医薬品メーカーに行きたいと思った。でも、それは単に“洗脳”されていただけだったのかもしれない──。
当時、修士1年で就職活動を終えた私は、こんな違和感に苛まれたことをよく覚えています。
洗脳、というと大げさに聞こえるかもしれませんが、同級生や先輩が日々話す「理系の当たり前」を勝手になぞり、自分に言い聞かせてはいなかったか。
お恥ずかしながら、就活初期の私は「理系」という固定観念から、就職先や職種に自己を縛り付けて考えていました。
薬品に囲まれた6畳ほどの研究室の中で試薬を作る毎日。卒業後はメーカーで研究や開発に関わることだけが正解だと思っていた。専門を仕事に生かせないなら、大学に進んだこと自体に意味がない、と考えていたほどです。
そんな状況だったので、そもそもキャリアの選択自体が、自身の意思決定に基づいて行われているかどうか悩んだのです。
研究室の「壁」を越え、知らない世界で活躍する大人へ会いに行こう
これまで2年間、ワンキャリアのメンバーとして取材に携わる中で、手が届く範囲で得られる情報を基に、自身のキャリアや進路を決定している学生が少なくないことを知りました。
これは理系・文系問わず、どの学生にも言えるでしょう。しかし、必然的に研究などで拘束時間が長くなりがちな理系学生の方が、その傾向は強いようです。
併せて問題に感じたのが、先輩やインターンに行った企業の人たち以外から、キャリアの情報が掴(つか)みにくいという現状でした。WebやSNSが普及した今でさえ、手の届かない範囲にいる大人と接点を持つのは、私たちが想像する以上に大変なことだったのです。
どうすれば「自分たちが触れ合うことの難しい人」と接点を持てるのか。私たちにできるのは、皆さんの代わりに、ビジネスの第一線で活躍する大人へOB・OG訪問をすることでした。
ワンキャリア編集部がお届けする10月特集、テーマは「理系異端児のキャリア論」です。
自己の道を模索し、他の人とは少し異なるキャリアを歩む理系出身の4人のビジネスパーソンたちに取材をすることで、何者にも縛られないキャリアを考えるきっかけを一緒に探っていきます。理系はもちろん、文系の皆さんにも役に立つはずです。
10月28日(月)公開:エンジニアじゃなければ、ITコンサル? 進路に悩む東大理系学生に伝えたいこと
「クライス山本のキャリア相談室」を連載している、キャリアコンサルタントの山本航氏。彼に東大理系大学院生3人と就活やキャリアというテーマで対談をしてもらいました。東大理系院生たちが抱く就活への思いや考えについて、彼らの会話を切り口に山本氏がひも解きます。
10月29日(火)公開:ロジカルに考えれば起業しかなかった──ジーンクエスト高橋祥子が語る「生命科学者と起業家が融合する時代」
東大大学院博士課程在学中に遺伝子解析サービス「ジーンクエスト」を起業した高橋祥子氏。Forbes「30 Under 30 Asia 2016」選出を始め、女性起業家として華々しく活動されています。そんな彼女に、起業家としてのキャリアを描くきっかけとなった在学中の会話、そして、多様化する博士課程のキャリアなどを伺いました。
10月30日(水)公開:広告よりもゲノムに執心。異色の電通マンが授ける「理系」「文系」を飛び越える指南書
電通の京都ビジネスアクセラレーションセンター事業共創部長を務める志村彰洋氏。国策事業やスマートシティーのプロデュースをはじめ、「ゲノム×ビジネス」の融合や企業の新規事業やスタートアップ推進活動など、その活動は民間から各国プロジェクトまで多岐に渡ります。各種研究にも精通し、学生時代から多くの実績を残した彼が、なぜファーストキャリアに電通を選んだのか。その真意を語ってもらいました。
10月31日(木)公開:原子力研究からJ.P.モルガンへ。荒野を走るベンチャー投資家が気付いた「レール」という幻想
VC(ベンチャーキャピタル)である「Coral Capital」創業メンバーである澤山陽平氏。原子力の研究をしていた彼がファーストキャリアに選んだのは、J.P.モルガンの投資銀行部門でした。学生時代の米国留学を通して「いつでも研究には戻れる」という気付きを得たと語る澤山氏。野村証券のアドバイザリー、VCと異色のキャリアをたどる彼の選択に迫ります。
11月1日(金)公開:レールから外れるのは、怖いことではない。私がソニーから独立して起業家になった理由
Google Playベストアプリ2年連続受賞の「みんチャレ」を運営するエーテンラボCEOの長坂剛氏。社内オーディションの通過を機に、ソニーのイントラプレナーとして活動していた時代、10年間務めたソニーから独立した背景など、「みんチャレ」と共に歩んできたキャリアをインタビューしました。
(Photo:AlexussK/Shutterstock.com)
【特集:理系異端児のキャリア論】
・【新特集】就活で自分を“洗脳”していないか。縛られないオトナたちが贈る「理系異端児のキャリア論」
・エンジニアじゃなければ、ITコンサル? 進路に悩む東大理系学生に伝えたいこと【クライス山本のキャリア相談室:特別編】
・ロジカルに考えれば起業しかなかった──ジーンクエスト高橋祥子が語る「生命科学者と起業家が融合する時代」
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