新型コロナウイルスで説明会から面接、インターンまでオンライン化が進んだ今年の就活。
急きょ変化を余儀なくされた分、企業側の対応もさまざまだった。選考のスケジュールを後ろ倒しにするのか、最終面接までWeb上で行うのか──悩みに悩んだ人事も多かっただろう。このオンライン化への対応こそが今回、企業の評価に大きく影響したことが、学生の声から分かった。
ワンキャリアは毎年、就活生から集めた10万件以上のクチコミの評価点をランキングにした「ONE CAREER 就活クチコミアワード」を発表している。来年に発表予定の「就活クチコミアワード2021」の中間結果となる上期速報の結果から、学生が企業を見るポイントとしてコロナ禍で変わった点と、変わらずに重視している点を調べた。
まずは、TOP30の企業の顔ぶれから紹介する。
ONE CAREERの掲載企業の中から2020年1月1日〜2020年6月30日にクチコミが10件以上集まった企業を対象に調査。同期間に2020年卒、2021年卒の学生がインターン/説明会/本選考の各部門に投稿した「イベントの満足度」を集計して平均点を算出し、点数の高い上位30社を並べた。
昨年の速報と比べると、2年連続でTOP30に入っているのはたったの3社。顔ぶれは完全に変わったと言っていい。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う採用のオンライン化で、「受けてよかった」と思う企業の定義もじわりと変わっていることがうかがえる。本選考、説明会、インターンの3つの切り口から詳しく見ていこう。
オンライン選考こそ細かな気配り。デンソー、東京海上日動システムズに高評価
新型コロナウイルスの影響を最も大きく受けたのが、2021年卒の本選考だろう。対面予定だった面接を急きょオンラインに切り替えた企業も多く、各社が対応に追われた。
そうした中、オンラインでも高評価のクチコミが寄せられていたのがデンソーと東京海上日動システムズだ。両社とも学生の声にしっかりと耳を傾け、対応していることがクチコミからも分かる。
デンソーには「面接官の方から、『僕たちは当たりの面接官だから安心していいよ』と笑って言っていただき、かなりリラックスできました」との感想もあった。質問の鋭さを指摘する声もあったが、面接自体はオンラインでも穏やかな雰囲気で進んだようだ。
東京海上日動システムズには「私は最終選考落ちしたが、内定承諾は就職活動が納得いくまで待ってくれると聞いて学生と同じ視線に立ってくれている感じがした」とのクチコミもあった。最後まで学生に寄り添った対応を貫いていたことがうかがえる。
突然のオンライン化に企業側も戸惑っただろうが、最も不安を抱えていたのは学生だ。その不安に寄り添う対応を取れているかが、クチコミの評価にも影響したとみられる。オンラインでの選考こそ、細かな気配りが求められそうだ。
説明会で光ったユニリーバ、マネーフォワードのプレゼン資料 今後はツールの習熟度もカギに?
新型コロナウイルスの感染拡大に伴うもう一つの大きな変化が説明会のオンライン化だ。今回のクチコミは2020年卒、2021年卒の学生が対象のため、合同企業説明会など旧来のスタイルで開催した説明会も評価の対象に入っている。ただ、プレゼン資料が好評な企業の説明会はオンラインになっても、引き続き高い評価を得ている。
ユニリーバ・ジャパンの次のクチコミが象徴的な事例だ。
こちらは学生が会場に行くオフライン形式の説明会へのクチコミだが、企業のプレゼン力の高さがうかがえる。今回は集計対象外だったが、同様のクチコミはオンライン化した2022年卒の学生からも寄せられており、ユニリーバ・ジャパンの採用における強みが引き続き生かされているようだ。
また、今回の集計対象の中にオンライン説明会へのクチコミが寄せられていた企業でも、プレゼン資料が好評だった企業もある。マネーフォワードだ。
オンライン説明会では、学生の表情や反応を読み取ることは難しい。その分、企業のプレゼン力が問われる面も高まっているようだ。その鍵を握るのは、事前の準備であることが両社のクチコミから読み取れる。
また、マネーフォワードに対する別のクチコミでは、リアルタイムで質問を集められるWebツール「Slido(スライド)」を質疑応答に利用していたという声もあった。オンラインならではの良さを引き出す工夫や投資をしている企業の評価が高まるのは言うまでもない。今後は企業側のWebツールに対する習熟度も評価を分けるポイントになるはずだ。
オンラインインターンの評価はこれから。示唆に富む富士フイルムの試み
最後にインターンだが、これは評価が難しい。2022年卒ではオンラインインターンを導入する企業が目立つ一方、今回クチコミを集計した2020年卒、2021年卒のインターンはオフラインが主流だった。すでにインターンの内容が別物になっている企業もあるだろう。
そんな中、興味深いのが富士フイルムだ。対面でのインターンではあるものの、オンラインでも活用できそうな示唆に富んでいる。
これらのクチコミから、富士フイルムのインターンは「実際に合わなくても充実した体験を学生に提供できるか」を軸に設計されていることが分かる。同社がこれまでに培ったノウハウは、オンラインインターンでも活用できそうだ。
冒頭でお伝えした通り、今回の記事は速報に過ぎない。「就活クチコミアワード2021」は来春に発表予定である。楽しみにお待ちいただければ幸いである。
(Photo : Monster Ztudio/Shutterstock.com)