、選ぶ問題の「情報収集」で悩んでいることが多いですね。今の世の中は情報にあふれている半面、情報を収集すべき領域を決め、効率的に集めることは難しくなっています。結果、皮肉にも「情報はあふれているのに情報不足」という状況に陥ります。
就活生の視点で見ると「企業や業界を絞ろうにも、絞れない」という状況だと言えるでしょう。イメージで言うなら、「蜃気楼(しんきろう)=たくさんの情報」は見えるが、結局何もない砂漠をさまよっていて、途方に暮れているみたいな感じですね。
──「情報不足」という砂漠から抜け出せずにいる、ということですか。砂漠から抜け出すために、まず知らないといけないことは何でしょうか?
受けることのできる会社数は「無限ではない」と知ろう
多田:まずは「就活の時間は無限ではない」と知ることだと思います。就活生は蜃気楼(たくさんの情報)に惑わされた結果、情報不足に陥り、就活に割ける時間がなくなってしまうことが多いです。まず、時間が無限ではないことを知るために、受けることのできる会社数の限界値、つまりCapacity(キャパシティー)を知ることが重要です。就活生を見ていると、さも時間が無限であるかのように悩み続けている人がいます。当たり前のことですが、時間は有限であることを改めて認識した方が良いと思います。
──確かに、大学に入ると自由に使える時間が急に増えるから「時間は無限にある」と錯覚しがちですよね。実際、受けることのできる社数(Capacity)はどれくらいになるのでしょうか?
多田:以下の公式に当てはめて、考えることができると思います。ただ、ぶっちゃけこの公式は覚えなくて大丈夫ですよ(笑)。時間が有限であることを意識してもらえればいいんです。
では、ここからは具体的に考えてみましょう。まず、本選考の応募締め切りまで2カ月だったと仮定します。この場合、「就活時間の総和」と「1社あたりにかかる就活時間」を下の図のようにざっくり算出します。
──すると、本選考を受けられるのは、180時間÷9時間=20社になりますね。
多田:そうです。こう考えると、やみくもに情報収集するのがいかに危険かが分かってもらえると思います。蜃気楼に惑わされて、時間を浪費してしまいますから。
──だとすれば、時間が限られている中で、就活生はこの後どうすればいいのかが気になります。
「興味があるか分からない」という感想を大切に。情報収集は領域を絞ろう
多田:まず、考え方として重要なのは、情報収集に時間をかける領域を絞るということです。
──「情報収集に時間をかける領域を絞る」とは、どういうことでしょうか。
多田:どういう業界や企業を見るかを、ざっくりと決めることです。 まずは業界を「興味がある」「興味がない」だけでなく、「興味があるかどうか分からない」も加えた3つに分類することです。例えば、就活サイトによくある検索ボックスに、各業界のチェックボックスがあると思うので、そのカテゴリーで書いていくと楽です。30分程度で終わると思います。
ワンキャリアのスマホページから見られる業界ごとのタブ
次に「興味があるかどうか分からない」領域の情報収集をして、「興味がある」「興味がない」の2つに振り分けていきます。これが終わったら、各業界についてブレイクダウンして同じことを繰り返します。例えばメーカー業界であれば、電機メーカー、食品メーカー、医療機器メーカーというように。ここも、最初の振り分けと同じく3つのカテゴリーに分けられるでしょう。このような作業を繰り返すと、最終的にどんな企業が興味あり、興味なしに当てはまるのかを可視化できます。
いわずもがなですが、興味ありの企業に情報収集の時間を投資すべきです。
──なるほど。「興味がない」まで調べる理由は何でしょうか。「時間が有限なら、なるべく興味のあるところを上から順番に受けたい。だから興味がないところは見ないでおこう」と考える就活生もいそうですが……。
多田:就職活動をしていると興味が変わることは、よくあるんです。例えば、最初は興味がなかった会社に興味を持ったり、逆に興味があったのに途中から興味がなくなったり。思い込みを捨てて自分に向いている企業を選ぶためにも、興味がない企業も受けることをおすすめしています。
もしずっと興味がないままだったとしても、自分の選択の納得度を上げることにはつながると思います。キャリア面談を受けたことのある就活生の方が「もっと幅広い企業を見たほうがいいよ」とアドバイスを受けたとしたら、こういう理由からだと思います。
──なるほど。情報収集をすべき領域を絞る方法については分かりました。ただ、実際に興味があるかどうかを判断するための情報はどうやって集めたらいいでしょうか。これだと「情報不足の砂漠」をさまよっているままな気がします。
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「OB訪問はした方がいい?」は手段が目的化している。社員から必要な情報を引き出そう
多田:そうですね。このままだと情報をどのように集めたらいいか分からないので、まだ砂漠の中です。今までやってきたのは砂漠に迷わないための指針、つまり「コンパス」を作ってきたと思ってください。次からは情報収集の方法を伝えていきます。
前提として、情報収集の方法は世の中にいくらでも存在します。ただ、手段によって、集められる情報の質が異なります。下の図は得られる情報によって、手段をざっくりとマッピングしたものです。
よく「OB・OG訪問はした方がいいですか?」「合説には行った方がいいですか?」という質問を受けますが、両方とも収集できる情報が違います。この質問をする時点で、手段が目的化しています。そうではなく、「何が自分にとって今必要な情報なのか」「必要な情報をつかみ取るにはどの手段を使えばいいか」を考えてみるのが一番です。
──一番難しいと思うのが、OB・OG訪問など、左下にマッピングされている情報を集めることだと思いました。ここはWebで知ることができない、リアルな情報なので、キャリアを決める上で一番重要な情報だと思います。これはどう集めるべきでしょうか。
多田:おっしゃる通りですね。一番重要なのは左下の情報をどれだけ集められるかだと思います。社員に質問をして、必要な情報を引き出すことが必要になる領域です。
──「逆質問」が鍵を握るのですね。
多田:ただ、就活を長年見ていて、このいわゆる「逆質問」は「受かるために使うツール」という風潮があります。つまり、就活生は企業のウケがいい質問を考えようとするのです。でも、本来はキャリアを考える情報を集めることのほうがもっと重要なはずです。
とはいえ、「質問の仕方が分からない」と思う方も多いと思いますので、質問リストを作ってみました。ぜひこの画像をダウンロードして、左隅の情報を集め、「情報不足の砂漠」を抜けてほしいです。
──なるほど。確かに「どう質問していいか分からない」という学生からすると便利ですね。質問して情報が集まった後に大事なことは何ですか。
多田:情報を集めたあとは、必ず「情報の海」におぼれます。なぜなら、ビジネスには情報を整理するフレームワークがありますが、就活にはないからです。
次回は、その情報を整理するフレームワークについて触れたいと思います。
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※こちらは2019年12月に公開された記事の再掲です。
(illustration:rudall30/Shutterstock.com)