こんにちは、ワンキャリ編集部です。「総合商社特集 〜2016冬〜」の特別企画として、「総合商社 人事インタビュー」を連続掲載します。今回は総合商社の中でも、三菱商事の人事採用責任者 下村さんから新卒採用の学生へ求める姿についてお伺いしてきました。
<目次>
●できるだけ多くの学生さんに、三菱商事の魅力を知って欲しい
●「Same Boat」で手ごたえを感じられる投資
●制度に裏打ちされた「人を育てる」文化
●噂に惑わされず、自分を信じて挑んで欲しい
できるだけ多くの学生さんに、三菱商事の魅力を知って欲しい
──長らくトップの総合商社として、学生からの人気も圧倒的な三菱商事さんですが、昨今の就職活動についてどうお考えですか?
下村さん:採用活動は景気の影響を受けやすいものですが、昨年は学生さんの売手市場だったと思っています。一般的に、選択肢が増えることは好ましいことでしょうし、じっくりと自分の適性や志向に合う業界や会社を研究できる就職活動は、健全なことですね。
ただ一方で、早々に就職先を決めてしまった人もいるんじゃないかなと。もっと相性がいい、成長できる企業を知ることなく就職活動を終了してしまう。弊社と接点を持つ前に就職活動を終えた人もいたかもしれません。
──他企業内定後も就職活動を続け、三菱商事さんを知る中で「やはり御社を第一志望に」と学生さんの気持ちが動いた例はございましたか?
下村さん:外資系企業などの内定を持ちつつ弊社に接触してくれた人の中には「社員さんとお話してから魅力に気付きました」と言ってくれる人が大勢いました。三菱商事の社員は、将来的に事業や会社をマネジメントする「経営人材」に育つことができますし、苦労して良い仕事を作った社員が、その仕事の要諦やノウハウを積極的に伝承するという文化があります。
こういった文化は、弊社の社員に会っていただかないと伝えることが難しい。新卒の就職活動はその後の人生にも大きなインパクトがある。ですから、こういった食わず嫌いはもったいないと感じます。
「Same Boat」で手ごたえを感じられる投資
──商社マンというと「物流」のイメージが強い学生も多いかと思いますが、三菱商事のビジネスは昔と比べ、変化がみられるのでしょうか?
下村さん:物流、すなわち商品のトレーディング業務は商社の原点です。担当する業界・商品知識を頭に叩き込み、お客様のニーズへタイムリーにお応えする。より高く売りたいサプライヤーとより安く調達したいバイヤーの間に入って、相反する利害を上手に調整する。そういう日々のやりとりを積み重ねて、取引先と信頼関係を築き上げます。
ただ、業務内容は時代の変化に伴ってトレーディングから事業投資に軸足をシフトしています。商品売買を仲介するだけでなく、出資や人の派遣等を通じて事業リスクをとるようになりました。
電力業界の例でいうと、はじめは発電プラントの機器トレーディングを通して電力業界との接点をつくりました。そして、そこで築いた信頼関係に基づき、今度はプラントの一括請負まで任されるようになり、さらにはトレーディングに加えて自らが事業主体として発電事業(IPP(※1))に参入してきました。このような事業発展の歴史があり、その事業の展開地域も日本から世界各地へ発展しています。また発電方式も従来の火力発電に加え、新エネルギー発電など、時代にあわせて多様化させてきました。自ら事業リスクを背負うので、事業をマネジメントする人を現場に派遣し、まさに経営をさせるのです。単体経営から連結経営へのシフトとも言えます。
(※1)……IPP=Independent Power Producer。自ら所有するプラントで発電し、電力会社や事業者等に卸売りする事業または事業者を指す。
──ということは、経営コンサルティング会社や投資銀行に似た事業が増えているのでしょうか。
下村さん:確かに、弊社の事業は戦略コンサルティングファームや投資銀行と似たところもあります。クロスボーダーのM&Aや大型投資、業界再編といったような仕事も多いですし、大仕掛けの場合には戦略コンサルの方と一緒にチームを組むことも結構あります。
ただ、三菱商事では自ら立てた戦略を最後まで実行できるのが違いです。たとえば、水産業の事例。弊社は今まで、まぐろやサケの輸出入を担当していました。今までならそれで業務が終わっていた。それが缶詰の加工から流通、店頭展開まで責任を持つようになっています。川上へ視点を動かすと、世界でサケの需要が高まっており産出量を増やす必要があったわけです。そこで養殖鮭鱒(※2)で世界第3位のセルマック社を買収し、水産物の安定供給を通じて、水産業全体を活性化しています。
(※2)……鮭鱒(ケイソン)=サケとマス
コンサルタントは「提案」でお金をいただきます。投資銀行であれば「M&A」の手数料ですね。ここで業務が終わりますが、弊社は「こうしましょうよ」から一緒に取り組み、彼らが成長した後に配当という形でお金をもらう、「Same Boat(同じ船)」の仲間になります。
私たちがお金を出すということは、共に成長を目指しましょうということの証なのです。仕事で感謝される度合いも強いので、コンサルティングファームや投資銀行から弊社に転職された方々も「手ごたえに違いがある」と語ってくれます。
制度に裏打ちされた「人を育てる」文化
──三菱商事へ入社した後の社員育成についても、その魅力をお教えいただけますか?
下村さん:先ほど申し上げた通り、最終的には「経営人材」へ育つよう、積極的に支援しています。具体例にはこういったものがあります。
(1)独自開発のビジネススクール式社内研修
一例を挙げると、入社10年目程度の社員を対象にした研修を、INSEADの協力のもと、国内外のグループ会社や事業投資先社員も交えてシンガポールで実施しています。
(2)各種ビジネススキルに対応した研修
財務・会計・税務や法務、M&A知識やプレゼンテーション等、必要な人が誰でも受講できる、スキル習得型の講座が多数用意されています。
(3)一流ビジネススクールへの派遣
毎年10人程度を派遣しています。これに加え、エグゼクティブ向けの短期集中コースに年間70人ほど派遣しています。
(4)人が育つ土壌
人を育てるという企業風土があります。人は、仕事での実践により育つという思想があり、絶え間なく会社の強みが次世代に継承されます。
何よりも、(4)の「人が育つ土壌があること」が三菱商事の特徴です。苦労して仕事を作った社員が、本当に大事なノウハウを後輩に継承するという文化があります。また、海外経験や出向経験など、多様な文化との触れ合いも人の器を大きくすると思います。三菱商事には入社8年以内に全員を海外へ1年程度派遣する「グローバルトレイニー制度」があります。さらに、連結事業投資先が約1,200社以上あるので、出向して経営に関与する機会も非常に多いです。
先輩から学びつつ、自らも経験することで成長する仕組みがあります。結局、人は経験から学ぶ部分が大きいのだと考えています。ですから、出来るだけ多くの実戦経験を積むことが、成長する上では重要なのだと思います。
──下村さんも以前、子会社の経営をされていたと伺っています。そのときに学んだことを教えていただけますか?
下村さん:ひと言で言うなら「マネジメント能力」ですね。私が出向したのはベンチャー企業でしたが、そこでの経営は想定していないことの連続でした。仕入先からの納品が遅れた、社員が会社を辞めたいと言いだす、客先から契約変更を迫られた、監査対応で資料提出を求められる……。これが同時にきます。
この中で一番大変だったのは、社員のモチベーション管理ですね。10人いれば10通りの対応が必要でした。ですから、出来るだけ時間を割いて相手が本当に言いたいことが何かわかるまで傾聴しました。こんなに頑張っているのに評価されないから辞めたい、といった話を何度も聞いていくのです。取り繕うようなことをいっても駄目で、思っていることを率直に伝えるしかないと思いました。夢やビジョンを共有することが、思っている以上に大事だということも出向中に学んだ気がします。
いつも、ひとりで10個くらいの皿回しをしているような気分でした。現在の採用業務でも、そのときに鍛えられたマネジメント能力は生きていると思います。
噂に惑わされず、自分を信じて挑んで欲しい
──ありがとうございます。最後に、学生さんへのメッセージをお願いできればと思います。
下村さん:就職活動は、自分を深く理解し、社会を学ぶ良い機会です。時間の許す限り積極的に活動しないともったいないと思います。
「三菱商事は敷居が高い」という噂があると聞いたことがあります。でも実際は、そんな会社ではありません。少しでも多くの皆さんに興味を持っていただけるように、ホームページや説明会などで積極的に情報公開をしますし、社員紹介などにも力を入れていきます。
ぜひ三菱商事に触れていただき、共感できるところがあるか、判断して欲しいと思います。皆さんの中にある、”つぎ”を創る力を集め、一緒に良い仕事をしたいですね。
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